Fabulae


[底本]
TLG 0096 002
Fabulae, ed. A. Hausrath and H. Hunger, Corpus fabularum Aesopicarum,
vols. 1.1 & 1.2, 2nd edn. Leipzig: Teubner, 1.1:1970; 1.2:1959:
1.1:1-210; 1.2:1-116.
5
(Cod: 46,077: Fab.)

[解説]
 イソップの写本
 現存する最古にして最大の散文のイソップ集成は「アウグスブルク校訂本(校訂本 I)」である。これはアウグスブルクから現在はミュンヒェンのバイエルン国立図書館の所有に移り、「ミュンヒェン写本564(Codex Monacensis 564)」と呼ばれることになったもので、231話を含んでいる。これは13ないし14世紀の写本であるが、その祖本は1、2世紀に遡り、デメトリオス本の姿をとどめると考えられている。
 「校訂本 I」は様々に縮小され改変を蒙って、3つの系統に分かれる。
 「校訂本 Ia」は140話を含み、その祖本は3ないし5世紀に遡るものと考えられている。
 「校訂本 II」は12、3世紀の「ウィーン写本130(Codex Vindobonensis 130)」を代表とする写本群で、130話を含むが、その祖本は「Ia」と同じくらいの古さであろうとされる。
 「校訂本 III」は、ボヌス・アックルシウス(Bonus Accursius)が1479年にミラノでこれの印刷本初版を刊行したところから、「アックシウス版」と呼ばれるが、14世紀の初め、ビザンツの学僧マクシモス・プラヌデスの手により編集されたものである。「校訂本 II」から自由に書き変えたもの、「校訂本 I」をほぼ忠実に写したもの、を合わせて127話としている。1812年にシュナイダーが「校訂本 I」の刊本を出すまでは、イソップの流布本といえばこのアックシウス版であった。
 現在、『イソップ寓話集』と呼ばれているものは、「アウグスブルク校訂本」の231話を中核に、その他の写本に見える話、パエドルスおよびバブリオス所生の話、古代作家の伝える話、『イソップ伝』に組みこまれている話、修辞学者アプトニオス(4、5世紀)の作になる話、11世紀後半にシリア語からギリシア語に移された『シュンティパス集』から採られた話、等々を合わせた一大集積物に他ならないのである。
 このようにして編まれた『イソップ寓話集』の刊行は、ギリシア人コライスの校訂になるもの(1810年、366話)をはじめとして、〔ドイツのカール・〕ハルム版〔1852年、426話〕、〔フランスのエミル・〕シャンブリ版〔1927年、358話〕、〔ドイツのアウグスト・〕ハウスラート版〔1956年、346話〕、〔アメリカのベン・エドウィン・〕ペリー版〔1952年、ギリシア語の寓話471話、ラテン語寓話254話〕と続く。(中務哲郎『イソップ寓話の世界』ちくま新書、1996.3.、p.112-113)

 TLG が収録しているのはハウスラート版である。題名と、ペリー校訂本の作品番号を挙げ、ペリー校訂本に見あたらないものは試訳しておく。





"t"

寓話集(ハウスラート版)

1"t"
鷲と狐(Perry1)

"2t"
corvus monedula鷲と黒丸烏〔右図。学名"Corvus monedula"いわゆる"Jackdaw"として、西洋文学ではおなじみのカラス〕と羊飼(Perry2)

"3t"
鷲とクソムシ(Perry3)

"4t"
ナイチンゲールと鷹(Perry4)

"5t"
借金のある者(Perry5)

"6t"
野生の山羊と山羊飼(Perry6)

"t7"
猫と鶏(Perry7)

"t8"
造船所のアイソーポス(Perry8)

"t9"
狐と山羊(Perry9)

"t10"
狐とライオン(Perry10)

"t11"
漁師(Perry11)

"t12"
狐と豹(Perry12)

"t13"
漁師(Perry13)

"t14"
狐と猿(Perry14)

"t15"
狐と葡萄の蔓〔15b「狐と鼠」〕(Perry15)

"t16"
猫と鶏(Perry16)

"t17"
尻尾のない狐(Perry17)

"t18"
漁師と鰊(Perry18)

"t19"
狐と茨(Perry19)

"t20"
狐と鰐(Perry20)

"t21"
漁師たち(Perry21)

"t22"
狐と樵(Perry22)

"t23"
鶏と山鶉(Perry23)

