使いやすいハンダごて

 

1.はじめに

  (1)ハンダ付けと金属

  金属は加熱すると融解し,冷える固まります。これは,とても興味深い現象であるとともに,身近な工業製品の基礎的な加工技術でもあります。身近で見られる金属の融解は,ハンダ付けが代表でした。私は,幼少時より,父のハンダ付け作業を見て育ちました。ハンダの融けるようすもおもしろいのですが,融けた時の銀白色の美しさは見飽きませんでした。

  また,ハンダがどんな成分を含む合金なのか,なぜ合金の融点が下がるのかなど疑問が広がります。教師になってからは,ハンダの成分であるスズ資源に興味があり,閉鎖された明延鉱山の神子畑精錬所へ見学に行ったこともあります。最近では,環境対策として鉛フリーのハンダが広がりつつあります。ハンダ付けから考えることはたくさんあります。
  (2)ハンダ付け
各種のハンダごて
図1  各種のハンダごて
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  ハンダ付けは,電子工作に欠かせないものです。私は美しく盛り上がったハンダづけにこだわりがあり,その姿を求めて,ずいぶんと多くのハンダごてを購入しました。現在,手元にあるだけでも150〜20Wまで8本あります。温度制御型やコードレスのハンダごてもあります。
  ハンダごてオタクのようですが,用いる対象物の熱容量によってハンダごてのW数を変えるというのは最も理にかなった用い方なのです。また,これらのハンダごてに整流用ダイオード1個を直列接続してW数を半減させたり,自作パワーコントローラーでW数を連続可変したりしました。きれいなハンダづけには,こういった配慮が必要なのです。
  (3)ハンダ付けの現状   私にとっては日常的なハンダ付け作業ですが,普通は話題にもならないマイナーな道具のようです。最近では,電子工作が子どもの世界からだけでなく,理科の先生からも遠ざかりました。これも理科離れの顕著な例だと思います。ほんのわずかに残るスーパーマニアさんは職人気質で,温度制御型ハンダごてなど邪道扱いです。そこで,この世界に入りやすいように,また,学校での教材製作に役立つように,お勧めできるハンダごてを紹介します。

2.「大電力」温度制御型ハンダごて

  ハンダづけをする時,ハンダが融けにくくて接続部に流れ込まなかったり,逆にハンダがまわりに流れ落ちてしまって接続部を包んでくれないことがあります。ハンダづけ作業の難しいところです。

  ハンダごての温度はハンダの融点より高くなっていますが,ハンダづけする時,対象物の熱容量によって先端部の温度が少し低下します。冷たいものに触れたのですから当然です。もちろん,ハンダごての熱容量にも関係しています。大きなハンダごては温度が下がりにくく,小さなハンダごては下がりやすいのです。

  この両者の条件によって,大きく温度低下してハンダが流れ込まなかったり,温度が高いままでハンダが流れ落ちてしまったりするのです。素早く作業が進まないと,対象物の表面が酸化してハンダをはじいて流れ込まなくなります。

  つまり,ハンダづけする対象物によってハンダごてのW数やこて先の大きさを選択することになります。これが,いくつもの種類のハンダごてを必要とする理由です。また,最適なハンダごてを使っていても,次第に過熱気味となり,電気を切って休ませることもあります。

  こういった苦労は,10年以上前から解消しているのです。温度センサー内蔵の大電力ハンダごてが市販されたからです。ところが,意外と知られておらず,使用されている方は少ないようです。私は,太洋電機産業株式会社(gootブランド)のPX−238を発売直後から愛用しています。半導体のような小物のハンダづけを始め,ミノムシクリップやバナナプラグなどの大物のハンダづけもストレスなくテキパキと作業できます。これは,100Wの大電力で素早く温度制御(380℃)するため,ハンダづけする相手の熱容量に影響されにくく,常に380℃をキープできることに秘密があります。こんな小さなボディに温度制御機構を内蔵させるとはすごいものです。値段も,そんなに高価とはいえませんので,ぜひご利用ください。

