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原始キリスト教世界

カルデア人の神託




[解説]

カルデア人の神託(Chaldaean Oracles)

 これが伝統的に帰せられているのは、カルデア人ユリアノスという人(トラヤヌス帝の時代〔在位98-117〕に盛時を迎えたといわれる)か、その息子の降神術師ユリアノス(マルクス・アウレリウス帝の時代〔在位161-180〕の人で、『スーダ』によれば、マルクス帝の対ゲルマン戦争の際の雨の魔術に責任があった)である。成立時期は伝統的に紀元後2世紀とされるが、その根拠は、ヌゥメニウスの仕事(彼の著作時期は、後2世紀後半よりおそくない)に含まれる神託への言及が2箇所あるという、疑わしい推測によってのみである。その他では、後3世紀に、イアムブリコスがその『エジプト人たちの秘儀について』の中で引用するまで、このテキストへの言及はない。

 集成を通じ、また、後期新プラトン主義者たちによる引用の仕方から、テキストはさまざまな神々による神託の一連のテキストから成り、中でも重要なのが明らかにヘカテーであることが相当はっきりしている。しかしながら、冒頭に、老ユリアノスと、若ユリアノスによって呼び出されたプラトーンとの対話が含まれていたらしい。また、神託における教説の説明も規定していたらしい。その教説は、プラトン的、ピュタゴラス派的な思索、儀式、魔術を基としていたようである。

 カルデア人の書に含まれる神託や註釈は、世界〔宇宙〕の自然への手引きを提供しているのみならず、降神術の手引きとしての役割も果たしていたようにみえる。(OCD)


 新プラトン主義内部に引かれうるさまざまな分割線のうちで、すでに識者の意見の一致をえており、いまわれわれの関心を引くものは、プロティノス、ポルピュリオス等の思想と、プロクロス等を含むイアンプリコス以降の思想を分かつ線である。両陣営を分かつ一つの指標は、神働術(qeourgiva)を重視するか否かという点であり、ひいては神働術を提唱した『カルデア神託』(ORACULA CHARDAIA, LOvGIA CALDAI&KAS)を聖なる書物として認めるか否かという点にかかっている。これが、イアンプリコス以降の新プラトン主義研究の前提として、『カルデア神託』研究が先行しなければならない理由である。
 (堀江聡「『カルデア神託』と神働術」、『ネオプラトニカ:新プラトン主義の影響史』昭和堂、1998.3.、p.101)
 point.gif全文はここ





[底本]
TLG 1550
ORACULA CHALDAICA
(A.D. 2)
1 1
1550 001
Oracula (fragmenta) (olim sub auctore Juliano Theurgo), ed. É.
des Places, Oracles chaldaïues. Paris: Les Belles Lettres, 1971:
66-121.
5
Oracula Chaldaica (frr. 1-186 bis): pp. 66-110.
Vocabula Chaldaica varia (frr. 187-210): pp. 111-115.
Fragmenta dubia (frr. 211-226): pp. 116-121.
(Q: 2,791: Orac.)





神託集(断片集)(神働術師ユリアノスの著者名のもとに)
Oracula (fragmenta) (olim sub auctore Juliano Theurgo)


"T".1
<カルデア人の託言(logia)>

1.1
 じっさい、可考的(nohtovn)なるものがある、これを汝は理性の花(novou a[nqoV)によって思惟(noei:n)しなければならない。
 というのは、汝の理性の向きを変え、これを「何かあるもの」を思惟するように思惟するなら、
 汝はそのものを思惟するのではないから。というのは、どちらの側面からも光る〔理性の〕勢い(ajlkhv)の力(duvnamiV)があり、可考的な断面ごとにきらめいているのだから。
 げに、かの可考的なものは、激しさ(sfodrovthV)を以て、いや、
 広がる理性の広がる炎 — あの可考的なもののみは除いて、
 万物を測る — によって〔思惟すべきではなく〕。げに、これを思惟するのは、
 無理に(ajtenwV)ではなく、汝の魂の聖なる眼、
 〔自余の一切から〕虚となった理性を、可考的なものへと広げる必要がある。  〔これが〕可考的なものを汝が学ぶということである。〔可考的なもの〕は理性の外に存在するのだから。

2.1
 完全武装して、さんざめく光の盛りを身にまとい、
 理性と魂を、三叉鉤のついた勢力(ajlkhv)で武装したものは、
 三幅対のあらゆる徴(suvnqhma)を心(frhvn)に投げこみ、
 最高天の乗り物に乗って、分散的に通うのではなく、集中的に通うこと。

