カサブランカに

よせて

 

 

カサブランカに出会ったあの夏の日、私は砂漠の女イザベル・エベラールに燃えていた。それは幻のイスラム紀行・そして放浪。19世紀末ロシア貴族の私生児として生を受けた女精。ジュネーブで過ごす娘時代に突如めざめた激しい孤。20歳の夏、放浪という自己解放への旅立ち。灼熱の地に縦横無尽に生きぬいたイザベル。その地、カサブランカに咲きほこる白きユリこそ、雪の国から生まれでた妖精イザベルの化身だった。 わが心のイスラム紀行詩とする。 稿‘01.9.18  しげよし

参考図書:「砂漠の女」イザベル・エベラール 中島ひかる訳 晶文社 発行 ‘90.11 1897年20 才 イザベル・エベラール

 

イザベルの花

カサブランカ

おまえは遠い地平を眺望する

気高きユリ

 

ロシア貴族の末裔 

イザベル・エベラールは

若き命を

チュニジアの地からモロッコへ

 

凍りつく白い肌に

秘められた愛を閉じて

旅を終えた

その地

幻の都 カサブランカ

 

 

 

 

 

砂のかなたに 蒼く拡がる水と

真っ直ぐな光線をあびて 凛と立つ

白蝋の花弁

孤をつらぬき 

天に向かって 生を歌う雌しべ

イザベル

そのあやしく濡れた ふくらみ

 

カサブランカ 白い尊厳

カサブランカ 謎の大地

カサブランカ 蜜の香り

 

 

 

 

 

おまえを支える大地こそ 

愛を幹につたえ

豊曉の花びらを育んだ

その名は花神 カサブランカ

 

この日も

イザベルの夢を 宿して

おまえは

熱砂の大地に白く白く

燃える

燃える

カサブランカ

          2001.9.18 稿

 

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