クロス・ポイント:設定


 宇宙開拓時代。地球から飛び立った人類は一つの惑星にたどり着いた。着陸当時は緑溢れる星だった。しかし、その星も衰退への道を歩んでいた。その事に 開拓民の首脳陣は気づいていた。しかし、気が遠くなる様な年月を宇宙船の中ですごし、再び冷たい宇宙に飛び立つにはあまりに目の前の大地は優しく暖かだ った。
 自分達の子孫が苦難の道を歩むとわかっていても、開拓民は銀色の箱舟に乗り込む事はできなかった。

 開拓民が降り立った惑星、名前を『イル・イゾレ』と名づけた。開拓民のリーダーのルイ・ファルシュの母国語であるフランス語で「離れ小島」という意味 だった。
 イル・イゾレを生活の場と選んだ開拓民は星を切り開き、街を作った。空と大地、そして朝と昼と夜、それに雨や雪を知った開拓民はイル・イゾレを楽園と 呼び称えた。

 しかし500年もしない内に大地は干上がり、そのほとんどを砂漠へと変えた。元々寿命が近づいて来ていた星に人類が降り立ち、開拓した結果、衰退が予 想以上に進んだのだ。

 そして、現在・・・砂漠の海に5つのオアシスが浮かんでいた。地下に水脈を称えた「ウォーター・ポイント」、農作物の育成に適した土壌を持つ「アグリ カルチャー・ポイント」、鉱石や石油などが採掘される「マイン・ポイント」、工業用品を作り出す「インダストリアル・ポイント」、そして、その中心に当 たる「クロス・ポイント」だった。

 それぞれのオアシスは自身の持つ物を貿易の種として、他の4つのオアシスと取引をしていた。そして、その間に横たわる砂漠には商隊を襲う砂賊が存在し ていた。しかし、砂賊から商隊を護る事を生業とする者達も居た。



###イル・イゾレの5つのオアシス###


ウォーター・ポイント
 地下に残った化石水をくみ出している。くみだされた水はタンクに詰められ、他の4つのポイントに売れている。生きていく上で最も必要な物なだけに、他 のポイントに対する発言力は一番大きい。しかし、その反面、最大の財産でもある為、砂賊に限らず街を支配しようとする者が多い。
 支配に対する備えとして、自衛団を結成している。ウォーター・ポイントに唯一勝利できる存在は武器を製造しているインダストリアル・ポイントだけだと 言われている。

 農作物を育てているアグリカルチャー・ポイントについで緑の多い街となっている。警備の関係上、他のポイントの人間が入る事は困難な街でもある。

*代表者:ガイゲ・ヴィオロン(50)
 ウォーター・ポイントの代表者。現在、確認されている地下水脈だけでなく新たな水脈を見つけようと苦心している。最近、水の売買を控えている事で他の ポイントから反感を買っているが、値段を吊り上げようといった事ではなく、残り少ない水を有効に使うための計画である。しかし、その事を公表すればパニッ クが起こると考えて、あえて憎まれ役を買っている。
 このまま新たな水脈を発見できない場合は30年後に水が枯渇すると考えられている。しかし、これはウォーター・ポイントの幹部しか知らされていない。


アグリカルチャー・ポイント
 農業、酪農などを行っているポイント。他のポイントの地面が砂である事に対して、アグリカルチャー・ポイントの地面は土である。その為、農業に適して いる。他の4つのポイントに食料を供給している。また農業に対する科学も進んでおり、作り出した作物からは種ができないように加工している。この為、水 が豊かなウォーター・ポイントでも農作物を作る事ができない。

 ウォーター・ポイントに次いで生命に直結している場所である為、警備の人員が多い。こちらはウォーター・ポイントと異なり、傭兵が多い。代表者がクロ ス・ポイントの代表者と親戚関係にある為、優秀な傭兵が派遣されている事も関係している。

*代表者:鼓 美琴(32)
 バイオに関する研究での第一人者。妹の笙子がクロス・ポイントの代表者に嫁いだ事で2つのポイントは友好的な関係となっている。現在、種からではなく クローン栽培で農作物を大量生産する方法を研究中。確立した時点で他のポイントに公表するつもりでいるが、他の幹部は外交における切り札を失うとして、 公表に後ろ向き。


