いま考えていること 361(2009年06月)
――温暖化対策とGM――

 「ポスト京都議定書」をどうするか、ドイツのボンで国連気候変動枠組み条約締約国会議が開かれています。

ご存じのように アメリカは京都議定書が経済の発展を阻害するという経済界の声に圧されて京都議定書から脱退しました。でもその結果アメリカの経済は強くなったでしょうか?生産を忘れた金融資本主義に走り、その結果が今日のGMの姿ではないでしょうか?日本でも一時期、新自由主義とやらアメリカのような風潮が席巻しましたが、生産を放棄して金融で生きるような転換がなかったのは幸いでした。現在の不況が一段落すれば何か新しい考え方に沿った経済が世界的にも生まれ、在庫調整も終わって新興国を中心として爆発的な需要が起こることと思われます。日本の優れた生産技術が見直されることでしょう。最近国内の法人・個人ともまだ株式の売却が主流ですが、早くも外人筋は買い優先になってきているのも注目されます。

二酸化炭素の排出量を減らすのは大変な努力を必要とします。しかしその目標を達成するためにいろいろと生産に当たって努力することが必要になり、結局は企業にとっても効率化を迫り大きい利潤をもたらしました。アメリカは京都議定書から脱退しましたが、結果として生産面での省エネ努力を必要としなかったものですから今日のGMの状況を生み出しました。省エネは企業に対してマイナスの効果を持つとばかり云えないのです。省エネの努力の中にこれからの経済のあり方を迫り、生産工程の革新を迫る効果があるのです。アメリカの産業界が金融に事業の利潤を求めるのをやめ、生産に於いて省エネの努力を復活しなければいくら国家が資金面で援助を膨らませてもGMの復活はあり得ないと思います。

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いま考えていること 362(2009年06月)
――各国の軍事費――

たとえば日経ネットは
「スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が8日発表した2009年版年鑑で、中国の08年の軍事費が英国、フランスを抜き、米国に次いで初めて世界2位となったことが明らかになった。

 中国の軍事費は推定849億ドル(約8兆1500億円)と前年に比べて10%増えた。過去10年で3倍になるなど高いペースで拡大し、世界全体の軍事費の5.8%を占める規模となった。」

と2009年6月9日各報道は一斉に中国の軍事規模の拡大を報じました。しかし、日本の軍事費のことは書かれていなかったので、国際平和研究所のレポートを見てみました。興味を持った国々の2000年〜2008年のドルベース(constant dollars:年度ごとの補正を行った後のドル表示・・・恒常ドルといわれる)での比較表を作ってみました。金額の単位は百万ドル(Million US dollars)です。

under construction

中国とロシアのデータはSIPRIによる推定値ですからもともとそのまま数値を鵜呑みに評価することは出来ないのですが、中国の軍事費が殊に急速に伸びていることは否定出来ません。超大国といわれるアメリカの群れを抜いた軍事費の大きさに今更ながら驚かされます。
軍備を持たないと宣言した憲法を持つ日本が軍事費ではかなり高い位置にいることも、現在のわが国の財政の状態とにらみ合わせてこれでは戦後まもなく描いた福祉国家の夢も夢のままに終わるのかも知れません。しかし比較的日本の軍事費は抑えられた状態にありますが、これが国家財政の窮乏状況から来ているのだとすると、福祉を消費税増税でまかない、その結果生まれた余裕が軍事費の伸長を生み出すのなら、そう簡単に消費税増税に賛成も出来ません。近くに北朝鮮のような物騒な国があるのが理由かも知れませんが、所詮軍備は軍備、非生産的なもので、下手をするとかっての日本帝国の惨劇の再現にならなければよいがという思いです。超大国アメリカを入れると他国の軍事費が小さくグラフが見にくくなりますので、アメリカ以外の国の軍事費をグラフにしてみました。これによって中国の異常な伸びと日本の軍事費の大きいことがはっきりします。ドイツについては低下傾向が見られるのも意外でした。

under construction

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いま考えていること 363(2009年06月)
――テレビを買う時期は?――

