第4話
アシス(asis)あるいはスズメ-ラクダ(strouthokamelos)について
預言者ヒエレミアースは謂う、「コキジバトとツバメは自分たちの渡る時を知っている、天空にあるアシスも、その時を知っている」〔エレミア、第8章7節〕。
これも有翼の鳥ではあるが、飛ぶことはできず、われわれのもとではスズメ-ラクダ〔ダチョウ〕(strouqkavmhloV)と言われる。[翼は持っているが、飛べない]。この鳥は、卵を産もうとする時、天を見る。なぜなら、星つまりスバルが昇る前には、その卵を地上に置かないからである。[スバルについてイオーアンネースは言う、「スバルの自然本性をつくった方は、宵の明星も、熊星も南の倉をも〔つくられた〕」]。このスバルが昇る時、そのときこそ麦の穂は花咲き、その時こそ酷暑である。されば、何ゆえそのとき産むのか、その理由を聞け。この動物は忘れっぽい。そこで、地を掘り、卵を置き、そうやって砂の中にそれを隠し、忘れっぽいのでもはや卵のことは気にしない。されば、暑い時期にこれを産むのは、自分が実行しようとしている当のこと、つまり卵を孵すこと、これ〔をするの〕は大気の晴天であって、卵殻を成熟完成させたうえで産出するからである。
されば、アシスとコキジバトが自分たちの時を知っているのなら、ましてわれわれが自分たちの時つまり主を知り、その御心に付き随い、そのかたに隷従すべきことは、いうまでもない。
註
エレミヤ、第8章7節の七十人訳
kai; hJ ajsivda ejn tw/: oujranw/: e[gnw to;n kairo;n aujth:V,
trugwvn kai; celidwvn, ajgrou: strouqiva ejfuvlaxan kairou;V eijsovdwn aujtw:n
〔天空のアシダもその時を知る、
ヤマバトとツバメ、野の小鳥は、自分たちの渡りの時を知っている〕
ajsivdaは、ヘブライ語「ハスィーダー」の音写。a[siVはここから派生した(ヘシュキオス)。第3部の第19話はさらに「ijavsiV」と転写したものと考えてよい。
しかし「七十人訳は、ヘブライ語ハスィーダーがコウノトリであるとは認識していなかったようである。そうでなければ、ペラルゴスpelargovVという明解な訳語を使わないはずがなく、もとのヘブライ語、ハスィーダーの音写であるアシダajsivda(ここからヘシュキオスのいうa[siV(eijdoV ojruevon〔鳥の種類〕が派生した)を使っている例が2例あることなどは、ないはずである」(『聖書動物事典』p.402)。
そのためであろう、自然究理家も、a[siVが渡り鳥とは考えず、渡りの時を知っているコキジバトとツバメに対して、a[siVは(飛べないが)出産の時を知っている鳥と解釈した。産卵の時なら他の鳥類でも知っているではないかという疑問に対しては、a[siVは星位によってその時を判断するとして、自然究理家はその叡知聡明を証拠立てようとしたのである。
オットー・ゼールは、「kai; hJ ajsivda ejn tw/: oujranw/: e[gnw to;n kairo;n aujth:V,」の部分を"und die Trappe schaut am Himmel ihre Zeit"と、自然究理家の意を採ってうまく訳したが、七十人訳の原文は、どうみても、「空を見て時を知る」意にはならない。
画像出典、ダチョウはUlisse Aldrovandi『Ornithologiae hoc est De auibus historiae』IX。