第23話
ビーバー(zoion kastor)について
ビーバーと言われる動物がいるが、すこぶる慈しみ深く、おとなしいけれど、その性器は治療に利く。それで、狩人たちに追われ、つかまりそうとわかったら、自分の性器を噛み切り、狩人の方に放り出す。だが、今度は別の狩人に遭遇して追いかけられたら、ビーバーは仰向けに身を投げ出して、相手にわが身をさらし、これによって、〔ビーバーが〕性器を持っていないことが狩人にわかるので、相手を避けられるのである。
されば、あなたも、教区民よ、狩人のものは彼〔狩人〕に返せ。狩人とは悪魔であり、その持ち物とは、不品行であり、姦淫であり、人殺しである。そういったものを噛み切り、悪魔に与えよ。さすれば、悪魔たる狩人はあなたを放免するであろう、そうしてあなたも言うのである。「わたしたちの魂は、狩りたてる連中の罠を雀のように免れた」〔詩篇、第124章7〕と。
かく美しく、自然窮理家はビーバーについて言った。
註
"kastor"は、Herodotus, IV, 109; Aelianus, VI, 34; Aesopus, 33〔Perry, 118〕; Juvenalis, XII, 33, 36; Plinius, XXXII, 13 などから、ビーバー(Castor fiber)〔左図〕に間違いない。
ブウディノイ人〔タナイス河以北のスキュティアの民族〕は、"castor"の睾丸を、子宮病の良薬として珍重したという〔ヘロドトス『歴史』第4巻109〕。
ヒポクラテスによると、"castor"の鼠蹊部の嚢から採れる海狸香(カストリオン)は子宮の様々な病気に処方され(『婦人の自然性について』32他)、奇胎を流し出すには"castor"の睾丸を飲ませるともいう(『婦人病1』71)。
画像出典、Konrad Gesner『Historiae Animallum』I。