第24話

シマハイエナ(hyaina)について


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 律法は言う、「シマハイエナを喰らうべからず、これに類したものをも〔喰らう〕べからず」〔申命記、第14章8〕。

 自然窮理家はシマハイエナについて、雌雄両性具有であると言った。あるときは牡になり、あるときは牝に〔なる〕。けがれきった獣であるのは、自然本性的に自分が代わるからである。このゆえに、エレミヤも言う、「わたしの嗣業は、わたしにとってシマハイエナの巣ではないか」〔エレミヤ、第12章9〕。

 されば、あなたもシマハイエナに似て、あるときは牡の自然本性を、あるときは牝の自然本性を歓迎するような者になってはならない、そういう連中を称して、神の使徒は非難して言い放ったのである、「雄たちは雄たちに対して厭らしいことをしでかす」〔ロマ、第1章27〕と。

 かく美しく、自然窮理家はシマハイエナについて言った。



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 『エレミヤ書』第12章9のヘブライ語は「ツァーヴーア」、ハイエナと考えられている。しかし、『申命記』第14章8「ハズィール」の七十人訳はブタ(u(/eioj)である。ハイエナ(u(/aina)
と勘違いしたのであろうか。

 ギリシア語"hyaina"はシマハイエナ(Hyaena hyaena)〔左図〕のことで、西南アジアから北アフリカにかけて産する。「大きさはオオカミに劣らないが、ウマのようにたてがみがあり、しかも、その毛はウマのたてがみよりこわくて濃く、かつ背骨の全長にわたっている。ヒトを待ち伏せして狩る。ヒトのようにゲーゲーと吐きもどす音を出し、イヌを〔おびき寄せて〕狩る。そういった〔ヒトの〕肉を好んで食べるので、墓をあばく」(『動物誌』第8巻5章594a-b)。

 「ハイエナには、雄にも雌にも、尻尾と肛門の間に悪臭を放つ分泌腺があり、これが雌の陰門に似ている」〔第6巻32章(1)島崎註〕ところから、両性具有と思われたらしい。もちろん、それは自然究理家の最も嫌うところである。

 画像出典、Konrad Gesner『Historiae Animallum』I。