いま考えていること 388(2010年03月)
――民主党政治へ――

民主党に対する支持が急速に下がってきました。「金と政治」の関係で小沢・鳩山両氏への批判がその根底にあると言うのがマスコミの主な論点ですが、私は民主党政治に対する根本的な不信が次第に大きくなってきているのが原因だと思います。第一に経済の成長戦略が見えないこと、第二にこれまでの自民党の政治を見直せば巨額の無駄遣いが見いだされ増税なくして「子ども手当」をはじめ施策の転換が図れると言っていたにもかかわらず、無駄な税金の使い道はそれほど見つからず、収入の目途も無くなったのにマニフェストで約束した政策を実施するというので、これでは選挙目当てのバラマキではないのかとみんなが思い出したこと。さらに民主党の手法が結局自民党と同じ手法ではないかということにみんなが気づきだしたのではないでしょうか。民主党の方向を決定づける小沢一郎氏自身自民党の重鎮であったのですからこれも当然の帰結でしょう。

それでは人々の気持ちが再び自民党の復活に向かうかと言うと、これまでのあまりにも権益にいそしんだ自民党には愛想を尽かしていますから、そうはならず、民主党、自民党ともに支持を失いつつあります。公明党は創価学会を弾圧から守るための政治部門で、嘗ての大本教をはじめとする政治弾圧が頭にあるのでしょう。国政を委ねる訳にはいきません。社民、共産両党も現実的でない空想的な幻想が窺えますからここにも委ねる気持ちにはならないのでしょう。

詰まるところ、みんなの政治不信は高まり、不満と不信だけが蓄積されていっているのが現状ではないでしょうか。前世紀の日本での軍部独裁、ドイツでのナチス独裁の台頭を振り返ると、このような現状は決して歓迎するものではありません。

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いま考えていること 389(2010年03月)
――リーダーシップが問われる――

内閣の混乱は日常茶飯のこととなっています。大見得を切った普天間基地の県外・国外移転も実現不能の様相ですし、この移転問題はわたしが「いま考えていること 386」にも書きましたように本来占領の事実の下で発生したアメリカの戦略構想の産物ですから、とてもまだ現在日本の都合だけで決められるものではないのです。残念なことですが歴史を引きずりながら現実があるのですから、もう一度アメリカと戦争でもして追い出さない限り現在日本の都合で決められる問題ではないのです。鳩山さんの在野時代の理想、国外移転を内閣総理大臣になってからも現実化しようという試みはドンキホーテの槍のようなものです。郵政問題での混乱も目下注目されていますが、これも鳩山さんが強い指導力を持っておれば、表面に現れる以前に閣内もしくは党の間で調整されていたでしょう。亀井氏は元気で率直なところは魅力ですが、思慮が不十分で亀井氏の意見などとてもそのまま受け取れるものではありません。2000万円を預金限度にすることはペイオフの問題との関連を十分考えなければなりません。これでは預金の民間金融機関からの移動を招くことは避けられず、集まったお金の運用はゆうちょ銀行の能力から見て国債購入に傾くことは避けられず、国の財政運営の根幹にもかかわります。

この2点からだけ見ても、近頃の鳩山氏の自信のない顔もさもありなんと思われます。
現在の民主党への国民の失望も詰まるところ鳩山さんの小沢さんを凌ぐリーダーシップが欠如しているところが大きいのではないでしょうか?わたしは鳩山さんでは日本の政治の舵取りは無理だと思います。かといって小沢さんを総理にとか自民党を支持する気持ちはありません。自民党からはぼろぼろ脱党者が出ていますし、所詮自民党は政権を離れては生きていけない党だと思います。それは権力に付随する利権を失っては存在できない体質を持つからです。自民党の脱党者の中には民主党に入党する意志を持つ人さえいるのです。いやな党です。

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いま考えていること 390(2010年04月)
――TWRについて――

化石燃料による地球温暖化が問題になっても、原子力発電にエネルギーを求めることに否定的な意見を持つ人は相変わらず大勢います。その人達は再生可能エネルギーによる代替を説きます。曰く太陽電池、曰く風力発電(風力発電に伴う公害は低周波公害を御覧ください)、地熱発電などなど。しかし太陽から地球に来ているエネルギーは本質的にある限度以上では有り得ず、すべての再生可能エネルギーを集計しても現在人間生活を支えている全エネルギーをカバーするエネルギーは得られないと思います。人間が何世紀も前の生活に戻るというならともかく、あくまでも再生可能エネルギーは補助的な量でしょう。やはりこのピンチを打開するには、原子力からエネルギーを得る以外に必要を満たす充分なエネルギーは得られないと思います。こういう意味から原子力発電は目下世界的に注目されたエネルギー入手方法ですからTWRには関心を持たざるを得ません。

