デート・スポット探訪
恐怖の地下鉄
(5.22. 1997)

「ここはどこだっ? どこなんだ〜っ!」
 他にだれもいない、最終便一つ前の地下鉄車内に、今年就職したばかりの桂文五(仮名。22歳)の叫びがこだました。
 文五は見たのだ。
 仕事疲れのうたたねから目を覚ましたとき、開いたドアの向こう、ホームの柱に、この路線にはないはずの駅名表示を。
 KUPAMAGUCHI 。
 そう書かれていた。



 文五の乗った御池駅からは、順に丸太町、今出川、鞍馬口、北大路、そして終点の北山となる(1997 年5月現在) 。KUPAMAGUCHI などという駅は存在しないはずだ。
 文五は謎の異世界に迷い込んでしまったのか。それとも、慣れない職場でのストレスが、ついに彼の精神を崩壊させたのか。
(今日はまだ、酒の一滴も呑んでないのに……)
 顔を引きつらせる文五。ぞっとして体が震えた、立ち上がって電車を下りようとしたとき、目の前でドアは閉まった。
 電車は走り出した。どことも知れぬ、次の駅へ向かって……。


キーワード

KUPAMAGUCHI

 実は、本来「KURAMAGUCHI」とあったものに、どこかのバカ者が白インキで悪戯をした結果である。
 これを私が発見したのは先月の末。それが、5月18日になってもまだ残っていた。
 はたして市営地下鉄職員がこの誤表示に気がつき、修正する日はやってくるのだろうか。
 はなはだ怪しいと言わねばなりますまい。

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