1973年の第一次オイル・ショックのおり、トイレットペーパーが全国の店頭から消え、買い溜めに狂奔した主婦が離婚されるという騒ぎまで起こったことがある。あれ以来、妙にトイレットペーパーのことが心にかかっている。他の紙製品とは異なり、トイレットペーパーだけは絶対にリサイクルできない。そういうものに純正パルプ100%使用などと表示してある製品は決して買わないようにしている。 トイレットペーパーにはミシン穴で切り取り線を入れたものがあり、ミシン穴からミシン穴までの約20センチほどを1枚と考えているらしいが、あのミシン穴の箇所できれいに切り取れたことがない。これは世界中の人々が実感するところらしく、隔壁破損だとか翼がもげたとかで航空機事故が続発したおりには、「機体全面にミシン穴を入れておけばそこから破れることはない」などという妙なジョークまで生まれた。 以前、電車のなかで大薮春彦の『アスファルトの虎』という小説を読んでいたとき、こんな一文にでくわした。「便意をもよおしたので、棚にあったトイレット・ロールのペーパーを1メーター分ほど千切って丸め…三十メーターほど離れた簡易トイレに…云々」。大薮作品は日常の些細な事柄まで克明に描写することで定評があるため、この「1メーター」という箇所にひっかかった。これで用が足りるのだろうかと、首をかしげながら更に読み進むと、今度は「数メーター」と書かれた箇所にでくわし、まずは納得。 どこでだったか忘れたが、こんな話を読んだことがある。シベリアに抑留された日本兵がトイレの紙を支給してほしいとうったえたところ、ロシア兵は、一体何に使うのだと不思議そうな顔をしたという。この日本兵は、後に町中で用便するロシア兵が紙を使わないのを見て、ナルホドと思ったということだ。今でもモスクワ国際空港のトイレにまともな紙が無いところを見ると、この話はどうやら本当らしい。 以前テレビで見た話だが、歌手の研ナオコの夫君は生来「糞切り」が良く、トイレットペーパーを必要としないという。だが普通はそうはいかない。日本トイレ協会の西岡秀夫会長によると、「日本人のトイレットペーパー使用量は平均1日で、男性が3.5メートル、女性が12メートル」とのことだ。また1回の標準使用量は80センチだと言うのだが、本当だろうか。 青森県の某公立中学校の校則には、「十分間の休憩時間中、トイレは七分間で済ませ、残り三分間を次の授業の準備に当てること」とあるそうだ。また、奈良県の某公立中学校の校則には、「トイレットペーパーの使用量は1回につき30センチ以内」とあるという。一体何を考えているのか。こんな校則を作った奴の顔が…いや、尻が見てみたい。よほどケツの穴が小さいのではあるまいか。
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