先ず原子力をエネルギー源にすることにわたしがどう思っているかを記しましょう。

石油はやがては枯渇してなくなるでしょう。それがいつの日かは分かりませんが。その時にはおそらく高い費用をかけて人造石油の技術が現実のものになるのかも知れません。プラスチックの多くは石油から造られているからどうしても石油は必要だからです。石油を燃料としてどんどん消費することはこの面からもぜひ避けたいことですし、地球温暖化の弊害は既に現実のものとなっています。石炭はまだ何百年も使えるだけの埋蔵がありますが、液体の石油と比べると輸送の面でも、燃焼に伴う二酸化炭素の排出、不純物の含有の多さという点でもいまさら石油を代行するものではありません。では必要なエネルギーは何から調達するかといえば、原子力をしのぐものはないでしょう。原子核分裂に伴う厄介な放射性廃棄物は崩壊の速度を人間が制御することは出来ないので、大変厄介な問題を抱えていることは否定出来ませんが、地球温暖化に伴う問題は今日現実の被害をもたらしていますから、何としても二酸化炭素を始めとする温暖化ガスを減らすことはもはや猶予出来ない段階になっています。

原子エネルギーはこれまでのエネルギー源とは全く異なる原理から成り立ちます。それは質量とエネルギーは本質的に同質だという原理から質量のエネルギーへの転換を利用している点です。この転換効率は高く、E=mc*c(E:エネルギー(エルグ) m:質量(グラム) c:高速度2.99792458X(10の10乗)センチメートル)で計算出来ます。言い換えれば1kgの質量は約250億 kWh に変わりうることになります。現行の濃縮ウランを利用した発電ですとウラン238がプルトニウムに変わりますから、このプルトニウムの核分裂を利用したエネルギー発生が現実のものとなってきました。現在、プルトニウムは酸化物に変え、酸化ウランと混合してmox燃料としてプルサーマルとして原子力発電所で再利用される段階に入りました。これまでの燃料では考えられない燃焼後の物質をエネルギー源として再利用出来るというのも特色です。ウラン軽水炉で有効なのはウラン235ですが、天然ウラン中のウラン235の含有率は0.7%程度で核分裂を起こさせるためには含有率を高めるための濃縮が必要です。天然ウラン約160トンから出来る濃縮ウランは約25トン、残りの135トンは劣化ウランとなります。六ヶ所村のウラン濃縮工場からは、年間約600トンの劣化ウランが発生することになります。

最近ビル・ゲーツと東芝の提携で話題になりましたTWR(Traveling Wave Reactor)はこの劣化ウランがそのまま利用出来るというのですからエネルギーの上から注目されます。この原子炉でも臨界点を超えて反応しているのですが、核分裂ゾーンに限られ全体としての爆発の心配はないというのですから、この点でも注目されます。TWRでは燃料の交換も100年は不要ということです。このTWR方式の考え方は1950年代にすでに現れ、1958年にはSaveri Feinberg、1979年にはMichael Driscoll、1988年にはLev Fecktistov、1995年Edward Teller/Lowel Wood、2000年Hugo van Dam、2001年関本博と続々研究者が現れています。実用化されたものはありませんが2006年にTerraPowerが実用化を目指して活動を開始しています。ゲイツ氏はこのTerraPowerの主要株主でTWRに深い関心をもっており、東芝と協力してTWRを開発しようとしたのは、既に東芝は燃料交換なしで30年間稼働する出力1万キロワットの小型原子炉「4S」を開発済みで、維持管理の困難なへき地での発電に適したこの「4S」を、当局の認証を得られれば14年にも米国で初号機を着工する方針という技術を持っているからでしょう。TWRはこれから開発される原子炉ですが、これまでの原子炉が持っていた安全上の問題も兼ねて注目され、成功が望まれます。