3.1
 ……父は自分自身を連れ去った、
 おのれの可考的な力(duvnamiV)の中に自分の火を閉じこめることもなく。

4.1
 というのは、力(duvnamiV)はあのもの〔父〕とともにあり、理性はあのもの〔父〕に由来するからである。

5.1
 ……というのは、第一の彼方の火は、
 おのれの力(duvnamiV)を、
 〔直接的な〕働きによってではなく理性によって、質料の内に閉じこめるた。
 なぜなら、浄火界の術知者は、理性から出た理性だからである。
6.1
 というのは、可考的な人は、薄膜で下を縛った人のように、判別し、
 第一の火と、別の火とを混ぜ合わせようと一生懸命になる。

7.1
 というのは、父は万有を完成させ、〔これを〕第二の理性に引き渡し、人の全種族は、これ〔第二の理性〕を第一の〔理性〕と呼んでいるのである。

8.1
 ……そこ〔第二の理性〕には二が座をしめている。
 というのは、両方〔の力〕を〔第二の理性は〕有しているのだから、
 理性には可知的なものらを固持し、諸世界には感覚を招来するという。

9.1
 汝の理性の中にさえ固持することはない。
10.1
 ……万物はひとつの火から生まれたものらである。

11.1
 父的な単子がどこにあるか、善そのものを〔(女性名詞)は〕思惟して。

12.1
 ……〔父は〕広がる〔万有を包含する〕単子であり、二を生む。

13.1
 というのは、父的始原からは、不完全なものが発出することはないからである。

14.1
 父は恐怖を跳び出させることなく、説得を注ぎこむ。
15.1
 神が完全な善であることさえ知らぬとは。ああ、労苦に堪える者たちよ、素面であれ……

 
〔「おお、民人たちよ、土から生まれた者どもよ、酔いと眠りと、神に対する無知に自己を明け渡している者どもよ、目覚めよ、酩酊を、ロゴスなき眠りに魅せられることをやめよ」CH, I-27〕

16.1
 ……父たちの、
 神に養われた沈黙によって……

17.1
 思惟する者にとっては、可考的なものが糧である。

18.1
 超-世界的な父的深淵(to;V uJpevrkosmoV patriko;n buqovV)を思惟する者たちは知るがよい。
19.1
 あらゆる理性は、この神を理会する……

20.1
 というのは、可考的なものなくして理性なく、また可考的なものは
 理性なくして存在しないのだから……

"20bis".1
……可考的なものは、自分の内に思惟すること(to; noou:n)を有している。

21.1
 ……〔それが〕万物で有る、ただし、可考的に〔万物で有る〕。

22.1
 じっさい、父の理性は云った、 — 万物を3つに分割しよう、
 永遠なる<第一の父の>理性によって万物を舵とるために。
 意思(to; qevlein)は首肯するまでもなく、すでに万物を分割しおわっていた。

23.1
 三幅対が、万物を測って、万物をまとめるために。〔Cf. 31〕

24.1
 初めと終わりに、また中央にも、必然(ajnavgkh)の配置〔秩序〕(tavxiV)によって。

25.1
 父はこれらを理会するが、彼らはパンを心にかける。

26.1
 というのは、世界は汝を三幅対の単子とみて敬うのである。
27.1
 というのは、全世界の内に三幅対は輝き、これ〔三幅対〕を単子が支配するのである。

28.1
 というのは、この三幅対の諸々の懐に、万物は播かれているのである。

29.1
 というのは、この三幅対から、父はあらゆる霊を混合したのである。

30.1
 諸々の泉の泉、万物を結合する(sunevcousa)子宮。

31.1
 じっさい、これら2つのもの〔単子と「二」〕から、
 第一のものではない第一のものである三が流れ出る。〔第一のものでないのは〕これによって可考的なものらが測られるのではないからである。〔Cf. 23〕
32.1
 <彼女は>働く女、命をもたらす火の花嫁の母、
 そして、ヘカテーの命を生みなす胎を満たすもの……
 ……束ねるもの(sunoceuvV)らに注ぎこみつづける、
 禾殻みのらす力(duvnamiV)ある火の大いなる勢い(ajlkhv)を。 〔Cf. 80, 82, 177, 207〕

33.1
 ……熟練した術知者(ejrgotecnivthV)、
 浄火界の術知者……

34.1
 ここにおいて、多彩な質料の生成が跳び出す。
 ここにおいて、垂れこめた熱気流が火の花をかすませる、
 諸世界の胎に跳びこみながら。というのは、ここにおいて、万物は
 驚嘆すべき光線を下方にまで届かせはじめるのである。

35.1
 というのは、彼から跳び出すのが、容赦のない雷霆と、
 父から生まれたヘカテーの照りわたる輝きの熱気流を受け容れる胎、
 つまり、火の花と、燃える柱の彼方なる支配的霊を取り巻くものである。

