春夏秋冬・10

「犬」あれこれ

 ◆犬を「イヌ」と呼ぶのは何故か。ある辞典によると、大昔、子供たちが、うるさくまとわりつくイヌに「いね、いね」(あっちに行け)と言っているうちに、犬が「いね」と呼ばれるようになり、この「いね」から「イヌ」になったとある。……本当だろうか?

 ◆このあいだ、あるところで、犬は神が人間に遣わした協力者だという珍説を聞いた。「狸」や「狐」といった他の動物を表わす漢字には「けもの偏」がついているのに「犬」にはついていない。イヌは「天」の遣いだから「犬」と書くというのだ。だが、「けもの偏」のつかない動物なら、「犬」以外にも「馬」「牛」「山羊」「虎」など、いくらでもある。そもそも「けもの偏」というのは「犬」という字からできた「偏」だということくらい、ちょっと辞書を見れば分かりそうなものだが。

 ◆英語では「イヌ」をDOGと書く。これは「神」(GOD)の綴りを逆方向に並べかえたものだということで、悪魔を崇拝する黒魔術ではイヌを悪魔の化身とみなしているという。英語圏ではイヌも肩身の狭いことだ。

 ◆犬は生後6ヵ月〜9ヵ月で性的に成熟し、12年で老年期を迎える。たいていの犬の寿命は8年〜15年だが、ごくまれには20年以上生きたという記録もある。『ギネスブック』によると、犬の公認長寿記録は、1939年11月14日に死んだオーストラリアの牧羊犬「ブルーイー」の、29年5ヵ月。人も犬も、長生きするには労働が大切ということか。

 ◆先日聞いた話だが、バブルがはじけてから、山に野犬が増えたという。これはどうやら、次の猟期まで犬を養う手間と費用を嫌って、猟期が終わるとハンターたちが猟犬を山に置き去りにして捨てていくかららしい。山歩きも物騒になったが、猟のパートナーをあっさり捨てて行けるような冷血漢に銃を持たせていることの方が、よほど恐ろしいような気もする。

 ◆日本では1950年(昭和25年)に「狂犬病予防法」が施行され、1956年に3頭の狂犬が処分されたのを最後に、狂犬病は発生していない。だが、その後40年間、毎年「予防接種」は続けられている。何故だろう? 狂犬病は致死的な人畜共通伝染病で、発病すると手の打ちようがない。だから予防が必要だ。それはもっともだが、狂犬病を媒介する動物は犬だけではない。ネコ、牛、馬、豚、狼、コウモリなどからも感染するのである。なのに、毎年「予防接種」を義務付けられているのは犬だけだ。コウモリまで探し出して接種しろとは言わない。本当にそれほど必要なものなら、ネコに接種しないのは何故かと問いたい。(ちなみに、現在、狂犬病の危険がないとされているのは、日本、オーストラリア、ハワイ、南極だけ。)

 ◆チベットでは犬が大切にされている。チベットの輪廻転生説では、犬に生まれたら次は必ず人間に生まれ変わると考えられているからだという。他の動物と違って、犬は特別らしい。だが、なぜ犬だけが特別なのかは、チベット人も知らないらしい。

 ◆大阪の医師、山下弘道氏(『遥かなる大地ムーからの予言』たま出版)によると、犬の霊体(いわゆる「魂」)の大きさは人の霊体の大きさのおよそ600分の1だという。だから、霊界では犬は蟻より小さくなり、目に見えないというのだ。……話もここまでくるとコメントに窮する。