■ 銀塩写真用語集

最終更新日:2005.04.12

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◆白黒銀塩写真を中心とした用語集(俗語も含む)です。「できるだけ簡潔に」を前提にしていますので、より詳しい内容は書籍などをご覧下さい。なお、現在、用語の順は整理されてはいません。

銀塩
写真の感光材料として使われる塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀をまとめてさす語。いずれも感光作用があり、白黒だけでなくカラー写真にも使われている。
エイトバイテン(8×10)
六切参照。
シノゴ(4×5)
主に、写真フィルム(や乾板)で4inch×5inch(およそ10cm×12.5cm)の大きさのもの。
35mmフィルム
写真フィルムと言えばこれを指すくらいに普及しているフィルム。フィルム幅が35mmあるのでこう呼ばれる。「135-36」と書いてあれば、このフィルムで36枚撮りであることを意味する。
ブローニー
ブローニーフィルムの略。いわゆる中判カメラ用に使われるフィルム。フィルム幅は61.5mmである。フィルムそのものが大きいので引き伸ばしには35mmフィルムより有利。風景写真によく使われる。規格として、120と220の2種類がある。このフィルムの自家現像は熟練を要する。
カビネ
キャビネ参照。
キャビネ
カビネともいう。普通、12cm×16.5cmの大きさの印画紙をさす。
大キャビネ
大カビネともいう。普通、13cm×18cmの大きさの印画紙をさす。キャビネより一回り大きい。
六切(むつぎり)
印画紙や写真フィルムなどで、大きさが 8inch×10inch(およそ 20cm×25cm)のものをさす。この大きさを「エイトバイテン」ということがある。
四切(よつぎり)
印画紙などで、大きさが 10inch×12inch(およそ 25cm×30cm)のものをさす。引き伸ばし写真によく使われるサイズ。「よんせつ」と言う人もある。大四切はこれより一回り大きい。
半切(はんせつ)
印画紙などで、大きさが 14inch×17inch(およそ 36cm×43cm)のものをさす。全紙の半分くらいの大きさなのでこう呼ばれる。
全紙(ぜんし)
印画紙などで、大きさが 18inch×22inch(およそ 46cm×56cm)のものをさす。なお、20inch×24inchの大きさのものを大全紙として発売しているメーカーもある。全紙の白黒写真を自分で焼くことができれば、おそらく免許皆伝!!
ネガ
ネガティブ(negative)の省略語。実際と明暗が逆になっているもの。写真フィルムについていうことが多い。カラ−ネガなど。ポジの反対語。
ポジ
ポジティブ(positive)の省略語。フィルムなどで明暗が実際と同じもの。カラーのポジフィルムはリバーサルフィルムのこと。ネガの反対語。
リバーサルフィルム
カラーのスライド用フィルムであるが、カラー写真の印刷用にも使われる。色の再現性や発色状態を考えて作られている。花の写真や風景写真など、いわゆるネイチャーフォトによく使われる。露出が適正でないとちゃんとした色は出ないが、適正だとネガカラーよりもはるかによく色が再現される。
ベタ
密着焼き参照。
密着焼き
俗に「ベタ」という。英語で contact print。白黒ネガフィルムを印画紙に密着させて焼いた写真。普通、フィルム1本分を六切(または四切)1枚に焼く。白黒写真を作るときの基になるもの。
試し
試し焼きのこと。「試しをとる」、「試しを焼く」という風に使う。
試し焼き
フィルムから印画紙に写真を焼き付けるとき、露光時間を決めるために行なう作業。また、この作業で焼き付けた印画紙。白黒写真を焼くときの重要な暗室作業。これがテキパキとできれば一人前。
覆い焼き
写真を焼き付けるとき、ある部分の露光時間を他の部分より短くすること、またその作業。その部分に「影」を作りながら露光する。焼き込みの反対で、暗室作業の基本の一つ。
焼き込み
写真を焼き付けるとき、ある部分の露光時間を他の部分より長くすること。またその作業。穴を開けたボール紙などを使ってその部分だけ他の部分よりも余計に露光する。覆い焼きの反対で、暗室作業の基本の一つ。
フィルム・ピッカー
ベロ出し参照。
ベロ出し
パトローネに入っているフィルムの先端を俗に「ベロ」という。パトローネに巻き込まれたこのベロを外へ出すこと。また、そのための用具(フィルム・ピッカー)をもさす。写真撮影時、いざというときに必要な場合もある。
パトローネ
フィルムを入れる(が入っている)円筒形の容器。外部の光が当たらないように作られており、内部は真っ黒に塗られている。
長巻(ながまき)
普通 100フィート(30.5m)の長さのフィルムをさす。36枚撮りフィルム 20本分に相当し、缶入りなどで売られている。1本ずつ買うよりもはるかに安価。これを市販のフィルムのようにパトローネに巻き込む用具が市販されている。
