抜粋(Excerptum) XXVI
Stobaeus I. 49. 69, vol. i, p.463 Wachsmuth.

[転生(ejmyucwvsiV)と輪廻(metemyucwvsiV)について]

1
 「地と天の中間は、わが子ホーロスよ、尺度(mevtron)と階調(aJrmoniva)に応じて領域づけられています。これらの領域(cw:ra)は、先人たちによって — ある人たちによっては帯(zw:nh)、ある人たちによっては蒼穹(sterewvma)、別の人たちによっては層(ptuxhv)と呼ばれます。これらを行き交うのが、身体から離脱した魂、および、まだ身体に宿っていない魂たちです。しかしこれらのおのおのの〔魂〕は、おお、わが子よ、その価値に応じて領域(cwvra)をも有します。その結果、神的で王的な〔魂たち〕は万有の超越的な〔領域〕に住み、名誉の点で最低な魂たちや、他の地に墜ちたかぎりの〔魂たち〕は、万有の下方の〔領域〕に、中間の〔魂たち〕は中間の〔領域〕に〔住む〕のです。


 さて、支配するために下向させられた魂たちは、おお、わが子ホーロスよ、上界の生き物たちから下向させられたのであり、解放されても、同じ〔領域〕に、あるいはもっと上方の〔領域〕にさえ帰昇します。ただし、何らかの点で自分たちの自然の価値や、神の法の指図に逆らった〔魂〕たちなら別ですが。これらは、上方の摂理(provnoia)が、過ちの程度に応じて、下方の領域へと追放するものであり、それはちょうど、力と価値の点で不足する〔魂たち〕を<…〔地上で善い生き方をした場合は〕…>より下方の〔領域〕から、より大きくより高い〔領域〕へと引き上げるがごとくです。


 というのは、上方には、全体(kaqovlon)の摂理の槍持ちたちが2人いて、その一人は霊魂監理者(yucotamiva)、もうひとりは霊魂導師(yucopompovV)です。そして、魂たちの霊魂監理者とは<……>ですが、霊魂導師とは、身体に宿った霊魂たちの派遣者にして差配者(diatavkthV)のこと。そして前者は見張り、後者は神の指示(gnwvmh)を実行します。


さて、このロゴスによって、おお、坊や、上界の諸行事の変化に応じて、地上にも自然(fuvsiV)があるのです。というのは〔自然は〕形づくるものであり天幕つくり(skhnopoiovV)〔天幕=身体〕ですから、魂が投げこまれる容器を<……>。この〔自然〕にも、記憶と経験という2つの作用が付き添います。そして、記憶は次の働きを有します、つまり、自然が見張り、初めに下向させられたおのおのの場所と、上方で起こった混合物とを支配するため。他方、経験は、身体に宿るために下向する魂たちのそれぞれの比例によって、形も現実的となり、魂たちの鋭いのには身体も鋭いのが生じ、鈍いものらには鈍いものらが、活動的なものらには活動的なものらが、不精なものらには不精なものらが、有力なものらには有力なものらが、臆病なものらには臆病なものらが、一般的に、それぞれの魂たちに、


というのは、狙いがないわけではないのです、 — 〔自然が〕鳥類には翼をそなえ、ロゴスを持った生き物は過剰で正確な諸感覚で飾り、四足獣のうち、あるものは角で、あるものは歯で、あるものは爪や武器で堅くし、爬虫類は、しなやかでたわみやすい身体で柔らかくし、まさしくそういうふうにして、身体の湿っぽさのせいであまりに柔弱にならぬよう、あるものらの口は歯でも防柵とし、あるものらはその嵩を増して、力をまとわせたのは〔狙いがないわけではないのです〕。こういうふうにして、あるものらは、死に対する用心の点で他のもらより強力なのです。ですから、魚類は、臆病ですから、光がその有する力のどちらをも作用させるほどには強くない元素の中 — というのは、水の中で火は見えることも焼けることないのですから)に棲むことを〔自然は〕許したのです。だから、彼ら〔魚類〕のおのおのは、鱗によってであれ棘によってであれ、望みどおりに水の中を泳いで逃げ、固有の臆病さを身にまとい、水を見られることのないための防御として有しているのです。


すなわち、魂たちは、こういった諸々の身体のうち、それぞれ似たものの中に閉じこめられる、その結果、人間どもの中には判断力のある〔魂たち〕が、鳥類の中には、反人間的な〔魂たち〕が、四足獣の中には、判断力のない〔魂たち〕が(というのは、強さが彼らの法であるから)、爬虫類の中には臆病な〔魂たち〕が(というのは、彼らの何ひとつとして、真正面から人間に襲いかかるものはなく、待ち伏せして打倒するのだから)、魚類の中には、臆病な〔魂〕で、その他の元素を享受する資格のないものらが。


もちろん、それぞれの種類の中にも、固有の自然を使いこなせない生き物が見出されます」。
 「今度はどういうことですか、おお、生みの女親よ」とホーロスが云った。
 するとイシスが答えた。「その結果、人間は、おお、わが子よ、判断力を蹂躙し、四足獣は必然を逸脱し、爬虫類は狡知を失い、魚類は臆病さを蔑ろにし、鳥類は非人間性を喪失するのです。上界のものらの情態と、その下向と、身体の創造に関することは、これだけです。


