小林よしのり氏の質問に答える

     〜第29章「渡部昇一氏への回答」について考察する〜

 

 

渡部昇一氏は、カルト呼ばわりされることについて、

小林よしのり氏の本意を質すため、『WiLL』(平成22年7月号)で公開質問状を出した。

これに対して、小林よしのり氏は公開質問状に対して、一切回答せず、

質問状で返すという不真面目な行動に出た。

渡部氏は、この不誠実な対応に対しても、冷静に応対し、

再度公開質問状を投げかけておられる。

小林よしのり氏は『SAPIO』(平成22年6/23号)で

渡部氏らの公開質問状に対して以下のように述べた。

 

----------小林よしのり----------

「WiLL」で渡部昇一氏がわしに公開質問状を出してきた。

ちゃんと『ゴー宣』を読んでいないな。

何が言いたいかは全部見抜いている。

また一からの議論はかったるいので、

次号の「WiLL」でいきなり追い詰めてやろう。

慰安婦問題のときと同じだ、この議論は。左翼のマネばっかりするなよ。

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「いきなり追い詰めてやろう」というのが逆質問状のことだ。

とても追い詰められる内容のものではなかったので、

渡部氏が答えるまでもなく、僭越ながら、私が代わりに回答してみようと思う。

 

 

----------小林よしのり----------

@皇籍取得してもいいという旧宮家子孫は実在するのか?

 

男系継承論者が主張する唯一の方策は、

旧宮家子孫の男子に皇籍を取得させ、新宮家を創設することです。

竹田恒泰氏は、安定的皇位継承のため4 つの宮家創設が必要だと主張しています。

これから皇族になってもいいという男性が本当に4人存在するのでしょうか。

いないのであれば、男系継承は不可能であり、

女系も公認して、直系継承に道を開く以外ありません。

(297頁)

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竹田恒泰氏によると、旧皇族方は、皇室典範問題について

「ノーコメント」という対応をされることで足並みを揃えておられます。

このことは保阪正康氏による「文藝春秋」による取材でも裏付けられています。

問題が皇位継承に関わることだけに、軽はずみの発言は控えるということについて、

見識ある行動であると考えています。

小林よしのり氏が「皇籍に復帰してもいいという旧皇族男性がいない」と主張するのであれば、

少なくとも、あなたが独自に調査して、

皇籍に復帰してもいいという人は一人もいなかったという証拠を示すべきではないでしょうか。

 

 

----------小林よしのり----------

A旧宮家子孫の皇籍取得を国民が認めるのか?

 

仮に4人の旧宮家子孫が立候補したとしても、

全くの一般人が皇位継承資格を持つという前代未聞の事態を国民が認めるでしょうか?

女性皇族がそのような政略結婚を受け入れますか?

国民が認めなければ実現は不可能です。

なぜなら国体とは「君民一体」、天皇と国民の双方によって成り立つからです。

(297頁)

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国民が認めるかどうかということについて、

なぜ小林よしのり氏がいま判断することができるのですか?

これから議論が高まっていく過程において、国民がどのように判断するかはわかりません。

明治天皇の父である孝明天皇は伏見宮家に譲位を提案されたことがありました。

旧宮家のほとんどは、明治以降、現在の天皇の血筋から、

皇女を妃殿下としてお迎えになっておられるか、皇室に近い血族と縁組みをしておられます。

朝香、北白川、竹田の各家には明治天皇の皇女が嫁いでおられ、

東久邇宮家は、明治天皇の皇女と、昭和天皇の長女をお迎えになっておられる。

ここ百年に渡って皇統断絶になったときのために、

伏見宮系の宮家に継承できるよう準備が周到に行われてきたのです。

そのような事実から判断すれば、日本人は、歴史的に皇族とまったく関係のない男性が

皇配として皇族になるより、旧宮家からの皇室にお迎えすることを

選択することも十分に有り得ることだと考えられます。

従って、現時点でご質問のようなことを判断することに、

何の意味があるのか理解することができません。

 

 

----------小林よしのり----------

B側室なしで男系継承が続くか?

 

さらに仮に4人の皇籍取得が認められたとしても、

側室がなければその「新宮家」もいずれ男系継承は不可能になります。

現在の医学では、必ず男子を誕生させることはできません。

竹田恒泰氏は、歴代天皇の正室は4分の3の高確率で男子を産んでいると主張しますが、

それは男子誕生まで5人でも10 人でも子供を産むのが当然とされていた時代のこと。

今上陛下は、昭和天皇・香淳皇后の第5子です。

この晩婚少子化の時代に、皇族にだけ多産を強制するのは無理があります。

(297頁)

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「皇室典範改正に関する有識者会議」の報告書にも同じような指摘がありましたが、

側室制度なしに男系継承は不可能という根拠がわかりません。

私は、有識者会議は世界の王室の歴史を知らない無知蒙昧であると考えています。

 

ヨーロッパで男系継承を行っていた王室は、

キリスト教国ということで庶子がはじめから排除されていましたが、

男系継承はしっかりと守られていました。

ヨーロッパで典型的な男系継承が行われてきたフランスでは、

987年にユーグ・カペーが王位を取得してから、

庶系継承なしの万世一系で、フランス革命(ルイ16世)まででも、

800年以上続いていました。

革命後もブルボン家の男系は存続しており、

オルレアン家として現在まで千年以上続いています。

フランスはカペー本家に対して、バロア家、ブルボン家という

二つの宮家で少なくとも800年間男系継承を維持しました。

フランス以外にもドイツ、イタリア、スペインなど男系継承の王室はありましたが、

庶子継承制度がないからといって、直ちに断絶したなどという事実はありません。

 

現在、晩婚少子化といえども、夫婦間の出生率では必ずしも少子化とはなっておりません。

有識者会議の報告書はこの点をまったく無視しております。

世間一般的に夫婦間の出生数では、

2人、3人の子供数は当たり前です。所得水準の安定層では4人も珍しくありません。

過去の皇后陛下が「男子が産まれるまで5人でも10人でも子供を産むのが当然とされていた」

などという事実の根拠はよくわからないですし、

そんな事実はなかったものと確認しておりますが、

それを加味しても、宮家が4家程度あれば、

側室なしに男系継承が不可能と断言できるものではないと考えます。

 

以上、小林よしのり氏の質問に対してすべて回答しました。

もちろん、これに納得できないものがあれば、いくらでも回答して差し上げますが、

次は貴殿が渡部昇一先生の質問に対して真摯に答える番です。

よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

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