本日のNEWS 1998.12.11
真面目なNEWSからそうでないニュースまで。
出来る限り日替わりで提供します。
COP3一周年全国NGO活動交流会・分科会に参加して(2)
非常に長文になってしまいましたので、何回かにわけて掲載します。
ご容赦ください。
ISO14001の限界と可能性
まず、ISO14001についてご説明したい。
ISOとは、国際標準化機構という民間組織が作成した環境に関する唯一の
国際規格である。
本規格は地球環境の改善につながる省電力、紙資源の削減や廃棄物の削
減などの年度目標を含めた環境マネジメントシステムを構築して見直してい
くことを要求しており、その環境マネジメントシステムの内容は審査登録機関
により審査され、この審査で合格すれば審査登録書が発行される。
早く言えば環境マネジメントシステムに関する試験を受けて、一定の得点をあ
げれば合格という手順であり、現在、審査登録済みの組織は1000件を超え
て更に増え続けている。
なお、ISO14001では審査登録機関以外からの審査を受けるなどの客観的
な証拠を示す必要があるものの、
「我社はISO14001に基づいた環境マネジメントシステムを構築しています!」
と自己宣言することも認められている。
日本においては電力会社などがこの自己宣言によって環境に配慮しているこ
とをPRしている。
企業がISO14001に取り組む動機としては、純粋に環境に配慮した企業活動
を行いたいという理由や、取引上で優位に立ちたいという営業戦略的なもの、そ
して親会社の要請で仕方なくといったものまで様々なものが考えられるが、ISO
14001に取り組む企業が急激に増えたからと言って、それが地球環境の維持
や改善に直結しているかというとそうでもない。
何故ならばISO14001は法規性の遵守を要求しているものの、法規性以上に
守らねばならない数値基準を示すこともなく、どちらかといえば現状の地球環境
を維持するために企業が行うべき手法について、「企業に任せ、考えてもらう」と
いう部分がかなりあるためで、ISO14001について
「やらないよりも、やった方がまし。」という意見が出るのもそのためである。
しかし、これは大きな誤解である。
実際のところ、ISO14001は環境に対する万能薬ではない。
あくまでも経営手法の一つであって、環境マネジメントシステムの構築は環境負荷
の低減につながるものの、それは目的の一つに過ぎない。
また、ISO14001の審査登録にあたって考慮しなければならないのは利害関係
者に対する配慮であって、それは人類に向けての配慮ではない。
例えば、企業の消費電力の低減目標が地球温暖化防止(CO2の削減)と関連す
る部分があったとしても、それは取り組みのほんの一部に過ぎない。
環境方針に継続的な改善をうたったとしても、それは自社の目的と目標をスパイラ
ルアップすることであって、地球環境の維持改善については「結果的につながる」と
いうことでしかない。
特に中小企業においては著しい環境側面(環境に影響を与える原因)や環境影響
(環境に現われた結果)が見当たらないため、環境プログラム(いかに環境影響を
低減していくかを定めたもの)の作成にあたって「ゴミの削減」、「省エネ」及び「紙
資源の削減」という目標くらいしか思いつかないのが現状。
従って、いくら「環境を地球規模で考えて、出来るところから行動しよう。」と提唱して
も、ISO14001の審査登録に向けた活動の中では、地球レベルでの環境問題まで
意識がつながりにくい。
しかし、1992年にブラジルのリオデジャネイロで「開催された環境と開発に関する
国連会議(通称、地球サミット)」でリオ宣言(環境と開発について、人と国家の基本
原則を定めたもの)やアジェンダ21(21世紀に向けて人類が取るべき行動の計画
を定めたもの)が生まれ、それが全世界に向けて発信さられたことを忘れてはならな
い。
私は、ISO14000シリーズ規格のみに携わる者であり、地球規模の環境問題など
関係が無いと思っていたのだが、環境マネジメントシステムを考えれば考えるほど、
何気なく自宅の蛍光灯を消すことも地球規模のことをしている実感が湧くようになっ
てきた。
考えれば、京都においてローカル・アジェンダとして「京のアジェンダ21」が組織され、
温室効果ガスの削減について1997年にCOP3が行われている。
ISO14000シリーズ規格についてもリオデジャネイロが発生源とすれば、企業、行政
(自治体)、市民団体及び学校も含めて地球の裏側からグローバルな問題が個人に
突きつけられたのではないだろうか。
「環境を地球規模で考えて、出来るところから行動しよう。」と。今までそれぞれの組織
は思い思いにそれぞれの立場で環境に関わる活動を行って来た。
時にはまったく他を認めないという場面もあったに違いない。
しかし、それぞれの組織がお互いの立場を理解しつつ認め合い、環境のための共生
を図るという意味でネットワークを構築する時代がすぐそこまで来ていると思われる。
従って、企業がISO14001のみに取り組み、環境マネジメントシステムを構築するこ
とは決して無駄ではないのだ。
また、ISO14001の認証取得はISO14000シリーズ規格のごく一部であって、今後、
規格化される環境ラベルやLCAなども含めて取り組みを開始するとなれば、状況が変
わって来るのは間違い無い。
注:環境ラベルについては、環境に優しい製品ですというイメージ的な表現が許されず、
製品のどの部分がどれくらい環境に配慮されているかを示さねばならない。また、LCA
(ライフ・サイクル・アセスメント)は製品に使用する材料から、製品が廃棄されるまでの
すべての過程において配慮する必要がある。
以上
※次回に続く
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