TWRTWRの構造模式図で説明しますと、運転開始時に十分な量の劣化ウラニウムを充填しますと反応開始に伴って、この図では左端のdepleted zone(使用済みゾーン)、fission zone(核分裂ゾーン)、breeding zone(増殖ゾーン),fresh zone(未反応ゾーン)が出来てきます。このfission zoneがエネルギー発生の中心ゾーンですが反応進行と共に右へ移動していきますのでtraveling wave(移動する波)と呼ばれます。つまりはじめに左端でウラニウム235の含量の多いウランで核分裂を起こさせますとそこで発生した中性子がウラン238に吸収され順次プルトニウムに変わっていき(breeding zone)つぎの核分裂資材に変わるのです。その右側にはまだ未反応の劣化ウランが変化しないままに残っていますが、反応の進行と共にbreeding zoneとなり続いてfission zoneに変わっていきます。
いわば反応器の中でプルトニウムが順次作られ核分裂を起こすのです。参照TerraPower,LLC Nuclear Initiative

日本は原子爆弾の惨禍を経験した唯一の国ですから、原子力に対する拒否反応は本能的とも言えるのでしょうが、やはりエネルギーの未来を考えると、核エネルギーすべてを拒否するよりも、平和的利用は受け入れて核操作の経験を深め、少しでも欠陥の少ない原子力発電を積極的に試みることが必要だと思います。質量−エネルギーの転換でエネルギ−を得るこの方法はこれまでの物質取り扱いとは次元の異なる基礎知識と取り組みの技術を必要とします。核をおそれるだけでなく、親しみ、理解し、取り扱いに習熟することが避けられないのです。

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いま考えていること 391(2010年04月)
――この四月――

今年は四月になってもたびたび寒い日を迎え、庭のつぼみを付けた白梅も咲きかけたと思った頃に急に寒い日が訪れて開花を見ないままに樹そのものもどうやら枯れてしまったようです。温暖化の中で平均的には暖冬だったといいますが、周期的に訪れる寒気に長引く風邪にも悩まされている内に異常な春を迎えました。

七月の参議院選挙を控え政界もあわただしい変化が進み、人気の回復しない自民党からは脱党して新しい党を作る動きも続き、政権与党の民主党と政府の見解の齟齬が有料道路問題では展開されました。鳩山首相は米軍基地の辺野古への移転を巡って、自分の責任で五月末には必ず結論を出すといいながら最近では「関係閣僚と意見調整して」という修飾をしていますから、或いは期日までに決定出来ないことに、閣僚を巻き込んで言い訳する予防線を張りだしたとも見受けられます。自衛隊は積極的な対外戦略を描くことは憲法上出来ませんから、全く対等な立場で安保同盟国アメリカの世界戦略に積極的な発言は日本は出来ず、現在の力関係の中では、在日米軍特に沖縄駐留軍はアメリカの世界戦略に沿って駐留していますから、日本が日本の都合だけで米軍基地の在りようを決定することは不可能だと思います。この四月も基地についての議論も結論も曖昧なままに虚しく過ぎたように思います。

鳩山内閣の支持率は低下の一路を辿っています。全般に見られる鳩山首相のリーダーシップの欠如が原因の一つで、このままでは参議院選圧勝とは行くまいと思います。ただし子育て家庭に対する手厚い「こども手当」のばらまきは該当世帯の民主党離れを食い止めるうえで大きい効果を持つでしょうから、断定は出来ませんが。わたしは小沢・鳩山両氏を民主党から取り除けば自民党に見られなかった政治が民主党内から生まれてくるかも知れないとは思っていますが、現在は国家公務員の2割削減、議員定数の削減など財政と密接に関係する公約に手もつけられていないので、支持する気分にはなれません。段々無党派層に入っていく思いです。どの政党にも託せぬ思いですが、結論的には棄権も無責任なので政党選択の観点を現行憲法の基本線護持に絞って考えていこうと思っています。

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いま考えていること 392(2010年05月)
――理想と現実――

