ミステリー
国家斉唱
(8.6. 1998)

 ある中学校での話である。

 1学期の最終日、校庭に全校生徒が集められて、校長先生のありきたりの訓話を炎天下で聞かされていた。
 長い訓話が終わり、教室に帰る前に、皆で『君が代』を斉唱することになった。
 中学2年生の佐歩緒太くん(仮名)は、ワールドカップの日本戦を思い出しながら、歌い始めた。

 「君が代は 千代に八千代に」

 その時である。

「嘘こくでねえ!」

 校舎の裏の神社から、えも言われぬ巨大で恐ろしい怪物が現れて、校庭を覆い隠すように身を乗り出した。



 恐怖にへたりこみ、泣き出す生徒や教師たちに向かって、怪物は言った。
「無責任校長の偉そうなお話を聞かされてただでさえうんざりしてるのに、今度はガキどもまで心にもないことを歌いはじめやがって! 天皇統治の世の中なんてこれまでだったほとんどなかったし、今でもそうじゃねえだろ! 何が 千代に八千代に だ!」

 わけがわからず、泣きつづける生徒たちに向かって、怪物は指導した。
「替え歌にして、素直な心を歌え!
 我が世の春は 千代に八千代に、とか、
 悲しくて仕方がないときには、
 我が世の春は 千代に八千代に、とか、
 頭働かせて、素直に生きろ!」

 怒鳴り終わると、怪物は煙りのように消えてしまった。

 そして、あらためて国家斉唱が執り行われたのだが、佐歩くんはやっぱりワールドカップを思い出しながら「君が代は 千代に八千代に」と歌ったそうである。おやおや。


キーワード

君が代

君が代の「君」が天皇だって、常識だよね?
なんで未だに国歌扱いなんだろう?
(ゲゲッ! 連載休んでる間に国歌になってた!)
そろそろ、次のワールドカップの前までに、
新しい国歌を創るべきじゃああるまいか。


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