小林よしのり氏が述べる「男系派3つの逃走点について」改めて答える

       〜第28章「自爆する男系固執主義者たち」についての考察〜

 

 

小林よしのり氏がしきりに述べる「男系派3つの逃走点」について、

誰も応えていないということであるが、

改めてこの3点について解説してみたいと思う。

 

@皇族志願の男系男子っているのか?(290頁)

 

小林よしのり氏は「これから皇族になるという人物に記者会見をしろ!」という。

彼がなぜこの発言を繰り返すのかというと、

皇族復帰意思のある人は誰もいないと確信しているからである。

それではその確信がどこからきているのかというと、保阪正康氏の調査結果が根拠となっている。

すでに述べているとおり、その調査結果を明らかにした

『文藝春秋』(平成17年3月号)を読むと、

確かに「皇族に復帰したい」と答えた人は一人もいないとなっている。

しかし、「復帰したくない」と答えた人も一人もいない。

つまり、全員がノーコメントを貫いているからである。

これについて保阪正康氏は一方的な解釈により

「皇族に復帰したい」と答えた人は一人もいないという結論にいたっている。

しかも、その結論にいたったのが、『文藝春秋』の記事の中ではなく、

その1年後に『現代』(平成18年2月号)という別の雑誌の対談で

勝手に結論づけて語っているというものだ。

小林よしのり氏はこれをそのまま採用しているだけとなる。

竹田恒泰氏は同じ『現代』(平成18年2月号)のなかで、

<旧11 宮家の当主たちが「皇室典範問題については一切意見を述べない」ことで意見を一致させ、

この問題についてメディアの取材を受けないよう、父を通じて私にも通達があった>と述べている。

保阪正康氏の調査内容とまったく整合性がとれる。

私は、いわゆる旧皇族の方々のこの決定について、まことに見識あるものだと考えている。

国家意思が定まる前に、皇族復帰の覚悟があっても、

勝手に意見を述べないという至極当然の決定である。

仮に私が旧皇族方に調査に出向いたとしても、例え皇籍復帰の覚悟があったとしても、

「ノーコメント」と答えていただきたい。

それが皇族に復帰する覚悟のある人の見識だと思う。

 

しかし、当然のことながら、まったく調査や確認をしなくてもいいというわけではない。

政府の諮問会議などによる結論段階で十分であると思う。

そこから立法過程の間に、もし皇族復帰の覚悟がある人がいないということであれば、

旧宮家の復活について諦めなくてはならないだろう。

最低限いえることは、現時点で記者会見する、しないが、

皇族復帰の分岐点となるなどということはありえない。

そういうことを言っている小林よしのり自身が皇統を論じる見識がないということが

明確になっているに過ぎない。

 

----------小林よしのり----------

とにかく、これから皇族になるという人物の記者会見をしろ!

直系の愛子内親王よりも、いきなり出てきた誰とも知れない人物の血統の方が、

皇位継承者として正統性があると言われて、

「国民が納得するかどうか」を試してみなければ、話にならないではないか!

(290頁)

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これはすり替えの論法である。

比較対象となるのは、愛子内親王殿下と皇族復帰男性ではない。

本当に比較されるべきなのは、愛子内親王殿下と

「いきなり出てきた誰とも知れない人物」との間に生まれたお子様と、

神武天皇の直系で、明治天皇や昭和天皇と血縁関係にある皇族復帰男性との比較である。

悠仁親王殿下がご即位されたなら、原則として愛子内親王殿下がご即位されることはない。

比較されるべきは、その次の世代である。

上記はわざと愛子殿下と比較させようとするマインドコントロール戦法である。

 

 

A「現代医学」の進歩で必ず男子が生まれるか?(291頁)

 

----------小林よしのり----------

本当は、これだけで議論が終わっている。

たとえ「旧宮家」を復活させても、一夫一婦制で男子誕生率100%でなければ、

その「旧宮家」も続かないのだから!

晩婚・少子化の上、そもそも子供が生まれない可能性もあるのだから、

男子誕生率は50%ですらない!

(291頁)

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旧宮家を復活させても、なぜ男子誕生率が100%でなければ、男系継承が不可能なのか、

繰り返し質問してきたのであるが、これに対する小林よしのり氏の回答はいまだ一度もない。

もちろん20代先、30代先に途絶える可能性があるかもしれないのはわかっているが、

確率論上は途絶えない可能性の方が高い。

なぜ将来、確実に途絶えると断言するのか、その論理について一切説明していない。

 