 結果として起こるのは、おお、わが子よ、それぞれの種類と、先在するものらの種族の中に、一種王的な魂たちが見出され、他の〔魂たち〕は他の人間として下降する — ある〔魂たち〕は火のような者らとして、ある〔魂たち〕は冷酷な者らとして、ある〔魂たち〕は高慢な者らとして、ある〔魂たち〕はおとなしい者らとして、<ある〔魂たち〕は自由な者らとして>、ある〔魂たち〕は器用な者らとして、ある〔魂たち〕は経験深い者らとして、ある〔魂たち〕は無経験な者らとして、ある〔魂たち〕は怠惰な者らとして、ある〔魂たち〕は活動的な者らとして、それぞれの魂がそれぞれ別様な者として。結果として起こるのは、魂たちが身体に宿るために飛び降りる出発点の場所の位置に基づくということです。つまり、王的な層から魂たちが飛び降りるのは、等しい情態の魂が王支配するからです。


というのは、王的な魂は数多くあります。すなわち、あるものらは諸々の魂の、あるものらは諸身体の、あるものらは術知(tevcnh)の、あるものらは〔科学的〕知識(ejpisthvmh)の、またあるものらはこれこれの〔王的魂である〕」。
 「また、どういうことですか」とホーロスが云った。
 「例えば、おお、わが子ホーロスよ、おまえの父親のオシリスは、すでに亡くなった者たちの魂の〔王です〕。これに反し、各族民の指導者は、諸々の〔生きている〕身体の〔王です〕。万有の父は意志(boulhv)の〔王であり〕、トリスメギストス・ヘルメースは、教師(kaqhghthvV)です。ヘーパイストスの子アスクレーピオスは医術の〔王〕です。また、強さと体力の〔王〕はオシリス、これの後は、おお、わが子よ、あなた自身です。愛知の〔王〕はアルネベスケーニス、詩作の〔王〕はまたアスクレーピオス・イムゥテース。すなわち、一般的に、おお、わが子よ、おまえは探求すれば見出すでしょう、多くのものらを支配する魂も多く、王支配する〔魂〕も多いということを。

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しかし、万人に対する覇権を握った者〔ローマ皇帝〕は、わが子よ、超絶した領域の出自であり、部分的な者らの覇権を握った者は、出自した場所に属するその<配置>を有した。より王的な〔配置〕を<有するのは、王的な>

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層から出自した者たちです。<火のような〔層から出自した者たちは〕>火と養いの働き手となり、湿の〔層〕から出自した者らは、湿った場所で暮らします。知識的・術知的〔層〕から出自した者たちは、知識や術知に従事します。なぜなら、地上のものらはすべて、おお、わが子よ、ロゴスと仕事を通して、その源泉が上方の行事にあり、尺度と重さにしたがって諸々の有性をわたしたちに降りそそぐのであって、上方から下ったのでないものはないのであり、

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そしてふたたび、そこから下ってきたもとのところに帰昇するのです」。
 「それはまたどういう意味で言っておられるのですか、おお、生みの女親よ、譬えを示してください」。
 すると再びイシスが答えた。
 「帰還(palindromiva)のこのはっきりした証拠を生き物たちに植えつけたのは、至聖の自然です。すなわち、上方の大気からわたしたちが引き寄せたこの気息(pneu:ma)、これは再び、わたしたちがわたしたちがこれを受け取った上方にわたしたちは送るのです。そして、おお、わが子よ、この〔呼吸という〕作業(ejnerghvma)の女術知者としてわたしたちの中に内生するものがあり、これが、自分たちの呼吸を受容する口を閉じるたあとは、わたしたちはもはやここにおらず、昇っていった後なのです。

13
 さらに付け加わります、おお、誉れ高き坊や、混成物(fuvrama)の割合によって、わたしたちに別なあるものらが」。
 「何ですか」とホーロスが云った、「その混成物とは、おお、生みの女親よ」。
 「四元素の取り合わせ(suvnodoV)と混合(kra:siV)で、この混合と取り合わせから蒸気(ajtmovV)のようなものが気化し、これが魂を包み、身体を貫通し、両方、つまり、身体と魂にとって固有の制作に与るのです。じつにこういうふうにして、魂と身体の変化の違いが生じるのです。

14
例えば、身体の骨格の点で火が過多だと、この場合、魂は自然本性的に熱くなり、別の熱まで加え増すので、燃えるようになり、生き物を活動的で気性的なものとし、身体は鋭く動きやすいものと〔します〕。

15
また、大気が過多だと、この場合は軽く、跳躍的で、不安定なものとなります、生き物は、魂においても身体においても。

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また、水が過多だと、この場合は、生き物も、魂においては流れよく、生まれよく、拡散しやすいものとなり、他のものらにも充分に浴びせて密着できるものになりますが、その所以は、他のものらに対する水の合一性と共有性によります。というのは、〔水は〕万物に座を占め、しかも多いと、自分へと解体し包みこみますが、少ないと服従しもぐりこみ、交わった当のものとなるからです。しかしながら、身体は、軟弱さ吸収性のせいで、収縮へと導くことはなく、少量で病気の出発点に解体し、

