創刊の辞
by 浮世絵太郎
(1996年5月)

 はろー。私が本誌発行人で編集者でレポーターでイラストレーターでカメラマンで英訳者の浮世絵太郎である。

 サムライの国の日本人として、まずは以下の方々に礼を尽くさねばならない。
 インターネットとWWWという新しい情報伝達手段が実用化されなければ、本誌の試みがなされることはなかった。この分野の発展のために尽力してこられた偉大な先人の方々と、今もさまざまな試みを捧げつづけておられる方々に感謝の意を表する。
 また、自ら放射線被爆を受けて寿命を縮めつつも、原発運転の最前線で働いておられる方々、そして今日も確率的限界を越えて原発を無事に運転しておられる最前線の少し後ろの方々に感謝を表する。彼らの犠牲と努力がなければ、とうの昔に悲劇の時は訪れ、京都も過去の町になっていただろう。そうなれば京都を舞台とする本誌の誕生はありえなかったし、あったとしても新鮮な写真を掲載することは不可能だった。『UkiUki TRUE? LIES! JOURNAL from Thailand』などとなっていた可能性もある。
 また、沖縄や佐世保など、民間人を軽んじる野獣のごとき兵隊たちが身近に野放しにされる状況に耐えている地域の方々に感謝と敬意を表する。彼らが現状に我慢できず、もし京都に米軍基地が来ていたのなら、本誌の紙面の多くは野獣た<ちをからかうことにさかれ、愉快でファンタジックな色は薄められていたに違いないない。
 また、阪神大震災から何も学ぶことができず、そのうえ被災者支援もろくにしていない日本の行政組織や政界の方々、そして同級生をいじめ殺す中学生たちとそれを見て見ぬふりをする姑息なクラスメートたちにも感謝せねばならない。彼らが示す日本の暗澹たる未来が、私にいずれこの国を捨てる決意をさせた。そこから私は英語をはじめいくつかの言語の学習に取り組むことになった。そうでなければ、本誌の英語版を作り上げる力など一生得ることはなかった。

 本誌について述べよう。
 本誌が目指すのは、歴史と文化あふれる古都京都を肴に、愉快でファンタジックな現代の民間説話を発信し、さらにはその発信を通して京都の魅力を世界中の皆さんにお伝えすることだ。
 京都は実に驚きに満ちた街である。戦後50年を経、他の都市と同様変貌著しいとはいえ、過去1200年のうち1100年近くに渡って都でありつづけただけあって、街のそこかしこが何かの物語につながっている。近代的なビルが増えつづけても、語り継がれてきた物語は消え去さらない。たとえば400 年以上前に英雄が攻め滅ぼされた寺は現存しなくても、その寺があった場所には石碑が立ち物語も伝わっているし、130年ほど前に京都を焼き滅ぼそうとするテロリスト集団が治安部隊の急襲を受け壮絶な斬り合いの場となった旅館も、今はなく、パチンコ屋になっているが、やはり石碑とともにその戦いの様は語り継がれている。どこそこに鬼が出ただの怨霊が雷を落としただの、今となってはそれが正確にどこで起きたかわからないものまで含めたら実に莫大な量のファンタジックな伝説も残っている。恋のドラマもたくさん伝わっている。過去が現在の中に息づく街、それが京都なのだ。
 本誌がそうした過去を現代に蘇らせ、さらには未来へとつなげていくための大きな力となることを心より願う。

 いろいろとコムズカシイことを書き連ねてきたが、実は次に掲げる一文こそ、この「創刊の辞」で最も重要な部分である。しっかり心に焼き付けて本誌を楽しんでほしい。
 「本誌に掲載された記事について、それが真実かどうか、ニュースソースはどこかなど、メールで尋ねるような野暮な真似はお控えください。」

表紙

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著作権者:浮世絵太郎
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1996年5月
『Uki Uki TRUE? LIES! JOURNAL』とは?

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