36.1
 父の理性は、頑固な水先案内人に乗せられて、
 容赦ない火の轍のなかに確乎としてきらめく。

37.1
 父の理性は、びゅっと音を立てて噴出した、盛時のはからい(boulhv)によって
 あらゆる形をもった形相を思惟しつつ。こうして、ひとつの泉から、あらゆる  〔形相〕が跳び出した。というのは、はからいも終極〔目的〕も、父に由来したからである。
 他のものらは、可考的火によって分割された。他の可考的な〔形相〕へと分配されて。
 というのは、多形の世界(kovsmoV)のために、主は
 不滅の可考的型を定めたまい、無-世界に対してその〔型〕の跡が捺しつけられ、形をもった 世界(kovsmoV)が出現したのである。
 あらゆる形をもった形相によって刻印されて。
 これら〔形相〕の泉はひとつであり、この〔泉〕からびゅっと音を立てて噴出して分割されるのが、何びとも近づきえない他のものら、世界の諸体のまわりに分裂したものらで、これらは
 蜂の群に似て、畏れも多き胎のまわりをめぐる
 周りにも近くにも、あちこちにきらめきながら、
 父的源泉に由来する可考的思想は、
 不眠の時の盛時に、火の花を数多摘み取りつつ。
 この初発の形相をほとばしらせたのは、
 父の最初の、自己完結的な源泉である。

38.1
 父の思量(e[nnoia)〔複数形〕 — それによってわたしの火が包まれるところの。

39.1
 というのは、自生者たる父的理性は、諸々の仕事を思惟して、
 万有に、火を帯びた恋の縛めを播いた。
 その結果、万物は、限りなき時間、恋しつづけ、
 父の可考的な炎によって織られたものらが滅びることはない。
 この恋とともに、世界の諸要素も定まりつづける。

40.1
 諸々の支配 — 諸々の感覚的働きによって、父の可考的作品を思惟し
 諸々の体を覆った。

41.1
 ……可感的なものらを、触れられるものらとして思惟し

42.1
 霊妙なる「恋」(!ErwV)の縛めによって。これ〔「恋」〕は、火を身にまとって、
 結び合わせる火を理性から最初に跳び出させた。その所以は、
 自分の火の花を引き留めつつ、源泉的混酒器を混ぜ合わせるために。

43.1
 〔真実の恋、つまり〕深淵の恋に……

44.1
 ……魂的火花をば、2つの同心者、つまり、理性と神的霊
 に混合し、それらのうえに、第三のものとして、聖なる(!ErwV)をば、
 万有を結びつける、畏敬すべき乗りかかるものとして、置きたもうた。

45.1
 真実の恋の窒息……。

46.1
 ……信と真理と恋情を。
47.1
 火の水路(purhvocoV)たる希望をして、汝を養わせよ……。

48.1
 というのは、万物はこれら三幅対の内に舵とられ、存在するのである。

49.1
 父から生まれた光。というのは、ひとり〔これ=アイオーン〕のみが、父の勢い(ajlkhv)から
 理性の花を豊富に摘み取り、父的理性(patriko;V nou:V)を思惟すること、
 あらゆる泉と始原に<理性を>植えこみ、
 常に渦巻くこと、ためらいなき渦巻きにとどまりつづけることを有するのである。

50.1
 父たちの中央に、ヘカテーの刺し棒〔中心点〕(kevntron)がめぐっていたということ。
51.1
 〔ヘカテーの〕右脇腹の肋骨の空所のあたりには、
 始原の魂の多くの泉が滔々とあふれ出す、
 光、火、霊気、諸世界を有魂化しつつ。

52.1
 ヘカテーの左脇腹には、徳の泉があり、
 全体がその内側にとどまって、処女を送り出すことはない。

53.1
 ……父的考量のあと、
 わたし=魂は、熱によって万物に魂を入れつつ住む。
54.1
 〔ヘカテー〕女神の背には、両側に、限りなき自然がつりさがっている。

55.1
 じっさい、髪の毛は逆立つ光のように鋭く見える。

56.1
 げに、レイアーこそは、浄福な可考的なものらの源泉にして流れ。
 というのは、力(DuvnamiV)において万有の中で第一のものであって、万物の生成を、
 ことばにしえない胎〔割れ目〕に受け容れ、
 車輪のごとくまわる生成を万有の上に注ぎ出すのである。〔Cf. 32, 37〕

57.1
 というのは、父は世界〔宇宙〕(kovsmoV)に七つの蒼穹を積み重ねたのである。
58.1
 (太陽の火をば)……心臓に当たる場所に据えつけたもうた……

