金属学習1
「理論編(金属と周期表)」

クリック→「金属チェッカーによる金属探し」

 

1.概要
  周期表を見ると,わずか90種類の元素によって世界が成り立っていることがわかります。そのうちのほとんどが金属元素と呼ばれるもので、金属光沢などの特徴的な性質によって非金属元素と容易に区別できます。金属元素は単体または合金として,延性・展性を生かしたさまざまな加工品,金属光沢を生かした鏡,導電性を生かした電線などの極めて重要で多彩な用途があります。

  自然界の金属元素は、一部を除いて非金属元素などとのさまざまな化合物として存在し,そのことが自然の多様性につながりました。身近に金属を利用したものがたくさんありますが,これは人類の英知によって得られたものです。そして,これらの金属は物質の究極である元素または合金なのです。それゆえ,金属学習は物質の原点と多様性,人類の科学技術を学ぶものだといえます。

  金属学習は,小中学校で長らく位置づけられてきませんでした。しかし,金属という言葉は登場します。そのため,身近な金属を調べても商品知識を学ぶだけになり易いのです。商品は雑多で多様で,知れば知るほど混乱していきます。金属元素を意識してこそ,身近なものを科学的に物質を見る事につながります。そんな中,ようやく指導要領に金属学習が取り上げられ,状況は変ってきました。

  「金属→元素→原子・分子」という学びは,年齢や発達段階に関係なく理解できる科学の基本原理です。たくさんのことを学んだ末に,原子・分子に行き着くというものではありません。科学は,基本原理を知って,そのことを手がかりにして考えを深めていくものです。


※これは,金属学習をテーマにして実施した2004年度の2つの講座で配布したレポートを元に,加筆訂正したものです。また,これらのレポートの原点は,明治図書出版『楽しい理科授業』1993年10月号に執筆した「金属のすごさを体験させる”すぐれもの”はこれだ」です。


「鏡は,金属を代表的する特徴である金属光沢を活かしたものです。」
※古墳から多くの青銅鏡が出土しますが,貴重な金属の最高の用途といえます!
青銅鏡1
図1  青銅鏡
青銅鏡2
図2  青銅鏡の裏面
2.金属学習と周期表
  周期表では「金属元素」と「非金属元素」に色分けられていますが,まず金属元素ありきで,それ以外を非金属元素としています。金属元素は金属光沢などの特徴的な性質があり,他の物質と容易に区別できるからです。なお,ステンレススチールや青銅や真鍮などの合金も金属の性質を持つため,たんに「金属」というと合金も含めての呼称となっています。

  元素の学習は,周期表があって初めて意味をもちます。一般の周期表はアルファベット記号が並んでいるだけで馴染みにくいのですが,例のような実物写真を掲載した周期表を手に入れると,途端にわかりやすくなります。

  金属光沢によって,金属元素と非金属元素が一目瞭然で,実物を用意しなくてもよいのです(実物が不要ということではない)。そして,元素のほとんどが金属であり,数少ない非金属元素は気体が多いこと,両者の境目には両方の性質をもった興味深い元素が見つかります。また,「金属結合」は金属元素同士の結合であり,「イオン結合」は金属と非金属元素の結合,「共有結合」は非金属元素同士の結合です。

  このように,周期表は,金属と非金属の分類に始まり,元素のさまざまな関係を考え,物質世界の基礎的な理解につながる重要な窓口となります。

周期表
TIME LIFE BOOKS LIFE SCIENCE LIBRARY 「A PERIODIC TABLE OF THE ELEMENTS」
図3  実物表示の周期表の例(「仮説社」で購入できます)


部分1
図4  実物表示周期表の部分1
部分2
図5  実物表示周期表の部分2

身近な実物の写真を貼り付けた(和製)周期表がPDFファイルでダウンロードできます。
私の意図しているものとは違いますが,こういったものも役立ちます。


※周期表に関するメモ
  一般に認知されている110種類の元素(1H〜110Ds)のうち,自然界には90種類(1H〜92Uまで90種類/43Tcと,61Pmを除く)が存在するだけというシンプルさに驚かされます。そのうち,金属元素は3/4を占め,残りが非金属元素です。また,地殻中の元素の存在度を質量百分率で表したものでみると非金属元素が3/4を占めます。つまり,種類は少ないが量に勝る非金属元素が多くの種類の金属元素と化合し,多彩な物質世界を形成しているといえます。こういった金属元素と非金属元素の関係が,周期表に,きれいに整理されて並んでいます。

非金属元素  (計74.46%) 金属元素  (計24.71%)
    1位  酸素      46.60%
    2位  ケイ素    27.72%
    10位  水素     0.140%
    3位  アルミニウム    8.13%
    4位  鉄          5.00%
    5位  カルシウム    3.63%
    6位  ナトリウム    2.83%
    7位  カリウム      2.59%
    8位  マグネシウム    2.09%
    9位  チタン      0.440%
※「改定4版 化学便覧 基礎編T(丸善)」による地殻中の元素存在度(μgg-1)を質量百分率に換算した(クラーク数の表記と同じ)。上のように,10位までで約99%となる。

