春夏秋冬・9

瞑想と酒とタバコ

 私も「多少」嗜みますので余り無理なことを申し上げるつもりはありません。ただ、酒やタバコは瞑想にマイナスの影響を及ぼしますので、健康に良いか悪いかは一先ずおくとしても、本格的に「瞑想」を実践しようという人は、これらの嗜好品を摂取する場合に多少の心がけが必要です。瞑想は実践したいが酒もタバコもやめられそうにないという人はどうぞ参考になさってください。

 まずは酒です。アルコールは脳の不快中枢の働きを抑制する薬物です。体内に入ったアルコールは、大半が肝臓でアセトアルデヒドに分解されます。このアセトアルデヒドはさらに酢酸に分解され、最終的には無害な水と二酸化炭素にまで分解されます。肝臓のアルコール分解能力は1時間に約7〜10グラム、日本酒になおすと約0.3合程度です。つまり晩酌に3合も飲めば、その影響は翌朝まで続くというわけです。ですから、おおよその目安として、日本酒を1合(ビールなら大ビン1本、ウイスキーならダブル1杯)飲めば3時間、2合飲めば6時間以上経ってからでないと、瞑想をしてもまともな効果が期待できないということになります。

 ちなみに、毎日少量飲酒する人は大酒を飲む人や全然飲まない人よりも長生きするという研究結果がでていますから、必ずしも禁酒する必要はないのでしょう。ただし、この「少量」というのは1日のアルコール量9グラム(日本酒0.3合程度)以下を言います。これは下戸にとっても上戸にとっても難しい量だとは思いますが…。

 つぎはタバコです。ニコチンは脳の快中枢を刺激する薬物です。普通、紙巻タバコ1本には10ミリグラムほどのニコチンが含まれていますが、肺で吸収されるのは1〜2ミリグラムほどです。タバコ1本に限って言えば、体内でニコチンが半減する時間は30分〜60分です。ですが通常は次々にタバコを吸ってニコチンを追い足していきますから、一日の途中で喫煙を停止した場合、ニコチンの血中濃度がゼロに近づくまでに少なくとも2時間程度は必要になります。(東京医科歯科大学の角田博士の研究によると、タバコを吸うと右脳で処理されていた音に対する反応が左脳に移行し、それが回復するまでに60分から90分を要するということです。タバコは左脳を過剰に刺激するのです。)つまり、瞑想を始める2時間前には喫煙を中断しておく必要があるということになります。

 ちなみに、結核予防会の喫煙の害に関する研究によると、紙巻タバコを吸う人はタバコを吸わない人の20倍も肺癌にかかりやすいのに、パイプタバコや葉巻を吸う人にはタバコを吸わない人より肺癌の発生率が低いのだそうです。何か変ですが…。

 愛煙家・愛酒家のビジネスマン諸氏にとっては朝が比較的瞑想に向いているかと思います。つまり、朝起きると洗面・手洗を済ませ、直ちに瞑想をするというわけです。また、もしも好運にも7時頃に自宅で夕食がとれるような日があれば、腹八分にして晩酌も1合程度におさえ、食後の一服の後は禁煙して、就寝前に2回目の瞑想をするという手もあります。なかなか難しいかもしれませんが、一度お試しください。