59.1
 太陽的世界と全体的な光……

60.1
 火の水路(ejxocevteuma)たる火……
 そして火の蔵(tamiva)……

"61a".1
 霊圏の走路と、月の無限の突進、および、大気的流出(rJoaiv)……
"61b".1
 霊気よ、太陽よ、月の気息よ、大気の導師たちよ。
"61c".1
 太陽的円周と、月的響き、
 および、大気の胎の……
"61d".1
 ……霊気、太陽、そして月、あるいは大気の旋律を注ぎつつ……
"61e".1
 霊気の[部分]、太陽の、月の、そして、大気とともに泳ぐものら……
"61f".1
 ……そして幅広の霊気
 月の走路と、太陽の永遠の運行(ajeivpoloV)。

62.1
 諸要素の諸々の霊気は……

63.1
 凸面の形態に引かれた〔女性名詞〕を……

64.1
 月の走路と、星の進行。

65.1
 そして第五に、中央に、他の火の水路(purhvocon)が〔ある〕、ここから
 質料の水路(ojcetovV)までも、命をもたらす火が降りてくる。

66.1
 水路が交わると、不滅の火の仕事を完成する〔女性名詞〕。

67.1
 火から、水、地、そして万物を養う霊気から。

68.1
 というのも、火の、もうひとつの嵩(o[gkoV)のようなものがあって、万物を自作しているのである、
 世界的体が球状に巻きつけられるため、
 世界が明らかとなり、膜状に見られないために。

69.1
 というのは、〔世界は〕理性の模倣である、が、生みなされたものは、何らかの体を有する。

70.1
 というのは、疲れをしらぬ自然は、諸々の世界と仕事を支配する、
 その所以は、天が永遠の走路を引きずり降ろして定めるように、
 また素速き太陽は〔球の〕中心のあたりに、決まりの方法が進められるように。
71.1
 光の階調(aJrmoniva)に歓喜しつつ。

72.1
 というのも、まことに、わたしは頭の天辺から足の先まで武装した女神としてとびだした。

73.1
 これらのうちで、第一の走路は神聖であり、じっさいその真ん中に大気がある。
 第三〔の走路〕は、火の中に土を育む別のものである。
 というのは、これら三つの怒り狂った支配に、万物は隷従しているのである。

74.1
 ……わきあがる泉の支配(krhnhv&oV ajrchv)。

75.1
 中庭の支配者は、それら〔女性名詞・複数。イユンクス?〕に服する。
76.1
 じっさい、光り輝く諸世界に跳びこんで、のしかかる
 これらのもの〔イユンクス?〕は多い。それらのなかで音に聞こえたものが
 3つ。<火的なもの、霊気的なもの、質料的なもの>。

 

77.1
 それら(i[ugx)〔複数形〕は、少なくとも父に理会されることで、それら自身もまた理会し、
 ことばにし得ぬ〔父の〕意志によって、理会するよう動かされる。

78.1
 〔イユンクス(複数形)〕……伝達者として立っている……

79.1
 あらゆる世界(kovsmoV)は、可考的な不屈の維持者(ajnochv)を有する。

80.1
 束ねる者(sunoceuvV)たちに隷従する他のものらは、質料的なものらにも〔隷従する〕。

81.1
 しかし、可考的火の可考的熱気流(prhsthvr)に万物が服するのは、
 父の説得的意思に隷従するからである。

82.1
 今度は、自分の熱気流(prhsthvr)に、諸々の高み(ajkrovthV)を守備することを許した。
 勢い(ajlkhv)の固有の力能(mevnoV)を、束ねる者(sunoceuvV)たちのなかに混ぜこみながら。 〔Cf. 32, 80, 177, 207〕

83.1
 〔結合者(sunoceuvV)〕……全体を作るものら(oJlopoioiv)

84.1
 ……それ自体、全体として外にある。

85.1
 〔秘儀支配者(teletavrchV)〕……火の脚(tarso;n tou: purovV)を〔手綱で導く〕……
86.1
 ……魂を支配するもの(yucokravtwr)、秘儀支配者(teletavrchV)。

87.1
 いや、不眠の渦巻きにとっても崇高な名は
 父の素速い叱責によって諸世界に跳び出した。

88.1
 [自然は]信じるよう説得する — ダイモーンたちは神聖である
 そして悪しき質料から芽生えたものらは有用であり善である、と。

89.1
 〔悪しきダイモーンは〕……獣のようで恥知らずなもの。〔Cf. 90, 135〕

90.1
 ……はたして、大地の胎〔割れ目〕からは、
 この世の犬たちが跳びだす、
 死すべき者にけっして真実の徴を示すことなく。
91.1
 空気の犬、地の犬、水の犬を駆りたてるもの(ejlavteira)〔ヘカテー?〕。

