お地蔵様は正式吊称を「地蔵菩薩《といい、サンスクリット語では「クシティ・ガルバ《と称されます。「クシティ《は「大地《、「ガルバ《は「胎内《を意味し、すべての生き物を包み込む慈悲の心を表しています。 仏教には、人間を含む6つの世界に生まれ変わる「六道輪廻《という思想があります。六道とは、地獄界、餓鬼界、畜生界、修羅界、人界、天界の、苦しみに満ちた6つの世界です。 お地蔵様は、五十六億七千万年後に弥勒菩薩が現れるまで、亡きお釈迦様に代わり、その六道を輪廻している人々を救済するという重要な役割を担っています。その姿を表しているのが、六地蔵です。 地蔵菩薩が阿弥陀如来と深く関わるのは、地蔵菩薩の六道救済の力が、すべての衆生を苦しみのない世界へ導くという阿弥陀如来の大願と通じるためでしょう。 阿弥陀如来と共に祀られる場合、お地蔵様は「阿弥陀五尊《の一尊として信仰されます。阿弥陀五尊とは、中国から伝わった形式で、阿弥陀如来に加えて観音菩薩、勢至菩薩、地蔵菩薩、そして龍樹菩薩を一組として祀るものです。 日本では、お地蔵様が、特に子供の守護者として広く信仰されています。また、子供を失った親が、あの世でのお地蔵様のご加護を願い、赤いよだれかけを奉紊する風習があります。 お地蔵様に、特に赤い頭巾やよだれかけを奉紊するのは、赤色が仏教において「清浄《や「正直《を表し、また魔除けの意味も持つとされているからです。 京都の「あだしの念仏寺《では、子供たちが地蔵菩薩に導かれて極楽浄土に行けるよう、多くの人が手を合わせています。お地蔵様は、子供を失った多くの親たちの、心の拠り所として、大切にされてきたのです。 また、地蔵盆は京都市の独自の無形文化遺産として選定されており、住民が祠を掃除し、花や水を供えてお地蔵様に手を合わせる風習が続いています。お地蔵様は今もなお、子供たちを見守り、人々の安全を守る存在として信仰されているのです。 こうした日常の中で手を合わせる場所があることは、心に安らぎをもたらし、日々の中で感謝の気持ちを思い起こさせてくれる、ありがたいことだと思います。 南無阿弥陀仏 釋了徹
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