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魔法と科学の間

マゴス僧ダミゲローン

『石について』
(peli; livqwn)





[底本]
TLG 2655
<DAMIGERON Magus>
(Incertum)
2 1
2655 002
De lapidibus (e codd. Vat. gr. 578 + Ambros. 95 sup.), ed. J. Mesk, "Ein
unedierter Tractat peli; livqwn," Wiener Studien (1897) 318-321.
(Cod: 962: Magica, Nat. Hist.)





石について(De lapidibus)

318."1t"
ソークラテースとディオニュシオスの『石について』

318.2
 スマラグドス石は、最美にして最も高価な石で、あらゆる行為におけるあらゆる好意と成功をもたらす力を有する。すなわち、聖潔に身につけた者たちを、人生においても言葉においても行為においても事物においても増大せしめる。さらにまた、水占いに効果を発揮し、奴隷たちに自由を結果させる。なぜならこの石を備えて実行する人は、万事ねらいどおりになるからである。
 ところで、これは次のように備えるべきである。この石を手に入れたら、金剛石でコガネムシが彫られるよう命ぜよ。次いで、それの腹部に、〔……〕を。次いで、穴を開けて、黄金の針を入れて、指につける。
 この石はインドで、ピソーン河が宮殿から出てくるところに産する。これは土色に似た外観を呈し、この薄緑色をした石はネローニアノス(nerwnianovV)と呼ばれる。これとは違って黄緑色をしたスマラグドス石は、ヒュアクトリゾーン(uJaktorivzwn)と言われる。だが、緑色で、それより少しばかり卵白色のものは、タクトーリオス(taktwvrioV)と言われる。

 ヒュアキントス石。清浄なこの石に彫られるのは、右足にイルカ、右手に三叉矛を持っているポセイドーンである。さて、そういうふうに仕上がったら、指輪にして持て、そうすれば、スマラグドス石ができることはすべてできる。いや、そればかりか、海上交易に従事する者たちを荒波から救う。

 スパニオス〔稀少〕石。この〔石〕は、彫り物がなくても、身につけているだけで、大きなことを達成する。しかし、ただひとりペルシアの王以外に、この石を持っている者は誰もいない、〔ペルシア大王は〕この石のおかげで権力者となり、他を凌駕した者となった。この石の種類は、リュクニテース石(lucnivthV)のように清浄で、紫色で、太陽のような輝きをもつ。

 カルケードーン石。色はアントラクス石(a[nqrax)に似て火の輝きをもつが、スパニオス石ほどの硬さはない。この石はリュクニテース石である。アントラクス石は、清浄で、血のようである。この石〔カルケードーン石〕は、祈りを成就したもうアテーナ — 右手にサギと言われる鳥をつかみ、左手には兜を持している — を刻印され、これが身につけられていると、身につけている者が亡くなったあと、あらゆる敵と競争相手に打ち勝たせ、優美さと明敏さと、あらゆることと、難船の回避をを達成できる者となす。また、この石がいかなるものかを示すのは、やわらかい着物でこれをこすったときである。というのは、魅惑的なものとなって、自分の近くにある物質のかけらを引きさらうこと、あたかもマグネーテース石〔磁石〕が鉄をそうするがごとくである。産するのはインドの、上記の場所である。

 バビュローン石。これをサルディオス〔石〕(savrdioV)と呼ぶ人たちがいるが、バビュローン石は別の石で、カルダイオイ人たちのところにある。バビュローン石は、アントラクス石が燃えるような曙光〔の色〕を有する。日の出のように快い。サルディオス〔石〕の方は、バビュローンに至ると白っぽくなり、真ん中に燈火のように輝く縞を有する。この〔石〕は、輝かしい人々、とりわけパラティウム丘にいる人々によって身につけられると、彼らを大いなる名声をもって尊敬されるようにする。彫刻されて、祈りをかなえるアルテミスと、そのそばに立つシカをもつと、身につけた者を男らしく、精力的、高貴、活動的な者となし、さらには敵の襲撃による傷害をしりぞけ、より弱い者たちをその逆にし、誰か傷つけられた者がいても、この石をその箇所に押し当てれば、傷が腫れるのをこばみ、身につけている者を、持っていれば、傷の痛みを感じないですむよう監視する。またアレースが彫られるのは、この石の主人としてである。彼に奉納されるからである。