訪米中の共産党委員長志位さんは米国務省内でケビン・メア日本部長などと会見し、普天間基地問題の解決には、アメリカの無条件撤退以外に解決の道はないと伝えました。確かに日本国内にアメリカの基地があることは基本的にはおかしいことで今の基地は過去の敗戦の結果であることは明らかですから、共産党の主張は理想的には正しいと思います。しかし、現在の自衛隊程度の武装で単独で日本は守れるとは思えず、まして徴兵制度の悪夢を経験した我々の世代では日米安保条約の負の側面だけを見ているのではないのです。抑止力の内容にはわが国での軍の復活を抑止している側面もあるのです。アメリカの海兵隊は日本の防衛で沖縄にいるのではなく、アメリカの世界戦略の中で、第二次大戦の対日勝利をベースに、基地を持っているのですからそう簡単に現状では基地の返還に応じる条件はありません。理想を持つことは前進のために必要なことであり、常に持っていなくてはなりませんが、それを現実化出来るには諸々の条件の完熟が必要です。条件が備わらない時に現実化は無理で理想は空想に止まります。科学的とは事象と条件との関連を熟慮し判断することを意味します。そういう意味で科学は一般原理をふまえつつも個別的なものです。一つ一つの現象はある特殊な条件の下で起こっているので、この個別的なものの内容を分析し、対策が立てられなければ実現は不可能です。

現在の普天間基地問題は現実の政治を運営する立場にある総理鳩山さんの緻密な分析を欠いた空想的“理想”が、実現のための“条件”を欠いているために起こっている悲劇なのです。鳩山さんは、理想を掲げて自分の主張を唱えていればよい共産党とは違う立場にいる現役の総理です。わたしとしては鳩山さんに緻密な分析能力が欠けていることを一番心配しています。こんなことではこれからのいろいろな政治の課題をリードしてはいけないだろうと思っています。

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いま考えていること 393(2010年05月)
――信を失う怖さ――

鳩山さんの昨日の沖縄訪問は国民に首相への信頼の喪失を決定づけました。「国外、少なくとも県外」という意思表示を行っていたのは誰だったでしょうか。この意志表示を撤回して県民に謝る首相を誰が信頼するでしょうか。国事万端をこのような頼りない人が統括することなど到底不可能です。鳩山さんは残念ながら人間として最低限の守らなければならないこと−信用−の認識に欠けておられるようです。自分の哲学も持たない人に国の政治を託しては、すべての事柄において国民は絶望に追いやられることを一刻も早く悟らなければならない時を迎えたようです。

世の中一見複雑な難問に充ち満ちているようですが、私は案外根元は単純でその根元にメスを加えて解決すると他の問題は大抵同時に解決していることが多いと思っています。表面的な複雑さに洞察を加えて本当に問題はどこにあるのかを見極める眼力とその根元を分析し解決する能力が「長」たる人には備わっていないと問題は複雑への一途を辿ります。根元の問題の摘出とそこにメスを入れることは思ったほど難しくないのです。「普天間」問題の根元は過去の日本の誤った国家体制とそこから生じた戦争、さらに敗戦占領の結果沖縄のアメリカ軍事基地化があり、講和条約が結ばれたからと言って一朝一夕にその体制を崩すことは現段階では実現不能でその客観的事情をわきまえないで鳩山さんのように空想的理想主義を自分の哲学として現実政治を遂行することは夢のようなことだと思うのです。現実から逃げては何も出来ません。アメリカの基地を廃止させるには執拗に日本国民の基地撤廃の願いを背景にアメリカに総理自身が先頭を切って交渉を重ねることこそ王道なのです。そのような努力の積み重ねしか本当の日本独立はかちとれないのです。

現在ギリシャの負債危機を始めヨーロッパも危機に陥っています。アメリカのサブプライム問題から始まって、複雑になりすぎた資本主義の再構成が世界全体を覆っています。この資本主義の再構成もおそらく問題の根元さえ明らかに出来ればその解決は単純でしょう。それが出来ればEUの解体も避けることが出来るでしょう。

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いま考えていること 394(2010年06月)
――鳩山さんの辞任挨拶から――

米軍基地の国外或いは沖縄県外への移転を約束する発言をしてきた鳩山さんが辺野古への回帰を結論としたのが、本日の辞任の理由の一つになったのは、信頼を失った鳩山さんの当然の末路でした。

辞任挨拶で鳩山さんが述べたことの内、「今ここはやはり、日米の協力関係をなんとしても維持させていかなければいけないという、この悲痛な思い。ぜひみなさんにもご理解をいただきたいと思っています。私はつまるところ日本の平和、日本人自身でつくりあげていく時を、いつかは求めなければいけないと思っています。アメリカに依存し続ける安全保障、これから50年、100年続けていいとは思いません。そこのところもぜひみなさん、ご理解いただいて、だから鳩山がなんとしても、少しでも、県外にと思ってきた、その思い、ご理解を得られればと思っています。その中に今回の普天間の本質が宿っているとそんなふうに思っています。いつか、私の時代は無理ですが、あなた方の時代に日本の平和を、もっと日本人自身でしっかりとみつめあげていくことができるような、そんな関係を、現在の日米の同盟の重要性はいうまでもありませんが、一方でそのことも模索をしていただきたい。」という一節は私たちにも大きな宿題だと感じています。

