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いま考えていること 77(2001年07月)
――靖国神社――

いま考えていること 71(2001年05月)に神道指令のことを書きましたが、昨日中国の首脳と会談後、自民党の山崎幹事長が靖国の祭神から戦犯者を別祀することを考えると述べたと報じられました。

繰り返しますが、神道指令は国家と宗教−−神道を分離し、国家目的に宗教を利用しないようにというのが趣旨でした。神道を宗教として純化することを目的としたと言っても良いでしょう。靖国神社の祭神をどうするかについて政府やまして一政党が どうこう言い、政治的にその意図に沿わせようとすることは納得いきません。神道指令が現在も意義があると言うのはこの点からです。戦犯者を祀るか否かは靖国神社の問題であり政府や政党がとやかく言うことではありません。かっての日本では天皇は最高神アマテラス大神の子孫であり、天皇自身も最高の神格を持っていて、神を創ることも出来たのです。私の後ろの山には織田信長が神として祀られており、この社が別格官幣社であったことを神社はいまも権威づけに宣伝しているのですが、別格官幣社というのは天皇に貢献した人を、天皇の名によって神に格付けした社なのです。人間が神を創るなどと言うことは全くおかしなことです。靖国神社の祭神を創りあるいは抹殺する愚行をしてはならないのではないでしょうか。こういうわけで旧天皇制のもとで創建された靖国神社そのものに疑問を持っていますので、小泉首相が國の最高責任者として、まして中国韓国を意識せずにはおれない八月十五日に参拝されるのは良くないことと思っています。民俗学は知りませんが、神社は元々自分の氏の先祖を子孫が讃え祀ったものだと思います、「氏神」という言葉はいまも生きています。その後、不遇の内に不慮の死を遂げた人の霊を慰めそのたたりを和らげる意図で創られたのが例えば京都の御霊神社や白峰神宮でしょう。靖国神社もこの系列に位置づけられれば肯けます。

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いま考えていること 78(2001年07月)
――相変わりませず――

今日は大暑です。これからの1週間は京都はもっとも暑く、一月先の地蔵盆が来るとやっと秋の近いことを思うのです。毎日欠かさず朝も約4,500歩の散歩を続けていますが、近頃は帰り道の小学校まで来ると、「今日も昨日と同様歩けたな」と言う思いがするのです。お正月には皆「今年も相変わりませず」と挨拶するのですが、夏の今頃に“相変わらない”のを喜びとするのも年のせいでしょう。

G7サミットが終わりましたが、これといった具体的な方策は見られません。株価は今日も大幅に下がっていますが、これは日本だけのことではなく世界的なものです。これは経済に根本的な問題を発生しているためで高々人間に出来ることは経済の抱える問題点の的確な分析の上に立った解決の方向を意識化すること以外にないと思います。決して世界の指導者が一同に集まって協調してドグマ的な意志表示をしても何も変わらないということでしょう。私の印象では現在世界的に経済が過渡期に入っているようです。新しい発展のための基盤の改革を必要としているようです。EUも通貨統合の前夜です。日本も構造改革を控えています。象徴的なのはマイクロソフトのwindowsです。10月にはXPの発売が予定されていますが、XPはこれまでのwindows2000系列ですから多くのソフトの改訂発売を迫られます。コンピューターもXP搭載のものが主流になるでしょう。そこへ光ファイバーを使ったFTTH網が整備されてくればITの質も大きく変わりITは飛躍的に伸びるでしょう。いまはパソコンにとっても過渡期です。過渡期の過ぎるのを待たないと期待だけのサミット声明では経済は動きません。

