「組曲―この日本的なもの」
前川 裕

日本の合唱団の演奏会は「4ステージ構成」になることが多い。1ステージが20分ずつで、4つの組曲を組み合わせる。これは諸外国にはあまり見られない形式である。この現象に資しているのが「組曲」というあり方である。これも、いつか日本の合唱音楽の特色となっている

確かに海外の合唱曲にも組曲はある。ミサ通常文も、一種の組曲とはいえる。あるいは一つのテーマに沿った連作もある。しかし、これらは日本的にいえば「曲集」のジャンルに入るであろう。比較的ゆるい結合によって集められた複数の曲、というものである

日本の「組曲」はこれらとは異なった趣をもつ。複数のお互いに関連性のある詩を用い、詩の面からも音楽の面からも各曲の間の結びつきが非常に強い。このメリットとして、20分前後というある程度まとまった時間、一つの世界を作り上げることができることがある。歌い手・聴衆ともにその世界に没入しやすい(もっともこれは往々にして「独りよがり」の演奏を生み出す原因にもなるのだが)

賛否はさまざまであるが、「組曲」は日本の合唱文化が産んだ一つの財産であることにはまちがいないといえよう。


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