私も九条の会に入っていて、九条擁護の立場なのですが、それは経験したかっての戦争の悲惨と今後の核戦争のもたらすであろう悲惨さとは世界のすべての人たちに味わってほしくないもので、そのためには究極的に軍備の要らない世界、核のない世界を実現しなければならないと思うからです。戦後の日本の復興は軍備をしないことから生まれた経済的余裕から可能でした。しかし現在の世界は北朝鮮のように核兵器開発に国力をかけている国もあり、中国も軍備の近代化に多額の費用を投入しているのが実態であり、イスラエルとパレスチナの紛争も予断を許さない情勢です。この不安定な世界にあって、日本はアメリカの核の傘の下に安全を維持しているのが現状です。沖縄駐留の米海兵隊は日本防衛のためではなく、米国の軍事戦略のための布石の一つとして存在していることの理解の甘さが今回の鳩山さんの失敗の原因です。私もこの体制はかっての敗戦の結果で、米軍駐留は日本軍国主義の復活を抑止し、米軍指揮下米軍サポーターとしての自衛隊維持も目的の一つとしていますから、決してまともな独立国の姿だとは思っていませんが、かっての日本の軍国主義下での軍の横暴を振り返ると、たとえアメリカ軍が駐留していても九条の下、若者の徴兵制もなく、比較的抑えられた軍事予算の範囲で自衛隊が、基本的にシビリアンコントロールのもとに行動している現状の方が昔よりましだと思っているのです。

 
しかし今日の鳩山さんの挨拶の一節は、確かに本当の独立国としてアメリカに依存しない軍事的防衛体制を日本が持つために、九条との関連においてどのような姿、たとえばどのような外交戦略を進めるのか、自衛隊を止めて徴兵制をベースにした日本軍復活を是認するのかも含めて、もっともっとみんなが真剣に考えなければならない課題だと思い知らされました。確かに鳩山さんが言っているように模索していく必要があると思います。鳩山さんのここにこそ普天間問題の本質があるという指摘は正しいと思います。具体的な防衛施策も提示しないで現状でアメリカの駐留をやめさせることを普天間解決策としていくら主張してもそれは空言でしょう。

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いま考えていること 395(2010年06月)
――菅内閣の経済政策――

ギリシャの財政赤字は日本の膨大な財政赤字にもこれまで以上に人々の目を向けさせ、国民の貯蓄1400兆の範囲で金融機関への預金などで国債の処理をしてきたこれまでの方法ももはや限度に来て、今後は或いは国債の金利を上げてでも国外にに頼らなければならないぎりぎりのところに来てしまいました。

菅さんは医療・福祉などの分野で雇用を高め、お金も投入して経済の第三の道を推進しようとしていますが、医療・福祉の分野はやはり消費の分野で富を新たに生み出す分野ではないと思います。やはり日本は資源もなく、内需・福祉を振興しようとすればその裏付けとなる資金は貿易で稼いでこないと、富が自然に国内に自生するわけではありません。政府の経済政策としては外国特にアジアのこれから発展していく国々の人々の要望するものを国内・現地で生産するのをバックアプするものでなければなりません。

その努力のもたらす富が得られ、その富を利用して国内の膨大な赤字を減らしてこそ、内需も拡大し、医療・福祉分野の充実も可能でありさらに国民の福祉全般の基盤も築けるのです。民主党の政策は国民の福祉に重点を置いているようで結構なことではありますが、その裏付けになる「稼ぐ」意識が希薄なように思えます。国も家庭も同じことで収入を借金に頼る限りいずれは破産します。子供手当も結構ですが、その費用が現在の防衛費を上回る規模では無理があります。やはり富を生み出す民間の輸出産業分野が活性化するような施策を実行してほしいものです。

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いま考えていること 396(2010年06月)
――歴史の重さ――