92.1
 水の上を歩くものらを……。

93.1
 溢れ出る諸部族……。

94.1
 ……理性は魂に、<魂は>怠惰な身体の中に、
 人々と神々の父は、わたしたちに植えつけたもうた。

95.1
 心臓の中に置いて……。
96.1
 魂、父の力(DuvnamiV)によって光る火として、
 不死でありつづけ、かつ、生命の女主人であり、
 <世界の>数多の胎の充満を有するということである。

97.1
 ひとびとの<飛翔する>魂は、神をおのれに抱きしめるであろう、
 全体として何ら死すべきものを<神から>得ていないから、〔しかし今は〕酩酊している。
 というのは、死すべき体がそのもとにある階調(aJrmoniva)を自慢するからである。

98.1
 げに、聖なる人の姿形を霊気は建設した。

99.1
 ……賃働きする、いや、頑なな
 喉のもとで賃働きしつつ……
100.1
 焦熱の〔地〕で……。〔Cf. 134〕

101.1
 ……自然が自己を表す像(a[galma)を呼び出してはならない。

102.1
 自然を見つめてはならない。〔というのは〕その〔自然の〕名は運命(eiJmarmevnon)である。

103.1
 運命を増大させてはならない……
104.1
 ……霊をけがしてはならず、平面を
 掘りさげてもいけない。

105.1
 ……心によって消してはならぬ。

106.1
 ……人間よ、大胆な自然の手工品よ。

107.1
 土地のおそろしい計測を、汝の心に服させてはならない。
 というのは、真理の樹は地にはないから。
 また、秤竿を集めて、太陽の計測をしてもならない。
 その運行は、父の永遠の意思によってであって、汝のためではないのだ。
 月のびゅっと音を立てての突出を放置せよ。必然(ajnavgkh)の働きによって永遠に走行するのだ。
 星の進行は汝のためにもたらせるのではない。
 鳥たちの大気中の広い滑空は、けっして真実ではない、
 生け贄の内臓の腑分けも。それらはすべて玩具、
 商売人の欺瞞の助け。汝はこれらを逃れよ、
 敬神の聖なる楽園(paravdeisoV)を開こうとするならば。
 そこ〔楽園〕には徳(ajrethv)、知恵(sofiva)、適法(eujnomiva)が集結している。

108.1
 というのは、父的理性は諸々の割り符(suvmbolon)〔神性の種=ロゴス〕を世界中に播いた、
 〔父的理性とは〕可考的なものらを思惟するもの。ことばにしえぬ美とも呼ばれるもの。

109.1
 しかしながら、父的理性は彼女の意思を受け容れなかった、
 〔彼女が〕忘却から抜けだし、ことばをしゃべるまでは。
 神聖な父的徴(sunqhvma)の記憶を〔忘却の中に〕置いて。

110.1
 魂の水路を<も>探し求めよ、この〔水路〕から、〔魂は〕
 いかなる秩序〔配置〕(tavxiV)のうちに、身体に奉仕しつつ、<下降し、また、いかにして>
 今度は秩序(tavxiV)へと汝は上昇するのか、聖なるロゴスに仕事を一致させつつ。

111.1
 さんざめく光の中心に〔刺し棒で〕、汝自身を駆りたてつつ。

112.1
 魂の不死なる深みをして開かれせしめよ。あらゆる眼を
 ただちに上方へと飛び出させよ。
113.1
 だが、死すべきでありながら可考的な魂には馬勒をつけなければならない。
 不運な土地に陥ることなく、救済されるために。

114.1
 〔魂は〕土の諸激情の洗礼を受けて……。

115.1
 汝は光の方へ、父の曙光の方へ、急がねばならない、
 数多の理性をまとった魂が汝に派遣されもとのところに。

116.1
 というのは、神的なものらが、体に理性を向ける死すべき者たちに達することはなく、
 〔体から〕裸になった者たちのみが、高みへ、上方へと急ぐのだから。
117.1
 〔魂たちは〕自分自身の勢い(ajlkhv)に救われながら……。

118.1
 ある者たちには、教えうるものとして光の覚知の徴(gnwvrisma)受け取るよう与えたもうた。
 ある者たちには、眠っているときさえ、御自身の勢い(ajlkhv)から、結実〔の力を与えたもうた〕。

119.1
 神によって結合された勢いの(qeosundevtou ajlkh:V)……。

120.1
 ……魂の微細な容れ物(o[chma)。(Cf. 201)

