GCDF CCA スーパーバイザー養成講座 備忘録

CCA スーパーバイザー

●その1●
CCAスーパーバイザー養成・認定プログラム
キャリアカウンセラーの資格であるGCDFを取得して6年になりますが、どうにもカウンセリングスキルは一向に上達しません。自部署のメンバーにも3名GCDF取得者が出てきており、自分ももう少しレベルアップしなきゃなぁと思っていたところに、協会の方からお誘いをいただき、キャリアカウンセラー協会主催の「スーパーバイザー養成・認定プログラム」なるものに参加することにしました。既に3月22日からスタートしており、9月末までの20回、200時間のプログラムです。実はこれ、今回が初回の企画です。昨年の「ラーニングイノベーション論」といい、初物チャレンジは大好きです。

何とこれを受講するにも受講「試験」というものがありました。まったく自信がなかったのですが、何はともあれチャレンジと、平日の仕事後に協会本部まで赴きました。試験は30分間程のヘルピングと面接からなります。

この試験官がとっても豪華です。缶コーヒーの「BOSS」のコマーシャル並みの贅沢さです。

最初に面接をやりましたが、面接官はあの渡辺三枝子先生に協会の花田会長。そう、このコースは渡辺三枝子先生の思いがかなりギュとこもったコースのようです。今年も新卒採用選考がはじまっており、面接する立場は続いていますが、逆に面接をされるとなるとなかなか機会がありません。面接をされる人の立場を実地で思い出すよい機会でした。

そして、面接のあとはいよいよヘルピングです。クライアント役の方と30分のセッションをします。当たり前ですが関係構築だけで終わらず、クロージングまでを30分でやることになるのですが、25分過ぎにはもう終わらせてしまいました。まずい。また、内容もどうにも不出来で、表面をなめているだけのような気弱で無難志向のヘルピングに終始してしまいました。
このヘルピングはおそろしい環境で実施されます。クライアントと対面している横に、橋本先生と内田先生がお座りになり、ヘルピングを観察しているのです。そして、終了後にはいろいろと質問をいただき、ヘルピングを振り返ります。自分が何をしていたのか、それをどう認識しているのかを問われます。それにしても豪華な布陣です。橋本先生なんかビデオでしか見ていないGCDFの方だってたくさんいるのに……ですね。

こりゃやばいなと思いながらラーメンを食べて帰途につきましたが、ありがたいことに受講資格はいただいたので、なんとか受講にこぎつけたという次第です。

受講者は8名の少人数クラスです。せっかくなので最後までしっかりと学び、素敵なスーパーバイザーになりたいなぁと思います。復習の意味をこめて、時折ここでもリフレクションさせていただきます。

●その2●
セルフ・アウェアネス
キャリアカウンセラーの「CCAスーパーバイザー養成・認定プログラム」に先月から通っていますが、ここであらためて初心にかえって認識させられたのが「セルフ・アウェアネス」という言葉です。

GCDFのクラスの時から叩き込まれていることですが、セルフ・アウェアネスというのは、「自分が今、何をしようとしているのかを気づく(意識する)」ということです。カウンセラーとしてクライアントに接して何か言葉を発する時に「自分はこのクライアントに何をしたくて、この言葉をいおうとしているのか」ということを認識し、気づくことです。

自己に気づく力さえ持っていれば、カウンセラーは大きな間違いはしません。

たとえば「カウンセラーはクライアントに情報提供をしてもいいのでしょうか」という質問がカウンセラー見習いからあったとします。
もちろんこれに絶対的な解はありません。大切なのは「なぜ情報提供をしたいとカウンセラーとしての自分は思っているか」「なぜ情報提供をするのはよくないことだとカウンセラーとしての自分は思っているのか」。そんな自分に気づくことです。

これはカウンセリングの場面以外にも応用ができます。

たとえば、新入社員研修の講師。新入社員に対して新入社員研修の講師は大きな影響を与える存在です。したがって、その一言一言には大きな責任があります。長丁場の研修なので、講師側にもいろいろな思いも出できますし、疲れも出てきます。そんなときの発言について「今、自分はこの新入社員たちに何をしたいと思ってこういったことをいっているのか」に気づき、認識することは大切でしょう。

部下と接する際も同じです。

いずれも、自己に気づく力さえあれは、大きな間違いはしないわけです。自分が今、何をしようとしているのか。自分は今、何をしているのか。

意識したいですね。

●その3●
スーパーバイザー養成・認定プログラムの目標
キャリアカウンセラー協会主催の「スーパーバイザー養成・認定プログラム」に3月から通っていますが、今週末に第2回があるので、ここらで少し書いても差し支えのなさそうな範囲内で復習などをしたいと思います。

冒頭に渡辺三枝子先生から大変に熱いお話がありました。

このコースは、コース設立まで3年近くをかけています。最初の1年半ほどはコースの検討に費やし、その後に1年ほどトライアルを実施した末に初回を迎えたとのことで、携わった人たちの魂がとても感じられます。製本されたテキストはあえて作らず、まだまだ未完成のものでさらに進化をさせていく段階とのことです。企画自体はキャリアカウンセリング協会(CCA)と筑波大学のジョイントによるものですが、CCAは基本的にGCDF出身者に対して、筑波大学は数年後からになりそうですが、それ以外の有資格者に対して講座を持っていくという役割分担のようです。

GCDF出身者に限ることにはある意味があるようです。
スーパーバイザーというのはそれ単独で存在するものではなく、キャリアカウンセラーとしてどのような教育を受けてきたのかということがまずは重要になります。現在、日本国内にも多くのキャリアカウンセラーの認定資格があり、さまざまなレベル感のホルダーが存在しています。

アメリカではCDFは、きちんとしたカウンセラーの土台の上に存在しています。それに対して日本ではカウンセラーとしての土台がない人がGCDFのコースに参加することがほとんどです。別の言い方をすれば、関係構築もできない人がGCDFを受けにくるわけです。これはアメリカのCDFではありえないこと。GCDFが関係構築を重視しているとよくいわれますが、これは重視しているというよりも、関係構築もできない人が受けに来るのでここをまず徹底的にやらざるを得ないという日本の事情があるようです。

関係構築は何もキャリアカウンセラー固有のものではなく、コーチングをやるにしても、メンタリングをするにしても大切なものです。そもそもカウンセリングは「言葉」を手段とした援助関係であり、クライアントの側が責任を持つ援助関係です。こういった援助関係が成り立つためには、クライアントとカウンセラーの間で関係構築が成り立っていることが何よりも前提条件となります。

少なくともGCDFホルダーは、関係構築レベルはクリアされていなければなりません。また、GCDFのテキストに記述されているようなさまざまな理論は理解していなければなりません。これら共通の土台は既に理解・習得しているものとして、このコースを設計されています。そんな事情があるので、対象をGCDFホルダー、そして所定の実務経験を有する人に絞る意味はあるわけです。

さて、このプログラムの目標です。

『スーパーバイザーとしての実行力を習得すること』

「実行力」というのがポイントでしょうか。つまり、自らがスーパーバイザーになり、自分で実行できるようになることです。そのためにはまず自分の中に「スーパーバイザーとは何か」という概念をしっかりと作ることが必要です。

また、「研修生に期待されること」として5つ提示がありました。

@カウンセラーとしての実力の向上
A自己の向かい合う姿勢と自己に気づく力(selfawareness)の向上
B自己の成長およびキャリアカウンセラーという職業の発展を願う姿勢
Cスーパーバイザーとしての新たな能力を取得する真摯な態度
D宿題を忘れないこと

そうか宿題が出るのか…という点にまず目がいってしまいますよね…。@については本当にこれはなんとかしたいと思っているテーマです。Aについては昨日のブログで書いたとおりです。

Bあたりはとても好きな観点ですが、自己の成長ももちろんですが、キャリアカウンセラーというこの役割(職業にはまだなっていませんよね)が日本の中でさらに役立つものになり、前向きに認知されていくことに少しでも貢献できれば嬉しいです。そのためにも、C「スーパーバイザーとしての新たな能力を取得する真摯な態度」を持ち続けて、残りの19回のセッションには参加したいと思います。

新しいことを学ぶということは、必ず苦しいこともあり「新しいことを学ぶというのは自分との戦いである」とのお話もいただきました。自分の中で課題を作り、作ってはそれを解消していく。自分が持っている知識を改めて明らかにして、不足していると認識したものを新たに自分の中に入れていく、混乱がまだある部分については、それを1つひとつ整理して解消していく、そんな態度も大切だと感じました。

そして何よりも、正解というタイプの「あるべき姿」が存在する世界ではないので、自分としての「軸」をしっかりと持てるようになればいいなと思っています(これが難しい…)。

確かに、「軸」のない人のスーパービジョンなんて受けたくないですからね。

●その4●
キャリアカウンセラーのコンピテンシー
キャリアカウンセラー協会主催の「スーパーバイザー養成・認定プログラム」に3月から通っていますが、初回の講義の中で「キャリアカウンセラーのコンピテンシー(C2レベル)」というのを聴きました。C2レベルというのは、厚生労働省のいうところの熟練コンサルタントのレベルだということのようです。

《基盤としてのコンピテンシー》
  @セルフアウェアネス
  A分析的思考力
  Bケースマネジメント
  C専門性の向上

《カウンセリング面談におけるコンピテンシー》
  D関係構築
  Eプロセス構築
  Fクライアント評価
  G意思決定
  H介入行動

《特定場面におけるコンピテンシー》
  I臨床的判断と対応
  J組織心理・人的資源管理の観点からの判断と対応
  Kグループダイナミズムの応用

さて、こう書くとGCDFの12のコンピテンシーはどうなるんだという疑問がわいてきます。試験の前に皆さん、丸暗記しましたよね。すなわち、以下の12個なのですが、これは位置づけるとするとC1レベルということになるようです。それにしてもどうもこの12個は今一つ日本には馴染みにくいところがありますね。

  @キャリア・ディベロプメント理論・モデル
キャリアに関する各理論的アプローチを理解している。

  Aヘルピング
GCDF-Japanとしての基本的態度を有し、ヘルピングの5ステッププロセスと、スキルおよびその理論的背景を知っている。

  Bキャリア・アセスメント
クライアントにとっては適切なアセスメント、アセスメントトレーニングを理解、利用できる。フォーマルアセスメントは発行元ガイドラインに従い、実施利用する。

  C法律とGCDFとしての倫理
GCDF倫理規定を理解し、それに従うことができる。また、現行の労働関係法規を理解している。

  D特別なニーズを持つ人々との協働
さまざまなニーズをもつグループや集団の特別なニーズを理解し、サービスを提供する。

  E労働市場情報とその情報源(リソース)
労働市場や職業情報とその傾向を理解している。最新の情報源を活用する。

  Fテクノロジー
最新のテクノロジーであるコンピュータ(PC)やインターネットを活用する。

  Gエンプロイアビリティ・スキル
就職転職活動手法やクライアントが雇用されるための能力開発を援助する。

  Hクライアントおよび同僚のトレーニング
クライアントがキャリアゴールを達成するためのトレーニングプログラムを開発する。そのプログラムを活用して同僚のGCDFやクライアントのトレーニングを実施する。
 
  Iキャリア・ディベロプメント・プログラム
さまざまな組織・専門家と協力しながら、クライアントのキャリアディベロプメントを促進するプログラムを開発・運営することができる。

  Jプロモーションと広報活動
キャリアに関する研究会・事例研究会の計画、実践など、キャリアディベロプメントプログラムをマーケティング、促進する。

  Kコンサルテーションを受ける
定期的に専門家(カウンセラーなど)と相談する。

そして、スーパーバイザーに求められるコンピテンシーというのもあります。こちらは今のところ10個です。ただし、C2レベルのカウンセラーとしてのコンピテンシーも、すべて求められることになりますので、見かたによっては22個ですけど。。

《基盤としてのコンピテンシー》
  @スーパーバイザーとしてのセルフアウェアネス
  A職業的専門家育成
  Bスーパービジョンマネジメント
  ※カウンセラーのコンピテンシー(C2レベル)

《SVプロセスにおけるコンピテンシー》
  Cスーパーバイジーとの関係構築
  Dケースの概念化と評価
  Eスーパーバイジーの評価
  F知識活用
  G教育方法活用
  Hプログラム構築
  Iスーパーバイザーとしての介入

●その5●
自分が変化志向性を持つことだ
キャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座からです。