いよいよエコポイント実施の時期が近づきました。エコポイントは2010年3月末までの購入製品が対象で、ポイント登録申請の締め切りは来年4月末です。商品交換の期限は12年3月末です。ご存じのようにアナログテレビは2011年7月に放送を終わりデジタルに変わります。テレビはエコポイントの導入もあって、おそらく爆発的に今年から来春にかけて売れ行きを伸ばすことでしょう。ところで一例としてシャープの40型テレビLC-40AE6の2009年6月12日現在の価格をインターネット上で比較しているのを見ますと一番安いものは11万7931円、価格順で51位の店では19万8000円と書かれています。この機種のエコポイントは23,000点ですから23,000円がバックされてくることになります。というのでおそらく来年の3月まで消費者の購入意欲は高まるでしょう。

あなたはどうしますかと聞かれたら、私の答えは次の通りです。私はへそ曲がりですから、あまり賛成頂けないかとは思いますが参考までに記しましょう。

おそらく来年3月が終わると急激なテレビ販売高の低下が予想されます。エコポイントでバックされてくる金額は23,000円ですが、この程度の代金格差は現在でも販売店によって見られるのですが、3月以降はさらに代金の低下が激しくなるでしょう。大量供給による経費減もさらに値引きに拍車をかけるでしょう。結論としてはエコポイントのかけ声に驚かされて何もあわてて買うことはありません。私は来年3月以降エコポイントがなくなってからゆっくりデジタル対応テレビを購入するつもりです。まあ現在の不況下政府がさしあたって消費を促すためにエコポイントという甘いえさを目の前にぶら下げるのは多少効果はあるでしょうが、私たちは自分の財布が可愛ければ何もあわてて政府に協力することもないのです。ゆっくり考えましょう。

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いま考えていること 364(2009年06月)
――血液検査について――

私は長年自分が患者生活を経験してきたので今日は血液検査の結果の見方について感じていることを書きたいと思います。例としてγ−GTP,GOT,GPT,K−イオン,クレアチニンを取り上げてみます。

◆家内はアルツハイマー病で毎日デパケン、アレビアチン、リボトリール、シンメトレルを服用しています。γ−GTPは肝臓の解毒作用と関係のあるγグルタミールトランスペプチダーゼのことで肝臓や胆管の細胞が壊れると血液中に流れ出てくるのです。健康な人は男性で50国際単位以下、女性で32国際単位以下ということになっています。飲酒に伴うアルコール性脂肪肝の指標にもなります。家内の場合この値が現在394で、1999年5月では445。以来高い時には659(99年12月)今日まで10年間の平均は425国際単位です。10年間の結果はexelに記録してあって平均もこれを利用して求めたのですが、このように検査結果はある時点の結果で判断してはなりません。時間軸に沿って「線」で判断しなくてはならないのです。つまり時間とともに起こっている変化を見なければならないと思います。家内の場合常にγ−GTPは正常値の10倍以上の値なのですが、GOT,GPTの結果をあわせて観察する必要があり、家内の場合はGOT=20(正常値:8〜38),GPT=14(正常値:4〜44)ですから、おそらく肝臓の破壊というのではなくて薬の副作用であろうと思っています。
◆γ−GTP,GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ),GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)は「逸脱酵素」といわれいずれも肝臓の細胞が壊れると血液中に漏れ出します。これらの酵素が直接病気と関係するのではなく肝機能の破壊の指標となるだけです。所が血液検査のカリウムイオン濃度の結果はこのイオンの濃度が直接病気と関係するのです。右心房にある洞房結節から発生する活動電位が心拍の調節を行っているのですが、カリウムイオン濃度が高くなって高カリウム血症となると致死的な不整脈や心停止を引き起こすのです。
γ−GTP,GOT,GPTが高い場合はたとえば断酒して肝臓の保護を心がけなければなりませんし、カリウムイオンの場合はアーガメイトを服用してカリウムイオンの排泄を計ったり、食事制限してカリウム含有量の高いものを取らないようにしなければなりません。
◆腎臓の悪い人は尿素体窒素の測定とともにクレアチニンの測定結果が知らされます。クレアチニンは筋肉中のクレアチンリン酸の変化したものですが腎臓の働きによって尿中に排出されます。ですから腎臓が健全であれば血液中には認められないはずなのです。クレアチニン値が高いと言うことは腎機能が衰えていることを意味します。クレアチニンそのものではなく要は腎臓の機能を見ているのです。腎臓の糸球体(Glomerulus)を通過する水分量は一日に170リットルにもなりますが尿として排泄されるのは2リットル程度ですから大部分の水と低分子量の糖やアミノ酸も再吸収されているのです。腎臓が悪くなるとこの糸球体透過率(GFR:glomerular filtration rate)が低下し、ついには人工透析を必要とするにいたるので、大事なのはこのGFRがいくらかということなのです。クレアチニン値をGFR値に換算して患者に知らせることが大切でその方が患者に腎臓機能に対する自覚を促します。

