エンターテイメントとしての合唱
前川 裕

 演奏会での感想には、「直立不動で歌っているだけでは見ていてつまらない」というものが毎回必ずある。特に、いわゆる合唱人ではない一般の聴衆に多い。

 舞台上でのパフォーマンスといえば、日本では「おかあさんコーラス」の右に出るものはないであろう。中には、8分の歌の中で7回も衣装早変わりをしたという団体もあったそうで、おかあさんパワー恐るべしである。しかも、この団体は歌そのものも上手であった。これは極端な例としても、シアターピース(軽い、劇のような動きを取り入れたもの)といった形式での演奏会も増えてきているのは事実である。

 海外の合唱団は、このようなパフォーマンスが得意である。というよりも、それが普通なのだろう。あらかじめ計画されていたものというより、自然に体が動いてくる、という雰囲気である。海外と日本の合唱団の交流会などがあると、まず踊り出すのは海外の合唱団員であり、日本人もそれにつられて、というパターンが多い。楽器などが気軽に出てくるのも外国人である。

 西洋型の合唱というのは、多くの人が学校音楽の中で初めて触れるものである。ここからも「合唱はまじめなもの」というイメージが生まれるのかもしれない。学校のテストでは「自由さ」は御法度であるから、どうしても直立不動、まじめな歌い方が身につくことになる。校内、また校外の合唱コンクールしかり。

 誰もが舞台で踊らねばならないわけではない。しかし、エンターテイメント的な要素が日本の多くの合唱団に欠けているのは事実である。合唱の楽しみを広げるという意味でも、さまざまなスタイルにチャレンジしてみよう。


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