セルフアウェアネスに関する部分でのお話、なるほどと感じました。

「きついことをいわれてつらいのは、自分ができていると思うから。だからつらい」。

確かにそうです。半端に「自分ができている」と思ってしまうことにより、フィードバックを正面からしっかりと受け止めることができなくなります。

逆に自分がまだまだ成長段階だと、成長・発達できると思っていると、つらくない。できていると思うのに、できていないといわれるとつらい。まだ、足りない部分を教えてもらえる、まだ自分は変化できる、と思うことが、「きついことを受け止める」上でのポイントになる。つまり、自分が変化志向性を持つことだ。

難しいけど、そのとおりです。

●その6●
GCDF認定試験を合格した人にみられる共通の課題
キャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座に通っていますが、そこであらためて認識されるのは「GCDF認定試験を合格した人にみられる共通の課題」というお話です。

それは、GCDFの認定試験があくまでも関係構築重視となっているため、質問をしてはいけない、カウンセラーが自分の価値観を持ってはいけないと思いこんている人、そんな呪縛にとらわれている人が多いということです。

でも、当たり前のことですが、カウンセラーが自分の価値観、視点も持たないような人であっては、クライアントの役に立つのは難しいでしょう。クライアントの視点でみること、クライアントがどう感じているかを把握するのは何よりも大事ですが、関係構築以降の面接はそれだけでは進みません。

そもそも関係構築とは、最初の何分かで終わるというものではなく、関係構築のステップが終わったら次のステップに行くということ単純なプロセス論でもありません。関係構築がメインの時間帯であっても、順番に次のステップが入ってきますし、次のステップ以降にいっても関係構築は引き続き必要になります。関係構築が終わったから、アセスメントに行くということではありません。関係構築は大事ですが、もう一方ではクライアントがどんな思いでいるのか、どんな課題をもっているのかといった問題の把握、共有を、まさに関係構築をしながら進めていく必要があります。関係構築をやりつつ、一方では材料をつかみ、それによって問題を把握していく。自分の思いでいっているのか、言わされているか、カウンセラー向けに言っているのか、そのあたりをカウンセラー側が認識していかないと、面接は進みませんし、本当の援助にはなりません。「さあ、関係構築が終わりましたので、次は問題を話してください」というのではあまりに失礼な話ですね。

ということがわかっていても、なかなかこの呪縛からは抜け出すのは難しいです。認定試験の合格を最優先させるがために、合格に邪魔になるようなことはやってはいけない、やらない方が無難という刷り込みができてしまっているのでしょう。

繰り返しですが、キャリアカウンセラーが自分の考えを持ってはいけないとか、質問をしてはいけないということはまったくありません。はい、GCDF認定試験合格者に共通する課題のお話でした。

●その7●
カウンセリング6ステッププロセス
キャリアカウンセラー協会のスーパーバイザー養成講座に参加しており、全20回中3回のセッションが終了しました。今日はごく短時間ですが、復習がてらノートを見直していましたが、復習はやっぱりすぐにやらないとだめですねぇ。記憶が薄れています。

ところで、GCDFには「カウンセリングの5ステップ」といのがありますね。

@関係構築、Aアセスメント(査定・評価)、B目標設定、C介入、D終了・フォローアップ

となるのですが、12のコンピテンシー同様に何となくしっくりとこないという人も多いんじゃないでしょうか。
ちなみに、この5つのステップ、整理されて順序良く連続的に順番にくるというのではなく、関係構築が主体のステップが終わっても、最後まで関係構築は続くというように、すべてのステップが同時的に進行している中で、どのステップが中心となる段階なのか……、という程度の意味で「ステップ」という言葉が使われています。うーん、図示しないで言葉で説明するのではわかりにくいですね。

さて、ちょっと前に「GCDF認定試験を合格した人にみられる共通の課題(4月26日)」というのを書きましたが、GCDFの認定実技試験が関係構築を重視する姿勢を強めているために、質問をしてはいけない、カウンセラーが自分の価値観を持ってはいけないと思いこんている人、そんな呪縛にとらわれている人が多く、熟練キャリアコンサルタント資格を受験する場合などに、GCDFホルダーが回り道をする危険性があります。

そんな思いもあってか、協会として新たに「カウンセリング6ステッププロセス」というのを整理しています。

@関係構築、A問題の把握、B目標の明確化、C方策の検討、D意思決定の行動化、E終了

これはとてもすーっと入ってきます。わかりやすい分類ですね。

アセスメントが「問題の把握」に変わっています。関係構築のプロセスの中でも、いくつかの問いによって問題の把握のヒントを得ていきますね。あと、「目標設定」は概念が広いため、「目標の明確化」と「方策の検討」に分けられました。また、「介入」も「方策の検討」と「意思決定の行動化」に分けられています。

カウンセラーはクライアントに話してもらうことによって、クライアント自身が自分をどんな人だと思っているのかを知り、同時にカウンセラーである自分がクライアントをどんな人だとみているのかを知ります。ここではある意味、仮説的なものも入ってきます。そして、その知ったと思ったことが正しいかどうかをクライアントに確かめるという一連のサイクルを回し続けます。

このために必要なカウンセリングを進めるための基礎的な能力は3つあります。おなじみの3つですね。

@聴く力…クライアントについてGCDF自身がわかったことを伝えるために聴くこと
A話す力…クライアントが話したことをどのように理解したかを伝えること
B観る力…クライアントを観る力、GCDF自身を客観的に観る力、GCDFとクライアントの関係の変化を通じてカウンセリングそのものを観る力

初めてきいたときには、ちょつと禅問答みたいで何のことだかわかりませんでしたが、今はさすがに理解できます。

●その8●
事実と意見の区別〜スーパーバイザーの難しさ
キャリアカウンセラー協会のスーパーバイザー養成講座というのに通っています。スーパーバイザーとは要はクライアントに応対するカウンセラーのスーパーバイズをする役割です。

これって、普通の上司の役割にちょっと似ていて、例えば営業のマネージャーであれば、お客様に直接赴くのは基本的に部下である営業マンであり、上司は部下からの商談状況の報告を聴いて、実際に顧客がどういう状況であるのかを理解し、適切なアドバイスをする必要があります。また、それら一連のプロセスを経て、部下である営業マンが成長をして、よりしっかりと一本立ちできるように育てていくわけです。
この営業マネージャーという仕事は、超優秀な営業マンであれば誰でもできるというわけではありません。営業マンとはちょっと違う部分のコンピテンシーが要求されるからです。しかし、それなりには営業が理解できていなければなりませんし、自らも一定以上のレベルで営業活動ができるのが普通です。このあたりの関係もスーパーバイザーと、スーパーバイジーであるカウンセラーの関係に似ています。

こう考えてみると、日常業務の中でスーパーバイザーの鍛錬をする機会は多々あります。私の場合、一番感じるのは、メンバーが社員の面談をしてきた報告を受けた際の応対です。これはまさにスーパーバイジングそのものです。ただし、会社の指揮命令系統の中でのことなので、把握できた材料から手早く最終判断をしなければならないケースも多く、逆にそれが客観的なクライアントの把握を阻む可能性を高めているようにも感じます。

営業マネージャーが営業同行で商談に同席するケースがあるのに対して、キャリアカウンセラーのスーパーバイザーがクライアントとの面談に同席することは基本的にありません。ですから、スーパーバイザーはカウンセラーが作成する「ケース記録」をもとにスーパーバイジングすることになります。

この記録を作成する、記録を確認するという行為の中で一番難しいのが、事実(=言葉や行動など、観察可能なこと)と意見(見たて、評価など、記述者の価値観、判断が反映するもの)を明確に区別することです。「この花は赤い」は事実ですけれど、「この花は美しい」は意見です。ここをしっかりと見分けていかないと、スーパーバイザーも上司も思わぬ落とし穴にはまります。

これも部下からの報告全般と同じことがいえます。

●その9●
権力の関係
キャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座から。

ここでいうスーパーバイザーとは、キャリアカウンセラーをスーパーバイジーとして、スーパーバイズをする人(すみません、禅問答みたいな説明で)。日本ではまだまだ成熟していない分野ですが、キャリアカウンセラーの卵が数万人いる現状を考えると、クライアントを守るためにも必要な役割だと痛感します。一念発起して、この講座で半年間学ぶことにしたのですが、実業に役立つこと、はっとさせられることも大変に多いです。

ちょっと古い話になるのですが、先々週のセッションでは、スーパーバイザーとスーパーバイジー(カウンセラー)、カウンセラーとクライアント(相談者)の関係についての話がありました。よくGCDFでも二重関係がとりざたされますが、それですね。

基本的には、クライアントはカウンセラーに見捨てられたくないという本能が働きますから、両者の間ではその時点である種の権力構造がそこに生まれます。ですから、クライアントが発言した言葉が本当にクライアントが伝えたくて口にしたのか、意識的・無意識を問わず、カウンセラーのために口にしたのかはよく考えなければなりません。特に「何かをすれば何かをしてもらえる」というような搾取的関係にある場合はそうですね。よりよい仕事を紹介してもらえる可能性があるとか……。

これとまったく同じことが、スーパーバイザーとスーパーバイジー(カウンセラー)との間でも成り立ちます。搾取の関係とまではいかないかもしれませんが、権力の関係や強制される関係がゼロであることの方が少ないかもしれません。ですから、スーパーバイザーは、スーパーバイジーであるカウンセラーが今、話している言葉は、意識的無意識を問わず「言わされている」言葉ではないかを十分に考える必要があります。

身近なところで、権力の関係、強制される関係といえば、上司・部下関係です。上司と部下の間の会話には、本当に気をつけなければなりません。部下が言っている言葉の多くは、上司向けに言っている、もしくは言わされていると考えるべきかもしれません。その裏にある部下の気持ち、本当にいいたいことを理解する努力を上司はしなければなりません。相手が納得してくれたのは、本当に納得をしたのか、権力があるから納得をしたのかをよく考えなければなりません。

あらためて、こんな単純なことに気づかされるわけです。これを上司向けセミナーで聴くと素直には受け取れないのに、まったく別の切り口から学ぶと素直に心に入ってくるというのも不思議なものです。

余談ですが、権力と権威の違いってわかりますか。
権力というのは持っている人が持たない人に向かっていくものであり、権威とはまわりの人が認めるものです。ですから、「俺には権威があるんだ」といっている人は滑稽でしかないですね。

●その10●
役割関係と人間関係
キャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座からです。復習が追いついていません。また、明日の9時半から次回があります。

今回はすべての世界に共通するお話です。

人間関係とは? ……それは交換ができない役割関係。

ただの役割関係は代替が効きます。役割の関係を超えて、固有名詞をもった関係になることにより、本当の人間関係は生まれます。

(スーパーバイザーとスーパーバイジーであるカウンセラーの)面接は最初は役割の関係から始まります。面接の中で、スーパーバイジーであるカウンセラーが「この人にかけてみよう」という思いになれるか、これによって役割関係は交換ができない関係になっていきます(ただし依存的なのは駄目ですね)。

スーパーバイジーと同じ視点でしかカウンセリング・ケースを観ることができなければNGです。スーパーバイザーとしてケースをみたときと、カウンセラーとしてケースをみたときとでは、意外と視点が変わってきます。立場が変わると、意外と聞こえ方が変わってくるのです。ある意味、スーパーバイザーとしてのプレッシャーが力になります。そんな訓練を重ねる場がこの講座です。当然ですが、スーパーバイザーの訓練を受けることによって、カウンセラーとしての面接の力も変わってくるはずだと信じて頑張っています。

それにしても、この関係、上司と部下にあてはめてもまったく同じことがいえます。上司と部下が役割関係ではなく、交換ができない役割関係である人間関係になっているか、これで職場は相当に変わります。

わかりにくい説明ですみません。わかりやすい説明ができないということは、理解度が浅いということです。頑張らねば。

●その11●
目標達成のための戦略的行動
日曜日のキャリアカウンセラー協会主催のスーパーバイザー養成講座から。

青山学院大学の山本寛先生に8時間にわたるロングランの講義をしていただいたのですが、その中から「目標達成のための戦略的行動」について取り上げます。事前の課題図書を読むのに難儀したのでちょっと心配してましたが、とてもわかりやすい話で、整理がつくセッションでした。

さて、目標達成のための戦略的行動ですが、これはやはり意識的にやる必要があります。カウンセラーはこれをどう支援できるかですね。5つのフェーズで整理をされていました。

@キャリア目標達成行動……目標達成に直接役に立つ行動。必要な技術・技能を身につける勉強などが当てはまりますが、独立開業をめざす人ですと、資金をためるなんていうのも入ります。着実に準備を進めるステップですね。

Aフィードバック強化行動……目標達成までの途中段階の状況を、自分自身だけでなく、他者からの情報によって的確に評価していく行動です。社内であれば、仕事の結果情報を積極的に取りに行くことになります。