" インターネットを利用するとこの換算が容易にできます。
換算結果を見てGFR値が90以上なら正常ですが、たとえばGFR=40というとほぼ腎臓の機能は40%くらいと考えて良いようです。腎臓の病気は自覚症状がなかなか現れずGFR15程度まで気づかないようで、そんなに低くなっているともう透析を避けられません。私は現在クレアチニン値が1.4ですからGFRは38.2になります。

要約しますと@点でなく線で結果を見よう。A何を計っているのか。わきまえよう。B正しい解釈を患者に与えようというところです。 そうして対策を自覚しようといいたいのです。

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いま考えていること 365(2009年06月)
――これからの展望――

日銀はなお雇用や所得の不安が大きく、需要も伸びていないことから景気の先行きには慎重ですが、政府筋からは総選挙を控えて景気の楽観的見通しが流されています。私はこれからの資本主義経済体制のあり方について新しい構想が現れないと危機は終わらないと思っていますので、その立場から推移を眺めています。現在はとても危機は去ったといえる段階ではありません。

注目すべき兆候がオバマ政権に見られたのが昨日です。2009年6月17日に正式に発表される金融規制改革案です。基本的には資本主義のこれまでの延長線の上にあるのですが、今回の「システミックリスク」を今後起こさないような規制を連邦準備理事会(FRB)のもとに強化し、消費者保護・投資家保護の方策も創造する方向のようです。新しい資本主義といえる抜本的に新しいものではありませんが、現実に即した手段として一つの前進かと思われます。アメリカ国内ではFRBの信任も弱く、今後賛否両論のあいだで結論に至る過程は容易ではなさそうです。

ロイターが報じた改革案の要旨 のうち金融システムの規制と消費者・投資者の保護に関係した事柄を摘記してみましょう。

まず機関としては@「ナショナル・バンク・スーパーバイザー」を置き銀行監督業務を一元化する。AFRBをシステミックリスクの総合的監視機関とする。B省庁横断型でシステムの抜け穴を防ぐ金融サービス監督協議会を作りFRBの監督下に置く。結果はFRBの役割を強める事になります。

金融機関には自己資本増強と流動性強化を義務づけます。
資産担保証券の発行には取引にかかわる文書の標準化を促し、証券化商品を扱う場合の報酬も投資家などの利益と連動させます。

店頭デリバティブの監督を強めます。またヘッジファンドやプライベートエクイティの証券取引委員会(SEC)への登録を義務づけます。先物や証券全般に規制を整えます。

消費者・投資者の金融関係利益を保護するために金融消費者保護庁(CFPA)を創設します。

ここにはあまり詳しく紹介できませんが、要は金融に対して規制を相当強める姿勢です。金融自由主義の弊害を規制する方向ですから反対の人たちも多いようです。これから当分アメリカ市場はこの規制に対する受け取り方を反映して不安定に揺れ動くかと思います。しかし何らかの金融に対する規制は必要だと思うので、このオバマ政権の方策が当面新しい資本主義の方向になりそうです。もう少し賛否の議論が煮詰まってこの提案が受け入れられれば一応今回の騒動の終結と見られるのではないでしょうか。

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いま考えていること 366(2009年07月)
――プロフェッショナルということは――

NHKテレビにはプロフェッショナルという番組があり、私はこの番組が好きです。取り上げられている人物がどなたもそう簡単にまねられない姿勢で人生を歩んでおられるからです。番組中で「プロフェッショナルとはどういうことと考えておられるか」と登場人物に問いかけるのを常としておられ、様々な答えを聞けるのですが、私はまずプロフェッショナルとは自分で全責任を担って行動する人であると思うのです。