 サルドーニュクス石〔紅縞瑪瑙〕。この〔石〕が、あらゆるマゴス僧たちによってモロコス(movlocoV)と言われるのは、主権者たちの権力をやわらげ優しくさせるからである。この〔石〕は身体の最大の護符である。アテーナイ人たちがこの石を用いるのは、効き目があるからである。彼らはこれをクサンティコス月、太陽が牡羊座にあるときに入手し、牡羊と心臓をつかんだアテーナを彫る。この〔石〕は数多くの多彩な縞を有し、あるものは空気のよう〔薄青〕、あるものは密の色を有し、いやそれどころか、黒いもの、ほの白いもの、別のもっと白い〔縞〕を〔有する〕。

 オニュキテース石。この〔石〕はインドに産し、中に空気のような数々の白い縞を有する。これにはヘビのとぐろ — イヌの前半身あるいは頭をもった — を刻印せよ。この〔石〕は身につけられていると、内のことは何でも守り、これを身につけている者が害されることをこばむ。上述のように、白い縞とわずかの黄色い縞を有する。

 別のオニュキテース石。中に、一部はいくぶん蜂密の色、一部はいくぶん黒色、真ん中に白色を有する。この〔石〕はアポッローンとアルテミスを刻印されると、子宝にめぐまれる。また、身につけたひとが群衆のなかを進めば、これに令名と幸福をもたらす。

 別のオニュキテース石。これをペリレウキオン(perileuvkion)と呼ぶ人たちがいる。この中に卵、卵の中にコガネムシが彫られると、人生において動じることなく、数多の財産や事物にめぐまれよう。

 別のオニュキテース石。全体に空気のように白くて輝いている。これはオニュキテース石の一種である。そこで、これにヘビのとぐろ — — ライオンの前半身あるいは頭をもった — と光線を刻印せよ。この〔石〕は、身につけられていると、喉に痛みを感ずることを完全にこばみ、いやそれどころか、あなたが摂る食べ物はみな消化できる。身につけている者は、これを外してはならない。

 別のオニュキテース石。見たところ全体的に黒い。この〔石〕は、胎に子を持つ女たちや授乳する女たちに役立つ。しかし、これに彫られるのは、3つの頭をもったクヌゥビオス(CnouvbioV)である。

 クリュソリトス石。水っぽく、輝いて、透明で、黄金のような〔石〕。この〔石〕は、身につけられていると、諸々の知見において端正な人たちや善き人たちをつくるが、とりわけ女たちには身につけていると益がある。そこで、アプロディーテーを刻印して、仕上がったら持て。数多くの恩恵をもたらす。

 オパッリオス石〔オパール〕。この〔石〕は、一部の人たちによって、サルピゼーノス石(salpizhnovV)と言われるが、他の人たちには、その姿の良さからパイデロース石(paidevrwV)と〔言われる〕。しかし、アメテュストス石(ajmequvstoV)に類似し、軟らかく、輝いて、ガラスのように緑色で、万人に好まれるが、とりわけ太陽に〔好まれる〕。この〔石〕は主権者たちの願いをもかなえてくれる。優美で高貴なのがこの石である。また、魔除けをする者たちに極めてよく効くが、とりわけヘカテーに憑かれた者たちに効く。また子どもたちの性愛にも効き目がある。この〔石〕に彫られるのは……

321.20
 アカテース石〔瑪瑙〕。アカテース石たちは最大の力を有する。ヘルメースの持ち物である。ライオンの皮と同色の〔アカテース石〕は、〔患部に〕結びつけられたり、粉末にして水と一緒に軟膏として使われると、サソリに咬まれた人たちに強力な効果を発揮する。というのは、刺された人の苦痛をたちまちなくすからである。また、磨り潰して咬み傷に押し当てられたり、あるいはまた、酒と一緒に服用されたりすると、マムシに咬まれた人たちに適する。また、指輪にして身につけられていると、身につけている人を愛想のよい、社交的で、聞きわけのよい、権力をもった人、何ごとにも大喜びする人にするが、次のようにすれば強壮で色よいものが仕上げられる。銅の針をとって、それ〔石〕の中にその名を書け。唱えよ〔?〕(ijacwv)、そうして、指輪にその石をとりつけ、彫刻して身につけよ。この〔石〕は全体が黄色をしている。

321.30
 アンタカテース石(livqoV ajntacavthV)。アカテース石の類とは大いに異なっているが、力能の点では最強である。この石は、3日ごと、4日ごと、その他のあらゆる周期の病を治療する。次のようにすればよい。〔すなわち〕乳香の代わりのように燻蒸剤として砕いて、赤熱したアントラクス石に〔ふりかける?〕、しかし、あまりに細かくしすぎて、長時間の間に諸器官から吸引されるほど燻蒸されることのないようにする。そして、こういうふうにして解放されるのは、……〔欠損〕

2006.06.17. 訳了。

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