B他者評価志向的行動……仕事のアピールです。組織内であれば上司に積極的に報告やアピールをしかけていく感じです。組織外であれば、業界誌への投稿などで専門性を周知されるなんてのが当てはまります。

Cネットワーク構築行動……社内外の人脈作りです。ただし、安易な異業種交流会への出席などではなく、本当に必要なネットワークを作るための活動です。

Dキャリア変更行動……いよいよ目標達成のために行動に移るプロセスです。行動に移すには、タイミングは非常に大事です。

これは、内容をちょっとアレンジすると、学生の就職活動にも応用できますね。

●その12●
キャリアをめぐる状況の変化
遅ればせながら少しずつ復習をしていきます。

キャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座第10回、青山学院大学の山本寛先生による「組織内キャリア発達の理論と実際」の講義からです。事前課題図書がアカデミック丸出しだったので心配していましたが、素敵な先生で、いろいろと視点の整理ができました。

キャリアカウンセラーは、キャリアとは何か、キャリアが発達するとはどういうことか、キャリア・アップとは何者なのかといったことを自分の言葉で説明できなければなりません。そのためにいろいろな先達の理論を学ぶといってもいいのかもしれません。

講義の冒頭では、勤労者のキャリアをめぐる状況の変化について改めて整理をしました。

終身雇用、年功処遇が中心の時代にあっては、組織内キャリアが中心でした。昔でいえば、都市銀行に入ったら3分の1以上は支店長になれるとの暗黙の了解があり、多くの中高年は2000万円くらいは退職金はもらえると思い、キャリアに関しては組織任せで思考停止状態でよかったわけです。

それが、あっという間に社会が変わり、目安が立たない時代になってきました。1人ひとりが自己のキャリアを設計していななければ、誰かにそれを任せ切ることができない時代になってきたのです。

また、一律な社会基準によるキャリアアップ志向をベースにした、一律のキャリアアップ目標自体が機能不全に陥ってきています。つまり、昇進と昇給という餌で一律に従業員をコントロールすることができなくなってきたわけです。その背景には、非上昇志向的人材が増加してきたことにより、昇進が満足のいくキャリアとはならなくなってきたことなどがあります。

そんなわけで、キャリア満足度を高めるためには、自分自身が持っている主観的な基準、例えば価値観、能力、興味、性格等との一致度が重視される傾向が強まってきています。いわゆる、自分らしいキャリア、自律的なキャリア、勝ち負けのないキャリアとでもいう奴ですね。しかし、自己分析はやはり重要になります。ブランド・ハプン・スタンスが流行したり、綿密にデザインするキャリアは難しいという話は確かにそうであるものの、自分自身について何も考えなくてもいいという意味ではありません。

従来いわれていた「自律性」というのは、単に毎日の仕事を上司の指示によらずに自主的にできるという「仕事の自律性」が中心でした。それに加えて、現在ではキャリアの開発を組織に頼らずに自分で設計・展開するという「キャリアの自律性」が重要視されてきています。

そうなると働く目的は、「組織のため」から「仕事のため」への移り、さらには「仕事のため」から「キャリアの(蓄積の)ため」に移っていくことが想定されます。

法政大学の諏訪先生は以前から「キャリア権」という概念を提唱されています。これは、マクロ視点からみた新しいキャリア概念であり、「人間には一人ひとりの能力や意欲や適性が尊重され、キャリアを積んでいく基本的な権利がある」と考えるものです。この概念をベースに考えれば、国は雇用政策を超えてキャリア政策へ切り込む必要がありますし、企業も雇用責任だけでなく、キャリア権を重視した施策が求められることになります。

●その13●
継続性・連鎖性・発達性〜キャリアの3つの特徴
昨日に引き続き、遅ればせながら少しずつ復習を続けます。

キャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座第10回、青山学院大学の山本寛先生による「組織内キャリア発達の理論と実際」の講義からの続きです。

状況の変化を整理した上で、改めて「キャリアとは何か」という命題です。今日はノート風に整理します。

キャリアの3つの特徴

・継続性……生涯の大半の時期にわたる。
・連鎖性……つながりがある。職業上の1つの出来事が原因となり、新しいことが起こる。影響が他の出来事に及ぶ。いろいろな職業について、カウンセラーはこの連鎖性のプロセスを理解していなければならない。
・発達性……方向を考える必要がある、それが変わってもいいが。ある特定の志向をもち、集積されることで専門的に発達、分化する。それは、ある意味ではかたわになるということ。発達性という特徴があるため、キャリア発達、キャリア計画という概念ができる。

キャリアの分類@

・客観的キャリア……外からみて客観的に測定可能なキャリア。職位の変化やそれにともなう社会的地位の変化など。
・主観的キャリア……客観的キャリアの変化にともなう意識や行動の変化。信念、態度や将来への見通しなど。

※レファレンス・グループ(準拠集団)について。これはまさにアイデンティティの問題。自分の属している集団は何なのか。職業欄に何を書くかでわかる。自分が心理的にコミットして重要だと思う集団。

キャリアの分類A

・内的キャリア……個人がそのキャリアにおいて遭遇し経験する段階。1人ひとり違う。主観も客観も入っている。人によって大きく異なる。
・外的キャリア……組織での勤労生活の全体にわたって勤労者がたどる発達の針路。組織が決めるものであり、キャリアパスともいえる。外的キャリアは激変の時代。

キャリアの分類B

・組織内キャリア……1組織内でのキャリア。
・組織間キャリア……複数組織を渡り歩くことによって形成されるキャリア。
・組織外キャリア……組織に雇用されない自営業など組織の外でのキャリア。独立して組織外キャリアを歩む場合、特定分野での高い専門性、継続的な能力開発、職能別組織やネットワーク構築と相互援助体制、の3点が成功のポイント。

キャリアの分類C

・垂直的キャリア……昇進・昇格及び降格を移動原因とする職位の変化に基づくキャリア。
・水平的キャリア……収入や影響力は同程度だが職能や部署が異なる移動に基づくキャリア。

キャリアの分類D…志向性による分類

管理志向……管理職への昇進を志向
技術志向……専門的な技術、技能を習得し、それを活かすことを志向。
安定性志向……組織での雇用の安定を志向。
自律性……職務目的遂行上の手段の自由や自主的な選択を志向。
企業家志向……独立した組織経営を志向。

いずれにしても、本人の価値観が強く影響するもの。

キャリアの分類で傾向を世相の変化の観点から整理すると、これまでのキャリア傾向は、客観的キャリア、外的キャリア、組織内キャリア一辺倒だったといってもいいのが、主観的キャリア・内的キャリア・組織間OR組織外キャリアも重視されるようになってきたということができそうです。

●その14●
スーパーバイザー養成講座、折り返し地点
キャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座も、とうとう折り返し地点を過ぎました。

今日は「中間振り返り」の日。これから神保町に出かけます。カリキュラムには、単に「中間振り返り」とあるのみで、どなたが講師でこられるのかもわかりません。初日は、橋本先生・打田先生に加えて田中春秋先生に、そして何と渡辺三枝子先生までいらしていましたが、果たして今日は……。

では、心に戒めるために、改めて初回の渡辺三枝子先生の言葉を書いておきます。

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このプログラムの目的は、スーパーバイザーとしての実行力を習得することである。訓練のためのプログラムではない。自分自身がSVになるためのプログラムである。教えることと、自分自身が力を付けることとは違う。考え方を習うのではない。自分で実行できるようになる。自分の中にきちんと概念を作ることが大切。

研修生には最低限、以下のことを期待する。
@カウンセラーとしての実力の向上
A自己の向かい合う姿勢と自己に気づく力(セルフ・アセスメント)の向上
B自己の成長およびキャリアカウンセラーという職業の発展を願う姿勢
Cスーパーバイザーとしての新たな能力を取得する真摯な態度
D宿題を忘れないこと

●その15●
ソーシャルスキル
キャリアカウンセリング協会主催のスーパーバイザー養成講座も本日が14回目、つまり残すところ6回です。改めて復習をしていきたいと思いますが、今日はメンタルヘルスの講義の際に聞いた「ソーシャルスキル」についてです。まずは、周辺分野から…。

「ソーシャルスキル」というのは、社会の中で人との関係を持ちながら、普通に生活をしていく力とでもいうのでしょうか。WHOがお節介にも定義しているそうですが、そこには「日常生活の中で出会う様々な問題や課題に、自分で創造的でしかも効果ある対処のできる能力」とあります。言いかえれば「ソーシャルサポート」を活用する力、引き出す力、とみる見方もできます。

ここで注意しなければならないのは、スキルがあるかどうかということと、実際の行動は別であるということ。ここを切り分けてとらえる必要があります。人に相談するスキルがあるということと、実際に人に相談をすることは別です。現実に相談をしていない場合、それがどちらによるものなのかをとらえなければいけません。

話は少しずれますが、対人関係から受けるストレスは極めて大きいものがありますよね。それを受け止められるかどうかは、「ソーシャルスキル」との関連が大きくあります。ストレスで最大のものである対人関係ストレスをどのくらい受け止められるかは「ソーシャルスキル」によってかなり左右されるのです。

すべての人が十分な「ソーシャルスキル」を持っているものではありません。例えば極端な例ではありますが、統合失調症や一部の発達障害の人は先天的に持てていません。気質的なもの(脳の構造)の影響も受けますし、その後の環境によっても変化します。言葉をいったとおりに受け取ってしまう人、簡単なことでカッとなる人……、さまざまな人がいます。ただし、大切なことはこれは学習することが可能な分野なのです。

このクライアントは、ソーシャルスキルが不足しているのか、あるけれど使えていないのか、この見極めは非常に大切になります。また、それは気質的なものなのか、学習してこなかったたけなのか。先天的に相談するスキルがない人に「相談してみなさい」とアドバイスしても酷なだけ、ということです。

明治大学諸富先生は、「ソーシャルスキル」を身につけるために、授業の中で「ここは褒めて」「ここは質問して」などとものすごく具体的に介入していくそうです。自己分析だけに落ちいらずに、合宿・ワークなどによって役割の中でコミュニケーションする大切さを説いておられます。

カウンセラーとしてクライアントに対してできる「ソーシャルスキル」のトレーニングには3段階あると聞きました。

@カウンセラーとの面談の場で気付いたことについてフィードバックする。
Aホームワークを与える。例:「人に断れないんです」という悩み。あるお膳立てをして次回までにやってみてもらうような課題を出す。
Bグループワーク……最も効果が高いが、そういった場に出ること自体がつらいので、なかなかできないケースが多い。

「ソーシャルスキル」が低いことに気づいていない場合、概して「他責性」が強くなります。そういったクライアントは、まずは自分のこととして考える力を持つ必要があります。面談の場では何よりもまずしっかりとした関係構築をすることが大切です。「本当はこんなことを思っているけど、こういっちゃったんですよね」とまでいえるレベルの関係構築です。

「ソーシャルスキル」を学習する機会自体を得られなかった人も少なくありません。「ソーシャルスキル」は危機の時にこそ獲得できるともいいます。そして、クライアントがカウンセラーのもとに訪れるのは、何らかの危機に面したの時です。その意味でも、カウンセラーが「ソーシャルスキル」についての理解を深めることは大切です。

●その16●
メンタルヘルスの問題を抱えたクライアント
キャリアカウンセリング協会主催のスーパーバイザー養成講座も残すところ6回。ちょっとまじめに復習を続けていきます。グロービスの時もこんなことやってたっけなぁと懐かしく思います。

さて、キャリアカウンセリングの現場では、相当の確率でメンタル関係のクライアントをむかえることがあります。今日はそのあたりのお話です。誰しもメンタルヘルス問題のクライアントには不安になります。不安を減じるためには、知識と経験が必要です。経験は簡単には積めませんが、知識は努力でカバーできます。

では、本論に入りますが、目の前にいるクライアントがメンタルヘルス上の問題があるかもと感じた場合、3つのステップが必要になります。

@メンタルヘルス上の問題のアセスメントをする必要があるかどうか。
A上記@がYESの場合、何をどうアセスメントするか。
B上記Aの結果YESの場合、どのように対処するか。

@のポイントは「職業的機能や日常の社会活動、他者との人間関係に著しい障害を起こしているか」になります。状況要因よりも、本人にどういう変化が起きているのかに注意の力点を置きます。往々にして「仕事を辞めようかと思う」といってくるケースも多いようです。
「起きれずに会社を休んだ」という場合では「無断かどうか」は大きなポイントになります。「10年近く自信をもっていた仕事だが、やめようと思っている」には、明らかな変化があります。

スーパーバイザーとしては、スーパーバイジー(=カウンセラー)がどうしてメンタルヘルスのアセスメントの必要が「ある」と判断したのか、もしくは「ない」と判断したのか、その判断論拠についてクライアントの言葉でしつこく確認することが大切です。根拠は必ずクライアントが語った言葉にあります。カウンセラーの「主観」(意見)と「事実」との区分を丹念に行うことが必要になります。