3.金属学習
  金属学習の実習は,「金属元素」を意識した金属探しと性質調べになります。まず,身の回りの金属光沢物質を手がかりに金属を探し(光り物探し),探した金属を「金属チェッカー」の通電性で確認します。金属光沢によって金属であることを予想することに意義があります。やみくもに金属チェッカーを押し当てて金属を探すのではありません。金属かどうかわからない時は,表面を削ったり磨いたりして,金属光沢を確認します。

  家の中では,包丁や金属食器やアルミホイル,水道の蛇口や硬貨など,金属光沢によってすぐに見つかります。これらの金属製品は,近代科学技術の産物です。単体で自然に産出する金属はごく少量であり,ほとんどは化合物(酸化物)として存在するからです。そのため,金属としての利用には高度な還元工程(製錬)が欠かせないのです。そして,還元は,元素物質に近づくことをも意味しているのです。

  中学校では教科書に周期表の掲載がなく,元素としての理解は難しくなります。元素を意識しない指導例として「金属には,ステンレスや青銅や真鍮などがある。」は,まだいいとして,「非金属には,大気やヒトやお菓子などがある。」となると,およそ科学的な学習ではなくなります。また,「鉄は金属であるが,鉄錆は非金属である。」などとすると,鉄錆びの成分の鉄分はどっちなんだろう?‥などと悩んでしまいます。こうなると,なぜ,金属と非金属に区別するのか理由がわからなくなります。
(学習指導要領の「金属と非金属との違いにも触れること。」という内容は,元素を学ぶという位置づけと周期表なしでは混乱するだけです。)

※自然に存在する単体の金属
・金と白金族元素:酸化しにくく,もともと単体で存在します。
・銀,銅,ビスマス,テルル,アンチモン,鉄なども少量が単体で産出されます。これは,地中で何らかの還元作用を受けたものと思われます。

4.金属と自由電子
  金属光沢と通電性が関連付けられる理由は「自由電子」にあります。自由電子が光を弾き返すことが金属光沢の理由であり,また,自由電子が一定向きに流れるのが電流です。つまり,自由電子が電気(電子)そのものなので金属線は電線となります。現在,電流は+極から−極へ流れるという誤った約束になっていますが,それ故に金属学習と電気教材が関連付けられていないとしたら残念なことです。「金属→自由電子→電流」という粒子で電流を考えられれば,中学校の定着不振トップと言われる電流教材に明るい展望が開けます。「延性」や「展性」などの強固で柔軟な金属の特徴も金属結合にありますが,その役割を担っているのが,やはり金属特有の自由電子の存在にあります。

  このように,金属の特徴が自由電子に関係していると知った瞬間,金属のおもしろさと重要さが理解できます。ただ,残念ながら自由電子は直接観察できませんので,観察や実験事実を自由電子と結び付けて頭の中で考えることになります。このことが,金属学習を先送りして曖昧な存在にしてきたのかもしれませんが,どこまでいっても人類の見つけた知恵として理解するのが自由電子なのです。

5.発展
  金属と自由電子の関係を認識すると,ケイ素が金属光沢をしているにもかかわらず石のように割れたり,石墨が電気を流したり,水溶液が電気を流すことなどが,新たな興味深い課題となります。つまり,金属と自由電子の関係を認識してこそ,金属と非金属の中間物質(半導体)であるケイ素や炭素,およびイオンのおもしろさと不思議さを認識することができます。また,周期表での位置や用途を調べると,更に興味が増すことでしょう。

半導体
図6  代表的な半導体の例
左「ケイ素」:銀白色の金属光沢,右「石墨」:光沢のある黒色

6.備考
・「金属学習」をテーマにした講座を実施するにあたって,ネットで関連事項を調べました。しかし,私の前のページが一番にヒットするという状況です。かなり調べても,体系的にまとめられたページには行き着きませんでした。そこで,結局は,私の思い込みといってよい偏った内容でのまとめとなりました。不十分極まりないと思いますが,参考にしたものがないということは,他にない役立つ部分もあるかと思います。今後は,ご意見をいただき,徐々に改善していきたいと思います。

・日本語で書かれた実物表示の周期表(ポスターサイズ)を探しましたが見つかりません(日本の理科教育界の不思議なところです。)。恐らく,唯一だと思われるのは英語版の直輸入品で,取り扱っている仮説社には頭が下がります。理科の資料集などには掲載されていますから,日本語でポスターサイズも作れるはずです。どこかの教材会社が名乗りを上げてくれることを期待しています!