今朝6チャンネルで、無駄として売りに出されている法制局長官公邸の豪華さを話題にして、税金の無駄使いと官僚の優遇を問題にしていました。

鳩山さんの普天間問題処理の失敗が、ついこの間も見られました。私は日本の基地問題の根元は前大戦での日本の敗戦、沖縄での激烈な戦闘、結果としての占領にあると思っているのですが、この敗戦の事実は講和条約が結ばれたからリセットはされず、少なくとも百年間は尾を引くと見ているのです。ですからアメリカ抜きに基地をグアムに移せるとかテニヤンに持って行けと言ってもそれは無理で、日本におけるアメリカ基地の存在は日本防衛のためではなくてアメリカの世界戦略の一環なのですから、今すぐに沖縄からの完全撤去などあり得ないのは始めから分かっていることなのです。沖縄の人々には前大戦で犠牲を強いその影響を今にまで持ち込んでいるのですから、本当に申し訳ないことですが。

在外公館や政府高官公邸・公務員宿舎の低家賃・叙勲対象が公務員に重い・公務員給が一般的には多いことなどはやはり敗戦までの天皇制(現在も君主制ですが)の影響があるように思います。それらは全て天皇の権威を示すものとして対外的にも対内的にも誇示されました。明治の政治は天皇の神格を支えとしたものでしたから、絶対的な権威を保たなければならなかったのです。現憲法では天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴とされて生き延びているのですが、法的には現在も日本は天皇制の国であり、「大臣」という言葉、「認証」という言葉、すべて戦前のままです。天皇を君主とする権威付けの名残です。公館や公邸の豪華さを考える時単に税金の無駄遣いという見方では不十分で、敗戦以前の天皇制の名残という見方をしないと理解出来ないと思いました。歴史を無視するわけにはいかないのです

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いま考えていること 397(2010年06月)
――システムを売る――

日本の輸出の将来を考えると新興国向けのウエイトが高くなるでしょう。これまでの教育水準の高い先進国向け輸出と当然違った発想がいると思います。

私が思うのにそれは個々の製品輸出ではなくて、製品の運転・維持・管理を含めたシステムとして売るという発想ではないでしょうか。神戸のシスメックスという医療装置会社は既に営業戦略としてシステムとしての販売を行って成功している会社だと思っています。装置を売ることを目的とするのではなくて販売後の装置の維持・保守システムの整備にも力を入れていますし、売った装置に必要な薬品の製造も他社に任せるのではなく自社で責任を持って供給していくことも仕事にしています。手術に必要なものをキットにして販売し、その状況をコンピューターで管理しているホギメディカルなどはまさにシステムを販売して成果を上げている会社でしょう。おそらく今話題に上っている高速鉄道の販売、原子力発電所の販売にしても装置の売り込みだけではなく、販売後の営業システム管理・運転システムの管理、さらにそれらをこなす人材の教育育成まで責任を果たすという総合的なシステムの販売を考えれば成功するでしょう。パナソニック傘下の三洋電機もヨーロッパ向け太陽電池の販売に当たって蓄電・家庭での総合電力システムの管理までを一体とした営業を始めるようですが、ここにもシステムとしての営業が考えられてきているのが見受けられます。ヤマト運輸の中国進出もシステムの輸出と見られます。

さらに大きくはオバマ大統領の提示を契機として日本でも次第に構築が議論されだした電力システム−−スマートグリッドにしても単に発電装置の問題ではなく配電・蓄電・計画的な電力消費のコントロールを目的としたまさにシステムの構築構想です。これからはただ物を作ることを目的とするのでなく、そのものを一つのシステムの一部として全体のシステムとの関連の中で位置づけ、システムとして有効な働きをすることまでプランプロジェクトを作っていかなければ受け入れられない時代になるのではないでしょうか。

町の中から商店がどんどん消え、私など日用の小物たとえばレース針、火ばさみなども近所に店がないので、インターネットショッピングでまかなっているのですが、ここで指摘しているシステムを取引する発想で商売すれば、町の商店の特長を生かし顧客との深い交流をもたらして存続していけるのではないでしょうか。

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いま考えていること 398(2010年06月;7月)
――何を基準に政治を選ぶか――

今日で国会は閉じ、7月11日の参議院選挙に移ります。投票に先立って何を基準に投票するかに、最近の政治は大事な観点を教えているように思います。鳩山さんの失脚は米軍基地の日本以外への移転という鳩山さんの理念と現実の厳しさとの矛盾の中での討ち死でした。