唯一の説明らしきもが一つだけある。

我々は4宮家体制であれば、まったく男子が誕生しない確率は0.1%であるということを述べている。

この説明に対して、「それは一世代のことであって、次の世代がたとえば2宮家となれば、

その計算が成立しなくなり、あとは先細りになっていく」という批判である。

一時的に皇族男性が減少する可能性があるということは、増加する可能性もある。

増加したときに、減少したときのことを想定して、対策を講じておくことだって可能である。

宮家が4家あるからといって、皇族男性が5人ということではない。

一時代に同居する世代数は、3ないし4世代である。

男子のお子様が2人ないし3人のところもあれば、女子ばかりのところもある。

小林氏の論理だと、復活した宮家が一子相伝で継承することのようなイメージを抱き、

それでは不可能だという印象操作にみえるが、

実際は、跡継ぎがなくなって消滅する宮家もあれば、

新たな宮家がどんどん誕生することにもなる。

いずれにしても、将来確実に男系継承が不可能になるという説明はどこにもない。

要するに、「安定継承できる保証はない」ということを言うのだが、

古来、側室制度があっても、皇子たちが無事に成人する保証など、どこにもなかったわけだ。

「安定継承できる保証」を女系容認の論拠とするには、

極めて根拠脆弱であるといわざるを得ない。

 

もう一つ説明らしきものがあるとすれば、

「悠仁親王殿下ご誕生以前に9人連続で女子が誕生したという現実がある」

というものだ。

これは可能性でいうと、256分の1 で、0.2%の確率となる。

こんなことが頻繁に起こるのなら、日本中が女子ばかりとなってしまう。

これに対して小林氏はゴー宣ネット道場の

「皇統問題の核心を語る2」という動画でこういうことを述べている。

「男女比率50%というのは、最低でも5千人ぐらい統計をとってのことで、

短期的には女子ばかり続くことだってある」

これを読んだ人は、これが確率論についてのすり替えであるということを見抜けただろうか?

 

非常に不見識な例えであるが、このような説明をすれば一発で理解できるだろう。

丁半ばくちで、どうしても「丁」をひかなくてはならいとする。

1回だけの勝負か、5回の勝負か、どちらが可能性は高いか、

小学生にでもわかるだろう。

それを、「5千回ぐらい繰り返したら可能性は50%ぐらいになる」という、

わけのわからないことを述べて、煙に巻こうとしているのと同じ。

竹田恒泰氏は「宮家が4家あれば安泰だろう」と述べられ、私も概ねそれに賛同するが、

宮家は多ければ多いほど、安定した男系継承の可能性が広がる。

それに対して、小林よしのり氏は

「宮家がいくらあっても、側室制度がなければ男系継承が不可能」というのである。

これについて、私は確率の計算すらまったくできていないと指摘しているだけなのだ。

この話をすると、必ず「旧宮家の男子が4人も復帰できるのか」

という違う話にすり替えようとする。

こういうことをペテンというのだ。

 

さらに、もっと決定的なことをいうと、

将来、皇室でまた9人ないし10人連続で女子ばかりが生まれるという

事態が起こった場合、

そのときにはじめて女系継承としても別に構わないのではないか。

女系容認論だったらそんなこと心配する必要がないはずではないか。

宮家が4家から7家あれば、10人連続女子が誕生しても、

わたしは必ずしも男系断絶にはならないと考えるが、

それでも男系が断絶すれば、女系容認論であるなら、

そのときに女系となっても一向に構わないはずである。

将来、起こるかどうかわからないこと、起こる可能性の少ないことを、

必ず起こると断言するのは、「ノストラダムスの大予言」と同じで、

そちらの方が、よほどカルトではなかろうか。

「ノストラダムスの大予言」をもとに、どうしてもいま女系天皇をつくりたいというのは、

左翼の設計主義であり、保守主義者を自認する人間にとっては、

非常にいかがわしさを感じざるを得ない。

 

もう一つ大事なことを述べておかなくてはならない。

私はこの問題について確率論で解決できるなど、

毛頭考えていないということは、すでに述べている。

問題の本質は皇族方のご結婚問題であると認識している。

この点について女系容認論者の認識は非常に甘い。

私は皇太子殿下の晩婚の原因となったのは、

お后候補といわれた女性が、片っ端からマスコミに取り上げられ、

出会いを妨げられたということを問題にしている。

このことは女帝の配偶者選びになると、困難の度合いは比較にならないだろう。

そのことを物語る事実がある。

『諸君』(平成20年8月号)に掲載された渡邉允前侍従長のインタビュー記事から引用する。

 

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記者

「渡邉さんは、退任記者会見で、

紀宮さまのご結婚は在任中のいちばん嬉しい思い出だと、述べておられましたね。」

 

渡邉允前侍従長

「紀宮さまは、ほんとうに立派な内親王でいらした。

お幸せになっていただきたいというのが、われわれのすべての願いでした。

ただ、内親王のご結婚は、おいそれと決まるものではありません。

まだ具体的な経緯はお話しできませんが、秋篠宮さまのお力が大きかった。」

 

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皇籍離脱される内親王殿下のご結婚でも、おいそれと決まるものではないのであれば、

