「カッリマコスのエピグラム詩」註
- 「アルタネウス」
レスボスの対岸、ミュシアの豊かな沿海地。カネー山の麓に同名の都市あり。
- 「ピッタコス」
ミュティレーネーの借主 前600頃。七賢人のひとり。
先代の僭主を倒してミュティレーネーの支配者になった。10年間権力を保持した後に引退したと言われており、この点においてほかの僭主と異なっている。アリストテレスは彼に調停者(民衆によって選ばれた君主)という特別な称号を与えた。国利改革者ではなかったが、奢侈禁止令を制定し、酒に酔って罪を犯した場合には2倍の罰金を科した。政敵のアルカイオスは、彼の不格好な体つきと卑賎の生まれを取り上げて詩の中で攻撃している。 【参考文献】アリストテレス『政治学』1274b,1285a;デイオゲネス・ラェルティオス『ギリシア哲学者列伝』第1巻74節以下。
- 「おまえに似合った走路を走れ」
th;n kata; sauto;n e[la。諺。
アリストパネス『雲』25に模倣がある。e[laune to;n sautou: drovmon〔自分のコースを走れ〕。
- 「ハリカルナッソスのヘーラクレイトス」
Strabo, xiv. 656。「ヘーラクレイトスは、カッリマコスの朋友の詩人」。彼による碑文体の詩が、A. P. vii. 465にある。
- 「ティモーン」
懐疑派の哲学者ティモーンについては、Aristoph. Birds 1549, Lys. 809 ff.; Lucian, Timon; Diog. Laert. ix. 112; Plut. Anton. 70.
- 「大多数〔=死者〕」
英語で言う「The Great Majority」=「the Dead」に同じ。Aristoph. Eccl. 1073 ; A. P. vii. 731, xi. 42 ; Suid. pleiovnwn` tw:n nekrq:n.
- 「サモス」
Strabo xiv. 638「また、サモス出の人にクレオピュロスもいて、話によると、この人はかつてホメロスを歓待し、そのため題名を「オイカリア陥落」という詩の献呈を受けた。しかし、カリマコスはある題詩のなかで、これとは逆のことを表現していて、その詩によると、詩をつくったのはクレオピュロスであり、歓待の話があるためホメロス作ということになっている」としてこのエピグラムを引いている。
- 「VIII」
継子に対する継母の非情は、日本同様、ギリシア・ラテン詩において諺化していた(A.P. ix. 68, 69)。
- 「テアイテートス」
何編かのエピグラム詩が伝存している(Diog. Laert. iv. 25, viii. 48 ; A. p. vii. 444, 499, 727。A. P. vii. 49のキュレーネーのアリストンのエピグラム詩から、彼がキュレーネー出身であることが推測される。
- 「清浄な道」
kaqarh;n oJdovnは意味不明。Cf. Pind. Isth. iv.(v.) 23, Ol. vi. 23, 73.
- 「ティマルコス」
Diog. Laert. vi. 95はアレクサンドレイアのティマルコスに言及している。
- 「プトレマイオス部族」
プトレマイオス・ピラデルポスにちなんで名づけられたアッティカの部族。Paus. i. 6. 8.
- 「短かった」
Mairは、像の長さとして、Ovid. Amor. ii. 7. 59以下を根拠に挙げる。しかし解釈はさまざまである。
- 「XV」
キュレーネー人アリムマスの子カリダスに寄せる。アリムマスは=ArivmacoVの短縮形。アリマコスはArr. Anab. iii. 6. 8に出てくる。
- 「ペッラ貨」
冥府では、物の値が廉価であることは、諺化していた。Cf. Callim. Iamb. i. 2 ; Phot.. アテーナイのドラクマ銀貨は、glau:keV Laurewtikaiv(Aristoph. Av. 1106)あるいはPallavdeV(Eubulus ao. Poll. ix. 76)と呼ばれ、コリントスの貨幣はペーガソスを刻印されていたので、Pw::loi(Eurip. fr. 675=Poll. ix. 75)と呼ばれていた。ペッラの貨幣には牛が刻印されていたので、boveV Pellai:oiとして知られていた。
- 「XIX」
Cf. A. P. vii. 496.