私のプロフェッショナル観をもう少し詳しく検討してみましょう。
どの分野であれ、その分野で常に先頭にあって自分自身で考えの上でも技術の上でも最前線をリードしている人だと思っています。たとえ自分の下に働く人があってもその人たちに下投げして言葉だけで督促したり説教するのではなく、その人たちが行きづまれば言葉だけではなく、いつでも乗り込んでいって自分で解決する能力を備えている人です。プロフェッショナルであり続けるには不断の努力がいります。不断の修練がいります。いつでも自分の眼で対象を見つめ、見たことを分析して対処方針を示し実行する実力を持つことが必要です。もしその人が医師なら病人の様子をただ家族や担当医から聴くだけでなく、患部の状態を自分の眼で確かめるでしょう。その上で処方もすれば必要なら適切な手当や手術を自ら執行するでしょう。大学の一分野の先生ならただ卒業研究のテーマを学生に与えるだけでなく、その学生が実際の研究に入った場合には、その進行状況を常に確かめ、何か研究を進める上で問題に直面しておれば、指導者自らが対策を考え、場合によっては自身がそれを実行してみせることが必要です。プロフェッショナルである人は口先の助言を他人にまき散らすのではなく、自分の眼で親しく対象を観察し、考え、そこで出てきた結論を自分で責任を持って実行できる人だと思います。

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いま考えていること 367(2009年07月)
――考え方のバックグラウンドの変化に留意――

一つの考え方が成り立った背後にはその考えを生み出したバックグラウンドがあります。一つの考えにはそれを生み出した歴史的バックグラウンドがあり、そのバックグラウンドを無視して考えだけを一人歩きさせると現実が反抗して考えは合わなくなるのです。というのは最近の出来事にはその考え方が生まれた歴史的背景、歴史的条件の検証が欠け、時代の変化を考慮しないで過去に生まれた考えを一人歩きさせたために、現実との食い違いを招き事件になってしまったことが多いのではないかと思えるからです。バックグラウンドが変化すればそこから生まれた考えも変化させねばならないのです。

たとえば鳩山さんが非核三原則のうち「核を持ち込まず」について寄港するアメリカ艦船の核搭載は認めてもよいのでないかと発言していることに対し、猛烈な反対がありますが、非核三原則ができてから今日に至る歴史を検証すると、寄港するアメリカ軍艦は核搭載のままだったことが秘密裏にもせよ現実であったことが今日明らかになっているのです。「持ち込まず」というのは日本国内に「核を持ち込んで設置しない」ということでアメリカ艦船の寄港を認める以上その艦船が「核を積載」していても持ち込んだのではないというべきではないでしょうか?広島・長崎の広範な一般市民の核爆弾被害を経験した日本が核爆弾ノーの信念を持つのは当然のことですが、現在はかっては予想もしなかった北朝鮮の核保有とミサイルの日本国土攻撃能力保持とは、無視は出来ません。この現状にあっても北朝鮮に核攻撃をすることは人道上とても認められるものではありません。アメリカのオバマ大統領は核の廃棄を呼びかけています。これは全く正しい方針で全世界から核爆弾を廃棄すべきものです。しかし核を持たないわが国は現実としてアメリカの核の傘の庇護を受けているのも事実です。この事実が北朝鮮が日本への攻撃に踏み切る場合への防御作用にもなるでしょう。だとすると核搭載のアメリカ軍の日本寄港があっても拒否するものでもないのではないでしょうか。

北朝鮮の拉致問題で田原総一郎氏が有本恵子さん、横田めぐみさんの二人が亡くなっていると発言したことに有本さんの両親が告訴したというニュースが流れました。拉致問題もすでに長い年月が流れ、拉致被害者の現状についての情報認識が欠けているとただ拉致はけしからんという議論だけで時が過ぎていき、日本と北朝鮮の外交的諸問題は現実には永久に解決はできなくなっています。

北方四島の帰属についても、戦後60年にわたるロシア統治の現実を無視して、歴史的に日本固有の領土だと国会で議決しても何ら実効をもたらさないばかりか、他の外交的諸問題の折衝にも障碍をもたらしているのが現実ではないでしょうか。北方四島のソ連占拠は不当なものだと私も思うのですが、残念なことであっても長い歴史が醸成してきた現実を無視した発想は実りをもたらさないのが現実です。その一事に捕らわれて硬直し、現実を無視すると、すべての現実の進捗は妨げられるのです。