マイン・ポイント
 工業や交通に必要な鉱石や石油などを産出しているポイント。ウォーター・ポイントに負けない程、地下深く掘り進んでいるにも関わらず、水脈にたどり着 いた事はない。短期間でみると、一番立場の弱いポイントである為、住民の収入も少なく裏ぶれた雰囲気がある。

*代表者:アルト・ブラッチェ(46)
 元は砂賊だった男。恋人ができたのを契機に砂賊を脱退。所属していた砂賊集団は命を狙ったが、追っ手を撃退し名前と顔を捨て、逃げ切る事に成功する。 マイン・ポイントの荒れ方を憂いており、治安を良くする為に警察機構を強化し、道徳教育に力を入れている。


インダストリアル・ポイント
 工業製品、乗り物、武器などを製造しているポイント。材料、食料、水、全てを他のポイントから買わなくてはいけない為、立場としては不利である。しか し、武器を製造している事で恐れられている部分があり、生活に苦労する事は少ない。
 クロス・ポイントを除けば一番、文明的な生活をしている。

*代表者:ハルフェ・ハープ(40)
 インダストリアル・ポイント史上最高の頭脳と言われている。失われて久しい飛行機の製作に取りかかっている。飛行機ができた暁にはイル・イゾレの調査を 行い、水源や鉱物などの存在を探し出す事を考えている。  


クロス・ポイント
 開拓民が乗ってきた宇宙船を中心に暮らしているポイント。500年前に乗ってきた宇宙船の設備を利用して暮らしている。その為、懐古主義的な所があり、 他のポイントを見下す人間が多い。
 宇宙航行の技術や医療関係の技術はクロス・ポイントに暮らす地位の高い人間が一子相伝で伝えているので、他のポイントの人間の血を入れる事はまず無い。 生産物が無いという点ではポイントとしては最も立場が弱い筈だが、やはり高度な医療技術を持っているという事で帳消しになっている。

 クロス・ポイントの財産は人間である為、技術者だけでなく傭兵も育てている。クロス・ポイントは教育が充実しているので、学力だけでなく道徳感も備わっ ている事で傭兵達の仕事振りは他のポイントでも好評。

*代表者:キサラ・ギターレ(20)
 クロス・ポイントの代表者は世襲制で、キサラはギターレ家の長男。生まれた時から治世者としての教育を受けており、医療・宇宙航行技術も学んでいる。周囲 の反対を押し切り、アグリカルチャー・ポイントの代表者、鼓美琴の妹である笙子と結婚した。ちなみに笙子はキサラより5つ年上の姉さん女房。


護衛隊
 依頼した相手の生命及び財産を守る事を仕事とした集団。各ポイントにいくつかの護衛隊があるが砂賊との戦いで隊が崩壊する事もあり、いつも同じ護衛隊が いるとは限らない。
 護衛隊の数が最大なのはクロス・ポイント。ついでインダストリアル・ポイント。ウォーター・ポイントは自衛団がある為、護衛隊が雇われる事は少ない。

*代表者:クラベシーン(28)
 全護衛隊の取りまとめ役。自身の護衛隊は『コーラス』と呼ばれる少人数の隊。普通、護衛隊は銃を使うがクラベシーンは剣も使う。銃は砂嵐になった際、誤 作動を起こす事がある為。もちろん銃には防砂加工してあるのだが、クラベシーンは完全には信用していない。  


砂賊
 5つあるポイントをつなぐ道を通る商隊を襲って生計をたてている。その大半が己の欲を満たす為のものだが、中にはポイント代表者や幹部に指示されて動い ている者も居る。その場合は何らかの作戦を担っている事が多い。

*代表者:フリューゲル(37)
 砂賊『砂とかげ』のリーダー。商隊を襲い、搬送物資と護衛の武器を奪い生計を立てている。襲われた商隊に生存者が残る事は無く、搬送用のトラックに残さ れたトカゲのペイントが犯行声明となっている。

*代表者:カリヨン(30)
 砂賊『ミラージュ』のリーダー。他の砂賊と異なり、各ポイントの代表者から指令を受けて商隊を襲う。各ポイント間で起こった揉め事を金や物品で収める時 に「襲われた」事にして賠償金として支払う事になっている。表立って賠償金を支払うとポイント内のライバルに外交手腕を非難されるから。
 カリヨンが襲った商隊は死傷者を出ず、奪われた物品や貨幣のいくらかは各ポイントの弱者に配られる為、市民に好感を持たれている。





続く


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