“相変わらず”では困るものもあります。参議院選挙も1週間後になりました。テレビの討論など考えるよすがにはなりました。野党の意見もそれぞれかなり違っています。基本的に小泉路線に近い自由党から、中小企業の危機を唱え消費税引き下げをいう共産党までいろいろですが、どの党もまず選挙で票を獲得するという至上目的がありそのターゲット向けに発言していますから、そのまま受け取るわけには行きません。小泉さんの姿勢にも対アメリカ政策の従属性、また靖国問題、教科書問題などの間違った認識は認められます。しかし、はっきりしているのはこれまでの自民党には見られなかった改革への方向と決意は否定できません。今のままで変わらなくてよいかというと、社会も経済も改革=構造の改革を必要としているということは明かです。付随的にいろいろと失業問題など深刻な問題に直面しますが、もはやこれを避けるわけには行かないようです。明治維新で武士は失業し、私の大爺さん(曾祖父)も大きい仏壇を背負って加賀の大聖寺から敦賀街道を京都まで歩いて出てきました。武士の失業は大問題であり西南戦争を引き起こしたのですが、武士の失業を恐れては行き詰まった幕政日本の改革は出来なかったでしょう。維新に失敗していたら他のアジアの國のように植民地になっていたかも知れません。やはり一番現在やらなければならないことを見極めて、避けて通れないことは受け容れざるを得ないでしょう。有権者は自分の頭でこの辺りを判断して投票したいものです。私は共産党の指摘する小泉さんのアメリカへの従属性、また靖国問題、教科書問題などの間違った認識への見解には全く同感ですが、経済政策には賛成できません。しかし29日には共産党に投票します。理由はおそらく小泉支持勢力が勝つと思うので、戦時中の大政翼賛会政治のように政治が一色に傾かないように、もっとも小泉政治と色の違う反対勢力として共産党を参議院に送り込んでおこうと思うのです。

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いま考えていること 79(2001年08月)
――生きるということ――

家内の看護があるので誰か代わりの人間がいないと、1時間以上の外出はまず難しいのです。現在は1週間を単位としてほぼ単調な繰り返しの生活を送っています。その上10月からの介護保険料の完全徴収に加えて今年からは国民保険の負担も市の保険財政の赤字のためかなり値上げされましたから、生活への影響もジワッと感じることになってきています。世界的に経済が停滞していますから、少しですが持っている株や投信の値段も低迷を続け、憂鬱な状態が続いています。

昨日は渥美清氏の命日でした。確か68歳でなくなっていますから、72歳の私などももう至近弾が傍らに落ち出しているのに間違いありません。仕事をしていたときはそれなりに毎日成果があり前進があったものですが、今はもう成果などありはしません。毎日考えれば単調なものです。しかし空(クウ)に書きましたように、それでもこの地球での生活はいろいろ変化があり考えようによっては極楽です。美しい自然の営みも見られ、今まで知らなかった新しいことにも出会います。生きるということは本来そんなに華々しいものではなくて単調な毎日の営み、例えば食後の皿を洗うことも毎朝顔を洗うことも、正にその一つ一つを出来ることが生きているということなのでしょう。そのうちにさらに年を重ねると、そういう単純なことでさえもやがては出来なくなり、出来たその日が懐かしくもう一度出来たらなあという思いに駆られる日が来るのでしょう。家内は鼻から入れたMagen Sondeからの栄養だけで生きており意識というものすら殆ど感じられず反応もない状態なのです。この姿を見ていると、まだ日常的な事柄が出来、毎朝散歩して町のたたずまいをながめ、食事のおいしさを口や喉で味わい、毎夜酒やビールを楽しめることを生きている喜びと感じるように努めているのです。

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いま考えていること 80(2001年08月)
――国  債――

貯蓄のところに書いたことと重複することも多いのですが、もう一度書いておこうと思います。小泉内閣は来年度の国債発行額を30兆円以下に抑えるといいます。しかし人によってはまだ30兆円も国債を出すのかと言う人もいます。確かにいろいろ考えてみると素人の私でもこれは大変なことになっていると思わざるを得ないのです。収入の40%は国債であり、昨年度の国・地方の負債残高は666兆円に達する(00年度末の市区の地方債残高は約41兆9800億円と見積もられています.最高額だった99年度より約2600億円増えており、00年度の市区の歳入総額約38兆1200億円を上回るという状態です)。この額が國だけ見ても来年度更に30兆円上積みされるということになります。更に財政投融資事業の要返済額が約400兆円、全国地方自治体による公社・第三セクターなどへの債務保証と損失補償の総額が、総務省の調べでは1999年度末で23兆1700億円にのぼっています。いくら国民の貯蓄が1400兆円あるといっても、1000兆円以上も国や地方によってすでに喰われているのです。自分は国債など持っていないといっても、銀行はあなたの預金で大量の国債・地方債を買い、証券会社に預けたMMFや公社債投信も多額の国債を買っているのです。不正常に極度に低い公定歩合もここしばらくは据え置かれると考えられていますから、当分は国債の価格も維持されるでしょうが、仮にムーディズの格付けが現在よりも引き下げられるようなことになれば国債の利回りを上げざるを得ず、現在1.6%程度の利息の額面100万円の国債が利回り3%の時代を迎えたとしますと現在100万円の国債の価格は53万円程度に落ちることになります。国債を保有している銀行や投資信託は莫大な損失を受け、預金者投資者もこの痛手を受けることになりませんか?これでは国債は新しいバブルの芽を持ち、これが崩壊するときの恐ろしさを思います。「聖域無き改革」で國の支出を減らすという現政府も国債償還費と利息は絶対的な聖域であり、カットは出来ません。この上景気対策だと言ってバラマキ資金を国債に求めると正に蟻地獄の深みにはまりこみ、1400兆円の貯蓄が尽きると、IMFに支援を求めた韓国・インドネシアなどと同様の事態に日本が追い込まれていく切迫感があります。この危機感を今私たちはもっと持たなくてはならないのかも知れません。