ISO感度(イソ感度)
フィルムや印画紙の露光に対する感度を数値で表したもの。フィルム感度について言うことが多い。ISOとは「International Organization for Standardization(国際標準化機構)」のことで、ISO感度とは、ISOの規定に従った感度。フィルムの場合、ISO 100とかISO 400とか表示されている。この数値が4倍なら感度が4倍になると考えてよい。印画紙の場合、ISO P 400などと表示されている。
バライタ紙
白黒写真用印画紙の一種。バライタとは硫酸バリウム(胃腸検査で俗に「バリウム」と呼ばれるもの)のこと。純粋なものは純白に近い。ゼラチン溶液に硫酸バリウムを混ぜて上質紙に塗布したものがバライタ紙。紙に薬品がしみ込みやすいので処理には注意が必要。しかし、階調が豊かなので、きちんとした白黒写真作品によく使われる。
RCペーパー
写真用印画紙の一種。RCは「Resin(樹脂) Coated」の略。メーカーによってはWPとかSPと銘打っているものもある。普通、樹脂としてポリエチレンが使われているので、ポリエチレン・コート紙と言うこともある。紙の両面がポリエチレンで覆われているため、薬品がしみ込みにくいので、水洗が短時間で済む点と平面性が保たれる点が長所。白色物質としては二酸化チタンが使われている。カラー写真のプリントは今では全部このタイプ。
多階調印画紙
従来、印画紙はコントラストの違いによって、2号の印画紙とか3号の印画紙とか号数ごとに異なった種類のものが製品化されていた。多階調印画紙は一種類の印画紙だけで、このコントラストの号数が0〜5号(0の下に00というのがあったりする)まで、引伸機に装着したフィルターによって自由に変えることができるもの。この場合の「階調」という語は、正しい意味の階調とまぎらわしいので、ポリコントラストと呼んでいるメーカーもある。
号数
特に、白黒印画紙のコントラストの大小を表す数値。数値が小さいほどコントラストが低い写真になり、大きいほどコントラストが高い写真になる。ただし、数値はどちらかというと経験的な目安に過ぎない。2号か3号あたりがよく使われる。
階調
英語でグラデーション(gradation)。特に白黒写真についての用語。真っ白から真っ黒までの黒さ(白さ)の段階のこと。「階調が豊か」とか「階調に乏しい」とか使う。白黒写真を焼くとき、「真っ白に近い白から真っ黒に近い黒まで」できるだけ階調豊かに出すのが一つの目標。
コントラスト
contrast。明るい部分と暗い部分の明暗の差。コントラストが強い(高い)と白と黒の間の階調に乏しくなり、ディテール(detail)が出ていないと言われる。逆にコントラストが弱い(低い)とメリハリのない写真(眠い写真)になる。
眠い
コントラストが低くてメリハリがなく、全体が灰色のように見える白黒写真を「眠い」とか「眠たい写真」とかいう。眠い白黒写真は普通は評価されない。
ハイライト
英語で highlight。特に白黒写真で最も明るい部分。意味もないのにここが真っ白ではよくない。
シャドー
英語で shadow。白黒写真で最も暗い部分。真っ黒ならいい、というわけでもない。
とぶ、とんでいる
白黒写真で、本来真っ白でもない部分が焼き付けたとき真っ白になっていることを俗にこういう。普通は嫌がられる。この世には真っ白というのはそうあるわけではない。我々が真っ白だと思って見ているものの大部分は実はそうではない。このような部分は、真っ白に近い明るさに焼くと、よりそれらしい写真になる。
つぶれている
白黒写真で、本来真っ黒でない部分が真っ黒に焼かれていることを俗にこういう。例えば、大部分の日本人の髪の毛の色は黒に近いが、決して真っ黒ではない。この髪の毛をつぶさずにそれらしく焼くのも白黒写真の焼き方のコツの一つ。
現像
露光によってフィルムや印画紙にできた潜像(眼には見えない)を、還元剤によって銀粒子にまで黒化させる過程、またその作業。きわめて重要な作業である。フィルムの現像に失敗すれば、それまでの苦労はすべて水の泡。現像液の調整や温度管理、現像時間さらには撹拌のしかたが結果を大きく左右する。 還元剤としてはハイドロキノンやメトール、フェニドンなどの有機物質が使われる。これらの還元剤はアルカリ性で効果を発揮するので、現像液は適度のアルカリ性になるように作られている。還元剤であるため(現像は化学的には酸化還元反応の利用である。相手を還元させるのを還元剤というが、同時に自身は酸化されやすいのである)、空気中で酸化しやすいので使用液はできるだけ速やかに使うのが望ましい。
停止
フィルムや印画紙の現像を停止させる過程、またその作業。現像液がアルカリ性なので、アルカリ性を中和させるために、普通 1.5%の酢酸水溶液が停止液として使われる。フィルム現像の場合は、現像タンクから現像液を出した直後に、停止液を現像タンクに入れて撹拌する。