政党の掲げるスローガン的な理念だけ見ていては政治を選ぶことは出来ないようです。政治は現実の具体的な計画と行程を示しそれを国民に検証してもらって選んでもらうべきもので、私たちも理念ではなくて示された具体的な実現への道筋を厳密に検証して投票しなくてはならないのでしょう。米軍は独立国である日本から国外に撤退してもらおうというのも学者の世界ならイデオロギーの討論として意義がありますが、政治を誰に委ねるかという場合には視点を改めて撤去の段取り、撤退後の具体的な日本の姿の提示が必要だと思います。自衛隊を軍にするのかだけでも日本ではまだ国民世論の中で議論にはなっていません。政党が理念だけで、裏付けもなく財政の整理をすれば20兆円は捻出されると言うような戯言を述べそれを軽々と信じて投票するのも誤りなら、自分たちが過去にしてきたこと、たとえば首相の党内たらい回しを棚に上げて鳩山・菅のたらい回しを非難して不信任案を提出する自民党にも耳を貸せません。共産党・社民党もイデオロギー先行です。自分の考えることと実現可能性が一番近いのはどの党の主張か、現在の不完全な政党政治の中で相対的に少しでもましな政党はどれかも投票時の評価基準かと思います。

(7月7日追記)参議院選挙は同感出来る党がないので棄権しようかと思っていました。しかし少し思い直しています。民主党内の党内抗争や菅さんの思慮のなさ、マキャベリズムも辟易なのですが、現在民主党が破れた場合自民党以外に政権に復帰することは考えられませんから、単純に民主党と自民党とどちらを取るか民主主義の擁護、古い日本への回帰忌避の立場で考えようと思います。とすればその他の党に票を差し上げることはこの観点からは無意味です。結論「人間のやることだから完璧な党などあり得ない、またこれから先それぞれの党がどのように変わっていくかも予測出来ない。今の時点でどの党を自分の利益で採るかよりもさしあたり最も大きい点は政権に直接関わってくる自民党を取るか民主党を取るかでどちらがましかという立場で選び投票所に出かけよう」と思っています。

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いま考えていること 399(2010年06月)
――反対論に耳を傾ける――

菅総理が消費税論議を超党派で呼びかけたのが契機になって消費税引き上げの論議が現実となってきました。誰でも増税は嫌なもので 税は低いに越したことはありません。しかし現実を見る時、やはり消費税はヨーロッパ並みに10%くらいに引き上げざるを得ないと私は思っています。給付だけをヨーロッパ並みにして税金はヨーロッパよりも低くと要求することには無理を感じます。またずっと給料生活を送ってきたものとしては徴税の公平さという点でも消費税の方が公平だと思っているのです。最近は余り耳にしなくなりましたが、以前はトーゴウサンという言葉が流行しました。それはサラリーマンは10割、営業者は5割、農家は3割の賦課だということの表現でした。営業者5割、農家3割の賦課と言うのが事実かどうかは知りませんが、サラリーマンの10割賦課は私の例でも事実です。

しかし消費税の逆進性は明らかですから、やはり生活必需品の課税は考慮されるべきだと思っています。今回の提議に対しても自民・公明・民社以外の党は一斉に反対の声を上げています。主張の中には法人税の引き下げを庶民への課税で覆う点で反対という党もあります。消費税を福祉に限定しようという試みについてもそれでは福祉充実の要求は常に消費税値上げと連動することになるから反対という人もあります。先ず軍事費や米軍への思いやり予算の削減こそ優先課題だという考えもあります。それぞれに一理ある考えです。それでもすぐにそういう考えに賛成ということにはなりません。理由は現在日本には多額の財政赤字が蓄積されそれをカバーする国債の、償還費だけで予算の25%が消えている現実があり、予算の削減たとえば議員の報酬カットや定数削減も言うほど簡単ことではありませんし、やはり「入るを計る必要」があると思うからです。無い袖は振れないのです。敢えて振るならば借金しかありませんが、借金は必ず付けを払わなければならない時が訪れます。