新彊ウイグル自治区での暴動も、過去、中国政府の民族政策で自治区設置にあたっては少数民族に自治区内で民族の主体性を与え、優遇する政策を採り、自治区内国営施設、大学、軍では漢族の割合も60%以下に制限し、大学入試での加点、犯罪での軽罰化、減税化など民族優遇策が見られ言語も中国語を押しつけるのでなく民族語を奨励したのです。満州国と同じように最高のポストにはウイグル人を置き、実権は漢人が握る体制であったことは、ウイグル族を無視した体制ではありましたが、ウイグル人のプライドをある程度尊重するものでありました。しかし今日のように交流が普通になり、仕事も国際的普遍的なものになってくるとこの政策はウイグル人を就職から遠ざけ、悪い方向にウイグルの人たちを阻害する結果になり、漢族にもウイグル族にも不満なものになってしまったのです。これも長年の歴史が生み出した矛盾というべきものです。今日必要なのはウイグル族の特別保護ではなくて漢族との間に完全に分け隔てを作らない平等化政策を展開することでしょう。

我が国では敗戦後の農地解放も農民の歓迎するものでした。地主による搾取がなくなり、働く人自身が土地を持てるようになったのですから。しかし戦後60年の歴史はこのバックグラウンドを変えてしまいました。高齢化もそうですし、生産の機械化も進みました。当時とは事情が変わってしまっているのです。物の国際的な流通の自由化もすっかり敗戦直後とは変わりました。狭い土地もいつかは宅地化や会社の進出によって高価に売却されるかもしれないという期待もあって、手放さず、遊休化した土地となり、大規模農業の展開を妨げているのが現状です。バックグラウンドの変化が進んだ現在、農地所有のあり方も見直さないと日本農業はじり貧の過程をたどっているのです。やはり大規模営農が可能になるように規制を取り払い、資本もいろんな方面から取り入れられるように変革していくことが必要だと思います

なにによらず基礎条件の変化が起これば、それにあうように「考え方」の方を変えないと矛盾を生じてトラブルを引き起こしてしまいます。


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いま考えていること 368(2009年07月)
――子ども手当と財源――

いよいよ総選挙が開幕です。各党とも選挙を控えてばらまき政策が賑わうことでしょう。その一つに民主党の「子ども手当」があります。子どもの数が減っていますから、出産を奨励するために「子ども手当」も有効でしょう。

しかしその代償財源として「扶養控除(0才から15才まで)」「配偶者控除」の廃止による捻出が提示されています。 「扶養控除」の廃止は子ども手当の支給でカバーされますからよいとしても「配偶者控除」の廃止には異論も多いことでしょう。

私はこの話を見ると「配偶者控除」を子ども手当から離れて考えると、今積極的に廃止しなければならない理由はないように思うのです。配偶者について税金を控除することで単身者に何か不合理な損失を与えているとは思えないのです。やはりこれは財源に困って手をつけた控除廃止だと思います。消費税は4年間は据え置くとか、埋蔵金や予算上の無駄を省くことで福祉を増やす予算が組めるという民主党も、真剣に検討すると、とても予算は組めず結局配偶者控除に手をつけたとしか思えないのです。現在の不況下しばらくは大企業減税や高額所得者の累進課税の緩和を元にもどして財源とせよという主張の方がまだしもうなずけます。

やはり現在の税制では政府支出をまかなえないという現実があります。予算の組み替えを要求して国民の福祉予算を増加させようという方針には実現性があるのでしょうか?「ない袖は振れぬ」と昔からいいますが、今のような莫大な赤字を抱えている政府に何か負担をせよというのは無理があるように思うのです。もっとも一機140億円いやアメリカが輸出専用に作ると200億円にはなるだろうというF22を次期戦闘機にしようと防衛庁など真顔でいうのですから、私などとても考えられない余裕がまだまだあるのかもしれません。だとすると私の説など杞憂以外の何者でもないのかもしれません。となると、誰が政府を握ろうとおよそ信じるに足らずという結論しか出てこないのですが。

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いま考えていること 369(2009年07月)
――18才成人の提案について――

国民投票法で投票年齢を原則18才以上とすることが決まり、成人年齢を20才から引き下げることを検討してきた法制審議会民法成年年齢部会は29日18才に引き下げるのが適当との結論をとりまとめました。これに伴う賛否の意見が新聞紙上でも賑やかなことです。仮に改正が成立しても「養子がとれる年齢」は20才に据え置くといっていますし、この他、選挙権・裁判員適格年齢を引き下げるのか、また飲酒・喫煙が許される年齢をどうするかなどが議論の対象になるようです。私は医学的に成人したと見なせる年齢がいくつなのかが一番大切だと思います。脳の発達が18才では不十分とか、18才以下で飲酒・喫煙が致命的な障碍を及ぼすと科学的統計や心身の発達の検討から結論されるのなら、法制審議会の結論は採用すべきではないでしょう。しかしそのような見解が出ないのであれば、中途半端なことをするよりも18才になれば完全に成人したと見て養子がとれる年齢も含めてすべての法律を改めるほうがよいというのが私の考えです。問題になるような事があれば教育によって自覚を促し、このような問題があるが成人になれば責任を持って自分で処理しなければならないのだと自覚と責任を促すべきだと思います。18才から20才の間の人たちに一部では未成年の特権を今のままで据え置くのでは新しい差別の設定だと思います。

