ミステリー
宇宙人撃退女子高校生現わる!
惑星間戦争勃発か!?
高まる宇宙戦争の危機!!(1996)

「UFOに誘拐されて、人体実験された」
「宇宙人に誘拐されて、妊娠させられた」
「夫とドライブ中に宇宙人強盗団に襲われ、金をよこせ、と脅された。断り抵抗する夫に宇宙人は怪しい液体を飲ませ、ゴキブリに変えてしまった!」
 などなど、宇宙人による誘拐・強盗事件が相次いで報じられる中、ついに宇宙人を返り討ちにしたと豪語する女子高生が現れ話題になっている。
 この武勇伝を語るのは、京都市北区在住の北山妙法さん(仮名)。



 一九九六年六月二○日、蒸し暑い夜のことだ。午前二時すぎ、夏に向けたダイエットの辛さに耐えられなくなった妙法さんは、こっそりと寝室を抜け出し、台所の冷蔵庫に近づいた。そしてドアを開き、一つの平たい包みを取り出した。
 その時である。突然停電して、半開きだった冷蔵庫の光も消え、妙法さんは漆黒の闇に包まれた。心臓がジャンプするほどビックリした妙法さんだが、驚くのはまだまだこれからだった。
 背後の窓から強烈な光が差し込んできて、妙法さんは眼をやった。
 外に何かがいた。身長は一メートル位だろうか。カーテンを透して影が映っていた。大きな頭に小さな身体。長い両手に、極端に短い足。人間ではない、怪しい何か……



(テレビの特番で見た宇宙人だ……)
 妙法さんは、すぐにそう確信した。
 内側からかけていた鍵が自然に外れ、ドアが開いた。全身灰色をしたそいつが、室内に入ってきた。無機的な巨大な目を向けて、ゆっくりと妙法さんに近づいてきた。
(このままでは誘拐されて人体実験されたり妊娠させられたり……)
 恐怖の想像が妙法さんの頭の中を駆け巡った。気が遠くなりかけた妙法さんだが、
(そんなのヤッ!)
 強く頭を振り、気を強く持った。
 そして灰色の不法侵入者が一メートルほどまで近づいたところで、妙法さんはそいつの下腹部めがけて力の限りの飛び蹴りをくらわせた。灰色の怪人は「うげぇ」と苦しげで弱々しい声を上げ、後ろに吹っ飛び、尻餅をついた。
 この足応えに妙法さんは大いに勇気づけられた。とどめとばかりに、左手に持っていた包みを開き、そこに横たわる小さな粒々を箸でグニグニかき混ぜると、糸を引きはじめたそれを怪人の頭にエイヤッとぶちまけた。
「ふげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」



 灰色の不法侵入者は狂乱の悲鳴をあげた。穴だけの鼻をひんまげて、頭にかぶってきたそのネバネバを振り払おうと必死にもがいたが、ネバネバが両手にとりついただけだった。
「ひょげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
 怪人は甲高い悲鳴をあげながらドアの外へ走りだし、妙法さんは追撃しようと後を追った。
 住宅街にUFOが浮かんでいた。
(焼きそば……)
 妙法さんは、空腹を思い出した。
 UFOの底部から発せられた黄色の光が灰色の怪人を吸い上げた。それからしばしの間滞空していたUFOだが、急にぐらぐらと揺らめきはじめたかと思うとあたふたと逃げるように、迷走しながら飛び去った。
 妙法さんはUFOを見送りつつ、夜食のことを思って落胆した。食べようと思っていた一品を、たった今宇宙人にぶちまけてしまったのだ。
(私の納豆……)
 空腹はつのる一方だったが、宇宙人の人体実験の材料になるよりはマシかと、納豆は食えなかったが納得することにした。そして、この騒動のおかげで一時は挫折寸前だったダイエットが長続きしたのだと自分に言い聞かせ、宇宙人に感謝の祈りを捧げたそうである。人間万事塞翁が馬。彼女の納豆ならぬモットーであるそうな。


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納豆の日

関西人は納豆を食べないなどとは、もう言わせません。
七月一〇日は納豆の日です。
(関西納豆工業協同組合1981年制定)
ヘルシーで、栄養満点!!
成人病予防にも役立ちます!!




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