肺炎球菌ワクチンの話

 肺炎は日本人の死亡原因の第四位を占めるたいへん恐ろしい病気です。図に見られるように65才以上になると肺炎によるお年寄りの死亡率は急激に増えています。

 特に心臓や呼吸器に慢性疾患のある方、腎不全、肝硬変、糖尿病、臓器移植を受けた人、多発性骨髄腫、後天性免疫不全症のある方などでは、肺炎などの感染症にかかりやすく、病状も重くなる傾向があるのです。


 70歳以上の肺炎の起炎菌は肺炎球菌が一番多いのですが、近年抗生物質の効かない肺炎球菌(耐性菌)が増えています。肺炎球菌ワクチンは、そのような耐性肺炎球菌の感染をも予防するワクチンです。

 肺炎球菌には多くの種類の型があるのでその全てに有効というわけではありませんが、肺炎球菌ワクチン接種により、肺炎球菌によるすべての肺炎の7〜8割ぐらいを予防することが出来ます。

 一度接種すると接種ひと月後から効果は約5年間続きます。しかし5年経過後に再接種すると時に、強い副反応(主として注射部位の発赤、腫脹、疼痛など)が起こることがあるのですが、65歳以上になり、かつ前回の接種から5年以上経過した場合は副反応による危険よりも肺炎予防効果を重視し、2度目の再接種も行っています。

 初回接種の際の安全性はインフルエンザ予防接種と同等と考えられています。

 世界保健機関(WHO)は高齢者の肺炎球菌ワクチンの接種を推奨しています。米国ではすでに65歳以上の半数以上の人が接種しています。

  しかし、日本ではワクチン接種に健康保険がきかないこともあって普及していません。当院では、自費(約8,000円)で接種して居ります。

2012年9月から京都市では身体障害者手帳(心臓、腎臓、呼吸器、膀胱又は直腸、小腸、肝臓の機能障害、免疫機能障害による)をお持ちの75歳以上の方に、成人用肺炎球菌ワクチン接種の一部公費負担を実施しています。

一部公費負担対象者は4,000円で摂取をうけることが出来ます。 さらに、市・府民税非課税者は2,000円となります。また、生活保護受給者、中国残留邦人等支援給付受給者は無料となります。詳しくは、京都市保健福祉局 感染症予防担当 (TEL:075-222-4421)までお尋ね下さい。


 通常のインフルエンザや数年内に大流行が予想される新型インフルエンザにより亡くなられる方の約半数(65歳以上に多い)は肺炎球菌による肺炎によるものであり、この予防にも効果が期待出来ます。つまり新型インフルエンザ用のワクチンが開発される前であっても、新型インフルエンザによって引き起こされる肺炎の予防に役立つのです。