●その17●
メンタルヘルスのアセスメント
キャリアカウンセリング協会主催のスーパーバイザー養成講座も残すところ6回。ちょっとまじめに復習を続けていきます。

キャリアカウンセリングの現場では、相当の確率でメンタル関係のクライアントをむかえることがあります。で、昨日からそんなテーマを扱っています。この勉強は現場でも直接的に役に立っています。

まずは、目の前にいるクライアントがメンタルヘルス上の問題があるかもと感じた場合、3つのステップが必要になります。

@メンタルヘルス上の問題のアセスメントをする必要があるかどうか。
A上記@がYESの場合、何をどうアセスメントするか。
B上記Aの結果YESの場合、どのように対処するか。

昨日は@について整理しました。今日はAです。つまり「何をどうアセスメントする」のかです。

ポイントは「いつ頃から。どんな症状が出ているのか?」になります。以下の3つの側面から確認をしていきます。

@期間…いつころからどのくらいの間
A症状…3側面での確認(精神症状、身体症状、行動 ⇒ 気持ち・身体・行動)
B既往歴…「これまで今回のような状態になったことは?」

最大の注意点はあせってアセスメントをしないことです。アセスメントが必要だということは頭に置いておいて、まずは傾聴に集中しなければなりません。
また注意点ですが、「症状」という言葉はけしてクライアントには使ってはいけません。使うのであれば「変化」という言葉です。同様に「既往歴」という言葉も使ってはいけません。カウンセラーは医師ではありませんし、カウンセリングルームは診察室ではありません。聞くのであれば「これまで今回のような状態になったことは?」というフレーズです。また、既往歴の話が出てきたら、クライアントがどのようにこれまで対処してきたのかを確認することが大切です。それによって、クライアントがどのようなリソースを持っているのかがわかります。

メンタルヘルス上の悪化がでる3大症状別に、アセスメントについて整理します。

@うつ状態 
A不安
B精神病性症状

@うつ状態……メンタルヘルスの問題を抱えるクライアントの8割がうつ状態だと考えていいそうです。そうなると、うつ状態のアセスメントがきちんとできることが何よりも大事になります。うつ状態とうつは異なるもので、うつ病以外の病気(糖尿病、リウマチ、脳腫瘍など)、降圧剤、統合失調症の陰性症状、心理社会的要因、死別反応などでも発生します。新型うつ(例:土日はサーフィンに行くけど、平日は会社にはこれない)がいろいろと話題になりますが、これらの多くは適応障害ではないかと最近ではいわれているそうです。確かにその方がしっくりくるかもしれません。さて、うつ状態のアセスメント基準ですが、2週間以上ほとんど毎日気分が沈んだり、2週間以上物事に対して興味がわかないというように、複数の症状が2週間以上続いているかどうかがポイントです。したがって、土日にサーフィンに行けるのであれば、うつ状態とはいえませんね。複数の症状が恒常的に続いているようであれば、リファーが必要です。

A不安……心臓がドキドキ、頭が真っ白、汗が出る、といった症状です。著しく苦痛を感じる上に、社会生活に支障をきたしているのであれば、リファーが必要です。うつ状態以上に行動として表れるので具体的に本人が困っていることが多いそうです。

B精神病性症状
妄想…実際には真実でないことを真実だと思い修正不能なもの(他の人がどんなにいっても聞かない)。
幻覚…実際ないものが見えたり、聞こえたりする。高齢者の手術後には過度のストレスにより幻視がみえる。統合失調症の場合は、幻聴がほとんど。「電車の中、道路とかで聞いたことがあるか」という質問に対して、幻聴の場合はたいていが「ある」。

妄想、幻聴が疑わしいときは、びっくりしないでじっくり聞いてみることが大切だそうです。といってもびっくりしますよね。また、妄想・幻聴を強化せずに、相手の気持ちを理解することに注力します、つらさに共感することはOKです。「それだと落ち着きませんよね」。即、リファーの必要があるのですが、本人が病気の認識がないことが大半のため、リファーに導くのは難しいようです。家族まで含めてリソースを確認・検討していきます。カウンセラーにとって大変なクライアントになってしまいますが、大変だからといって放置することは危険です。

診断書の病名をみて、その病名から何かを判断することは危険とのご指摘もありました。以前は、うつ病・適応障害とは書かずに、抑うつ状態・統合失調症と書かれることが多かったですが、最近ではそうでもないそうです。ただし、主治医は常にクライアントの雇用を守ることを最重要視して、診断書を書くものだという認識は持っておく必要があります。また、抑うつ状態とうつの区分も医師次第です。
統合失調症の場合、障害年金という選択肢もあります。無理に仕事を続けることがすべて良いことだとは限りません。キャリアカウンセラーは福祉の面についての学習をすることも大切です。「こころの耳」というサイトにはほとんどのリソースが網羅されているとご紹介をいただきました。

本日の部分をもっと深めたい方は、大野裕著『「うつ」を治す』(PHP新書)がお薦めです。

●その18●
メンタルヘルス対応はリソースマネジメント
キャリアカウンセリング協会主催のスーパーバイザー養成講座の復習。メンタルヘルスの問題を抱えるクライアントへの対応の3回目です。

目の前にいるクライアントがメンタルヘルス上の問題があるかもと感じた場合、3つのステップが必要になります。

@メンタルヘルス上の問題のアセスメントをする必要があるかどうか。
A上記@がYESの場合、何をどうアセスメントするか。
B上記Aの結果YESの場合、どのように対処するか。

今日はいよいよBについて、つまり「どのように対処するか」です。

キャリアカウンセラーがメンタルヘルスの問題を自分で解決することはできません。できると思う必要ははありません。で、どうなるかというと「リソースマネジメント」がポイントになります。

手順は以下のとおりです。

@相談者がこれまですでにやってきていることを確認する
Aリソースを確認する
Bリソースを利用する上でのバリアを確認する
Cどこにつなげるか(どのリソースを活用するか)を意思決定する
Dつなげる(リソースを活用する)
Eフォローする

既往歴を確認することは大切です。リソースの確認にもなります。過去にメンタルクリニックに通っていたのであれば、再訪してもらえばいいわけです。
まず、リファーしようと思う(バンと投げてお終いにしようとする)のではなく、クライアントの持つリソースをコーディネート、アレンジメントしようと思うことが大切です。医療機関はそのリソースマネジメントの1つです。その人の持っているリソースの中でどこにつなげると一番いいかを考えます。

@相談者がこれまですでにやってきていることを確認する
⇒「これまでどなたかに相談されたことはありますか」から入るのが定石です。

Aリソースを確認する 
⇒当事者以外の上司のサポート、家族のサポート、専門家のサポート(医師を含む)。クライアントが使えるだろうリソースを頭の中に思い浮かべて聞いていきます。

Bリソースを利用する上でのバリアを確認する
⇒リソースにつなごうという時になって初めて出てくることもあります。

Cどこにつなげるか(どのリソースを活用するか)を意思決定する 
Dつなげる(リソースを活用する)
Eフォローする
⇒当日のクラスで取り扱った事例では、社内の健康相談室にリファーするという意思決定をしました。原因は明確に仕事と思われるので、社内で「事例化」した方が解決に近づきやすいのではないかとの判断によります。また、仮に医療機関につなぐのであっても、健康相談室からつないだ方がいいだろうと判断しています。このクライアントが抱える課題の場合はどこのリソースにつなぐのがよいかを個々に判断していきます。メンタルヘルス上の悪化が何から起きているのか、その解決のためには何が必要なのか、クライアントが持っているリソースには何があるのか、を理解して、どこにつながるのがクライアントにとって最も援助的かどうかを判断していきます。単にリファーするのが仕事ではありません。リファーの仕方はテクニカルなものではなく、一連のプロセスの中でのカウンセリングの意思決定のもとでアレンジされるものです。プロセスをきちんと踏んでいけば、クライアントは「どこかに投げられた」というネガティブな印象は受けません。今回のクラスのケースでは、アドバイスをしたまま放置しておくと健康相談室に行かない可能性がありそだという判断と、組織リスク上の判断から、健康相談室の看護士に直接カウンセラーから連絡をとって場を設定するというまで踏み込んだ選択肢を選んでいました。また、あわせて健康相談室訪問後にキャリア相談室への再訪のアポイントもとっています。リファーしたのであれば、その結果は必ず面談で確認することも大切です。

大切なのはとにかく「リソース・マネジメント」です。キャリアカウンセラーだけで解決しようと思うものではありません。

●その19●
スーパービジョン備忘録@
キャリアカウンセリング協会主催のスーパーバイザー養成講座も残すところ6回。改めて復習を続けていますが、今日は備忘録的にランダムにポイントや気付きを整理してみます。

■【意見と事実の違いに注意】

意見は事実と論拠(=なぜならば)からなる。事実と論拠が成立していないと意見は生まれない。スーパービジョンの中でも必ずこれを意識する。スーパーバイジーが語っていることは、事実なのか意見なのか。まずはこれを意識する。
事実を抑え、その論拠を抑える。事実と意見がつながる論拠はしっかりとあるか。「なぜあなたはそう思ったのか」「それはなぜなのか」。
コンサルタントがよく使うフレームワーク。「空・雨・傘のフレームワーク」。
  西の方から黒い雲が近づいている…事実
  夕方くらいには雨が降りそうだ…意見
  だから傘を持っていた方がいい…対処
すぐに対処に入らない。まずは事実があっているかどうかの精査が大切。次に事実から意見につながる論拠があるのかを精査する。いわば事実と意見の間の「理論」のチェック。
その上で、他の対処はないのかを考える。これは意見と対処の間の「理論」のチェック。カウンセリングの中でも、構造論的なアプローチでいこう、いや発達論的なアプローチだというように、変に理論に振り回されると先に対処(=各カウンセリング理論)が出てしまって、進め方が逆になるケースが多々ある。

それは本当に事実なのか。例外的な事実ではないか。その事実から発せられている意見は論理的か。その意見をもとに考えられた対処は論理的か。事実⇒意見⇒対処の間の論理性に徹底的に着目する。

■【セルフアウェアネス】

きついことを言われてつらいのは、自分ができていると思うから、だからつらい。自分がまだまだ成長発達てきると思うとつらくない。できていると思うのにできていないと言われるとつらい。まだ足りない部分を教えられていると思う、変化できると思うことが、きついことを受け止める上でポイント。一言でいうと変化志向性。
言われても変わらない人に対して、いくら言ってもそれはいじめにしかならない。これを伝えることで相手が変わるかもしれないと人の可能性を信じること。
それが難しい人については、何か障害になっているのか、それを取り除く、アプローチを変える、視点を変える、そんな態度が大切。

■【ケース記録】

あくまでも、スーパーバイザーが対話するのは、クライアントではなくカウンセラー(=スーパーバイジー)。カウンセラーとの対話を通してクライアントへの支援をする。どんな面接だったのか、カウンセラーの癖は何か。スーパーバイザーはカウンセラーを通して、カウンセラーの問題を解決させる。カウンセラーがクライアントの問題を適性にとらえている必要がある。
その材料となるのはケース記録。ケース記録に基づいて、必要な質問をする。何を狙って質問するのか。ただし、ケース記録を書いているのは、あくまでもカウンセラー。カウンセラーのフィルターを通っている。また、バイアスがかかっている可能性もある。しかし、クライアントが話した言葉のうち、どの言葉をとったかというところではフィルターがかかっているが、とった言葉自体にはフィルターがかかっていない。書いていることをみて、スーパーバイジーの話と合わせてみれば、スーパーバイザーとしての関わりはできるはず。

■【倫理の必要性】

倫理は、ある意味でやるべきことの領域、最低水準を決めているものでもある。その職業に対する統一的な信頼感を醸成するものでもある。黙っていてもこれを理解できる人はいいが、そうでない人がカウンセリングの領域に土足ではいってくることを妨げるためにも倫理は必要になる。職業としての最低限の品質を担保するため。判断のよりどころ。個人ではなく職業としてのものだと考えて良い。
プロとして、専門家として必要なもの。責任と役割、立場から、自分を律すること、間違った方向にならないように進めるためにも必要になる。社会への約束としての倫理。社会に対して何をする人なのか、何をしない人なのかを明示するもの。
また、倫理は自分自身を守るものでもある。ここまではできるが、ここからはできない、これは違うということが明確になることにより、過重に自分でしょいこまない。周囲に対して説明がつけやすい。「やっちゃいけないことになっているんです」。文章に書かれているからこそ、断わりやすい。
難しい判断を迫られたときに、考えるときのよりどころでもある。自分自身の価値観ではなく…。

