==みやこわすれ==

 

この哀歓をもったひびき・・、頼朝亡き後倒幕を掲げた後鳥羽・土御門・順徳の3上皇が起こした「承久の乱」は、北条政子を中心とした幕府軍の結束の勝利に終わった。佐渡に流された順徳院が島で目にとめた清楚で小さな花のむれ、しばし都への望郷の思いさえ忘れてしまう美しさだった。 

時と世は移り人々は今、慌しく無常な生活の日々寄り添い咲き集う、可憐な花たちの姿に気づく・・その前に佇む時、遠く遥かな時空を越えてメルヘンの声さえ聴える・・。

 

「ペローのむかしばなし」から

今野一雄訳 白水社

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  「みやこわすれ」

 

まっすぐに立った夕暮れ

ムラサキということばしか持たないぼくが

きみの前にすわる

透き通る潔癖が

悲しみを越えた時

きみは花になった

みやこわすれ

 

決して手折ろうという誘惑さえ起こらない

か細いきみに

野獣たちを立ち止まらせる気高さ

それは・・願い

人の遠い思い出の中に囲われた

気品と気高さの母の姿が

欲しいと思った事は無かったか

きみ・・

きみの前で研ぎすまされた

ムラサキのノスタルジアを

ひとつ・ひとつ数えてみよう

                  

 

 

 

 

風が深い緑の葉を踏んで

降りてくる

昔ばなしの名人

ペローの声が聞こえる

暖まる空気

テレやの”きみ”の茎に

みなぎる清楚な緊張

思わず、ぼくは花ビラを

てのひらで包む

 

 

ゆめ・そら・水・・・・

あおーい山・雲・・・・・

鳥・一つ・二つ・三つ・・

にんげん・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

人間・・・人間の世界が

ぼくを呼ぶ

急げ!急げ!

ぼくの生活が背中めがけて

落ちてくる

ああ!

さようなら

愛するVioletの姫

いくよ・・・

 

 

よろけたぼくの視界は

薄汚れた灰色に滲んでいく

 

 

わすれないよ・・君のこと