※この商品には,オプションのこて先もいくつかあって,用途によって交換できます。
※PX-238(380℃-100W),PX-242(420℃-100W),PX-336(標準で70W-ピストル型)の3本を購入しましたが,PX-238が最も使いやすく,愛用しています。
温度制御型ハンダごて 温度制御機構
図2  温度制御型ハンダごて
(左)PX-336,(右)PX-238
図3  持ち手に内蔵された温度制御機構

3.コードレスハンダごて

コードレスハンダごて
図4  コードレスハンダごての例
  ガスの炎で加熱する,電源コードを必要としないハンダごてが入手しやすくなりました。使用場所を選ばないというメリット以外に,コードがないのでとり回しが楽になります。また,火を消し忘れるという失敗をしても,ガスがなくなれば消火するというメリットもあります。

  私は,株式会社エンジニア(ENGINEERブランド)SKC−60を愛用していますが,ガスの量を可変して15〜60W相当のハンダごてとなります。温度制御機能はないのですが,作業内容に合わせた最適なW数を選べば能率的にハンダづけ作業が進みます。恐らく,ガス火の熱量が大きいことも関係しているのでしょう。

※付属の先端チップを交換すると最大450℃の熱風器として使え,熱収縮チューブ(ヒシチューブなど)の加熱などに便利です。その他にも,オプションのコテ先がいろいろあります。
※コードレスハンダごては,この1台しか持っていませんので,他社製品との比較はしていません。
※燃焼ガスの排気の臭いが気になります。換気をする必要があります。

4.備考

(1) ハンダづけ作業には「濡れぞうきん」などが必要です。作業中にハンダごての先端を拭いて表面の酸化鉛を除去するためです。これによって対象物への熱伝導がよくなり,手早く作業できるのです。市販品に,こて置き台を兼ねたスポンジ入れがあります(図2参照)。便利ですから,購入されるといいでしょう。水をたっぷりと含ませて用います。
  ハンダごてのこて先の金属表面が酸化するとはんだ付きが悪くなり,作業できなくなります。昔はやすりで削って用いましたが,今は表面処理(めっき)がされておりその必要はありません。というより,削ると使い物にならなくなります。

(2)goot「PX-242」は420℃に温度制御される製品です。説明書には「ターミナル・リレー用途」となっています。理科教材として一般的な,ミノムシクリップやパナナプラグとビニル電線のハンダ付けに向いているかなと思いましたが,少し熱すぎるようで,手早くしないとハンダが流れ落ちます。ハンダづけ作業に慣れた方が大量に素早く仕事をこなす場合に向いているのでしょう。PX-238と比べ40℃の差ですが,ずいぶんと使い勝手が違うものです。温度制御のできないハンダごての使い勝手がよくないはずです。

(3)商品は,モデルチェンジします。購入される場合,上記の商品が現行品かどうかご確認ください。

(4)かなり高価になりますが,制御温度を連続可変できる高級品もあります。
  →太洋電機産業株式会社(Tel. 03-3832-1774)

(5)最近のハンダごてのこて先は,昔と違って特別な加工がしてあるようです。やすりで磨いたりせず,丁寧に取り扱います。
いずれにしても、こて先は消耗品です。予め,交換部品を購入しておきましょう。

(6) どんなに優れたハンダごてでも,ハンダ付けする対象物が著しく酸化しているとハンダがのりません。その場合,歯ブラシや金属ブラシやナイロンタワシや紙やすりやスチールウールなど,身近なものを利用して磨く必要があります。これを避けるため,使わない部品は,チャック付きポリ袋などに入れ,外気に触れない環境で保管することをお勧めします。

(7)ハンダ付け作業中に,融けたハンダからガスが発生します。主にペースト成分だと思いますが,極微量の鉛も含まれているはずです。どの程度の問題があるのか知りませんが,用心に越したことはありません。私は,小さな電動ファンを回し,気体を吹き飛ばしながら作業をしています。