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いま考えていること 81(2001年08月;9月;2002年10月)
――外総診――

私のかかっている診療所は7月から外総診を採用しました。その結果変わったことで, もっとも目立つのは毎月定期的に行われている血液検査の項目が著しく減ったことです。外総診というのは正しくは老人慢性疾患外来総合診察料の略名で、70歳以上の老人が対象になっています。今年の四月老人医療の負担金が引き上げられてから、多くの医療機関で患者数が減ったのですが、外総診を採用している医療機関では影響が少なかったと言います。私のかかっている診療所でもおそらくこのようなことが考慮されたのだと思っています。京都市から送られてきた健康手帳もこれまで使ったことはなかったのですが、外総診採用に伴って、健康手帳に私はM診療所の外総診患者であることが記載されます。他の医療機関に行ったときはこれを提示します。新しく掛かった医療機関は私を外総診患者には出来ないのです。外総診は患者の囲い込み効果を持っています。診療所の収入の安定と言うのは患者一人についていくらと定額で、診察や指導をしておれば診療内容とは関係しません。俗に「マルメ」といわれています。しかも外総診は大病院は採用できず、小さい病院や診療所、医院に採用が限られています。「マルメ」の金額も小さい診療所や医院の方が有利に設定されています。老人のような慢性病では処置も薬剤もほぼ固定していますから、簡単に言えば定額でやれるだろう、大病院に行かなくてもかかりつけの医者で十分だと言う考え方の結果です。この外総診は平成8年から厚生省が採用したものですが、これまではあまり採用する機関はなかったと言います。老人自身の負担が増え、それに伴う患者数の激減からこのところ採用する医療機関が増えているようです。外総診を採用している医療機関では患者の薬剤費は徴収されないことになっています。

小泉内閣は来年度予算を削減します。社会福祉費も今年と同じようにすると1兆円自然に増えるということで、これを7000億円に抑える方針です。なかでも社会福祉費の40%を占める医療費(年金よりも医療費部分が大きいのです!)の増加、なかでも老人医療費の増加を抑制する方針だと言います。具体案はまだ明かではありませんが、医療費の定額制や老人の負担のさらなる増額がうわさされています。定額制は外総診の考え方と一致するものがあります。

確かに検査項目や薬剤の中には必ずしも必要でないものも、これまで出来高払いですから濫用されてきた面を否定できません。外総診ですと医師は検査を外部に委託しますとその費用を与えられた定額の中から支払い、手取りが減ります。また薬も処方箋を出して医薬分業路線で院所外の薬局から患者が受け取るようにした方が経営上有利になります。

私も社会保障は、すべて個人で賄うことは出来ませんから、国がその充実を図るべきだとは思っています。しかし特殊法人問題を始め一度これまでの固定化した制度、一部の人だけが有利になる制度は洗い直して、再出発しなければならないとは思います。そのためにはすべてを一度否定して再吟味することも必要でしょう。早くこの見直しを終わって、新しい社会保障制度を創ることこそ、これからの政府の仕事だと思います。

[追記:8月23日](株)日本総合研究所発行のJapan Research Review 2001.Augには「新たな高齢者医療保険制度の創設と医療保険制度全体の再構築を同時に実施せよ」という論文が出ています。現在老人医療費の負担構造は高齢者の自己負担8%、各保険者からの拠出金64%、公費の負担28%といいます。但し拠出金中には政管健保や市町村国民健保もありますから、公費負担は50%になるといいます。ともかく拠出金を負担している各健保は倒壊の一歩手前です。平成11年の実績では医療費は前年比3.7%増で、ことに老人医療費は前年度比8.4%増といいますから、このままでは2025年には国民医療費は81兆円に達し、うち45兆円が老人医療費になるのだそうです。

