「演奏会は満席にしなくてはならないか?」
前川 裕

「演奏会では客席を満席にしなくてはならない」とよく言われる。確かに、満席の聴衆に向かって歌うのは気持ちのいいことである。しかし、それが半ば強迫観念のようになっていないだろうか

現在、大抵のアマチュア合唱団では演奏会の費用についてノルマ制を敷いているであろうから、お客の入りが演奏会の採算に直結する、ということは考えなくてもよい。そうすると、会計的に見れば聴衆の多い少ないは無視できよう

たとえば、大変響きのよいホールがある、しかし自分たちで客席をいっぱいにするには定員が多すぎる。こういうケースでは、例えば「定員の半分が入れば十分」という見方も出来る。がむしゃらに聴衆を集めるより、たとえ満員でなくても、「この人に聞いてもらいたい」という人たちを集めた演奏会の方が雰囲気としては盛り上がるのではなかろうか

「多いことはいいことだ」というのは高度成長的な発想である。あまりチケットを裁けない人が低く見られるような愚かさは避けたいものだ。


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