第26話

イクネウモン(ichneumon)について


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 イクネウモンと言われる動物がいる、[イノシシに等しい大きさで]、大蛇(drakon)の天敵である。されば、野生の大蛇を見つけると、自然窮理家の言によれば、向かってゆき、身体に泥を塗りたくり、尾で鼻孔を守りながら〔戦い〕、ついに大蛇を死に至らせる。

 かくのごとく、われらの救主も、大蛇、つまり、エジプトの河に住むパロ、それはすなわち悪魔を、ついに死に至らせるまでは、塵に属するものを身につけられるのである〔エゼキエル、第29章3-4〕。なぜなら、いかにして大蛇を滅ぼし得ようか? 〔もしもキリストが無体(asomatos)だとしたら〕大蛇は彼に向かって言い返したことであろう、「あんたは神にして救主、ならばあっしはあんたにかないませんやね」と。いや、誰よりも大いなる方がみずからを低められたのは、万人を救わんがためであったのだ〔ピリピ、第2章8〕。



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 イクネウモン(ichneumon)は、エジプトマングース(herpestes ichneumon)〔右図〕の類であろうといわれている。この動物は「ファラオのネズミ」とも呼ばれ、蛇やそれ以外の爬虫類だけでなく、小型哺乳類も鳥も殺す。猫に近い麝香猫科のエジプトマングース種に属し、今日でもアフリカ(熱帯雨林や砂漠を除く)、パレスチナ、スペイン南部に分布している。インドの変種は、キプリングのキ・ティキ・タヴィによって永遠にその名を残した。……蛇を狩るものとして、太陽の敵アポピスを象徴的に殺すので、太陽の神々の動物であるとみなされた。
 (『エジプトの神々事典』)

 「エジプト産のマングース〔イクネウモン〕は、「アスピス」と称するヘビ〔コブラ〕を見ると、まず他の〔仲間の〕助力者を集め、それから初めて攻撃する。打傷や咬傷に備えて、自分の体に泥を塗りたくる。それには、まず水に入って(体を)ぬらしてから、地面の上で転げ回るのである。(アリストテレス『動物誌』第9巻6章612a)

 画像出典、Konrad Gesner『Historiae Animallum』I。