ミステリー
鯉のぼり
(5.1. 1997)
1955年、4月27日のことである。
最初の子どもが初節句を迎える室町家(仮名)では、大きな鯉のぼりを新調。それを庭先の柱に掲げる前、家の中で箱から出した。すると、まだはいはいもできなかった赤ん坊、豆助(仮名)が突如畳の上をはいだしたかと思うと、真鯉ののぼりの口にもぐり込んだ。
もちろん、これは鯉のぼりの正当な使用法ではない。
鯉のぼりの正当な使用法
だが、両親が息子の成長に、驚き、狂喜したのも至極当然だった。
歓声をあげる彼らの見守る中、豆助はのぼりの中をくぐり抜け、尾っぽのところから姿を現した。そのとき、おー、一体なんたることでしょうか、豆助は鯉になっていた。
両親が息子の変身に、驚き、悲鳴をあげたのも至極当然だった。鯉になった豆助はピチピチと畳の上ではね、体をくねらせている。
やがて鯉の豆助は、のぼりの内部を反対向きにくぐりはじめ、その口から出てきたときには、もとの豆助、すなわち人間の赤ん坊に戻っていた。
これが、世紀の大奇術師、室町亭豆助(仮名)が人生で最初に見せたマジックである。
まったくもって恐れ入る話ではないだろうか。
(えっ? まさか本気にしていないよね?)
キーワード
子どもの日
5月5日は子どもの日である。
空には鯉のぼりが風を受けてたなびき、人々はちまきや柏餅を食べて男の子の成長を祝う。伝統的な子どもの日はこうして過ぎていくのだが、時の流れはそのスタイルを変えてしまい、今ではもうあまり見られない光景かも知れない。
ちなみに、女の子の健康と幸せを祈る日は、3月3日とされている。
では、ゲイやレズの日は、いつなのか? ご存知の方おられたら、お教えください。
バックナンバー・パラダイス!
うきうき書房 On-Line