なぜこのような倫理規定ができたか、そこに至るドラマに思いをはせることも大切。倫理でいわれていることは、他のカウンセラーが過去に起こした失敗のケースの集積である。だから、判断のよりどころになる。

倫理には2つがある。禁止倫理、あるべき姿(理想の姿)。

続き、ます。

●その20●
スーパービジョン備忘録A
キャリアカウンセリング協会主催のスーパーバイザー養成講座も残すところ6回。
改めて復習を続けていますが、昨日に引き続き備忘録的にランダムにポイントや気付きを整理してみます。

【スーパーバイザーの守秘義務】

カウンセラー(=スーパーバイジー)にとっての守秘義務と、基本的にはまったく同じく重要というか、より厳しく認識する必要がある。
カウンセラーがスーパーバイザーに話すクライアントの案件は、カウンセラーが守秘義務に基づいて聞いた内容。であるからして、守秘義務は引き継ぐ必要が当然にある。カウンセラーへの責任がある。さらには、相手がクライアント本人ではなく間接的な関係であるためにリアル感が薄いため、より細心の注意をもって守秘義務の問題を取り扱う必要がある。
また、スーパーバイザーはカウンセラーの秘密も同時に守る必要がある。それによって、カウンセラーは安心して相談ができる。さらには、スーパーバイザーはカウンセラーに守秘義務を守らせるような指導をする義務がある。

【スーパーバイザーの二重関係】

もちろん契約にもよるが、配慮をする必要はあるものの、双方の合意があれば、ある程度の軽い二重関係はあってもいいのではないか(特に終了後であれば)。ここの判断か難しい。
特に日本の場合、キャリアカウンセリングの世界はまだまだ狭い世界なので、まったくの二重関係をつくらないことは現実的に困難だという側面もある。また、カウンセラーとクライアントの関係のように過度に搾取的・依存的になるリスクは少ない。
ある意味、避けては通れない部分があり、そこのリスクを理解して進められているかが大切。リスクとは、指導内容に客観性が欠けるリスク、個人情報を漏らしやすくなるリスクなど。

スーパーバイザーとスーパーバイジーの関係は、クライアントとカウンセラー関係とは少し違う。クライアントは迷っている人だが、カウンセラーは自立している人であり、依存的関係になるリスクが違う。また、組織によっては否応なく査定者とスーパーバイザーの二重関係になる場合がある。その場合は、スーパーバイザーとしてパワーを持っていることを自覚することが大切。

アメリカのACAの倫理規定では、スーパーバイザーとスーパーバイジーの間では、「現在の対象本人」との恋愛関係・性的関係を禁止しているが、カウンセラーとクライアントの間では、専門職関係が終了した「5年後まで」禁止している。また、対象もクライアントの家族・クライアントとの恋愛関係となる人まで拡大しているというように差をつけている。

【スーパービジョンとカウンセリング】

共通点……相手の改善すべき行動・考え方・感情に目を向ける。
相違点……スーパービジョンはクライアントにとって効果のあるものを目指す。具体的に事実ベースで限定する。変に不偏的なことに還元しない。より成果思考的。
相違点……スーパービジョンは、評価的である。評価はあくまでも指導の視点を見つけるため。
相違点……クライアント⇔カウンセラー関係はクライアントからの選択・変更が可能。場合によっては、偽名すら使える。スーパーバイザー・スーパーバイジーの関係は選べない。契約関係にあるということは、スーパーバイジーも守らなくてならないことが出てくる。

スーパーバイザーに期待されるのは、スーパーバイジーをプロとして育てること。社会的な責任を遂行していくことができるようにすること。
スーパービジョンはカウンセリングではない。教師でもある。評価者でもある。

●その21●
スーパービジョン備忘録B
キャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座の復習をここのところ書き連ねています。

先月の終わりに中間まとめとして、渡辺三枝子先生がおいでになりました。まず、スーパーバイザーとしてのセルフアセスメント20項目を3段階で自己評価(@十分もっていると思う、A基本的には持っている、B不足している)します。実はこれと全く同じものを初回にやっています。初回の値と比較して、各自でリフレクションをします。そして、グループ討議。変わった項目について、何があって自分の評価が変わったのか、リフレクション、振り返りをします。プラスになった項目だけではありません。マイナスになったものもあります。学ぶことによって、言葉の定義自体も変わるのです。

そして、振り返りを踏まえて、自分自身の中でここで理解しなければならないこと、疑問点、課題というものが浮き上がってきます。改めて、今の自分が見えてきます。

渡辺三枝子先生からはこんなお話が。
「疑問がかなり浮かんできている状況だが、疑問そのものもまだすっきりしない感じのように感じる。ここまでの課題・疑問をすっきりとさせるのが今日の目的」。

でもって、もやもやぶつけ大会が始まりました。

《もやもや@ 思いやる力について》

【私たちのもやもや】
・相手を思いやるために厳しいことはいわないというのは、本当に相手を思いやっていることにはならないと本当に思えるようになってきた。そうすると、そもそも「相手を思いやる」の定義が受講当初と今では変わってきた。
・相手を思いやるのは、同意・同情・励まし・なぐさめではない。基本的スタンスとして相手を思いやるということはあっても、思いやる行為というのはいったい何なのか。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。

思いやるは、気持ち・態度の問題。でも、態度はかたちになる。態度には個人の価値観がかかわる。能力(コンピテンシー)は伸ばすことができる。あまり教育的にはできないが、思いやりを考える力は伸ばすことができる。「能力」という言葉を使っている思いには、向上させられるという思いがある。

⇒⇒⇒ちなみに「相手を思いやる力」というのがアセスメント20項目に入っています。

励ましや、慰めも、思いやりの1つだ。これをカウンセラーがやってはいけないと思ってしまう人が多い。カウンセラーは相手が元気になることが目的ではない。クライアントが自立しなければならない。慰め、励ましで終わってしまってはいけない。変なとらわれがあると、本末転倒になってしまう。

⇒⇒⇒これ、ぐっときませんか。

スーパーバイジー:「泣いてしまったクライアントをなぐさめてしまったのですが、これはいけないことですよね」
スーパーバイザー:「あなたはなぜそれがいけないことだと思うのですか?」
考えさせる力をつける。慰めていけないと思っていたら、それは間違い。正してあげる必要がある。でも、答えをいうのではない。どうして、慰めるのがよくないのかを改めて考えさせることが何よりも大切。

⇒⇒⇒スーパーバイズの基本は「投げかけ」なのです。理路整然と答えをいって「すっきり」させることが目的なのではありません。いろいろな質問、投げかけをすることにより、さらにスーパーバイザーの中に「もやもや」を生み、その中から自分で何かをつかみとらせようとするのです。それでなければ本当の「すっきり」にはたどり着けません。

思いやりとは、相手の存在を考えること。存在に思いをはせること。その方法は人によっても違う。そして、カウンセラーとしての役割を発揮するためにどう行動するかが大切。

⇒⇒⇒「存在に思いをはせる」、素敵な言葉です。よいカウンセリングをしようとすると、実は思いは相手ではなく、自分に向かってしまいます。よいカウンセリングをすることを考えるよりも、相手の存在に思いをはせることをまず考えてみたいと思います。

自分に気付く力をつける。自分に気付くことが大事。能力のレベル感にとらわれずに、自分に突き付けた時に自分ができているかどうかがわかったということ大切。自分が日頃できていないことに気付くことがまさにセルフアセスメントのポイント。いろんなレベルがある。人と比較してもあまり意味がない。自分の過去とくらべてどうかが大切。ただし、自己評価が高いだけだと、思いあがった人の可能性が高い。

⇒⇒⇒これはアセスメント全体について話された言葉です。


《もやもやA 深刻な状況にある人にどのように思いやればいいのか》

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。

この人は深刻な状況にあるんだな。と感じただけで、既に思いやることができている。自分は全能ではないので、私にできることは何なのかを考えればいい。

⇒⇒⇒深刻な状況にあるんだなと思った瞬間に「どうしよう、どうしよう」と意識が自分に向いてしまいます。「全能ではないので、私にできることは何かを考えればいい」のはわかるのですが、「私になんか何もできないんじゃないか」という不安と怖れに勝てるかどうかです。

深刻には客観的尺度はない。心理的・個人的な尺度。変に客観的してしまうことは、思いやりの気持ちを損なう可能性がある。⇒⇒⇒なるほど、です。

思いやりだけで今日はお終いになってしまいました。数日間、これ続けます。純粋に自分のために。

●その22●
スーパービジョン備忘録C
さて、昨日から始めたキャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座の復習としての「もやもやぶつけ大会」。趣旨と背景は昨日のブログを。

《もやもやB 自分が持っているはずのことが実践の場で活かすことができない》

【私たちのもやもや】
・普段できていると思うんだけど、カウンセリングの場になるとできなくなってしまう、スーパービジョンの場になるとできなくなってしまう。そんなことがたくさんある。20のアセスメントを自己採点していると、これって普段はできてるんだけどなぁと嘆きたくなるものがいくつかある。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。

セルフアセスメント項目の多く(特に5〜20)は、人の上に立つのであれば必要な力であり、カウンセリング・スーパービジョンの場だけではなく求められる力になる。普段はできているんだけど、カウンセラーとなるとできなくなるということに、まずは気付けばいい。それから、それはどうしてなのかを考えることが大切。日常に普通できていることが、カウンセリングの場でできるようになればいい。日常生活とカウンセリングを変に区別しすぎない。ただし、カウンセリングはプロフェッショナルの世界。目的その他が制約される場なので、ある意味では普段できることがすべてそのままできるわけでなくても当たり前なところがある。例えば、特定の問題だとうまくいかないということにスーパーバイジーが気付いていれば、そこからスーパービジョンを始めればいい。何に引っかかっているのかの自己理解を助ける支援ができればいい。

⇒⇒⇒これって、私の大きな悩みでもあります。普段はできてるつもりなのになぁということが、カウンセリングの場だとできなかったり、気づかなかったりします。ただ、それを漠然と後悔しても意味がなく、どこができていないのか、特にどういうシチュエーションの時にできないことが多いのか、といったことを考えるところから進歩が始まります。スーパーバイザーはその手伝いをすればいいんですね。そして、何よりも、普段できていることができていないと気付いているということは、セルフアウェアネスの第一歩ができているということですから、大切にしなければならないことなのです。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。

スーパービジョンとは育て上げるということ。相手がその気にならなければできない。やる気のある人であれば、どんなにスピードが遅くても育てることができる。ただし、それには気付きが必要。

⇒⇒⇒まったく人材育成の基本思想と同じです。肝に銘じましょう。


《もやもやC 自分の思っていること、感じていることが相手にうまく伝わらない》

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。

スーパーバイザー:「どうやったらうまく表現できたなと感じるのですか?相手の反応がきっかけ?」 
スーパーバイジー:「それもあるし、自分の言葉もあるし」 
スーパーバイザー:「相手の顔は伝わってなさそう?」
スーパーバイジー:「前回はそう感じた。堂々巡りになる要因はそれじゃないかと思う」 
スーパーバイザー:「今、私に伝えてくれたが、どうですか。私にうまく伝わったと思いますか」
スーパーバイジー:「伝わっているかどうかはわからないが、伝えようと頑張った。意識することでちょっと変わるのかなということと、伝えられようと思っていただける先生がいた」

⇒⇒⇒雰囲気伝わらないと思いますが、質問をしたメンバー(ここではスーパーバイジー)に対して、いきなり三枝子先生(ここではスーパーバイザー)の公開スーパービジョンが始まった場です。三枝子先生の言葉がすべて疑問形で終わり、相手の考えを促そうとしているのが改めてよくわかります。スーパービジョン本質が少しわかりかけた瞬間でした。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。

伝わるかどうかは相手があってのこと。相手の表情をみて、伝わらなかったら言い直す。場合によっては、伝わったかどうか相手に聞いてみる。相手の反応に敏感になる。相手の理解力、自分の話し方にもよるが、伝わらない伝わらないと考え過ぎると関心は自分の頭の中にいってしまい、相手に関心がいかなくなってしまう。自分よりも、聞いてくれている人に意識を向ける。相手の反応を重視していく。極端な場合、ここまでの話しわかった? もやもやしているところある? とか聞いてみる。自分の頭の中でぐるぐるまわしているよりもよっぽど良い。
キャリアカウンセラーがこんな悩みを持つということは、すくなくとも伝わっていないことはわかっているカウンセラーだということ。でも、自分で何が伝わっていないのかが、はっきりとしていないと課題は克服できない。1つのアドバイスとしては、自分のいいたいことを文章に書いて思考の訓練をしてみること。そして、自分で読んでみて、いいたいことかどうかを客観的にみてみる。何となくぼやっと駄目だというのでは、いつまでたっても改善にならない。

