Fabulae Themistii rhetoris


[底本]
TLG 0096 007
Fabulae Themistii rhetoris, ed. A. Hausrath and H. Hunger, Corpus
fabularum Aesopicarum, vol. 1.2, 2nd edn. Leipzig: Teubner, 1959: 152.
(Q: 119: Fab.)

[解説]
 テミスティオスは、AD.317年頃、パプラゴニアに生まれ、コンスタンティノープルで学問をし、ここに学校を開く(345年頃)。コンスタンティウス2世からテオドシウス1世にいたる歴代皇帝から重用され、テオドシウスの子にして後の皇帝アルカディウス(383-408)の教育にあたる。帝国内を広く旅をし、388年、コンスタンティノープルで没す。学問的には折衷主義者であるが、アリストテレスの註釈で有名。





"t"

弁論家テミスティオスの寓話集

"t"1
ペイトー(説得)とビアー(強制)
 寓話作家アイソーポスによっても、ペイトーとビアーの競争がこしらえられており、その寓話では、ペイトーはビアーよりなかなか有効なのであって、太陽は荒れ狂う風より先に裸にするのである。〔cf. Perry46「北風と太陽」〕
 そのように言い伝えられているとともに、神々に対する戦いの中でも、ギガースたちは、アレースに対してはいつまでも反抗したが、ヘルメースとその杖によっては眠らされたと、話がこしらえられているのである。

"t"2
2つの合切袋
 すなわち、寓話作家のアイソーポスは知者であって、彼が謂っているのには、人間というものはめいめいが2つの合切袋を、ひとつは前に、ひとつはうしろに。もっている。そしてどちらも諸悪でいっぱいだが、前のは他人の、後ろのは自分自身が身に持つ〔諸悪で満たされている〕。だからして、人間というものは自分に由来する諸悪は見えないが、他人のはまったくはっきりと眼に見えるのだ。

2003.05.23. 訳了


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