- 「XX」
山羊座が太陽といっしょに昇りはじめる(heliacal rising)は5月8日以降、海にかかるのは11月7日以降。航海に不適な季節である。
- 「XXIII」
バットスはキュレーネーの建設者(前630頃)。前440年、王制から民主制に。カッリマコスはバットス家の出身であった。このエピグラムは、将軍カッリマコスの子にして、詩人カッリマコスの父に寄せる。
- 「聖なる者」
すなわち半神(h{rwV)よなった。
- 「XXV」
A. P. vii. 471, cf. xi. 354. アムブラキアのクレオムブロトスはプラトーンの弟子であった。ソークラテースの死のとき、彼はアイギナにいた(Plato, Phaedo 59c.)。彼の自殺については、Lucian, Philopatr. i.「」。 プラトーンの作品は『パイドン』すなわち『魂について』である。
- 「XXVI」
半神は武装して馬に乗り、蛇(土着性を意味する)を伴って表現される。エーエティオーンは典型的なトロイア人の名前である。彼はエペイオスによって考案された木馬のせいでトロイが陥落した(Od. viii. 493)ことから、馬を憎む。そのため、この半神は徒で戸口に建てられる。
- 「XXVII」
恋する者の誓いがあてにならぬことについては、cf. Ovid, Ars am. i. 633「」。
- 「メガラの故事」
Suidas のuJmei:V w\ Megarei:Vの項で、次のように説明されている。「
- 「ミキュロス」
ミキュロスという名は、Diodor. xix. 88. 5.に、マケドニアの将軍の名前としてでてくる。ここでは、おそらく、文脈のふさわしい(ミキュロスは「小さい者」の意)ことから採用されたのであろう。
- 「飲む」
Cf. Theogn. 959 ff.
- 「アケローオス」
ピンドス山脈に発し、アカルナーニアとアイトーリアの境をなしつつ、コリントス湾の入口に流入するギリシア最大の河。ここでは水のこと。cf. Verg. Georg. i. 9「なまの川水〔アケロウス〕を酒という新しい飲み物で味つけしてくださるなら」。
割らない葡萄酒でひとのために乾杯する習慣については、cf. A. P. 136, 137.
- 「骨と髪ばかり」
Cf. Theocr. ii. 89.「残ったのは骨と皮ばかり」。
- 「XXXIII」
このエピグラム詩はホラティウスによって翻案された。Sat. i. 2. 105 ff.「」。cf. Ovid. Amor. ii. 9. 9.「」;cf. ii. 19. 35 ; Sappho. frag. I. 21.「」。
- 「わたしの夢はわたしのもの」
よく知っているという意の言い廻し。cf. xlix. 6.
- 「師子を絞め殺した殿」
師子を絞め殺した殿(leontavgchV; cf. ヘルメースのkunavghV, Hippon. fr. 1)とは、ネメアの師子を絞め殺したヘーラクレースのことで、しばしば画題となる。e. g. アミュクラエーの王座にあるa[gcwn =Hraklh:V to;n levonta(Paus. iii. 18. 15)。彼はまたイノシシ、すなわち、エリュマントスのイノシシの屠殺者でもある(Paus. viii. 24. 5)。
- 「アクリシオス」
- 「ヘスペリス人たち」
Steph. Byz. =EsperivV` povliV LibuvhV, hJ nu:n Beronivkh. oJ polivthV +EsperivthV. KallivmacoV ejn toi:V =Epigravmmasin.
- 「XLII」
Aulus Gellius, N. A. xix. 9.は、Q. Catuluによるこの詩の模倣を伝承している。「」。
- 「消えただけ」
Cf. A. P. xii. 166.