⇒⇒⇒相手に伝わっていないことを気にするということは、相手に対して申し訳ないという気持ちからなのでしょうが、実は心の集中が相手ではなく自分にいってしまっているということですね、確かにそうです。それでは良いカウンセリングはできません。そして、迷ったら素直に相手に聞いてみるというのも大切な手法です。これも何となくできないのではなく、できないのはなぜか、が大切です。そして、自分の何かのためにできないのか、相手の何かのためにできないのか。ここがまた大切なところ。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。

肯定されることを求めていると、相手を思いやることはできない。カウンセラーはクライアントの感情が求めている答えをぴたっと言ってあげたいと思う。だから、肯定されることをいえることがいいことだととらえてしまう。その時点で、相手をみなくなってしままっている。否定されることによって、もっとその人のことがわかってくる。肯定されることを期待することはやめて、相手の反応を聞く、話してもらう。それがコミュニケーション。共感的理解とは、相手が自分に対してもっともっと自分のことを話してもらうためにすることだ。もともと人はわかりあえない存在。少しでもわかりあおうということは、プロの方から仕掛ける仕事。相手に自分のことを安心して話してもらうために共感的理解をする。ただ、相手も自分のことはよくわかっていない。多くの話をしながら、一貫性がない部分などをみて介入のタイミングをみていく。矛盾に気づく。それを論理的に組み合わせて概念的思考をする。

⇒⇒⇒これって目茶目茶大事な話です。私も含めて一人前になり切れないキャリアカウンセラーが陥りがちなところです。否定されるのが怖い、間違うのが怖い、それはクライアントではなく、自分に意識が向いている証拠です。典型的な邪念です。そして、カウンセリングには概念的思考力が必要だということ。ただし、残念ながら概念的思考力がなくても、GCDFの実技試験は通ってしまうのです(よね?)。関係構築はとても大切ですが、関係構築だけでは解決には至らないのですが。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。

自分が期待する反応ばかりをクライアントに求めない。相手から肯定してもらいたいという自分に気づいたら、まずは自分がいいたいと思うことを相手にいってみて、それから相手のいいたいことを聞いてみる方が、相手のことがわかるようになる。
文字化されていない、その場から次々と消えていく言葉から、概念的思考をする。思考力がスーパーバイザーにはなんといっても大切になる。ケース記録は、スーパーバイジーがわかったことしか書かれていない。思考力と冷静な判断力がそこには求められる。
ノーベル物理学賞を受賞した益川氏は、相手の顔をみていると、あらっと思うことがあるという。そうやって対話をしていくことで、研究というのは1人でやるよりもはるかに進んでいいくという。研究はけして1人のものではないという。

⇒⇒⇒カウンセリングもスーパービジョンも1人相撲になってはいけません。相手に心を傾けることによりわかっていくことがある、対話のなせるわざであるのは、益川氏のいう研究と同じなのでしょう。何はともあれ「相手から肯定してもらいたいという自分」に気づいたら要注意です。自分のためにやっているのではないのですから。

●その23●
スーパービジョン備忘録D
さて、一昨日から始めたキャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座の復習としての「もやもやぶつけ大会」。趣旨と背景は8月7日のブログを。

《もやもやD いったいキャリアカウンセラーの経験とは何なのか》

【私たちのもやもや】
アセスメントの項目の中にこの設問がある。そもそもキャリアカウンセラーとしての経験とは何なのか。何をすれば経験を積んだといえるのか。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。

ここ(スーパーバイザー養成講座)での勉強がきっかけになって、自分の中でカウンセラーとしての何かが出てきた、何か質的な変化が自分の中に起こっている、もしもそういうことが少しでもあるのであれば、まさにこれがキャリア(勉強の積み重ね)だと思っていい。そうなると、いずれは1人でできるようになる。そして、次の段階でまた違う視点が出てくる。
ベテランは数かもしれないが、プロは質。プロのキャリアカウンセラーの経験とは数ではないことは明らか。

⇒⇒⇒ベテランとプロの差。やっぱりプロになりたいですね。遅々としているかもしれませんが、この講座で自分も成長することはできているのかなとちょっと思います。参加して本当に良かったと思っています。

《もやもやE 常に100%感情をくみ取ることは可能か、またその必要性はあるのか》

【私たちのもやもや】
面談の目標にむかって、相手の必要な感情のくみ取りはしているつもりだが、あいだあいだでの感情を落としてしまっているのではないかとの心配がある。自分が勝手にセレクトして感情をくみとっているのではないかとの危惧もある。そもそも常に100%感情をくみ取る必要はあるのか。また、そんなことは果たしてできるのか。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。

100%くみ取ることはできないと思っていい。重要と思う感情だけくみ取る傾向はどうしてもある。ただ、重要だと思っているのはあくまでもカウンセラー側の基準であることに注意が必要。大切なことは、感情は点ではなく、線だということさえ理解していればいい。流れが把握できているかどうかが大切になる。⇒⇒⇒1つひとつの言葉の裏の気持ちだけにとらわれずに、気持ちの流れ・動きを意識することも大切だということですね。ただ、あまりそうすると全体をふわっとつかむ面談になってしまうので、そうはいっても1つひとつの言葉も大切にしなければならないところに面白みがあります。

《もやもやF スーパービジョンの関係構築の難しさを感じている》

【私たちのもやもや】
以下の3点から、どうもカウンセリングの場面とは違ったスーパービジョンの関係構築の難しさを感じてしまう。

@カウンセリングと違って、目的志向的にスーパーバイジーはやって来る。場合によっては、それ(目的)を変えなければならない場合がある(例:関係構築はできるのですが課題設定ができませんというカウンセラー、実は関係構築が本当の意味でできていないから次に進められていないのかもしれない)。感情的だけでない、理屈の面での関係構築も必要になる。納得性であるとか…。
Aプロ同士のセッションである厳しさ。プロに信頼される関係構築が必要。部分的には相手の方が詳しい分野があっても当然。場合によると、スーパーバイジーの方が面談経験は圧倒的に多いかもしれない。
Bこれまでのクラスの中でのロープレでは、既に知っている者同士であり、関係構築に凄味がないので、これまで実体験ができていない。実際がどうなるのか不安である。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。

セルフアセスメントに「若年・経験が浅いものからの指導を受けることができる」という項目をあえて入れている。そんな心構えは、スーパーバイジー・スーパーバイザーともに必要と判断をしているからだ。
いずれにしても、スーパーバイジーは、もっと発展したい、成長したいという思いがあってくることは間違いない。それだけは信じることができる。一見、論理的だが、常に防衛的・いいわけ的で、スーパーバイザーに攻撃的なスーパーバイジーもいるだろう。この場合は、躊躇せずに関係を切った方がいい。スーパーバイザーは、困ったことだけ、知りたいことだけを教えるのではない。このようなスーパーバイジーであれば続けても効果はない。
⇒⇒⇒これからのクラスでは、本当のスーパーバイジー(?)が来るそうです。そうなると、リアリティがないとかいってられません。「もっと発展したい、成長したいという思い」に対して支援的に応えることが役割です。

●その24●
スーパービジョン備忘録E
さて、キャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座の復習としての「もやもやぶつけ大会」実況中継が続いています。趣旨と背景は8月7日のブログを。

《もやもやG 自分なりのカウンセリングの定義って?》

【私たちのもやもや】
自分なりにまだ定義ができていない。あまり定義って何って思わずにこれまできてしまった。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。

迷いだしたら、原点に戻る。原点に戻らなければいけない時に、いろいろな支援役がある中で、カウンセリングという支援方法とは何なのかということが自分の中ではっきりしているか。「課題を解決するのはクライアントだ」ということだけでは、単なる人間観レベルであり、定義としては不足している。何をめざすのかをもっていないと、スキルや方法論で終わってしまう。カウンセリングという仕事は、他の仕事とどう違うのか、理念を抑えておけばいい。カウンセリングの定義は人によってあまり違っては困る。ただし、やり方は違ってもいい。

⇒⇒⇒実は自分自身もまだ「定義」言葉で記せていません。頭の中でもやもやしているものが星雲のように少し塊になりかけているところです。このクラスが終わるまでには、定義化をすませなければいけません。

《もやもやH 全体感をとらえるだけで、1つひとつの根拠がとらえなれない》

【私たちのもやもや】
面談全体の印象感でとらえてしまい、1つ1つの言葉をとらえきれていない。なぜそう考えたのかの根拠を言葉に戻って説明できない。森をみて、木を見ていないような感じの面談がどうしても多くなってしまっている。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。

テープなしでケース記録をとることが訓練になる。真剣に支援をしようと思っていれば、いくつかポイントはとれる。残る言葉が必ずある。推量ではなく、こういうことをいったからこういうことが出てきたということが残るようになる。質問するからには意図がある。思い出せる限りでいいので、メインのことを書く習慣をつけていけば、絶対にできるようになる。
キャリアカウンセラーにとっては、クライアントと出会っているその場が勝負。終わってからああ言えば良かったとかいうことに気づいても仕方がない。話を聞きながら、クライアントが2分前にいったことと違うその違い(矛盾)をとらえないといけない。自分の中にコンテクストを作っておく。面接が終わったらすぐにケース記録を書く。義務だと思う。自分がとらえられたことを事実ベースでしっかりと書く。自分の心に気持ちがいってしまうと、自分がとらえられたことを事実ベースでしっかりと書くのは難しくなる。

⇒⇒⇒何事もそうですが、自分の心に気持ちがいってしまう時間帯がまだまだどうしても長いのだと思います。相手のことを考えているつもりなのに、実は自分の心に気持ちがいってしまう。相手に肯定されたい、間違いたくない、そんな思いがそうさせています。ということを意識していれば、いずれできるようになると信じてやるしかありません。

《もやもやI 自信がなくて怖い》

【私たちのもやもや】
いろいろと学んでわかってはきているのだが、やっぱり自信がなくて怖いという思いが払拭されない。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。

だからこうしてここで勉強しているのではないか。
逆に自信を持ってしまう方が怖い。自信をもったカウンセラーが゛果たしていいカウンセラーだろうか。間違った自信を持ったカウンセラーが世の中に多く出てしまっていることの方が問題。

⇒⇒⇒自信を持ち切れないということは、常に向上しようという思いがあるということだと解釈すればいいのかなと感じました。確かに自信家のキャリアカウンセラーとは話したいとは思いませんよね。

●その25●
スーパービジョン備忘録F
さて、キャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座の復習としての「もやもやぶつけ大会」の実況中継が続いています。趣旨と背景は8月7日のブログをみていただければと思いますが、先月末に中間まとめとして渡辺三枝子先生がいらして私たちのもやもやした質問にお答えいただいた内容をリフレクションしています。
あまり続けるとだんだん息苦しくなってくるので、今日で小休止としてしばらくは緩くいきます。近日中にまた復習は再開しますけど。

《もやもやJ 介入のタイミングを考えられていない》

【私たちのもやもや】
介入が難しい。面談を進めながら、どこでどう介入しようかということを考え切れずに、面談が流れて行ってしまうことが多い。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。
はっきりいってやってみないとわからない。だから、やってみる。そのあとのクライアントの反応をみて、タイミングが早過ぎたのか、言い方が抽象的過ぎたのか、伝わっていなかったのかなどを判断して、修正していく。そうしないと、どんどん流れて行ってしまう。介入をしても、相手が受け止められなかった場合は、我慢しなければならない。時期をみて、同じことをいってみたり、あとで確認してみたり、のちのちにはわかってもらえるかもしれない。ちょっと延期して忍耐してみることも大切。

⇒⇒⇒それが怖いんですけど…といっても始まらないので、このクライアントを支援するという思いを持って、目の前のクライアントに集中してチャレンジです。

《もやもやK 自分の基準ができていない》

【私たちのもやもや】
組織の中にカウンセラーが1人ではいっていかなければならないケースが発生することがある。その場合、いろいろな人の論理の中で翻弄される。軸がないとつらい局面がある。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。
スーパーバイザーとなって動き出したら、あまり人を頼ってはいけない。コンサルテーションとスーパービジョンは違う。コンサルテーションは必要。ケース会議などで仲間と力を高めていくことは必要。
大学のキャリアカウンセラーは不思議と事務員らとの交流をしていない。こういった交流は積極的にやった方がいい。

⇒⇒⇒はっとさせられる厳しい言葉です。「スーパーバイザーとなって動き出したら、あまり人を頼ってはいけない」、なんて厳しい言葉でしょう。私はてっきり、「スーパーバイザーといっても、さらに上のスーパーバイザーが必要だ。独りよがりにならず常に精進」とかいうように返ってくるのかなと思ってました。