「自由」を尊重する私の立場ではしかし反対論が自由に説かれることは大事だと思っています。反対論に耳を傾けて自分の論の正否を改めて検討することが出来るのです。その上で成案に持って行くことが欠かせないからです。反対論が正しいか、自分の論にそれを裏付ける客観的な根拠が出来ているか検証することが、消費税論議にも必要です。他人の論を感情だけで無条件に飲み込み従う或いは反対することは避けなければなりません。虚心坦懐最後は自分の判断で意志決定することは人間として最低限の必要な能力だと思います。

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いま考えていること 400(2010年06月)
――日本の今昔――

鳩山さんの普天間問題への取り組みで、日本が今なお軍事的にはアメリカに従属した立場におかれていることが明らかに認識されました。単純に考えれば独立国としてこの現状は恥ずべき状態と思われます。参議院選挙の中で「立ち上がれ日本」の平沼赳夫氏は明らかに戦前の日本への回帰、天皇尊崇の日本への回帰をはじめ軍備を含め完全な日本独立路線を意図しているように見えます。現在の軍事上のアメリカ従属路線は60年前の敗戦がいまだに根深く影響しています。ことに沖縄の苦悩の根元は敗戦にあると思っています。

それならばあの戦争に日本が勝っておれば今日以上に日本の民衆が幸福であったかと言えば、おそらく天皇を中心とした恐ろしく民衆を犠牲にした軍国が出現していたものと思います。非国民と言われるかも知れませんが、私は戦争に敗れ軍が解体され、国も民主主義と自由を軸とした国にアメリカの庇護の下に再出発したのは、たとえ今日なおアメリカの影響を色濃く受けていても、日本の一般民衆にとっては昔よりも恵まれ、幸福だと思っています。共産党のようにアメリカ基地の全面撤廃をアメリカに要求するのは建前としては正しいと思うのですが、そのあとの防衛をどうするのか具体的な言及がないのでは理想家としては尊敬しますが、政治家としてはクエスチョンです。昔通りの軍事国家になるのであれば膨大な予算を必要としますし、軍人の跋扈を招きます。軍と産業の癒着はアメリカでもかってアイゼンハワー大統領が問題にしましたが、現在の日本でも防衛省予算に伴う黒い動きは後を絶ちませんし、会計検査院無視の動きも見られまるで戦前の日本のようです。このような傾向が大手を振ってまかり通るくらいならアメリカ軍の駐留によって比較的軍事産業の規模も小さくて済んでいますし、憲法の下で自衛隊員も含めて戦死者を出さなくて済んでいる現状を良しと考えています。政治の中でかけ声だけでも国民の幸福・人権の擁護が叫ばれますが、これも戦前には求めようにも求められなかったものです。年金・保険・介護総じて戦前の日本ではなかった物で、われわれ不十分だと文句を言ってはいますが、考えてみればありがたいものです。保険制度そのものが崩れるくらいなら私のような高齢者も現在程度の負担はしてでも保険制度の維持はして行かなくてはと思います。

一方現在日本中がFIFAのサッカーで沸き立っていますが、スポーツの世界は敗戦の影響が少なくともフィールド・プールでは見られない唯一の世界で、敗戦直後、「冨士山のトビウオ」の呼び声が湯川のノーベル賞と共に日本人のプライドを呼び覚ましたのも思い返すと感慨深いものがあります。

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いま考えていること 401(2010年07月)
――あの世はない――

中学の同窓会から寄稿の依頼があり、一文をしたためました。どんなことを書いたか少し手を加えながら公開しておきます。

今日は日頃考えていることを記そうと思います。これも終着駅が近くなってきたからでしょう。私は仏教の精髄は般若心経で説かれている「空(くう)」だと思っています。空についての私の思いは空(くう)に記していますので御覧ください。

さて、この年になって気付いたのは仏像というのは依り代(よりしろ)で、たとえば阿弥陀像を観て、そこに阿弥陀仏が光臨していると思って、存在する像を契機として阿弥陀仏自体を心に念じ拝することが大切だということ、もう一つはあの世というものは存在せず、死ねばその時点ですべては終わりと言うことです。人が死ねば仏や神になるなどということは有り得ません。現在生きている毎日の、人の目には見えない神や仏は加護者なのです。後生を頼むなどといいますが、後生などなく死後の冥福を仏に託することは意味がないのです。死も生の一つのステージとして避けられないもので、死ねば空(くう)に戻るだけと現在思っています。だから生きている今を常に神なり仏なりに託して生きることが大事なのです。死への恐怖を逃れようと死後を仏に託そうと考えても、それは幻想です。

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