ミステリー
卯ぺ本寺の和尚
(11.20. 1997)

 京都のとある山麓に、卯ぺ本寺(うぺぽんでら。仮名)という、たいそう歴史の古いお寺がある。

 寺の和尚には珍しくないことかも知れんが、卯ぺ本寺の和尚はとんでもない破戒僧として有名だった。
 毎晩おびただしい量の酒は飲む。博打に大金をつぎこむ。女子高生は買う。クリスマス・パーティーは開く…などなど、なかなか真似のできない暴走的日常を送っていたのだが、それでも寺がつぶれなかったのは、ひとえに昔ながらの檀家が多かったおかげであろう。

 だが、そんな和尚にも、先月、ついに仏罰が当たったようである。
 河原町でひっかけた女子高生とカラオケボックスにしけこみ、淫行に及ぼうとした寸前、テーブルに置いてあったはずの2本のマイクが飛び上がったかと思うと、和尚の頭めがけて飛来。何度も何度も和尚の頭に激突をくりかえしたあげく、頭にくっつき、離れなくなってしまったのである。

 泣き叫ぶ和尚の前で、買ったはずだった女子高生は「ほほほほ…」と高笑いを残し、消えていった。



 以来、今日にいたるまで、和尚の頭には2本のマイクが角のようにくっついたままだ。
 それでも遊びほうけるこの破戒和尚に当たる、次なる仏罰は何か。
 京都の町は今、その話題一色である。

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