"t24"
腹のふくれた狐(Perry24)

"t25"
翡翠(Perry25)

"t26"
漁師(Perry26)

"t27"
モルモーの面を見た狐(Perry27)

"t28"
貧乏人(Perry28)

"t29"
炭屋と洗濯屋(Perry29)

"t30"
難船者(Perry30)

"t31"
ごま塩頭と愛人たち(Perry31)

"t32"
人殺し(Perry32)

"t33"
法螺吹きの五種競技選手(Perry33)

"t34"
出来ないことを約束する男(Perry34)

"t35"
人間とサテュロス(Perry35)

"t36"
罰当たり(Perry36)

"t37"
眼の見えぬもの(Perry37)

"t38"
農夫と狼(Perry38)

"t39"
燕と鳥たち(Perry39)

"t40"
天文学者(Perry40)

"t41"
狐と犬(Perry41)

"t42"
百姓とその子ら(Perry42)

"t43"
蛙たち(Perry43)

"t44"
王様を欲しがる蛙たち(Perry44)

"t45"
牛と車軸(Perry45)

"t46"
北風と太陽(Perry46)

"t47"
内臓を吐く少年(Perry47)

"t48"
ナイチンゲール(B[o]talis)(Perry48)

"t49"
牛飼い(Perry49)

"t50"
鼬とアプロディーテー(Perry50)

"t51"
百姓と蛇(Perry51)

"t52"
百姓と犬たち(Perry52)

"t53"
百姓の子どもたち(Perry53)

"t54"
蝸牛たち(Perry54)

"t55"
奥方と召使い女たち(Perry55)

"t56"
魔法使い女(Perry56)

"t57"
老婆と医者(Perry57)

"t58"
女と雌鳥(Perry58)

"t59"
(Perry59)

"t60"
老人と死に神(Perry60)

"t61"
百姓と運の女神〔Perry61。以上、001から061までは、Perry 校訂本の番号と同じ〕。(Perry61)

"t62"
百姓と蛇(Cf. Perry176は「旅人と蝮」。ハウスラートは186)(Perry62)

"t63"
弁論家デーマデース(Perry63)

"t64"
犬に咬まれた男(Perry64)

"t65"
旅をするディオゲネース(Perry247)〔異文:ディオゲネースと禿頭(Perry248)〕

"t66"
旅人と熊(Perry65)

"t67"
若者たちと肉屋(Perry66)

"t68"
旅人たち(Perry67)

"t69"
敵同士(Perry68)

"t70"
蛙たち(Perry69)

"t71"
樫の木と葦(Perry70)

"t72"
金のライオンを見つけた臆病者(Perry71)

"t73"
海豚と沙魚(Perry62)

"t74"
養蜂家(Perry72)

"t75"
海豚と猿(Perry73)

"t76"
鹿とライオン(Perry74)

"t77"
鹿(Perry75)

"t78"
鹿とライオン(Perry76)

"t79"
鹿と葡萄(Perry77)

"t80"
船旅をする人々(Perry78)

"t81"
猫と鼠たち(Perry79)

"t82"
蠅たち(Perry80)

"t83"
狐と猿(Perry81)

"t84"
驢馬と雄鶏とライオン(Perry82)

"t85"
猿と駱駝(Perry83)

"t86"
2匹のクソムシ(Perry84)

"t87"
仔豚と羊(Perry85)

"t88"
(Perry86)

"t89"
金の卵を産む鵞鳥(Perry87)〔異文:金の卵を産む雌鳥〕

"t90"
ヘルメースと神像彫り(Perry88)

"t91"
ヘルメースとテイレシアス(Perry89)

"t92"
蝮と水蛇(Perry90)

"t93"
犬と主人(Perry91)〔異文:戯れる驢馬〕

"t94"
2匹の犬(Perry92)

"t95"
蝮と鑢(Perry93)

"t96"
父親と娘たち(Perry94)

"t97"
夫と妻(Perry95)

"t98"
蝮と狐(Perry96)

"t99"
仔山羊と狼(Perry97)

"t100"
狼と仔山羊(Perry98)

"t101"
神像売り(Perry99)

"t102"
ゼウス、プロメーテウス、アテーナ、モーモス(Perry100)

"t103"
黒丸烏と鳥たち(Perry101)

"t104"
ヘルメースとゲー(Perry102)

"t105"
ヘルメース(Perry103)

