ミステリー
幽霊電車の届け物
(11.13. 1997)
去る10月。地下鉄東西線開業にともない、京阪三条と御陵の間を走っていた京阪線の路面電車が廃止された。
ありし日の路面電車
かくして、地下鉄に入れてもらえなかった旧型車輛は廃車されることになったのだが、そのうちの数輌が幽霊電車となって夜の京都を走り回り、話題を呼んでいる。
と言っても、怪談話の類いではない。
幽霊電車は、なんと、京阪線車輌に忘れられた傘や鞄や小荷物などを持ち主の元に届けるべく、ボランティアで走り回っているのだ。
宝くじの一等当たり券をうっかり電車内に落としてしまい、悲嘆にくれていた川口五郎兵衛さん(仮名。41歳、自営業。山科区在住)も、幽霊電車に救われた一人だ。
「ほんまに助かりました。不景気で不渡りを出す寸前に当たった宝くじ、天の助けみたいに思っとったんですが、それを無くしたと知ったときは、天国から地獄にたたき落されたみたいな気がして、いっそ首をくくろうかとまで思いつめたもんです。それが、その日のうちに幽霊電車はんが届けてくれはって、もう、なんと言ったらいいのか…。首くくらんですんだのも不渡り出して夜逃げせんですんだのも、ほんまに幽霊電車はんのおかげです」
そう言って涙を浮かべる五郎兵衛さん。
なんとも心あたたまる話である。
幽霊電車に線路は不要だ。
キーワード
アニミズム
古来より日本には、
ほうきや布団、草履などの無機物も長い年月を経ると霊が宿る、
なんていう考え方があったそうだ。
私は実感ないのだが。
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