《もやもやL クライアントの問題を自分で解決しようとしてしまっている》

【私たちのもやもや】
カウンセリング場面では、ついつい解決策まで伝えないとだめだと感じてしまうことがある。スーパービジョン場面でも同じようなことを感じてしまう。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。
カウンセリングの定義にかかわる問題。ただし、すべての場合において解決策を与えてはいけないと考えることもいけない。情報がなかったり、情報が間違っていることにより、ものすごく遠回りしているケースがある。ずれた思い込みをしていることが明らかになった場合は、何らかの策を与える必要がある。情報を持っていない人にいくら考えてもらっても、答えは出ない。

⇒⇒⇒「情報を持っていない人にいくら考えてもらっても、答えは出ない」、これも凄いですね。どうしても、答えはクライアント自身の中にあるなんて呪縛が強いのですが、確かにクライアントの中にないタイプの答えもあります。また、情報を与えなければ答えに近づけないこともあります。いずれにしても、0か100かで捉えてしまうことの危険性は痛感しました。

《もやもやM 抽象的概念的思考力を身につける必要性は理解したが、どのようにして身につけるのがいいのか》

【私たちのもやもや】
抽象的概念的思考力を身につける重要性は認識したが、必要なものであればカリキュラムの中にもあってもいいのではないか。どのようにして身につけるのがいいのか。

【渡辺先生のスーパービジョン】 「⇒⇒⇒」以下は私のコメントです。
スーパーバイザー養成講座なのだから、既に磨いてこのプロクラムに参加して欲しいのが本音だが、いろいろな本もあるので学習して欲しい。もっと簡単にいえば、日々考える癖がつけられていればだいたいは問題ないはず。GCDFのクラスでも関係構築が前面に出てしまっているが、本来であればもっと論理的思考・抽象的概念的思考力が前面に出てもいい。特に日本人はアメリカ人ほどこの面は強くないので、補強の必要はある。

⇒⇒⇒これは専業カウンセラーの皆さんに対して、われわれビジネスパーソンの立場に基軸を置くキャリアカウンセラーが本来得意であるべき分野です。この得意であるべき分野を活かしていかなければなりません。

●その26●
社会的手抜き
キャリアカウンセリング協会のキャリアアドバイザー養成講座の先週分の復習です。

先週は産業組織心理学の面からのアプローチで、東京国際大学の角山先生が終日、講義をされました。仕事の面でも気づきのある1日でした。

で、今日はその中で「社会的手抜き」について。
聞いたことがありますか、この言葉。

集団の中での没個性化が起こり、個人の責任が拡散されてしまうことによって発生するいわゆる手抜きのことですが、「どうせ自分がひとりくらいやらなくても、誰かがやってくれるだろう」という「free rider効果」と、「他人の分まで自分がやるのは嫌だ。皆がやらないなら自分もやらない」という「sucker効果」が代表例とのことです。ありますよね、こういうの。。

大勢の会議で安心して居眠りをしている人なんかまさにこれですね。ぶら下がり社員なんてのも、これだといえるかもしれません。国民年金を払わないなんてのも、入るのかもしれませんね。

で、「社会的手抜き」の原因って何でしょうか。

・結果や責任が個人的に問われない
・仕事の役割や意義が明確にされていない
・決まり切った手順で創意工夫の余地がない

と整理されるとのことです。なるほどですね。これは、組織的な取り組みで発生を抑えられる可能性がありそうです。

「社会的手抜き」を防止するためには、少なくとも以下の工夫が必要そうです。

・誰かが仕事をきちんと見ている
・あなたの仕事は重要な仕事だということをきちんと伝えている

「社会的手抜き」を発生させないことは、組織生産性の向上に間違いなく寄与しますし、「社会的手抜き」を放置すると真面目にやっている人のモチベーションに影響を与えます。ただし、たちが悪いのは「社会的手抜き」を実行している人たちの多くに、おそらくは自覚がないことです。逆に妙な権利意識や、被害者意識を持っている人が結構いるような気がします。

●その27●
集団浅慮
昨日ご紹介した「社会的手抜き」に続いて、今日は「集団浅慮」についてです。

「集団浅慮」というのは、メンバーの意識が集団の維持に集中するあまりに(まとまりがよくなる、凝集性が高まるというプラス面はあるのだが)、問題解決の質が低下し、あげくの果てには浅はかで愚かな決定がなされることがあるという、集団における現象のことです。

たまに、場の流れでなんであんな結論になっちゃったんだろうということってありませんか。例えば強烈なリーダーがいて、そのリーダーに従い、和を壊すことを恐れ、中途半端な内容で安易に妥結した結論に飛びついてしまうようなことって。

「集団浅慮」が発生しやすい状況として、下記のようなことがあげられていました。

・集団のまとまりが強い
・外部からのアドバイスや情報がない
・アイデアの再検討や対案の可能性が考慮されない
・即断即決を求められるなど、集団が高いストレスにさらされている
・力の強いリーダーが存在する。

つまり、まとまりのいい集団ほど危機が大きいわけです。どうも、過去に不祥事を起こした企業の多くがこれにあたるのではないでしょうか。

「集団浅慮」状態に陥っている組織の症状としては、以下のようなものがみられます。

・力の過信 〜自分たちが失敗するはずがないという楽観的な見方が強まる
・決定の正当化 〜都合のよい情報だけにたより、外部の声に耳を貸さなくなる
・同調への圧力 〜集団の雰囲気を壊すような発言はタブーになる
・自己検閲 〜メンバーが異議や異論を自ら控えてしまう
・全員一致の幻想 〜他の誰もがそれに賛成しているように思えてくる
・集団維持への固執 〜好ましくない情報から集団を護ろうとする「お目付役」が出てくる。

大丈夫でしょうか、皆さんの組織は。
集団としてのまとまりのよさは大切なのは間違いないですが、それが故に「集団浅慮」に陥るリスクをはらんでいることを特にトップは理解している必要があります。

まとまりのいい会社ほど腐るのも早い、集団に対する忠誠心が高いからこそ不祥事に手を染めてしまう、そんなことは確かに言えますね。

●その28●
「集団」とは
「社会的手抜き」と「集団浅慮」という集団が陥りがちな罠について2日間みてきました。

ところで「集団」って何なのでしょうか。

辞書的定義としては「2人以上の個人が集まった状態」です。
ですから、電車のホームで待っている同じ列にいる5人というのも「集団」だということになります。ただ、こういうたまたま人が集まっている状態の、個人間に協力すべき目標や課題は存在せず、出入りも自由な「集団」は「集合」といって区別されたりするようです。

で、ここで扱う「集団」とは、

・目標や、従うべきルール・規範が共有されており、
・目標達成に向けて、集団内に地位や役割が存在し、
・意識的な結びつきがあり、心理的な相互作用が存在している

という単なる「集合」ではない「集団」です。

集団が相互作用してくると何らかの基準ができます。これは「準拠枠」と呼ばれます。

前から順番に発表をしていくと、何となく前の人の発表に合わせて、もともと自分が言おうとしていたこととちょっと違う発表をしちゃった経験ってないですか。

「準拠枠」はメンバーにその枠組みを受容することを求めます。その組織に内在していく圧力が「組織風土」を創ります。

集団内では多数者の意見に同調する傾向がみられます。何となくわかりますよね。

ところで、集団討議と集団決定の手続きをとることにより、決定後の行動が促進されるというデータがあるそうです。レヴィンの実験といわれる奴で、第二次世界大戦時のアメリカで食肉不足を見込んでレバー食の奨励策を打った際の実験だそうです。

誰もが食べたがらないレバーについて、高い栄養素を啓蒙し、美味しく食べられる調理法を伝えることにより、レバー食を促す施策です(私はレバーが好きなのでそんな奨励策が必要な国が理解できません…。特に角のエッジが立ったレバ刺しですね。でも、痛風なのであまり食べないようにしています)。

この施策は、多くの国民を集めて2つの手法で行われました。

1つはいわゆる講義形式。そしてもう1つはグループ討議をした上で最後に参加者が決意表明をするという形式です。その結果、講義形式参加者のうち、実際にレバーを食べた人が10%にも満たなかったのに対して、討議形式参加者の32%がレバーを食べたのだそうです。

このように参加者の行動が促進させられた原因としては、以下のように整理されます。

・集団討議への参加というプロセスを経て、課題への積極的関心が高まった。
・不安などの否定的感情を表に出すことにより、変化を受け入れやすくなる心理になった。
・自己決定と意思表明をしたことにより、みんなでやったんだという集団規範が形成された。

講義式の研修をやめて、グループ討議中心の研修にすることを提案する場合に活用できる話ですね。

グループ討議式の研修をやる場合、グループ人数というのも大事です。一般的には4〜5名でやることが多いかと思いますが、この人数というのは。まとまればまとまりやすいもののプレッシャーを感じやすい数でもあるそうです。どうにも発言しにくくなって討議が活性化しない可能性があることをファシリテーターは理解しておく必要があります。人数がさらに増えていくと、プレッシャーは低くなります。それは集団に個人が埋没するからです。関係性が希薄になり、自分自身の責任も希薄になる、一昨日のテーマであった「社会的手抜き」が生まれる状態ですね。

●その29●
接近欲求と回避欲求
キャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座からです。復習には果てがありません。

今日は、行動の引き金となる欲求について。これには2種類があります。

@接近欲求…対象に近づきたいという欲求。対象が魅力をもっているケース。

A回避欲求…対象から離れたいという欲求。対象に近づくと緊張感が生まれたり嫌な気分が生まれたりするケース。

これらの複数の欲求がぶつかり合って行動の選択を難しくするのが「コンフリクト」という状況です。それは組み合わせによって3パターンがあります。

@接近−接近型  

「今週末はコンサートにも行きたいし、映画にも行きたい」
一般的には魅力の高い方を選択するので、それほど深刻なコンフリクトにはならないことが多いようです。

A回避−回避型  

「仕事はしたくないし、クビになるもの嫌だ」
前門の虎、後門の狼のような状況で、結構つらいですね、これ。

B接近−回避型  

「会社にいくのは楽しいが、あの上司の下で働くのは嫌だ」
この手の奴がコンフリクトとしては。よく私たちを悩ましているような気がします。
  
基本的に人の行動を持続させるのは、「接近欲求」の方です。
「回避欲求」は、対象から離れれば当然ですがしぼみます。
となると、長い目でみたときにどちらで人をコントロールをするのがよいかを考えると、明らかに「接近欲求」の方ですね。

例えば、勉強を子供にさせる場合の話。

「小遣いを減らされるのが嫌なので勉強する」というように「回避欲求」でいくのか、
「将来、宇宙飛行士になりたくて勉強する」というように「接近欲求」でいくのか、

ということですね。「接近欲求」で人を動かすことが出来た方が幸せです。

●その30●
おしゃもじコンプレックス
今日のキャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座で橋本先生に聞いた言葉です。

「おしゃもじコンプレックス」。

そのこころは、「いつもすくう(救う)だけ」。

キャリアカウンセラーは、クライアントの課題を自ら解決できるように支援するのが役割だといえますが、実はクライアントがとらえているクライアントの課題というのは、真の課題でないケースが多々あります。クライアントがいうことをとにかく解決させてあげようというサービス精神旺盛なキャリアカウンセラーが、相手のいう課題をそのまま受け入れて救ってあげようとする姿勢を揶揄したのが「おしゃもじコンプレックス」という言葉ですね。

スーパーバイザーは、スーパーバイジーが「これが課題です」といって持ってきた課題については、基本的にはひっくり返して真の課題を探した方がいいという話が今日はありましたが、これはカウンセラーとクライアントの間でも結構、同じようなことがいえるときがあるでしょう。

【スーパービジョンでとりあつかう課題】…これはクラスメイトのために書いています。

A:バイジーがいう課題
B:バイザーがとらえたバイジーの課題
C:バイザーがとらえた「クライアントがとらえているであろうクライアントの課題」
D:バイザーがとらえたクライアントの問題
E:(カウンセラーがとらえた)クライアントがとらえたクライアントの問題
F:カウンセラーがとらえたクライアントの問題

重層階層になっているところが実に難しいです。

●その31●
スーパービジョンで取り扱う課題
改めてキャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座について。
先週も整理したのですが、橋本先生が提示された【スーパービジョンで取り扱う課題】の6つについて。

【スーパービジョンでとりあつかう課題】
A:バイジーがいう課題
B:バイザーがとらえたバイジーの課題
C:バイザーがとらえた「クライアントがとらえているであろうクライアントの課題」
D:バイザーがとらえたクライアントの問題
E:(カウンセラーがとらえた)クライアントがとらえたクライアントの問題
F:カウンセラーがとらえたクライアントの問題