"t106"
ゼウスとアポッローン(Perry104)

"t107"
馬と牛と犬と人間(Perry105)

"t108"
ゼウスと亀(Perry106)

"t109"
ゼウスと狐(Perry107)

"t110"
ゼウスと人間(Perry108)

"t111"
ゼウスと羞恥心(Perry109)

"t112"
半神(Perry110)

"t113"
ヘーラクレースとプルウトス(Perry111)

"t114"
蟻とクソムシ(Perry112)〔異文:蟻と蝉(Perry373〕

"t115"
鮪と海豚(Perry113)

"t116"
医者と病人(Perry114)

"t"117
鳥刺しと毒蛇(Perry115)

"t118"
蟹と狐(Perry116)

"t119"
駱駝とゼウス(Perry117)

"t120"
海狸(Perry118)

"t121"
庭師(Perry119)

"t122"
庭師と犬(Perry120)

"t123"
竪琴弾きの歌手(Perry121)

"t124"
泥棒と雄鶏(Perry122)

"t125"
黒丸烏と烏(Perry123)

"t126"
烏と狐(Perry124)

"t127"
嘴細烏と烏(Perry125)

"t128"
黒丸烏と狐(Perry126)

"t129"
嘴細烏と犬(Perry127)

"t130"
烏と蛇(Perry128)

"t131"
黒丸烏と土鳩(Perry129)

"t132"
胃袋と足(Perry130)

"t133"
逃げた黒丸烏(Perry131)

"t134"
犬と肉屋(Perry254)

"t135"
犬と狐(Perry132)

"t136"
肉を運ぶ犬(Perry133)

"t137"
犬と狼(Perry134)

"t138"
腹をすかせた犬たち(Perry135)

"t139"
犬と兎(Perry136)

"t140"
蚊と牡牛(Perry137)

"t141"
(Perry250)

"t142"
駱駝(Perry249)

"t143"
兎たちと蛙たち(Perry138)

"t144"
鴎と鳶(Perry139)

"t145"
ライオンと百姓(Perry140)

"t146"
ライオンと蛙(Perry141)

"t147"
ライオンと狐(Perry142)

"t148"
ライオンと牡牛(Perry143)

"t149"
ライオンと百姓(Perry144)

"t150"
ライオンと海豚(Perry145)

"t151"
鼠を怖がるライオン(Perry146)

"t152"
ライオンと熊(Perry147)

"t153"
ライオンと兎(Perry148)

"t154"
ライオンと驢馬と狐(Perry149)

"t155"
ライオンと鼠(Perry150)

"t156"
ライオンと驢馬(Perry151)

"t157"
追い剥ぎと桑の樹(Perry152)

"t158"
狼たちと羊(Perry153)

"t159"
狼と馬(Perry154)

"t160"
狼と仔羊(Perry155)

"t161"
狼と鷺(Perry156)

"t162"
狼と山羊(Perry157)

"t163"
狼と老婆(Perry158)

"t164"
狼と羊(Perry159)

"t165"
狼と羊飼い(Perry234)

"t166"
狼と羊(Perry160)

"t167"
牝ライオンと狐(Perry257)

"t168"
狼と仔羊(Perry261)

"t169"
兎たちと狐たち(Perry256)

"t170"
占い師(Perry)161

"t171"
子供と烏(Perry162)

"t172"
蜜蜂たちとゼウス(Perry163)

"t173"
乞食僧たち(Perry164)

"t174"
鼠たちと鼬たち(Perry165)

"t175"
(Perry166)

"t176"
蟻と土鳩(Perry235)

"t177"
(Perry167)

"t178"
難船者と海(Perry168)

"t179"
放蕩息子と燕(Perry169)

"t180"
病人と医者(Perry170)

"t181"
蝙蝠と茨と水薙鳥(Perry171)

"t182"
蝙蝠と鼬(Perry172)

"t183"
樵とヘルメース(Perry173)

"t184"
旅人と運の女神(Perry174)〔異文:子どもと運の女神〕

"t185"
旅人とプラタノスの樹(Perry175)

"t186"
旅人と蝮(Perry175)

"t187"
旅人と薪(Perry177)

"t188"
旅人とヘルメース(Perry178)