121.1
 というのは、死すべきものが火に近づけば、光を得るであろうから。

122.1
 〔天使の力は〕魂を火で輝かせることによって……
123.1
 ……熱き霊(pneuvma)によって
 〔魂を〕軽くすることによって……

124.1
 魂を押し出すものらは、ほどけやすい呼吸である。

125.1
 ほどけやすい輝き。

126.1
 松明に点火して……。

127.1
 あらゆる方向から、形をなさぬ魂に、火の手綱をのばす。

128.1
 燃える理性をば、敬虔へと流れる働きとして伸ばせば、
 体をも救えるであろう。
129.1
 〔汝を〕取り巻く苦い質料の死すべきものをも救え。

〔「魂が自己へと立ち返ると、気息は血液に凝集し、魂は気息に〔凝集し〕、理性(nou:V)はこれらの着物から浄化されると、自然本性的に神的なるがゆえに、火の身体を与えられ、あらゆる場所を行き巡り」CH X-16
 「理性(nou:V)は、ダイモーンになると、火の体を受けて、神に対する奉仕へと配置され」CH X-21〕

130.1
 運命の女神モイラの恥知らずな翼を逃れ、
 神の内にとどまり、燃えさかる火を引き寄せる。
 父のもとから下向した〔火〕を。そこから下向するとき、
 魂は、最高天の果実の、魂を養う花を摘み取ってきたのであるが。

131.1
 ……パイアン〔戦勝歌〕をうたうこと。

132.1
 ……沈黙を保て、秘儀を許された者よ。
133.1
 しかし、何よりも初めに、火の業を舵とる神官本人をして、
 重く轟く海の凝固した波〔塩〕を身にふりかけしめよ。

134."N"
  (題名(Inscriptio) : lovgion)

134.1
 また、光を憎む世界、質料の荒れ狂う〔Cf. 180〕世界へと急いでもならぬ、
 そこには、相争うねたみと、蒸気の煩いの自然、
 焦熱の病、腐敗、流れて恒に他となる諸々の働きがある。
 これらを逃れる必要がある、父の理性を恋しようとする者は。

「……よろこびなき土地/そこには殺戮と怒りと他の兇運の神々の種族が/また焦熱の疫病と腐敗と ものみなをとかして流す作用とが/禍の牧場に暗闇の中をうろついている」Emp. Fr. 121

135.1
 というのは、汝は、身体を完全にするまで、あの者たちを見るべきではない。
 なぜなら、気難しい地人であり、無恥な犬どもであって、
 いつも魂たちを誘って、秘儀から引き離すのだから。
136.1
 神が人から隔たる所以は何もなく、
 生きた力(duvnamiV)によって、虚しい一本道を送る。

137.1
 天使として力(duvnamiV)のうちに生き、神となる……。

138.1
 天使のための場において……。

139.1
 〔神性の正しい直観〕……高熱の
 直観(e[nnoia)を……

140.1
 鈍重な死すべき者にとって、俊敏なものらは浄福となる。
141.1
 愚鈍な死すべき者が、あれらの方〔外側〕へと傾くと、神の興ざめ(e[klusiV)である。

142.1
 諸体が、自己啓示する諸々の現れに
 結びつけられているのは、あなたがたのためである……

143.1
 あなたがたが中心に据えた体的自然のせいで……

144.1
 ……型なきものらが、型どられること(ta; ajtuvpwta tupou:sqai)。

145.1
 ……呈示された光の形(morfh; fwtovV)を思惟すること。

146.1
 これらのことを口に出す際、あなたは見つめるべきである、
 少年に似た火が、大気のもりあがる大波の上で、懸命に跳びはねているのを、
 あるいは、声を押し出すところの型をもたぬ火さえも、
 あるいは、びゅっと音を立てて地をめぐりめぐる豊かな光を。
 いや、そればかりか、視るべきは、光よりも豊かにきらめく馬
 あるいは、馬の速き背に乗った少年をも
  — 火をまとい、あるいは、黄金に覆われ、あるいは、今度は裸の、
 あるいはまた、弓射し、〔馬の〕背に立った〔少年をも〕。

147.1
 しばしばわたしを勧請していると、万物が暗くなるのをpavnta levontaのを観ることになろう。
 というのは、そのとき、天の巨大な丸天井も現れず、
 星が輝くこともなく、月の光は隠されており、
 地はもはや確定しない。さらに、万物は稲光によって見られる。

148.1
 しかし、形をもたぬ聖なる火が、
 全世界の深み(bevnqoV)で跳びはね照り輝くのを見るとき、
 火の声を聞け。
149.1
 しかし、地に近いダイモーンが来るのを凝視するときは、
 叫び声をあげ、ムニズゥリス石(livqoV mnivzouriV)を供儀せよ……