この現状をふまえ、いろいろの方策を検討した上でこの論文は、高齢者にも月別支払い上限のない1割負担を求め、高齢者の負担:各保険者からの拠出:公費=15:35:50(現行は8:64:28)にすることおよび70歳以上でも年収600万円以上の老人は新たな高齢者医療保険の対象から外すことを主張しています。また医療保険制度全体の改革として、診療報酬の「出来高払い」から「定額払い」への変換を唱えています。
私は年収による除外措置は壮年者を対象とした一般健保での加入にも、収入による制約を設けるのかという問題と同時に考えてほしいと思います。診療報酬の「定額払い」は上の外総診の考え方と一致するもので、すでに医療機関でも受け入れが進んでいく傾向にあります。診療の標準マニュアル作成が出来るかどうかが問題ですが、患者にも開示しない「出来高払い」制が医療費高騰の原因であることは否定できません。[追記:9月02日] 
8月31日厚生労働省は2002年の医療保険改革の原案を作成しました。今後の議論の展開と結論は予測できませんが、高齢者医療については75歳以上とし、公費負担を5割にするといっています。私ども75歳以下の老人には国民健保ですと一般の壮年者並に段階的に3割負担になる案です。この案と上の「外総診」との関連はわかりませんが、「外総診」は「定額払い」の考えですから、医療費高騰の原因にはなっていません。外総診採用医療機関では70歳以上の老人にこれまで通りの医療を継続してほしいものです。70歳から74歳の老人の医療が複線化するのですが、医療機関の考え方と経営方針を切り替えさせる有効な手段になるのではないでしょうか?
(2002年10月追記)10月からの老人医療費の改革に伴って、この外総診制度は廃止されました。

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いま考えていること 82(2001年09月)
――これが実体か――

今朝も株価が150円ほど反発したかと見えた後、瞬く間にまた100円近く下がっています。バブルの崩壊したときにも経験しなかった損失が私の資産にも発生しています。小泉不況だと言う声も大きくなってきましたが、私はこれが今の日本の実体だと思っています。銀行やゼネコンの不良資産が問題になって来ましたが、未だにそういう不良な会社で目立った倒産廃業もなく、まだ大部分がそのままですから、悪くなる一方というのが正直なところでしょう。もっと遙かな過去に清算しておくべきことを怠ってきたために益々傷口は大きくなって来たのです。悪いことにアメリカもヨーロッパも不況の波の中にいます。私は行き着くべき所まで行かないと目が覚めないと思っています。未だに失われた右肩上がりの経済を夢に見て、調整インフレで乗り切ろうとする人が後を絶ちませんが、不況は日銀の政策に帰せられるべきものではないと思うのです。族議員を中心としてよってたかって国費を食い荒らした結果でしょう。小渕さんもそうです。いま考えていること 80にも書いたように国民の蓄えも底をつきかけた現在、不良資産を抱えたところの大胆な大掃除しか道はないと思います。

しかし、国は本来利益を上げるべき会社でないという自明のことを忘れてはなりません。利潤の上では成り立たなくても民間の利潤を税として集めて国民にとってどうしても必要なことは国がやらなくてはなりません。例えば山の緑の保全、温暖化の排除、自然環境の保護などこれまで国でなければ出来ないのにその反対のことばかり進めてきた政治を改め、税金を投入しなければなりません。また老後の年金、介護、医療は守らなくてはなりません。このような国民の安心を保障する部門への税金の投入を惜しんではなりません。その上で大胆にこれまで族議員や官僚が吸ってきた甘い汁を分泌するだけの機関や規制を潰すことが必要です。国として採算を度外視してするべきことも明らかにし、それは断固として実現するという希望がのべられていないのが小泉改革の欠陥ですし、国民は意気阻喪して元気が出ないのです。株価がどこまで下がるか、その結果どういう現象がでてくるか、当面の注目点です。

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いま考えていること 83(2001年09月)
――空前の出来事――