"t189"
豚と狐(Perry ?)
 ある人が驢馬に、山羊と羊と豚を載せて、町へ出かけていった。けれども、豚が道中ずっと喚きたてているのを狐が聞きつけて、ほかの連中はおとなしく運ばれているのに、おまえだけはどうしてぎゃ〜ぎゃ〜いうのかと、そのわけを尋ねた。すると相手が答えて謂った、「いやさ、おれとしたことが、いたずらに嘆いているわけじゃない。よ〜わかってるやろやけど、羊からは、羊毛と乳を主人が採ったら放すやろ、同じように山羊からは、チーズと仔山羊のためや。けれどもおれときたら、何かほかのことに役立てることは出来ないから、ただただおれを供犠するだけなのだ」。
 このように、人間たちにおいても、将来の災禍を予見して悲しむ人たちは、非難されるべきではないのだ。

"t190"
驢馬と庭師(Perry179)

"t191"
塩を味わった驢馬(Perry180)

"t192"
驢馬と半驢馬(Perry181)

"t193"
神像を運ぶ驢馬(Perry182)

"t194"
野生の驢馬(Perry183)

"t195"
驢馬と蝉たち(Perry184)

"t196"
ゼウスに訴える驢馬(Perry185)

"t197"
驢馬と驢馬追い(Perry186)

"t198"
驢馬と狼(Perry187)

"t199"
驢馬とライオンの皮(Perry188)

"t200"
驢馬を買う男(Perry237)

"t201"
驢馬と蛙たち(Perry189)

"t202"
驢馬と烏と狼(Perry190)

"t203"
驢馬と狐とライオン(Perry191)

"t204"
驢馬と半驢馬(Perry263)

"t205"
鳥の漁師と山鶉(Perry265)

"t206"
雌鳥と燕(Perry192)

"t207"
鳥の漁師と雲雀(Perry193)

"t208"
鳥の漁師と鸛(Perry194)

"t209"
野生の土鳩と飼い土鳩(Perry238)

"t210"
駱駝(Perry195)

"t211"
蛇と蟹(Perry196)

"t212"
蛇と鼬と鼠たち(Perry197)

"t213"
踏まれた蛇(Perry198)

"t214"
預かり物を引き受けた男と誓約(Perry239)

"t215"
蝗を捕まえる子ども(Perry199)

"t216"
盗みをする子どもとその母親(Perry200)

"t217"
喉の渇いた土鳩(Perry201)

"t218"
土鳩と嘴細烏(Perry202)

"t219"
猿と漁師(Perry203)

"t220"
金持ちと革鞣し屋(Perry204)

"t221"
金持ちと泣き女(Perry205)

"t222"
羊飼いと犬(Perry206)

"t223"
羊飼いと海(Perry207)

"t224"
羊飼いと羊(Perry208)

"t225"
羊飼いと狼の仔(Perry209)

"t226"
悪戯する羊飼い(Perry210)

"t227"
旅人たちと烏(Perry236)

"t228"
プロメーテウスと人間たち(Perry240)

"t229"
2つの合切袋(Perry266)

"t230"
泳ぐ子ども(Perry211)

"t231"
マイアンドロス河畔の狐たち(Perry232)

"t232"
毛を刈られる羊(Perry212)

"t233"
石榴と林檎と茨(Perry213)

"t234"
土竜(Perry214)

"t235"
雀と山鶉と百姓(Perry215)

"t236"
雀と蛇(Perry216)

"t237"
蚯蚓と大蛇(Perry268)

"t238"
猪と馬と猟師(Perry269)

"t239"
樫の木と葦(Perry70)〔異文:葦とオリーヴの樹〕

"t240"
ハイエナたち(Perry243)

"t241"
ハイエナと狐(Perry242)

"t242"
牡牛と野生の山羊(Perry217)

"t243"
猿の子どもたち(Perry218)

"t244"
孔雀と黒丸烏(Perry219)

"t245"
蝉と狐(Perry241)

"t246"
駱駝と象と猿(Perry220)

"t247"
白鳥(Perry233)

"t248"
ゼウスと蛇(Perry221)

"t249"
孔雀と鶴(Perry294)

"t250"
猪と犬(Perry222)

"t251"
豚と犬(Perry223)

"t252"
猪と狐(Perry224)

"t253"
守銭奴(Perry225)

"t254"
亀と兎(Perry226)

"t255"
燕と大蛇(Perry227)

"t256"
鵞鳥と鶴(Perry228)

"t257"
野生の驢馬と狼(Cf. Perry187)

