第31話

サラマンドラ(salamandra)について


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 サラマンドラと言われる動物がいる。自然窮理家はこれについてこう言った、 — かまどの火の中に入ると、かまど全体が鎮火するし、風呂の焚き口に入ると、焚き口が鎮火する。

 されば、サラマンドラが自然の理によって火を鎮火するのなら、三人の子どもがかまどの中に投げ込まれても、何ら損なわれることなく、むしろ逆に、かまどを冷やしたということを〔ダニエル書、第3章19-27〕、今に至るも信じないような人たちがどうしてありえようか? それは、あなたが火の中を通って入ってゆこうとも、炎があなたを焼くことはないであろうと書いてあるからだ。[そのようにあなたも、おお人間よ、永遠の鎮火されることない炎を鎮火することができるようになりなさい]。

 されば、サラマンドラが自分の自然の理によって炎を鎮火するなら、義しい人たち、すなわち、正義に留まる人たち、火を鎮火する人たち、ライオンどもの口を塞ぐ人たちがいる〔ヘブル、第11章33〕ことは、どれほど尤も至極なことであることか。


第31話 異文1 聖なる三人の子どもたちについて

 預言者ダニエルによって書かれた話は驚嘆すべきものである、 — 気高いことこのうえない三人の聖なる子どもたちが、誹謗によって火の〔燃えさかる〕かまどの中に投げ込まれながら、讃歌を歌っていた、[それゆえに彼らは驚嘆するというのは。]彼らが義しい人間であったためにほかならない。しかしながら、聖なる使徒たちも、屍体を目覚めさせ、義しい人たちとともに大きな力を実現し、山々をも海の中に移したとするなら、どうしてそれが真に驚嘆にあたいすることでないことがあろうか?


第31話 異文2 聖なる三人の子どもたちについて

 気高いことこのうえない三人の子どもたちの神秘もまた真実途方もなく驚嘆すべき話である — 火のかまどに投げ込まれながら、彼らは屍体をも、あたかもそれらの主人であるかのように、目覚めさせたというのは。というのも、火のこれほどの勢いを、つまり、その時の不公平、支配者たちの専制の勢いを鎮め、自分たちの勇敢さを<押さえることは>真実<驚嘆に>あたいすることだからであり、わたしたちにとってもはなはだ好都合、出会った人たちにとってもすこぶる有益だからである〔?〕。

 美しくも自然窮理家はサラマンドラについて言った。




salamandra.jpg サラマンドラは、Plinius, X, 8 や、Dioscorides, II, 6,7 により、黄斑のある黒イモリ(Salamandra maculada)〔右図〕のこととされているが、古くからの伝説的な動物。
 アリストテレスも、「火の中でも燃えないような動物が存在するということは、サラマンドラの例によって明らかである。すなわち、この動物は「火の中を歩いて、火を消す」といわれているくらいである」(『動物誌』第5巻19章552b)という。

 古代からの医薬であったが、Plinius, XXIX, 23 ; Aelianus, IX, 28 などは有毒だといっている。

 画像は、『健康の園(Ortus sanitatis)』から。