君は九月のバス停を知っているか

 

明るい陽の散らばる歩道と

寂しいベンチ

そこに白い髭の老人がいて

背伸びをする女

小手をかざし彼方を見詰める男

時刻表をコツコツと打つ指があって

時おり

風がプラタナスを撫ぜていく

 

 

 

 

 

 

 

 

九月のバス停は棒になって立っていた

人々の眼だけが

時の彼方に焼き付いている

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は秘かに

人々の背後を通り抜けた

 

その時

老人が・・僕を見詰めていた

そのまなざしが

いつまでも

いつまでたっても

瞳の奥からはなれない

 

不思議な炎の揺らめきはづっと

づっと

燃えつづけた

 

あれからも

街は

九月のバス停を捨てる事は無い

 

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