「『楽譜は高い』か?」
前川 裕
平均的な合唱の楽譜は、国内版の場合、現在1500円程度であろうか。1冊しかしないのならまだしも、何冊も買わねばならない場合にはたしかに割高感がある。そもそも、楽曲の価格というのはどのように決められているのだろうか
楽曲には、著作権料がかかる。これは単純にいうと古い曲ほど安く、新しい曲ほど高い。全ての費用を計算すると、平均的には1曲は200〜300円程度となる。実際、ピアノやポピュラーのピース楽譜はその程度で売られている。(値段が高いものは、印刷が豪華になっているからである)
ところが合唱の場合には本の形で出版されることが多いために、複数の曲が収められている。1曲あたり200〜300円の曲が5〜6曲入っていれば、1500円程度になることは簡単に分かる。これは、常に複数の曲で構成される「組曲」主義の弊害ともいえよう。組曲は、単品で売るわけにはいかないからである
1980年以前の合唱運動華やかなりし頃は、1曲だけのピースが多数出されていた。しかし現在はほとんど見掛けなくなってしまった。ピースは1曲単位になるだけに、在庫管理が難しい。販売手続きが煩瑣になるわりに利幅が薄い、などの理由が考えられる。
とはいえ、1冊に載っている曲をすべて取り上げることもそう多くはない。様々な曲に気軽に取り組むためにも、ぜひピースでの出版も臨みたいものである。インターネット上で楽譜を販売する試みも始まっているが、これならば在庫管理の問題もなくなるので、ピースに向いている形態ではなかろうか。もちろん最終的には、「楽譜は買うものだ」という合唱人のモラルが問題となることはいうまでもない
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