易経  君子豹変して、内なる自分と出会う。

【発表メディア】 朝日新聞 1999年2月21日朝刊


 「君子豹変す」という言葉がある。ころころと態度を変える……悪い意味で

使われがちな言葉だが、本来は違う。豹の毛が季節に合わせて抜け変わり

美しい斑文となることから、君子は時代の変化に合わせて自分を素早く的確

に変えていけるとの意味である。そこから、君子はたとえ過ちを犯しても素早

く善に立ち戻れるなどの意味も生まれた。

 一方、君子でない者はどうなのか。実は「君子豹変す」の後には「小人(しょ

うじん)は面(おもて)を革(あらた)む」と続く(『易経』)。小人も“変われる”が、

それは「表面的なもの」にとどまるというのだ。

 確かに、私たちは過去のあやまちや自分のこだわりに引っ張られて意識や

態度、生き方をすぐに変えられないものである。「こうありたい」「ああなりたい」

と思いながらも、結局同じような毎日を過ごしてしまっている。では、そんな自

分が大きく変わるにはどうすればいいのか。

 最も効果的なのは「環境の激変」の利用である。例えば、若者たちの「大学

生デビュー」。高校時代の自分を知る人が少ないことを利用して、これまでの

自分から「こうありたい自分へ」豹変してしまうことを言う。高校時代に地味だっ

た少女が一気に派手な女になったりする。

 その意味で、就職・転職はそれこそ豹変の絶好のチャンスである。心機一転、

これを契機に「こうありたい自分」への変身に挑戦!……いうならば「社会人デ

ビュー」。同時に、志望外の業種・職種に就いてみて、これまで「この業種でな

きゃだめ」「これこそ私の進む道」と思っていたのが、実は思い込みに過ぎな

かったと気付いたりもする。

 就職や転職は、これまでのものの見方やこだわりから自由になり、本当に自

分が求めていた世界は何なのかに気付く絶好の機会とも言える。


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