"t258"
燕と嘴細烏(Perry)229

"t259"
亀と鷲(Perry230)

"t260"
蚤と運動選手(Perry231)

"t261"
鸚鵡と鼬(Perry244)

"t262"
樵と樫の木(Perry303)〔異文:樵と松〕

"t263"
樅の樹と茨(Perry304)

"t264"
一緒に旅をする人間とライオン(Perry284)

"t265"
犬と巻き貝(Perry253)

"t266"
2羽の雄鶏と鷲(Perry281)

"t267"
蚊とライオン(Perry255)

"t268"
犬と狐と雄鶏(Perry252)

"t269"
ライオンと狼と狐(Perry258)

"t270"
仔牛と畠牛(Perry300)

"t271"
雲雀(Perry251)

"t272"
驢馬と馬(Perry357)

"t273"
(Perry276)

"t274"
アイティオピア人(Perry393)

"t275"
仔牛と鹿(Perry351)

"t276"
羊飼いと狼(Perry267)

"t277"
白鳥(Perry399)

"t278"
女と飲んだくれ亭主(Perry246)

"t279"
子ども父親と絵に描いたライオン(Perry363)

"t280"
川と獣皮(Perry268)

"t281"
射手とライオン(Perry340)

"t282"
禿頭(Perry375)

"t283"
宴会に招かれた犬(Perry328)

"t284"
神像を叩きつぶした男(Perry285)

"t285"
半驢馬(Perry315)

"t286"
馬と驢馬(Cf. Perry181)

"t"287
worm.jpg地虫と狐(Cf. Perry289「蛙のお医者」)
 地面の下に隠れていた地虫が、地表に出てきて、ありとある動物たちに言った、「われこそは薬草を知悉した医者にして、例えば神々の医師パイオーン〔あるいは、Pai[e][o]n〕のごときものなり」。「そんなら、どうして」と狐が云った、「ほかのものを治そうとするくせに、自分がびっこなのを治そうとはしないんだ?」。
 この寓話が明らかにしているのは、経験が手近にないかぎり、どんな言葉も無駄ってこと。

"t288"
病気の烏(Perry324)

"t289"
喇叭吹き(Perry370)

"t290"
戦士と烏(Perry245)

"t291"
蛇の尻尾と肢(Perry362)

"t292"
ライオンとプロメーテウスと象(Perry259)

"t293"
木々とオリーヴ(Perry262)

"t294"
狼と犬(Perry346)

"t295"
驢馬と犬(Perry264)

"t296"
壁と杭(Perry270)〔60d「老人と死神」、100b「仔山羊と狼」〕

"t297"
冬と春(Perry271)

"t298"
人間と蝉(Perry387)

"t299"
女と百姓(Perry388)

"t300"
間男と女(Perry420)

"t301"
泥棒と宿屋の主人(Perry419)

"t302"
鼠と蛙(Perry384)

"t303"
百姓と驢馬たち(Perry381)

"t304"
父と娘(Perry379)

"t305"
愚かな娘と母親(Perry386)

"t306"
船乗りと息子(Perry421)

"t307"
犬ころと蛙たち(Perry ?)
[寓話(mythos)]
 犬ころが、ひとりの旅人に、その道中ずっとつきまとっていたが、刈り入れ時の炎熱を避けるため、昼下がりの間、とある池のそばの、露けき草むらで一休みしようと、寝そべった。彼が寝入った時も時、近辺の蛙たちがみないっせいに声を合わせてげろげろ鳴くのを常としていた時間帯であった。犬ころは眠りを覚まされ、これには恐れ入って、ただちに汀に近寄って、蛙たちの番をしていれば、れんちゅうに鳴きやめさせ、そうすればくつろいで眠れるだろうと思って、しばしばそうしてみたが、何の効果もなく、腹を立ててこう云いながら引き下がった。「やれやれ、おれさまとしたことが、やつらよりも愚か者だろうて、自然本性からしてこんなおしゃべりで恥知らずな連中を、自分の力で都会的で人間愛に満ちたものに矯正しようとするなんて」。
[後付け(epimythion)]
 この寓話〔が明らかにしているの〕は、暴慢な人間たちも同様、どんなに熱望しても、自分のそばにいる者たちのことに心を煩わせること(logon poieisthai)は決してないということである。


forward.GIFFabulae tabulis ceratis Assendelftianis servatae