世界貿易センタービル、ペンタゴンへの突入。誰が想像したでしょう。おおぜいの犠牲者の皆さんには本当にお気の毒に思います。正に神風特攻隊の攻撃で、テロリスト自身も命を捨てた攻撃でした。テレビで見ていてブッシュならずともこれはかって私どもが経験した戦争だと思いました。この前の戦争では日本の多くの非戦闘員が空襲の惨禍に会い、死んでいったものです。アメリカの人たちはこれまで戦時でも直接空襲を受けたことがありませんから、この恐ろしい事態から受けたショックは我々以上のものでしょう。

アメリカは復讐を唱え、着々準備に入っているようですが、わたしは小泉首相の賢明な判断を期待しています。というのは共和党のブッシュ氏が政権を獲得してから、アメリカの政策は例えば、ミサイル防衛の推進といい、京都議定書からの撤収といい、ロシアとの間の弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)の一方的な破棄通告といい、またイスラエルとパレスチナの紛争での一方的なイスラエル支持など、あまりにも一方的な自国の信条と利益優先の政策が目立っています。この姿勢はイスラム原理主義と双璧です。テロリズムを生み出した素地を考えるとアメリカにも反省すべきことが多々あります。ことはイスラムという宗教上の問題ではなく、イスラム過激派が産まれる素地にはアメリカの姿勢もあると思います。アフガニスタンへの攻撃などアメリカが戦闘を開始しても簡単に同調してはイスラムを中心とした世界を相手の戦闘に首を突っ込むことになりかねません。圧倒的な近代軍備をアメリカが誇ろうとも、予期できない今回のような大義に殉ずる神風特攻隊式の攻撃という手段もあることを事件は立証しました。日本がアメリカに同調すれば同様の作戦の対象になりかねません。原子力発電所の管理棟にでも今回のような突入が起こった場合を想像するだけでも恐ろしいことです。近代戦ならぬ人々の抵抗に、強大なアメリカが破れたベトナム戦争という例もあります。戦争は軍事技術の優劣によってのみ決定するスタイルだけでなく、人々の良識と智慧に依存するベトナム型の戦争もあるのです。

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いま考えていること 84(2001年09月)
――株とデフレ――

来月から確定拠出型年金がスタートするので、新しい運用会社も立ち上がってきています。しかしこの制度に参加する前に改めて考えておくことがあるのではないでしょうか。昨日ニューヨークの証券取引所が再スタートし、暴落していますが、世界貿易センター事件の前から日本でもヨーロッパでも株は続落を続けてきました。わたしもこれだけ株価が下がっているのだから小泉首相並に買い時かとも思うのですが、考えてみました。

まず本来株式は経済の動きを柔軟に反映するものだと思うのです。だからこそインフレになったときに株は比較的良く順応して値が上がり、経済的ダメージを抑えてくれるのでしょう。これは言い換えればデフレの時は正直に株価は下がると言うことではないでしょうか。デフレ、リストラのもとでは企業の業績は伸びず、多くの企業が現にこの9月中間決算ではかなりの赤字を出す予定です。これでは株価は上がるわけがありません。ある種の業師はこのような事態でも株で儲けているかも知れませんが、有名な投資信託でも欠損が嵩んでいます。専門の運用アナリストの判断でさえこの結果です。わたしも今から3年前バブルがはじけたとき、かなりの含み損を記録しましたが、その後ある程度は回復し、現在はこのとき以上の含み損を抱えています。これは新しい現在のデフレとリストラの動きの当然の成り行きでしょう。デフレばかりが続くわけもなく、いつの日にかはインフレの時も来るでしょうからそのときに備えて深謀遠慮!長い目でみていま株を仕込んでおくのも良いかも知れませんが、当面はデフレとリストラが進み、不況が深刻になっていきますから企業の収益は下がり、株や投資信託の含み損は増えるでしょう。結論的には一般にはデフレ基調の時は株価は下がるものと考えて良いのではないでしょうか。

いくらいろいろ手を打っても経済の実体が正直に答えをだすということを昨日のニューヨーク証券取引は見せてくれました。甘い期待は無意味です。アメリカの401Kの真似に過ぎない確定拠出型年金制度を採択した国会、泣くのは国民です。年金というような老後の生活の支柱は、個人の運用責任にしてしまうような制度では困るのです。株や投資信託での運用は基本的には大きな経済の動きに左右され、個人ではどうしようもないのです。これを個人の運用の上手下手に帰してしまうのは暴論で、こういう個人では責任を持てないものこそ、国が国費で責任を持って保障しなければならないものなのです。わが国は戦後一時期よく言われた“福祉国家”をやはり目的にしなければならないのです。

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