150.1
 異国起源の名辞を決して変えてはならない。

151.1
 ……諸々の容れ物(sunochi$<V)〈女性名詞〉を……

152.1
 ……報酬を払うことなきもの(ajmistuvlleutoV)……

153.1
 というのは、降神術師たちが、運命に服する群(ajgevlh)に陥ることはないからである。
154.1
 群をなして進む〔大衆の〕……。

155.1
 かがむことの難しい者、背に重荷を背負った者、光に与らぬ者も。

156.1
 というのは、彼らはロゴスなき犬どもとそれほど隔たってはいないからである。

157.1
 <というのは>、地の獣どもが汝の容器に住みつくだろうから。

158.1
 汝は、質料の糞を崖に残すことはけっしてないであろう、
 いやそればかりか、影像には、どこからでも見える場所に割り当て〔役割〕(merivV)があるのだ。

159.1
 ……いかなる身体も、これを後にした者たちの
 戦死した魂たちは、より清浄となり、あるいは、諸々の理性に向かって生きる。
160.1
 ……解体しない(a[luton)……これが浄福なる者たちからの法(qesmovV)である。
 再び人間どもの生へと移行するということ。獣たちの〔生〕へではなく。

161.1
 ……報いは人間どもの絞り弁(poinai; merovpwn a[gkteirai)……

162.1
 ああ、ああ、この者たちが子どもになるまで、地は怒鳴りつづける。

〔「わたしたちが他のすべてのことを受苦し終わって、昇ろうとして出口の近くにいると、突然……今こそ昇ろうと思っていたのに、その口は彼らを受け入れないで、このように邪悪において不知の者たちや充分に罰を受け終わっていない者たちが昇ろうと試みるたびごとに咆えました」Rep. X, 615e〕

163.1
 しかし、下方へ、黒く輝く世界へ(eijV to;n melanaugeva kovsmoV)汝は傾いてはならぬ、
 そこに際限なく広がるは、無形の深み、目に見えるものなく、
 汚れる暗闇に包まれ、影像を喜ぶ非可考的なもの
 断崖状の割れ目の盲目の深みが永遠にめぐり、
 目に見えぬ怠惰な命なき(a[pneumwn)体を永遠に花嫁としたもの。

164.1
 しかし、下方へ汝は傾いてはならぬ。崖は大地の下に横たわる、
 七段の階段を引き下ろしながら……

165.1
 楽園(paravdeisoV)を探し求めよ……。

166.1
 ……連れ出してはならない。何かを持って、
 出て行かないために……

167.1
 中心点(kevntron) — そこから縁までの〔距離〕がすべて〔の光において?〕等しいところの。〔kevntronには、家畜を追い立てるための「刺し棒」の意味もある〕。

168.1
 〔感覚界の太陽は〕三つの翼のある支配を所持しつつ……。

169.1
 〔第二の理性〕……端的に彼方のものら(二重の性格を持った彼方のものら)。

170.1
 男だけの国は滅びるということ……

171.1
 忘却からは、われわれが穏やかな流れとなって流れ出ることは決してないであろう。
172.1
 多くの人たちは、(質料の)曲がった流れに引きずり降ろされる。

173.1
 ……初子の質料を……

174.1
 彼女は他の者たちに生命をもたらし、自分自身にはより多くを〔もたらす〕。

175.1
 聖なるロゴスの第一の力(DuvnamiV)をも……。

176.1
 逸脱する脚を投げ捨てて……。
177.1
 秘儀支配者たちは、束ねる者(sunoceuvV)たちといっしょにとらえられる……〔Cf. 32, 80, 82, 177, 207〕

 

