第15話

キツネ(alopex)について


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 自然窮理家はキツネについて、狡猾な動物だと言った。例えば、空腹なのに、食える獣を見つけられないと、地面にぬかるみと籾殻のある場所を探し、仰向けに身を投げ出して、息を吸い込み、そして思いっきり吐き出す。こうして、〔キツネは〕死んだものと思った小鳥が、これを食べようとして、その上にとまると、たちまちにして起き上がり、それをひっさらって平らげるのである。

 このように悪魔も、またその所行も、まったくもって狡猾このうえない。その肉に与ろうとするものは、殺されるのである。なぜなら、その肉そのものが不品行であり、金銭欲であり、快楽であり、人殺しだからである。

 かかる次第で、ヘロデスもキツネに等しく、〔福音〕編纂者も救主から「キツネには穴があり、空の鳥には巣がある」〔マタイ、第8章20〕と聴いたのであり、雅歌の中でソロモンも言う。「われわれのために小さなキツネを捕らえよ、葡萄園を荒らすキツネを」〔雅歌、第2章15〕云々。

 かく美しく自然窮理家はキツネについて言った。




 キツネ(alopex)はヘブライ語「シューアール」の訳語。キツネは諺どおりブドウ好きで、ぶどう園に現れては食い荒らす(雅歌2:15)。諺に言うキツネの狡賢い性格は、エゼキエル書13:4と、ルカ福音書13:32に描かれており、前者では、イスラエルの預言者は荒れ地のキツネのようだと言われ、後者では、イエスがヘロデのことを《あの狐》と呼んでいる。(以上、『聖書動物大事典』p.175)。

 画像出典、Konrad Gesner『Historiae Animallum』I。