[砂漠の師父の言葉]訳註
- 「スケーティス」
ナイル河下流、下エジプトのニトリア砂漠の南方70キロにある砂漠地帯で、4、5世紀の隠修型修道制の中心地の一つ。330年頃、マカリオス(300頃-390頃)によって創設された。
- 「共住修道院」
共住型修道制は、一定の規則・戒律のもとに集団で生活する形態で、パコミオス(292-346)によって、はじめて組織化された。
- 「皇帝コーンスタンティオス」
大帝と称せられるローマ皇帝(在位306-337)で、「ミラノ勅令」を配布しキリスト教を公認し、さらに「ニカイア公会議」(325年)を主催した。
- 「ニトリア」
アレクサンドリアの南東60キロにあり、アントーニオスの弟子たちが造った隠修型修道制の中心地の一つ。
- 「第9時課」
午後3時頃のこと。聖務日課の一つで、主キリストの十字架上における死の時刻、午後三時に主を想起して為される。
- 「第6時課」
聖務日課の一つ。正午頃、つまり主の昇天の時刻を想起して為される。
- 「世界はローマを失い、隠修士たちはスケーテイスを〔失った〕」
434年頃、アルセニオスはスケーティスを去って、メンピスのトロエーに赴いて修道生活を続ける。それは西ローマ帝国の滅亡(476年)をすぐ後に控えた時代であった。
- 「アレクサンドリア」
地中海に面し、往時はローマに次いでローマ帝国第二の都市。あらゆる文化、宗教のるつぼで、ヘレニズム文化の中心地であった。旧約聖書のギリシア語訳たる『七十人訳(セプテュアギンタ)』も、紀元前2世紀にアレクサンドリアで完成した。
- 「テオドシオス大帝」
ローマ皇帝(在位379-395)で、アレイオス主義を排し、正統的なキリスト教国家の礎を築いた。
- 「「ケッリアから」と云うのを恐れて」
ケッリアは比較的開けた低地、他方ニトリアは険しい砂漠で、隠修士たちの住んだ場所。
- 「オルギュイア」
1オルギュイアは両腕を拡げた長さのこと。
- 「アルタベー」
穀物を量るエジプトの単位、24〜40コイニクス。1コイニクスは1日分の糧食の量。
- 「至聖所」
教会の聖体拝領台より内部、祭壇の周囲一帯を指す。旧約では、幕屋または神殿の聖所(聖の聖なる所)をいう。
- 「40日の間」
40という数は、4(1日の4区分のすべて、そして春夏秋冬など)と10(完全数)の掛け合わせで、「十全に、徹底して」という象徴的な意味を有する。
- 「ケルゥビムやセラピム」
ケルゥブ(複数:ケルゥビム)は天使の9階級のうちの最上位で智天使と訳され、神の侍者として現れる。セラピムはケルゥビムと対をなし、熾天使と訳される。これは6つの翼を持って現れる(イザヤ6:2など)。
- 「聖シュメオーン」
シュメオーン(390頃-459)は柱頭行者として、アンティオケイア近くで長年、苦行のため高い柱の上に生活し、聖者の誉れが高かった。
- 「ディオスコロス」
ディオスコロス(454歿)は、キュリロス(370/80-444)の後継者としてアレクサンドリアの総主教となったが、キリスト単性説〔キリストの人性は神性に呑みこまれたとするもの〕を支持し、カルケドーン公会議(451年)で断罪された。
- 「ネストリオス」
(381頃-481以降)はコンスタンティノポリスの総主教。聖母マリアの呼称を、キリストの神性を強調する「神の母(テオトコス)」ではなく、「キリストの母」とすべきだとして、キュリロスと論争して、排斥される。ちなみにネストリオス派はペルシアに迎えられ、イスラームの神秘主義スーフィズムと交流した。中国では景教と呼ばれる。
- 「イウゥベナリオス」
イウゥベナリオス(458歿)はキュリロスに与してディオコロスを断罪し、エルサレムの司教となる。
- 「皇帝イウゥリアーノス」
皇帝イウゥリアーノス(在位361-363)はコンスタンティノス大帝の甥で、ローマ伝来の異教の復興を奨励し、キリスト教徒の活動を抑圧した。そのため「背教者」と呼ばれる。
- 「過越際」
ユダヤ教における三大祭の一つで、イスラエル民族がエジプトの隷属を脱してエジプト脱出を敢行した歴史を想起するもの。それは新約において、イエスの弟子たちによる聖餐(エウカリスティア)ないし聖体拝領へと受け継がれる。
- 「マニ教徒」
マニ教はグノーシス主義の一形態で、3世紀に成立した善悪二元論的な密儀宗教。肉体を悪とし、人間の救いは「魂=神的なもの」が肉体から脱することにあると説く。
- 「ヌゥミア」
1ヌゥミアはローマ帝国の通貨単位で、1/4デーナリオン。また1デーナリオンは青銅貨アスの10枚に相当し、自由労働者の1日の労賃(マタイ20:2)、ローマ兵卒のほぼ1日の給与に当たる額。
- 「オーリゲネース」
オーリゲネース(184/5-253/4)は膨大な聖書註解の労作を残した教父であるが、魂の先在や万物更新(アポ方スタシス)などの教説のため、後に異端とされた。しかしそのアレクサンドリアの学統は、カッパドキアの教父たちをはじめ、東方教会の神学や霊性に対して大きな影響を与えた。
- 「ミリア」
1ミリオンはローマ・マイルで1480メートルに相当する。
- 「青銅の蛇」
この青銅の蛇は、教父の伝統では、人の罪を担う受難と十字架との象徴と解釈されている。
- 「メリティオス派」
メリティオス(325頃歿)は、ナイル河中流リュコポリスの主教。分派を造り、アタナシオスに抗した。
- 「神人両性論者たち」
イエス・キリストにおいて神性と人性とは全き仕方で、いわば「「ヒュポスタシス的に結合している」とする正統信仰の人々のこと。
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- 「三聖唱」
正確にはoJ trisavgioV u{mnoV。聖書読誦の前に歌われる典礼文。神の聖・力・不滅を讃美する。