スーパーバイジー(カウンセラー)は、当然ですが自ら何らかの課題をもってスーパービジョンの場にやってきます。でも、それが本当の課題であるかどうかは実はわかりません。スーパーバイザーは、スーパービジョンの中の応答をもとに、スーパーバイジーの本当の課題をみたてる必要があります。これがAとBの関係なのですが、同じようなことはカウンセラーとクライアントの関係でもよくあります。

それがEとFなのですが、クライアントの場合はスーパービジョンにくるスーパーバイジーのように、私のこの課題を解決するためにスーパービジョンを受けることにしましたとはいって来ません。ですから、Eは「クライアントがいう課題」ではなく、「(カウンセラーがとらえた)クライアントがとらえたクライアントの問題」という少々まどろっこしいものになります。これに対して、カウンセラーはFである「カウンセラーがとらえたクライアントの問題」、つまり真の課題をみたてるわけです。

そして、CとD。これはもう複雑です。スーパーバイザーとして、クライアントの課題が何であるかをとらえるのですが、あまりに複雑になるので書かれていませんが、CもDも間にはスーパーバイジー(カウンセラー)のフィルターが入っているのです。

●その32●
ラス1、CAAスーパーバイザー養成講座
本日、キャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座。公募した本当のキャリアカウンセラーの皆様がスーパーバイジーとしてやってこられました。われわれ受講生が、スーパーバイザーとしてこれに相対します。

で、私のスーパービジョンからの反省。

たくさんあるのですが、どうしてもケース記録という事実を丹念にあたらずに、概念で筋立てをしてしまいがちな癖がまた出ました。特に今回はスーパーバイジーの課題を早く見立ててしまったため、それに基づいて空中戦を繰り広げた感じでした。スーパーバイザーが想定したスーパーバイジーの課題は、まずはあくまでも「仮説」です。それを認識しないと「決め付け」になります。また、「仮説」の怖さは、自分が立てた仮説に適合する情報は拾うけれども、そうでない情報は捨ててしまう、仮説を検証するような材料ばかりを集めてしまうというように、無意識になる可能性があることです(これは、カウンセラーとクライアントの関係にもいえることです)。
セッションの中で「仮説」を作り、それによって全体をマネジメントすることは大切ですが、仮説=課題としないことですね。今回は「仮説」にかなり自信があったのですが、丁寧に事実を使って検証をしていかないと、仮にそれが正解であっても、結果的にスーパーバイジーにとっては納得感を得にくいものになるという、ある意味では当たり前のことを改めて感じました。

終了後に内田先生から、3つの視点で確認するという話をいただきました。
@クライアントは具体的に何を言ったのか
Aカウンセラーはクライアントの話を聞いたときにどう思ったのか
Bそしてカウンセラーはどう応答したのか

次週で全20回のコースは修了になりますが、まだまだ学びと実践は続きます。

●その33●
スーパーバイザー養成講座初回振り返り@
今更まったく遅いのですが、キャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座も、今週の日曜日でお終いですので、初心に戻って初回のノートから整理してみます。

■このプログラムの目標:スーパーバイザーとしての実行力を習得すること

・訓練のためのプログラムではない、自分自身がスーパーバイザーになるためのプログラムである
・教えることと、自分自身が力を付けることとは違う
・考え方を習うのではない、自分で実行できるようになる、自分の中にきちんと概念を作る

■研修生に期待されること
  @カウンセラーとしての実力の向上
  A自己の向かい合う姿勢と自己に気づく力(selfawareness)の向上
  B自己の成長およびキャリアカウンセラーという職業の発展を願う姿勢
  Cスーパーバイザーとしての新たな能力を取得する真摯な態度
  D宿題を忘れないこと

■スーパービジョンの定義と目的

・スーパーバイザーは、職業ではなく役割
・カウンセリングと独立して存在するものではなく、カウンセラーという役割の中にある。カウンセラーとして考えることから離れ、スーパーバイザーとして考えることができるようになることから始まる
・カウンセラーという専門職を育てるための役割
・それには視点の切り替えが必要。スーパーバイザー自身の経験の中にとどまらない。ベテランのカウンセラーとプロフェッショナルのスーパーバイザーは違う。スーパービジョンというのは一連のプロセスを持った教育プログラム。カウンセラーとクライアントの関係と、カウンセラーとスーパーバイザーの関係は違うもの。
・スーパービジョンの基本形はカウンセリングの場に同席して生の状況をみて、必要があれば介入するというもの。ただし、これは現実的には不可能なので、それを別の場所と時間でケース記録を介してスーパービジョンとして行う。
・協会の考え方としては、5回のスーパービジョンを指導できるようになることが必要。ある程度の継続性を持つを持つもの。必要に応じてやるものではない、困ったときに必要に応じてやるのはコンサルテーション。そして、いつまでもやるものでもない。カウンセラーの自律を促すことが大切。

■スーパービジョンについての共通理解

@カウンセリング場面だけでなく、プロフェッショナルとしての全人的教育を行う、専門的介入
・教育プログラムが必要、プロとしての責任が生じる
・必要に応じてやるのではいけない

Aスーパービジョンの理論はカウンセリング・アプローチの違いに関係なく共通
・理論に凝り固まったカウンセラーが多い。その人がどんな教育を受けてきたかに着目する。

Bスーパーバイジーを通して、クライエントに介入する方法でもある
・ただし、直接、クライエントに会うことはしない(普通できない)
・ケース記録が大切になる。

Cスーパーバイジーにとって、スーパーバイザーはカウンセラーではない
・スーパービジョン関係のみ、カウンセリング関係になってはいけない
・はっきりとカウンセラーに問題を指摘し指導することもある

Dカウンセラー(スーパーバイジー)及びケースをどう評価するかが重要
・カウンセラーが抱えている問題をどうみるか

E専門職のゲイトキーパーである。したがって門から社会に出してはいない人は出さない

FSVの大きな流れは、【申込み】⇒【第0回面談】⇒【第1〜5回面談】⇒【終了】

スーパービジョンには「判断力」と「観察力」が必要。教育的・評価的視点でみて相手に役に立つようにどう伝えていくか。その意味では「説得力」も必要。優れたカウンセラーが、優れたスーパーバイザーになるとは限らない。しかし、優れたスーパーバイザーのほとんどは、優れたカウンセラーであろう。

■スーパーバイザーの機能

@インストラクション
・評価のプロセス・結果を伝える。「教師」の役割。
・きちんと伝えるべき知識と、説明することができるスキルが必要。

Aスーパービジョン

Bマネジメント
・5回のプログラムを作り、変更していく。目的達成までのプロセスのマネジメント。
・専門家として働くためのマネジメント

Cコンサルテーション
・専門的な知識を交換しあって進めるのがコンサルテーション。

Dリサーチ
・リサーチの視点も必要。目的にあわせて情報を集める。さらには研究活動。

※これら5つの役割が一人の中で統合されるのがスーパーバイザーである。

この先、もう少し長くなるので、明日に続かせます。

●その34●
スーパーバイザー養成講座初回振り返りA
今更まったく遅いのですが、キャリアカウンセリング協会のスーパーバイザー養成講座も、今週の日曜日でお終いになりますので、初心に戻って初回のノートから整理してみようかと思いました。昨日たけでは収まらなかったので、今日はその続きです。


■スーパービジョンの構造

カウンセラーとクライアントがカウンセリング関係にあるとすると、スーパーバイザーとスーパーバイジーは教育的介入関係にあるといえる。

・スーパーバイジーの求めることをやるだけではない
・スーパーバイジーの成長とクライアントの福祉のための行為である
・スーパーバイジー(カウンセラー)とクライアントはどうしても情緒的関係になりやすい。スーパーバイザーはこれを客観的に把握することができる。冷静、多角的、柔軟な目線。本当に役に立つ情報を提供していく。したがって、苦しい情報の提供も必要になる。ここでもやはり関係構築は重要になってくる。

○カウンセラーとの違い
・人そのものに対するカウンセラーに対して、活動上の課題に対する全人格的教育であり、ゲイトキーパー役。
・直接的にクライアントに作用するカウンセラーに対して、スーパーバイザーは間接的に作用する。自律は促すものの、評価・教育的立場にたつ

○教師との違い
・教師は導管教育的だが、スーパービジョンは双方向に進む
・カリキュラムは相手(スーパーバイジー)と作る、専門職の育成りプロセスである

○コンサルタントとの違い
・コンサルタントは「事柄」に向いている、問題解決が役割

○ティーチングとの比較
・同じところ: 相手に新しい知識・技術を与える
・違うところ: ティーチングは、既に存在しているカリキュラムを教えるものであり、用意されたものから選択すればよい。これに対して、スーパービジョンは、一人ひとりの必要性に応じて中味を決めていく。1つ1つが常にユニーク。目の前のスーパーバイジーに対して、何から始めてあげるといいのかを真剣に考える。

○コンサルテーションとの比較
・同じところ: 相手が効果的・専門的に解決できるようにする
・違うところ: コンサルテーションが、両者の関係はイコールであり専門分野が異なるヨコの関係であるのに対して、スーパービジョンはタテの関係、指導する・しないの関係。コンサルテーションはこの件に対して1回だけが基本。ドライな関係。必要がおきたときに任意に実施するもの。法律家や精神科医へのコンサルテーション。また、スーパービジョンは評価・指導的要素が入る。プログラムを作って複数回実施するもの。

○カウンセリングとの違い
・同じところ: 相手の課題に焦点を当てる
・違うところ: カウンセリングが、クライアントがよりよく生きていくこと、クライアントの自立性、セルフマネジメントを実現させることを目指すのに対して、スーパービジョンはスーパーバイザーがカウンセリング能力を高めていくこと、カウンセラーとしての資質を高めていくことに焦点をあてる。


「自分はカウンセラーのときとは違ったことができる自分だ」と明確に意識すること大切。私ならこのクライアントに××する、というカウンセラー目線だけに陥ってしまってはいけない。スーパーバイジーにかわって、カウンセラーの役割をしない。それではスーパーバイザー自身の小型版を作るだけ。私の考え方のとおりに考えてみてくれというのは、自分流の押し付けでしかない。スーパーバイジーは、違った視点をもらった喜びは得られるが、その人らしい自律したキャリアカウンセラーにはなれない。
・違う視点でみることは大切。同じ視点ではメンターと同じになってしまう。
・スーパーバイザーは単なるベテランカウンセラーではない。+αが必要。それがスーパーバイザーの理論。
・最終的にはスーパーバイジーを一人の人間として成長させる。依存的にしてはいけない、最後は一人で解決できるようにする。スーパーバイザーはけして後見人ではない。
・関係構築は重要。否定的なことを受け入れるには勇気がいる。否定的な評価が受け入れられるだけの関係構築が必要。
・スーパービジョンの場では何が起こるかわからない。カウンセラー以上にその場その場で柔軟的に対処が必要になる。よいスーパーバイザーは高いマネジメント能力を持つ。
・短期間で育てるための評価的視点・評価的能力が重要
・厳しいけれども、客観的にものをみることができることが大切。師匠と弟子の関係ではない。師匠・弟子の関係はミニ師匠を作るだけの馴れ合いの関係。
・ただし、客観的・評価的だと冷たくなりがちな傾向があるので注意。
・ある部分のスキルだけでなく全人的存在でプロフェッショナルにする。社会的責任、社会的信頼が必要。
・あくまでも主導権はスーパーバイザーにある。計画的に行う。クライアント中心の世界とは根本から異なる。


■スーパーバイザーに求められるコンピテンシー

《基盤としてのコンピテンシー》
@スーパーバイザーとしてのセルフアウェアネス
A職業的専門家育成
Bスーパービジョンマネジメント
※カウンセラーのコンピテンシー(C2レベル)
《SVプロセスにおけるコンピテンシー》
    Cスーパーバイジーとの関係構築
    Dケースの概念化と評価
    Eスーパーバイジーの評価
    F知識活用
    G教育方法活用
    Hプログラム構築
    Iスーパーバイザーとしての介入

■キャリアカウンセラーのコンピテンシー(C2レベル)

《基盤としてのコンピテンシー》
@セルフアウェアネス
A分析的思考力
Bケースマネジメント
C専門性の向上
《カウンセリング面談におけるコンピテンシー》
    D関係構築
    Eプロセス構築
    Fクライアント評価
    G意思決定
    H介入行動
《特定場面におけるコンピテンシー》
    I臨床的判断と対応
    J組織心理・人的資源管理の観点からの判断と対応
    Kグループダイナミズムの応用