鍵は科学的に18才を成人と見る事ができるか20才にならないと見られないか、です。情緒的見解は採りません。

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いま考えていること 370(2009年08月)
――今度の選挙をどう思うか――

月末には衆議院選挙が実現します。各政党はマニフェストを発表して、実質的にはいま選挙戦がたけなわです。

今度の選挙に私がどのような考えを持っているか書いておこうと思います。多くの政党があるとはいえ態勢は自民・公明対民主であるとの見方が大勢です。自民・民主ともにバラ色の変革を説くのに熱心でばらまきの政策が目白押しです。自民・公明は今日まで政権の座にあったのですからこれまでにすでに自分たちの政策を提言し実行してこれた筈だと思います。完全でなくてもすでにその芽になるものは実現できたはずです。「ご破算で願いましては」は政権党にはできないはずで今後の政治についてのマニフェストもこれまでの政治の延長あるいははっきりした反省を込めた否定の上での献策でなければおかしいと思います。現在提示されている自民党のマニフェストはこのように考える私からは全く問題になりません。
他方、民主党の政策も一見バラ色なのですが、それを裏付ける財政的裏付けという点でいまいち信用する気にならないのです。この収入面での不安という点では共産党が軍事費と大企業・大金持ちへの課税強化で12兆円を財源にできるから消費税増税は反対というのにもそのまま受け入れる気にはならないのです。それは世論の大勢は共産党の提言をそのまま受け入れることを許さないだろうし関連する法改正にはそれだけでも何年もかかるだろうと思うからです。さらに防衛費の約50%は人件費で、防衛費を削ると自衛官の給料が下がり(自衛官の給与はここで見られます応募者が減ってきて、ついには徴兵制度を復活させる結果にならないかという危惧も持つのです。理想的には世界から核兵器を廃絶するという考えに反対する人は一人もいないと思うのですが、そのゴールに到達するまでの過渡期は長く段階的に緻密な計画の上で理想に向かって歩みを進めるしか方法はないと思うからです。一挙に核兵器がなくなるわけではなく、北朝鮮が核を放棄するとは思えないからです。九条を持つ日本は軍備を一切持たないのがたてまえですが国際情勢の現状は世界有数の軍事費に支えられた自衛隊を保持しなければならないのが現実なのです。私の考えでは九条を堅持して理想は理想としてその実現を期さなければならないことはいうまでもありませんが。

昨日のNHKスペシアルで海軍軍令部の第一委員会の専横が描かれていましたが記憶に残るのは「当時の海軍は海軍あって国民のことは頭になかった」というコメントでした。思いすぎかもしれませんが現在の日本は自民・公明政治の下「官僚ありて国民なし」の状態に陥っていると思います。今回の選挙でまだしも期待できるのは民主党に変われば現在の官僚体制を打破して新しい官僚体制を再生できるかもしれないということです。

現在国民の不安・不満になっていることの大部分は国の財政に余裕があれば解消するものと思われます。今年度予算に占める利払い費は9兆4千億円ですが、今年度の医療・介護関係予算は約9兆7千億円ですから、利払い額をこちらに振り向けることができれば一挙に医療・介護関係予算を倍額にすることができるのです。「入るをはからぬ経済などあり得ない」のですがどの党からも具体的な国の債務607兆円の積極的解消策は示されません。現在の国家財政の再建がどの党にも期待できない以上、私はこれ以上のバラマキにはなにも期待できないのです。年金についてもかって百年の安心年金であると大見得を公明党が切っていたのを思い出すと馬鹿らしくなります。民主党になっても年金について本当に信頼できる年金制度が生まれるのか疑問だらけですし、仮にそのプランが理想的なものであっても民主党が政権を握ればすぐに実現されると思う気持ちにはなりません。現状ではやはり一人一人が老後に備えて何か手を打っておかないと、憲法25条を盾に生活保障を国に迫っても「ない袖は振れない」のが現状でしょう。政治はとても大事ですが、残念ながらそれにすべてを託すると泣きを見ます。やはりまず自分の力で努力して身を固めることが基本だと思います。

