春夏秋冬・27

北御堂にて

 こんにちは。少し風が変わり、秋の気配がしてまいりました。涼しくなりますと、体が動かしやすくなり、心が軽くなります。今年も蒸し暑い日が続きました。みなさんいかがお過ごしになられましたでしょうか。

 私は先日、大阪の北御堂というお寺におまいりに行ってまいりました。今年で第50回目を迎える「北御堂盆踊り」が開催されていました。北御堂は正式には浄土真宗本願寺派津村別院といいます。真宗大谷派難波別院(南御堂)とともに御堂筋という通りの名前の由来となったお寺です。

 南御堂、北御堂の盆踊りは毎年8月下旬に四日間の日程(両堂二日間ずつ)で開催されています。境内の中央には櫓が組まれ、周囲には屋台が並び、まさに賑やかなお祭りの雰囲気でした。盆踊りは、小さいお子さんからご年配の方まで、世代を超えて愛されているお祭りです。音頭が始まると皆時計回りに身振りを合わせて踊ります。大阪では河内音頭が有名です。河内音頭は、土着の音頭や民謡などと仏教の声明が混ざり合って出来上がったものだといわれています。

 境内には外国の方々もたくさんおられ、音頭に合わせ踊っておられる姿が印象的でした。最近では盆踊りが『BON DANCE』として国を越えて認知されてきているようです。伝統的なものでは徳島の阿波踊りや富山のおわら風の盆などが有名ですが、いまや歌謡曲をアレンジして踊ったり、参加者全員がヘッドホンをして無音で踊ったりする盆踊りもあると聞きます。そんなふうに、時代とともに新しい盆踊りが生まれてくるのは、誰でも参加できるという特徴があるからではないでしょうか。

 盆踊りは、仏教の踊念仏から始まったといわれています。踊念仏というのは、南無阿弥陀仏の六字名号に節をつけて唱え、その節拍子にあわせて踊るものです。念仏が民間に広く普及したのは、この踊念仏からともいわれています。踊念仏は人々が一緒に踊ることによって一体感を感じられることから、大念仏ともよばれました。大念仏というのは大勢が集まって念仏を唱えることです。大勢で声を合わせると、倍音が空間に心地よく響きます。

 当時はお寺に声明(念仏)を聞きに行くことが娯楽の一つでもあって、念仏の響きを楽しみ、時には皆で念仏の声に合わせて踊ったりしていたようですが、そこから、後に、もっぱら芸能や娯楽として、念仏や和讃を歌いながら踊る、念仏踊りが生まれました。

 それまで公の場で、飛んだり跳ねたりする機会がなかった人々の生活に、念仏踊りが浸透し、踊るということが生活の一部になっていったようです。新しい娯楽として人々に広まったのは、念仏踊りが、音に合わせた簡単な所作の繰り返しで、誰でも参加できるものだったことが大きく影響しています。盆踊りは、その流れを受けています。

 誰でも参加できる「盆踊り」がご縁となり、地域が繋がっていく、蝉の音を聞けば夏を感じるように、盆踊りの音頭を聞けば、自然に身体もこころも踊り出す。私も、人の身振りを見ながら、音頭に合わせて踊ってみました、徐々に呼吸が合い動きが揃ってくると気分が高揚してきました。上手い下手ではなく一緒に踊ること。そこに盆踊りの醍醐味がある、と感じました。

 第50回目を迎える両御堂の盆踊りは、笑顔が溢れ、非常に和やかで、踊ることから生まれる一体感は世代を超えて喜びあえるものでした。お寺の境内での盆踊り。まさに、仏の手の平の上で共に生きているという味わいでした。

合掌

                            釋了徹