定着
現像後にフィルムや印画紙に残った感光剤を取り除く過程、またその作業。定着液にフィルムや印画紙を浸して行なう。定着液には銀を溶かし出す作用もあるので時間をかければいいというものではない。定着液には大きく2種類があり、普通の定着液の主成分はチオ硫酸ナトリウム、迅速と銘打っているものの主成分はチオ硫酸アンモニウム。とくに後者は銀が溶けていきやすいので、指定定着時間を守ること。
定着不足
定着が完全にできていないこと。定着液が疲労していたり、定着の温度が低かったりすると起こる。定着不足のフィルムはすぐに薄い褐色に変色するし、定着不足の印画紙も時間がたつと褐色に変色していく。フィルムの場合、定着終了時に定着がきちんとなされたか確認すればよい。印画紙の場合は定着が完全かはわかりにくいが、確認方法がないわけではない。いずれにしろ、定着はできるだけ新鮮な定着液を使うのが望ましい。古い定着液は悪影響を及ぼすだけである。
ハイポ
チオ硫酸ナトリウムのこと。塩化銀や臭化銀などのハロゲン化銀を溶かす作用がある。
水洗
フィルムや印画紙の最終処理として重要な過程、またその作業。定着後、フィルムや印画紙のゼラチンなどにしみ込んだ定着液を取り除くために行なう。これがいい加減だと、残った定着液が写真に悪影響を及ぼす。
水洗促進剤
定着後に残った定着液を、化学反応によって速やかに取り除くための薬品。これを使わないとフィルムや印画紙の水洗は最低1時間(セッ氏20度で)やらないといけないが、使うと水洗時間が10分程度に短縮される。
水滴防止剤
界面活性剤などの水溶液で、仕上げ剤としてフィルムの汚れを落としたり乾燥時にできる水滴むらを防ぐために使われる。
アーカイブ処理
出来上がった白黒写真をできるだけ長期間保存できるようにするための処理。いくつかのやり方があり、何種類かの薬品が市販されている。美術館などの有名写真家の白黒写真の展示作品は、これがきちんとなされているのが普通である。
現像タンク
写真フィルムを自家現像するための道具。暗黒中で、撮影済みのフィルムをこの中に詰め込む。いろいろあるが、ステンレス製のものが温度管理がしやすくてよい。また、フィルムを巻くリールは両溝式のものが現像むらが少なくてすむ。
リール
撮影済みのフィルムを現像するとき、フィルムを巻き込むための道具。フィルムをこれに巻いて現像タンクに詰め込む。ベルト式のものや片溝式、両溝式のものがあり、ステンレス製とプラスチック製のものがある。
ダークバッグ
チェンジバッグともいう。内部が暗黒になるように作られ、明るい所でも腕を入れて暗黒中で種々の作業(現像タンクに撮影済みフィルムを詰める、コダックの赤外線フィルムをカメラに装填する場合など)を行なえるもの。安全のため、普通は二重になっている。白黒写真をやらなくても、写真撮影の場合、いざというときに便利。
引伸機
英語で enlarger。いくらカメラや撮影レンズが良くても、これがいいものでないといい写真は決してできない。カメラやレンズが写真作品の入口なら、引伸機はその出口である。だから、それなりのものを選び、引き伸ばし用のレンズもできるだけいいものを選ばないといけない。
イーゼル
英語で easel。引伸機で印画紙に露光するとき、印画紙を置いて安定させるための用具。できるだけしっかりしたものがよい。2枚羽根のものと4枚羽根のものがある。
ネガ・キャリア
写真を焼き付けるとき、写真のネガフィルムをはさむ用具。フィルムの大きさに合わせて長方形に穴を開けたものや、平面ガラス2枚ではさみ付けるものなどがある。
フォーカス・スコープ
ピント・ルーペとも言う。写真を引き伸ばすときにピントを合わすための用具。これを使わないと、焼き付けるときにピントを合わすのは大変。
安全光
英語で safe light。暗室内で作業を行うときに使うあかりのこと。あかり、と言ってもかなり薄暗いのが普通で、印画紙に引き伸ばすときには普通赤色光を使う。これは、印画紙が赤色光には感じにくいからである。安全光と言っても、完全に安全というわけではなく、印画紙を長時間当てれば、次項の「カブリ」を生じるので注意しなければならない。詳細は安全光や印画紙のカタログまたはデータシートに記載されている。
カブリ
英語で fog。本来の露光がないのに、フィルムや印画紙が薄い灰色になること。カブリが生じた印画紙は使い物にならない。外的要因(カメラの光漏れによるフィルムの感光、暗室内での安全光の使用ミス、フィルム・印画紙の不用意な扱いなど)によるものを言うことが多いが、内的要因よるもの(古いフィルムや印画紙のカブリ。また、フィルムなどは現像時に多少のカブリを生じている。)もある。なお、動詞形にして「カブる」という言い方もする。

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