女流抒情詩人。前6-5世紀(?)。
ボイオーティアのタナグラ生まれ。前1世紀以降の古代の学者たちによって、ピンダロスより年長の同時代人であると信じられており、彼と張り合った逸話が語られている。しかしながら数人の現代の学者はこの証拠を拒否して、彼女を前200年ぐらいに年代づけている。
彼女の詩は神話に題材を採ったもので、一般に地元ボイオーティアの関心に基づいていた。パピルス断片の一つは、擬人化されたボイオーティアの二つの山のあいだでの歌比べを記述している。諸断片は方言で表現されているが、非常に素朴な気取らない文体を示している。
[底本]
D. Campbell, Greek Lyric IV, Loeb Classical, Harvard, 1992
断片1 Sud. K 2087
コリンナは、アケオーオドーロスとプロカティアとの娘、テーバイ女ないしタナグラ女で、ミュルティスの女弟子。ミュイア〔「蠅」の意〕と綽名された。リュラ弾き女。伝説(Logos)では、ピンダロスに5度勝ったという。著したのは5巻の書、エピグラム詩、リュラ曲。
『スーダ』には、テスピアイないしコリントス出身の抒情詩人コリンナ(cf. 674)と、テーバイ出身の抒情詩人「若いコリンナ」との混同がある。
断片2 Plut. glor. Athen. 4. 347f-348a
ピンダロスがまだ若く、言い廻しのうまさを誇っていたとき、コリンナが忠告して、音楽性に欠け、ミュートスをつくっていない、これこそ詩人の仕事の行き着くところであるのに、わかりにくいことば、意味のこじつけ、言い換え、歌詞、こういったものは主題を潤色する調味にすぎないと。そこでピンダロスは、言われたことに大いに留意して、次の歌をつくった。
イスメーノス、あるいは黄金の糸巻き棒もてるメリア、
あるいはカドモス、あるいは、種蒔かれた戦士たちの聖なる種族、
あるいはヘーラクレースの全き強さ、
あるいはディオニューソスの喜ばしき誉れ。
コリンナに示すと、彼女は笑って、種蒔きは手ですべきであって、袋全体でするものではありませんと謂った。実際、ピンダロスはミュートスのごった煮のようなものを混ぜ合わせ、ごたまぜにして、歌のなかにぶちまけたのである。
断片3 Ael. V. H. 13. 25
詩人ピンダロスは、テーバイで〔詩の〕競演をしたが、無学な聴衆にでくわして、コリンナに5度敗れた。そこで、連中の無教養を非難して、コリンナを豚と呼んだ。
「ボイオーティアの豚という古来の悪口からわれらが……逃れているか確かめさせよ」(Ol. 6. 89 f.)。
断片4 Paus. 9. 22. 3
コリンナは、歌を作ったタナグラの唯一の女性で、この女性の墓はこの都市の目抜き通りにあり、体育場には肖像画がある。頭に鉢巻きをしているのは、コリンナがテーバイにおいて歌でピンダロスに勝ったその勝利のためである。しかし、わたしのみるところ、勝利はひとつには方言のせいであろう。というのは、ピンダロスとは異なり、彼女はドーリス方言ではなく、アイオリス人たちが理解できるはずの方言で歌ったのであり、もうひとつには、肖像から何か証拠づけられねばならないとするなら、当時の女たちの中でこの女性は容姿が最美であったせいであろう。
断片5 Prop. 2. 3. 19ss.
断片6 Stat. Silv. 5. 3. 156ss.
御身〔スタティウスの父〕が解明に通暁せるは、
バットスの裔〔カッリマコス〕の歌章、暗きリュコプローンの謎、
錯綜せるソープローン、しかして、コリンナの〔ボイオーティアの正字法の結果としての〕秘儀。
断片7 Comment. Melamp. seu Diomed. in Dion. Thrac.
叙情詩の作詩者は9人、その名は以下のとおりである。アナクレオーン、アルクマン、アルカイオス、バッキュリデース、イビュコス、ピンダロス、ステーシコロス、シモーニデース、サッポー、そして十人目がコリンナ。