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   廃虚の街

 

今年はよく降るな・・・

人々は前かがみにたおれ

たおれながら歩く

一本の杖が欲しそうだが

だれも持っていない

 

ノラが鼻だけを

街路に突っ込んで逃げ回る

人々は余りはじめた手を

ポキポキ折って

開きすぎる足をたたんで

歩く

 

雪が消して行く

君たちのいろんな事

見たくないすべて

 

それでもぼくは街を歩いて

単純で明快な原色を

通り過ぎる

ポケットから出した手に

シュワッと雪粒をうける

街に同化した心は箱になる

出口も入口もない

マジックBOXだから

何も感じなくていい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立ち止まる・・ぼく

 

広い街路の突き当りに

雲間をつらぬいた

煙突の上

奴は白い銀色の

うろこを剥いでムクムクと

勇ましく

まばゆく

街に失われた

やさしい曲面の立体を持ち

気づくと

冬枯れのポプラに凭れ

街のあちこちの影から

矩形の顔をした人々が

じっと じっと

見上げていた

煙の曲芸

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