第16話

ヒョウ(panther)について


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 預言者は予言して言った。「わたしはエフライムに対してはヒョウのようになった」〔ホセア、第5章14〕。自然窮理家はヒョウについて次のような自然本性を有すると言った。 — ありとあらゆる動物たちのうちで最も愛される存在であるが、ただ大蛇にとってだけは敵である。ヨセフの上着のように多彩にして、精悍、しかも落ち着いていて、きわめて柔和である。

 食って満腹すると、自分の洞穴の中で横たわり、三日目に、眠りから醒め、大音声で叫ぶので、遠くの獣も近くの獣もその声を耳にする。しかも、その声からは、薫香のありとあらゆる芳香が発散し、獣たちはヒョウの声の芳香に惹かれて、そのすぐ近くまでやってくる。

 そのようにわたしたちの主イエス・キリストも、三日目に死者たちの中から立ち上がり、叫んだのである。「今日、この世に救いあり、眼の見えるかぎりの者よ、眼の見えぬかぎりの者よ」〔ルカ、第19章9〕、そしてわたしたちに、つまりは遠くの者たち近くの者たちに、ありとあらゆる芳香が、平和がもたらされた、と使徒は言った〔エペソ、第2章17〕。

 神の理性的な知恵は多種多様であると、詩篇の中でも述べられている。「女王はあなたの右座に陪席する、黄金づくめの衣裳を身にまとい多彩な女王が」〔詩篇、第45章10〕、[これこそが教会である]。

 [キリストは多様にして、みずからが純潔、自制、慈悲、忠誠、徳、同心、平和、寛容であるばかりか、離反者つまり水中の大蛇に対しては敵でもある]。

 されば、すでに述べられたように、神の書は鳥獣たちについて何ひとつでたらめに述べているわけではないのである。

 かく美しく、自然窮理家はヒョウについて言った。




 『ホセア書』第5章14に登場するのは、ライオンを指す7つの語のひとつ「シャハル」である。これを七十人訳の訳者はヒョウ(panther)と訳した。
 ヒョウが芳香によって他の動物をおびき寄せることは、アリストテレス『動物誌』612a、「またヒョウは、自分の臭いを他の動物が喜ぶことをよく知っているので身をひそめて、他のものを狩るといわれている。こうすれば近くに寄ってくるからで、この方法でシカさえ捕るという」。

 画像出典、Konrad Gesner『Historiae Animallum』I。