- 「XLIII」
このエピグラム詩には、ストア派の論理、「軽率さ(propevteia)」とその反対語「ajproptwsiva」という観念が用いられている。cf. Diog. L. vii. 46「ajproptwsivaとは、(表象に対して)ひとがいつ同意を与えるべきか、また与えるべきでないかということについての知識である」。48「断定においてpropevteiaを発揮することは、実際の事の成り行きにも影響するのであって、未熟な表象を持つ人たちは、節度もなく考えもない行動に走ることになるのだとされている」。
- 「XLIV」
このエピグラム詩とともに、Asclepiades, A. P. XII. 135. を参照せよ。
しのぶれど色にいでにけりわが恋は物や思ふと人のとふまで 平兼盛。
- 「地に落ちた」
Cf. A. P. xii. 135.4 cwj sfigcqei;V oujk e[mene stevfanoV〔〕
- 「ぬすっと犬め」
sigevrphV、Hesych.に出てくる。咬みつくためだけに尻尾を振って這い寄ってくる犬(laqrodavkthV)。cf. Theocr. xv. 48. Mair は"Gypsy"と訳す。相当な差別主義者ではある。
- 「ベレニカ」
Theocr. xvii. 57.「ajrivzhloV Berenivka」。キュレーネーのマガースとアパメーとの娘。プトレマイオス3世エウエルゲテースの妃。「ベロニカの巻き毛」のモデル。
- 「イーナキス」
「イーナコスの娘」の意で、イーオーをさす。ここではイーシスと同一視されている。Ovid. M. ix. 686, Propert. ii. 24. 4, etc.
- 「LXII」
Athen. 436Dに似ている。
- 「ケンタウロスにもふりかかったこと」
Hom. Od. xxi. 295「酒はあの半馬人の、音に聞こえるエウリュティオーンさえ/過たせた」。
ペイリトオスの結婚の宴で、酒に酔った半馬人のエウリュティオーンは、花嫁を犯さんとして、ラピテース族とケンタウロス族の戦いを惹き起こした。
- 「キュントス」
デーロス島のキュントス山。ここでアポローンとアルテミスが生まれた。
- 「オルテュギア」
デーロス島の古名。《うずら(ortyx)島》の意。ヘーラーの追求を遁れるために、ゼウスによってウズラの姿に変ぜられたレートーがこの島でアポローンとアルテミスを生んだために、この名があると解する伝えもある。したがってアルテミスもまたオルテュギアと呼ばれる。
- 「LXIV」
これは、恋人の家の扉の前で歌う怨み節(paraklausivquron)といわれるものである。参照;Plut. Amatorius 753B「tivV ou\n oJ kwluvwn ejsti; kwmavzein ejpi; quvraV a/[dein to; paraklausivquron, ajnadei:n ta; eijkovnia pagkratiavzein pro;V tou:V ajnterastavV ; tau:ta ga;r ejrwtikav.」。
- 「おまえに思い出させるだろうよ」
A. P. v. 20〔21?〕 ; Hor. Od. iv. 10 参照。
- 「カモメ」
海の放浪者の典型としてのカモメについては、cf. Callim. Aitia i. 1. 34 ; A. P. vii. 295.2 ; Arat. Ph. 296.
- 「カノープスの神」
サラピス。cf. Paus. ii. 4. 6「サラピスの神苑も二つ。そのうちの一方はいわゆる「カノーボスに坐すサラピス」。
- 「万人の中で輝かしい」
Theocr. xvii. 57.
- 「グラウコス」
Hom. Il. vi. 234 ff.「〔グラウコスは〕テューデウスの子ディオメーデースに対して代わりに贈ると、/青銅の物の具にかえ黄金のを、九牛の値のに百牛の値のものを贈ってやった」。
- 「喜劇の証人」
「喜劇の証人」という諺については、cf. Cic. Ad famil. ii. 13「」。
パムピロスは、テレンスのAndriaとHecyraの登場人物。パムピリアは、メナンドロスのEpitrep. 508 f.とテレンスのEunuchusとAdelphiに登場。
2つの顔をもった仮面は、cf. Pollux iv. 141, Quintilian xi. 3. 74.
- 「この髪は神聖です」
Eurip. Bacch. 494.
- 「」
- 「」
- 「」
- 「」