(8月27日追記)いよいよ選挙が迫りましたが、やはり民主党の提案する「子ども手当」は少子化対策として有効でしょう。将来に対する布石としてはやはり高齢者福祉だけを望むことはできません。子どもが増えなければ解決しない問題は多いと思います。その点財政負担を子ども手当に重点化するのはすべてにバラマキするよりも的を射ていると思います。

野党側は後期高齢者医療制度の廃止を唱えていますが、この制度は現在総額10兆4000億円のうち税金からの投入4兆8000億円これと同額が協会けんぽ・組合健保・共済組合からの支援金で現在働いている人びとの医療保険からの拠出に大幅に依存しており、保険組合の財政を困難に陥れています。国民健保からも支援金は出ていますが、こちらは退職者給付交付金および前期高齢者組合員への給付費負担調整金として 交付金3兆円を支援してもらっています。このように現役各健保組合に負担の大きい制度を改正するために後期医療制度を見直すのならともかく、高齢者の負担をゼロにするのでは保険制度そのものの全面的破綻に導くのではないかと危惧します。現在の国の財政状態、各保険組合の苦境から見ると現状高齢者からの保険料収入1兆円で運営するのには無理がありさらに高齢者に負担してもらうのもやむを得ないのではないかと思います。

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いま考えていること 371(2009年09月)
――政権交代への期待――

衆議院選挙の結果は予想通り民主党の圧勝でした。今度の勝利は民主党の勝利と言うよりは自・公政治拒否の心理が替わりの政権党として民主党を選んだという分析も正しいとおもいます。しかしなんと言おうと政府が替わる現実からは、何か新しいものが登場してくるのです。私にとっては安倍・小泉・麻生各総理に代表され、アメリカのブッシュ大統領に歩調を合わせた保守傾向、軍事解決路線の否定が今後日本社会全体に大きな影響を持つことが期待できるのを何よりの喜びとします。今年は「新しい歴史教科書を作る会」の歴史教科書を採択する各県教育委員会の数は増える傾向にありますが、この採択増加傾向は自・公時代に後押しされた戦争賛美・国家中心の保守主義傾向に地方教育委員会まで便乗したと考えています。少なくとも民主党を中心とする連合政府の体質はこの流れとは異質であろうと思いますから、地方のこの流れにも若干ブレーキとして働くことを期待します。

もう一つ期待するのは官僚が自分たちの所得を獲得するために、天下り組織を恣にしているような状態を打破したいことです。国民のためと言う美名に乗じて、実質不要な組織・機構を造り、民間とのなれ合いもして自分たちの進路開拓に熱心な風潮が高じています。これを崩して欲しいことです。この風潮は自民党では崩せないものだからです。そのために子ども手当や農家への補償などで見られるような組織を通さない直接給付のシステムを意図しているのにも政策の実施手順の根本的変革が期待できます。

ない袖は振れぬのですから、それ以上のことは期待していません。子ども手当の財源の一助に「配偶者控除」を廃止するのもやむを得ない方策なのかもしれません。あえて選挙に不利なこのような廃止措置を選挙前に出さなければならないほど財源は逼迫しているのだと思います。なにによらず国際的な水準をと主張する党もありますが、各国抱える条件が違い、これを無視してスローガン的に国際水準と言っても無理です。国際的水準を要求する人たちはたとえば消費税率が日本は低いことには触れず、自分の都合のよい点だけはつまみ食いするのです。このような意見はあまりにも非科学的です。今の日本の財政状況下では重点的に的を絞って政策を実行するしか道はないでしょう。政策を選択して他を犠牲にしてでも大胆に実施していくことを期待しています。子ども手当は少子化の解消の一助にはなりましょう。高齢者医療の無料化は子ども手当の給付に比べれば実施順位は低いと考えます。もっとも生活に困っている高齢者への医療施策は遅らせるわけにはいきませんから、適切な処置は必要ですが。地方税を年金から控除するのは、納税者として払うことを否定しない以上むしろその便宜と効率の良さを歓迎すべきです。生活に困っている人の場合は元々地方税はかからないと思うからです。

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