98.02.26「伝言板」

PART1

「非常に悪いですな。」、「そうですね。」という合い言葉にも似た挨拶を繰り返し
て、もう何年経つのだろうか。

確かに下請企業は度重なるコストダウンに体力を奪われている。真面目に仕事をこなし
ていても、倒産する企業がある。

しかし、私は多くの下請企業は「そんなに悪くない。」という印象を持つ。

いや、下請企業というよりも街工場と言い換えた方が良いかもしれない。

決して技術力は低下していないし、空洞化もしていない。

熟練工に続く若手が育っていないと言われるが、モノづくりに惹かれて技術を磨く若者
も少なからず存在する。

そして何より自社なりのポリシーを持って前向きに事業に取組んでいる。

先だって、京都の若手2代め経営者からなる京都機械金属中小企業青年連絡会(キセイ
レン)において会員企業の工場見学会が行われた。

本会に所属する先進企業を、若手会員と学生総勢16名が見学するというもの。

見学会では、学生達が感激したのはもちろんのこと、若手会員にとっても良い学習の場
となったらしい。

そして、自分達や学生達が「何に心を動かされる」のかが理解できた。

それは、大人の自信ある「夢とビジョンある姿」をいきいきと表現すること。

たくましく元気な街工場達はしょぼくれていない。

PART2

実装基板やプレス部品等の洗浄機を自社開発したH社。開発のきっかけは環境に優しい
洗浄用中間混合溶剤の特許を持つ業者との出会いであった。この溶剤との組み合せによ
って、従来の洗浄機より早く、安価で確実な洗浄効果を得ることに成功した。しかも省
スペース。社長と開発担当者は、「これからが大変。いかに売り出すか思案中」とおっ
しゃったが、始終ニコニコと話されていたのが印象的。そして、その笑顔の裏に街工場
の技術者の挑戦意欲が感じられた。

石川県に液晶の製造工場を立ち上げたT社。親会社の支援もあって、当面の受注量の心
配はないが、歩留まりが低くて困っている。「少々、気泡やゴミが入っていても液晶画
面としては使えるのに、もったいなくはないですか」と問うと、「これで満足しないの
が日本の製造業の良いところ。だから技術立国と呼ばれる。いくら海外の工場の生産能
力が向上したとしても、技術力だけは負けるわけにはいかない。」と返された。相手は
37歳。技術の空洞化はしっかりとくい止められている。

他社の嫌がる仕事を取り、品質精度はピカイチ、納期も厳守、そして値段は他より安く
するというのがポリシーのN社。前と同じ値段で見積りを出すと、必ずそれより安い見
積りを出す業者が現れる業界で、生き残るために選んだ道がこれ。非常に厳しいが、指
をくわえて仕事を持っていかれるよりはまし。がっちり閉ざした二枚貝の口をこじ開け
るようにしなければ仕事が取れない状況ならば、鬼にもなるとは社長の弁。

小額でもよいから、継続して仕事をもらえる先としか取り引きしないというN社。品質
精度と納期厳守、それらを裏付ける社内品質保証体制が売り。そして、無茶苦茶な値段
では仕事を受けない。「既存の取引先や関西圏の取引先だけを相手にしていては、この
ようなことは言ってられないが、我が社は全国を相手に仕事をしている。未開拓のユー
ザーも無数にある。だから適正な価格で取り引きができる。」とは担当者の弁。



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