178.1
 足を踏み入れられぬ内陣に、諸々の思量を……。

179.1
 ……分割者が万有を支配するということ(pavshV tmhvsioV a[rcein)。〔?〕

180.1
 質料の荒れ狂う〔世界〕……〔Cf. 134〕

181.1
 ……光を憎む世界(oJ misofah;V kovsmoV)……
182.1
 多くの思いを具体化した確実さ……。

183.1
 ……確実なものは深淵の中にある。

184.1
 霊圏の深淵に隷従しつつ……。

185.1
 ……時間の時間……

186.1
 ……われわれを突進させる器。

"186bis".1
 ……魂のさまざまに姿を変える彫像。
187.1
 不老なるもの。

188.1
 地域に限定されぬもの。

189.1
 二つの顔をもったもの。

190.1
 上へ導くもの。
191.1
 ことばにし得ぬもの。〔Cf. 77〕

192.1
 質料の内に含まれるもの(e[nuloV)。

193.1
 のしかかること(ejpocei:sqai)。

194.1
 七光り。

195.1
 層(zwnai:oV)。

196.1
 汚点(khlivV)。
197.1
 閂(kleivV)。

198.1
 隠された(秩序)。

199.1
 円の中に包含するもの(kukloevliktoV)。

200.1
 さえぎること(mesembolei:n)。

201.1
 容れ物(o[chma)。〔Cf. 120〕

202.1
 万有を受け容れる中庭(pandektikh; aujlhv)。
203.1
 紐(seirav)。

204.1
 広がること(skivdnasqai)。

205.1
 蒼穹(sterewvmata)〔複数形〕。〔Cf. 57〕

206.1
 うなり板(strovfaloV)。

207.1
 束ねる者(sunoceuvV)。〔Cf. 32, 80, 82, 177〕

208.1
 叛乱(suvstasiV)。
209.1
 超世界的なもの(uJperkovsmioV)。

210.1
 青銅色の鳥(calkivV)……〔別名〕kuvminsiV
211.1
 惨めな心臓は、わたしを受容器(doch:V)から運ばない。

「神々はカルキスと呼び、人間どもはキュミンディスと呼ぶ」Il. XIV, 291

212.1
 じっさい、理性が言うことは、もちろん、思惟することによって、言うのだ。

213.1
 速やかに逃れよ、諸々の地の情動から、遠く逃れよ、
 魂の勇ましき眼と、傾きなき光線を持って、
 身体がつけた大きな馬勒を甘受するかのように
 清浄な魂と、父の大気の輝きから。

214.1
 というのは、人間どもにとって、万物がの輝く贈り物となる。
 何か善にして幸いなものを生やしたにしろ、最も勇ましいものにしろ、
 愛すべきものにしろ、の美しき贈り物が万有に備えられた……
 測り得ない、限りなき神の活力(kavrtoV)と勢い(ajlkhv)は
 万物を支配し、一者として万物を統治する。

215.1
 人にとってダイモーンたちは二つ〔種類〕である。これらの二つは
 集団をなしている。彼らは芽生える大地を常にさまよっている、
 ゼウスの支配によって<配置されて>人間どものもとにとどまっているのである。
 というのは、げに、ゼウスは、善きものらも悪しきものらも、そのすべての送り主にして、
 生みなされたものらに命の時間を任命する者だからである、
 つまらぬものらにも美しきものらにも、死すべき身体を混ぜこんで。
 あのダイモーンたちを、おのれの知恵で選んだのは誰か、
 いかなる行いを〔ダイモーンたちが〕喜ぶのかという知識を持っているのは誰か、
 〔ゼウスは〕万人の理性と善き行いに対して神託として答えたもう、
 善き人のもとには善き贈り物をもたらし、つまらぬ〔贈り物〕は避けつつ。

216.1
 泉のニュムペーたち、あらゆる水の霊、
 また土の胎〔割れ目〕と大気の胎〔割れ目〕、そして、月の輝き、
 天と星と無底(ajbuvssoV)の質料に騎乗する
 あらゆる質料の騎乗者たち。
217.1
 というのは、あらゆる彼女たち〔質料?〕をば、甘き渇望(glukero;V povqoV)は有するからである、あたかもオリュムポスをば
 不死なる神々と旅をともにする者たちが常に有するがごとくに。
 しかし、あらゆる彼女たちにとって、これらの屋根にのぼることは掟ではない……
 誰しも、内臓に深慮遠謀の謀(ejpivfrwn boulhv)を置き、
 すでに、オリュムポスに対してもこの身体をまき散らした者は、魂の軽い翼によって飛び立って、飛翔することはない、
 いや、誰しも、知恵……

218.1
〔未訳〕 (ajnavgkh)

219.1
〔未訳〕

220.1
 気のすすまぬわしに聞け。わしを必然(ajnavgkh)に結びつけたのだから。

221.1
 いったいどうして、神的な霊気から、これほどまでにわたしを必要とするのか。
 神々を手なづけた諸々の必然によって、わたしをヘカテーと呼んで。

222.1
 汝の流暢な祈りを耳にして、われは来たり、
 死すべき者らの自然が、神々の忠告によって発明した〔祈りを〕。
223.1
 秘儀によってイユンクスを霊圏から引き寄せて、
 不本意な者たちをこの地に容易に引き下ろし、
 勇ましい霊媒者たちに乗り移った中間者たちは、
 神の火ならぬ神託の告知者(pavnomfhV)たちを夢夢のように
 人間どもの中に加える、ダイモーンたちを恥知らずとして。〔?〕

224.1
 さあ、彫像を完成させよ、わたしが汝に教えるとおりに浄めたうえで。
 野生のヘンルーダで型をつくり、さらに飾り立てよ。
 家のまわりに棲むトカゲのような小さな動物で
 小動物とともに、没薬、ゴムの樹脂、乳香の混合物を
 こすりつけたうえで。そして、戸外で満ちつつある月の下、
 汝自身が次の祈りを捧げながら、〔像を〕完成させよ。

225.1
 そこで、汝ら、泉から引かれたものらを解け。死すべきものはもはや神を容れる余地をもたぬ。
226.1
 太陽の守護役(pavreroV)は、聖なる走路を監督する。

2009.06.11. 訳了。

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