うきうきノベルズ
近未来小説『誇りでほっこり』
by 浮世絵太郎

 西暦2000年。京都パープルサンガは黄金時代を迎えていた。
 ライバルは浦和レッズと鹿島アントラーズ、そしてセレッソ大阪。この4強プラス、ジュビロ磐田、名古屋グランパスエイト、そしてヴェルディ川崎が、1部リーグで激戦を繰り広げていた。

 そんなある日。某スポーツ紙の一面をこんな記事が飾った。
「京都パープルサンガに開幕17連敗の過去アリ!!」
 これは、首位を走る京都サンガの選手の士気を削がんとする、某ライバルチーム・ファンの編集者による陰謀であった。その編集者は考えたのだ。情けなく、恥ずべき過去をほじくり返せば、サンガの選手はチームに対する誇りを失い、求心力が消え、バラバラになってしまうに違いない、と。その編集者はゲラ刷りを見て不気味にほくそえんだ。イッヒッヒ。

 なんとも浅ましい光景だが、なんとも間抜けな光景でもあった。

 すでに17連敗したころの選手はサンガにいないのである。
 今戦っている選手は、彼らの今と未来のために戦っているのだ。サンガの歴史を記したパンフレットの中ではなく、今を生きているのだ。彼らが真に誇りを感じるものは、己の過去と、現在と、そしてこれから築き上げていく未来の中にしかない。先人たちの敗北を蒸し返されたところで、びくともするわけがなかった。

 この陰謀が虚しく失敗に終わり、サンガの激闘が続いたのは言うまでもない。


キーワード

悲しいほど、ひとり

歴史の暗部を教えるから若者が日本人であることに誇りを持てなくなる、
などと本気で信じている方がいるのなら、
皆さんも言ってあげましょう。
「アホちゃうか?」

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