皇太子となられた内親王殿下のご結婚など、至難を極めることであろう。

そのようなときに、すっと忍び寄る怪しげな影がないとも限らない。

安易に女系容認が安定継承などと述べている人間からは、

リアリティーを感じとることがまるでできないのだ。

 

----------小林よしのり----------

新田は、「一夫一婦制でも、皇籍離脱時26人だった旧宮家の男系男子が、

現在35人に増えている」というペテンを、またしても平然と繰り返している。

(中略)

すでに明らかにしたが、その「35人」の内訳は、

50代以上が19人、40代・30代が11人、20代以下は5人、

どんどん先細っているのが事実である。

そもそも一夫一婦制で男系が維持できるのなら、こんな問題になっていないよ。

(291頁)

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ペテンをやっているのは小林よしのり氏である。

先細っているのは、女子ばかりが生まれているからではなく、

結婚されていない人が多く、子供の数そのものが減少しているからだ。

子供の数が多かった時代は、当然、男子の数も多くなるのである。

これは日本の少子化の特徴そのもので、出生率が低いのは、

独身者が多いからであり、既婚者は平均で子供を2人以上生んでいる。

結局は、一夫一婦制の問題なのではなく、結婚問題が本質にあるということである。

 

 

B皇祖神は誰か?(292頁)

 

これにも一応答えておく。

この議論はそもそも「神話と歴史の区別」というところから端を発している。

これに対して小林よしのり氏は「神話を否定した」という。

伊弉諾尊(イザナギノミコト)と伊弉冉尊(イザナミノミコト)は夫婦であるが、

天照大神と素戔嗚尊(スサノオノミコト)は姉弟である。

神話に出てくる誓約(ウケヒ)というものは、伊弉諾尊と伊弉冉尊との国生みのようなかたちではなく、

天照大神と素戔嗚尊がそれぞれ単身で神々を生み出している。

神が神を生み出すことと、人間を同列に扱っていいのかということで、

私は「神話と歴史の区別」ということを主張している。

さらにいうと、神話の中でも天照大神以降、皇統は男性神により継承している。

「天壌無窮の神勅」にある"天照大神の子孫"とは男系子孫のことであるというのが

神話からつらなる歴代天皇の御意志であるのだ。

 

----------小林よしのり----------

新田の主張は「神話から連続して皇統は男系だ」というものなのだからあきれる。

天照大神の子とされている、神武天皇の5世の祖にあたる神、アメノオシホミミノミコトは、

実はスサノオノミコトの子だ。

それは高森明勅氏も認めていると、新田は鬼の首でも取ったかのように強調するのだ。

アメノオシホミミノミコトは、スサノオノミコトが産んだと神話に書いてある。

そんなのは当たり前!

しかし、それでもアメノオシホミミノミコトは天照大神の子であり、皇祖神は天照大神だ!

これが決定的に大事なことなのだぞ。

(292頁)

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スサノオノミコトが生んだから男系というよりも、

天照大神があえて男性神を選び、「わが子孫」により継承するとしたことが、

決定的に大事であると考える。

そして、歴代天皇は「神勅」をそのまま受け取り、

万世一系により皇位を継承してきたということである。

 

 

----------小林よしのり----------

Aに対して新田は・・・

「歴代天皇の正妻は4分の3の高確率で男子を産んでいる。

だから医学の進歩で乳児死亡率が下がった現代では、

4分の3の確率で男系継承ができる。

残り4分の1のリスクは、新宮家を4つ創設すれば、

カバーできるから、一夫一婦制でもOK」

 

これは100%竹田恒泰が言いふらしているペテンの受け売りである。

天皇の正妻の4分の3もが男子を産んでいるのは、

昔は男子を産むまで5人でも10人でも子供を産み続けるのが当然とされていたからだ!

(294頁)

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これは何の根拠もなしに、思いつきで批判しているとしか考えられない。

昔の皇后が5人でも10人でも子供を産み続けていたという実証でもあるのか?

そんなものがあるはずもないということを明らかにしよう。

「男子誕生まで5人でも10人でも子供を産むのが当然とされていた」

などという事実は起こりようがないからである。

男子が誕生する確率は、子供2人の場合75%、3人の場合87.5%。

男子誕生まで子供を5人でも10人でも産まなくてはならないのであれば、

日本中が女子ばかりになってしまう。

竹田恒泰氏が「歴代天皇の正室は4分の3の高確率で男子を産んでいる」というのは、

高確率ではなく、ごく当たり前のことを述べておられるに過ぎないということだ。

正妻が子供2〜3人産んでいたら、だいたいそれぐらいの数字になるということ。

実際に過去の皇后が「5人でも10人でも子供を産むのが当然」ということだったのなら、

男子誕生率は99%程度になっていたはずである。

何の根拠も示さずに、思いつきで批判しているから、

こんな中学生レベルの計算力を示すことになるということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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