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また、地が過多だと、この場合、生き物の魂は鈍重となり、身体の解体しやすい疎を持つことなく、感覚的部分〔これを通してのみ魂は外界と交通できる〕が厚いため、跳躍できる〔器官〕も持つことなく、重量と密に足枷をはめられて、内の自身のもとにとどまり、他方、身体は丈夫ですが、しかし働くことをせず、重く、力ずくで選択意志によって移動させられるものとなるのです。

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また、〔四元素〕すべての組成(stavsiV)が均等だと、このときその生き物は行為への熱意、運動への軽快さ、接触への節度、堅固さへの高貴さをそなえます。

19
 そこで、このロゴスによって、過多な火と気息を共有するかぎりの〔被造物〕、これは鳥に転生して、上方で、あの元素 — そこから生まれてきた — のもとで生活します。

20
また、過多な火と少ない気息、しかし等量の水と土を〔共有する〕かぎりの〔被造物〕、これは人間に転生し、この生き物にとって熱の過剰が、聡明さへと向かわせます。というのは、わたしたちの内なる理性(nou:V)は、一種熱いものであり、これは燃えることは知りませんが、すべて〔の四元素〕を貫通し、君臨しているからです。

21
また、過多の水、過多の地、適量の気息、少ない火を〔共有する〕かぎりの〔被造物〕、これは四足獣に転生しますが、ただし火が臨在すると、他のものらよりも勇猛になります。

22
また、等量の地と水を共有するかぎりの〔被造物〕、これは爬虫類に転生し、火の欠如ゆえに度胸なしで、自由に行動できないものとなりますが、水の共有により冷たいものとなり、地の〔共有〕により重くて鈍いもの、気息の〔共有〕により、動くことを選択した場合は、動きやすいものと〔なります〕。

23
また、過多な湿、少しの乾を〔共有〕するかぎりの〔被造物〕、これは魚類に転生し、熱と大気の欠如によって、これも臆病ですが、湿の臨在と土の臨在により、解体した地や水の中に、その同族性のおかげで住みつきます。

24
 こうして、各元素の割り当てや、割り当ての内容に応じて、身体もその性質を呈するのです。そして、その他の生き物たちは、少なさの尺度に応じて、つまり、〔四〕元素のそれぞれの尺度である作用に応じて、つくられるのです。〔?〕

25
 なおまた、おお、愛しい坊や、わたしは言います — 以上のようなこの組成から、最初の取り合わせ(suvnodoV)方でできた混合(kra:siV)や、これから気化した蒸気は、固有の固有性を保持するかぎり、したがって、熱は別の熱を受け取らず、大気は別の気息を〔受け取らず〕、また湿も別の湿性を、土も別の密性〔受け取らぬ〕かぎり、この場合、その生き物は健康です。しかし、そういうふうに、おお、わが子よ、最初に得た尺度にとどまらず、それら〔四元素〕が、あるいは過多になったり<過少になったり>する場合、 — わたしが言うのは、作用において注ぎすぎということではなく、種や身体の増大の際に起こる変化において〔注ぎすぎということ〕でもなく、わたしたちが先に謂ったとおり、〔四〕元素の組成上の混合(kra:siV)において〔注ぎすぎ〕、その結果、熱が過大に増大したり、過大に減少したりして、その他の〔元素〕も同様である場合、こういうふうな場合、その生き物は病気なのです。

26
すなわち、熱と大気 — これらはまさしく魂の天幕を同じくするものらです — がそういうふうな情態にある場合、そのとき、生き物は、比喩的にいえば、忘我情態になるのです。なぜなら、〔四〕元素が密となってしまって、これのせいで身体が腐敗堕落するからです。

27
というのは、土そのものは身体の固体性、湿は、それ〔身体〕の内なる固体性への拡散性、大気は、わたしたちの内なる動性であり、そしてこれらすべてを喚起するのが火です。

28
さて、〔四〕元素の最初の取り合わせと混合から生ずる蒸気のように、また、接触(e[xayiV)と気化(ajnaqumiva)のように、それがいかなるものであれ、魂と混じり合うと、自然本性に持っているかのように、これを自分へと引き寄せるのです、性急にであれ、不急にであれ。

29
というのは、初めからの自分との親しさや親交にとどまっていると、魂はその持ち場を持続します。これに反し、全体的混成や、あるいはまた諸部分や、その〔全体的混成の〕部分に、もともとまとわされた〔元素〕よりも過多な割り当てが外側から付加されると、このとき内なる蒸気も変化し、魂の情態とか身体の〔情態〕を変化させるのです。

30
なぜなら、火と気息は、上昇するものらですから、自分たちと同じ領域を有する魂へと駆けのぼります。これに反し、湿と土は、下降するものらですから、似た住まいである身体に坐するからです。

2008.11.29.


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